◆FATE1jn1hk 氏の小ネタ-03

高速で駆け抜ける黒い物体がひとつ
目の前に展開される弾幕を潜り抜け、撃ってくる者一人一人一つ一つを丁寧に的確に迅速に無効化していく
空を翔け、大地を疾駆し、壁を打ち壊し、唯只管目標に向かって一直線に突き進む高速で動く黒い物体

轟音

厚さ数十メートルの対魔合金製外板を貫いて現れた黒い物体は豪快に着地し
火花を散らしながら大地を滑り、燃え盛るブレーキ痕を残してようやくそれは止まった
其処は真っ暗な部屋、機械のLEDが放つ光が高台にいた一人の男を映し出していた

 「よくもここまで来たのもだな」

男が振り向いた、真っ黒な軍服をピっと着こなした偉丈夫だ
長い銀髪がLED光で豪奢に輝き、鷹のような眼光は此方を射抜いていた

 「貴様は私の全てを奪ってしまった、時空管理局本局・次元航行部隊XV級艦船「クラウディア」所属」

 「元管理局一等陸佐シュバルリッツ・ロンゲーナ、貴方を質量兵器大量密造、及び使用。並びに時空反逆罪と多次元時空間消滅未遂の罪で貴方を逮捕する」

 「アスカ隊隊長シン・アスカ三等空佐か。これは許されざる反逆行為と言えよう」

 「観念しろ。 今すぐ無人機動兵器の電源を切って投降せよ。 お前には、以下の権利が与えられる。まず――」

 「――態々ご苦労な事だった…と言いたい所だが君には消えてもらう」

シンは与えられた台本の様に罪状を挙げて降伏を迫り、シュバルツはシンの言葉に耳を貸さずにつらつらと語った
お互いにとって相手は相容れぬ敵、話し合いなぞ知った事かと己の主義主張だけを述べて行く

 「最後に警告する、シュバルリッツ・ロンゲーナ。 今すぐ無人機動兵器の電源を切って投降せよ。お前には、以下の権利が与えら――!?」

地響きとともに大佐自身がゆっくりと浮き上がって行った。 浮遊魔法か? 元陸佐の持っていない筈の不可解な飛行スキルに不信感を持ち、シンはとっさに身構えた
大佐はそれは丁度地上から約30メートルといった地点で静止し、今や豆粒のように見えるシン・アスカを見下し言った

 「貴様は知らんだろうが我が1000年の闘争はここで勝利と言う終焉を迎える」

真っ暗な部屋全体が光に包まれる。たまらずシンは片手で瞼を覆い、閃光を防ぐ!
その隙を狙って数多の30mmバルカンが地面を薙いだ。
シンはデバイスの誘導を受け、機銃掃射を4対の翼を羽ばたかせて避ける、追撃のミサイルもバックステップでかわす
一撃でもかすれば柔い人体なぞあっという間にミンチに変える極殺の雨嵐を大降りに避ける!弾幕を誘導し、人一人通れそうな隙間を縫うように跳ぶ!
それでも吐き出される弾丸が起こす爆風がバリアジャケットの対衝撃フィールドを揺らし、それでも消しきれない衝撃が平衡感覚をが狂わせる。
つんのめって倒れそうになる体を数多くのサポートを受けて無事着地した

ようやく目が慣れ、瞼を開いた其処には超弩級巨大質量兵器が部屋の中央、格納庫を埋め尽くすようにそれは鎮座していた


超巨大な蜂が幾多の砲門を此方に向ける中、シュバルツはゆっくりと身を翻し、蜂のコクピットに吸い込まれるように入り、消えて行った

 『この最終鬼畜兵器をもって貴様の罪に私自らが処罰を与える』

 「…結局実力行使か、おとなしく捕まれば面倒事が無くて済むというのに、しかしこうも往生際が悪いと逆に清々しい」
  【デスティニー、各機能オールグリーン。真・運命形態正常に稼動中です】
 「相棒、一人で背負うなよ? 今の俺達は無敵だ、何より皆が一緒に戦ってくれるんだ」
  【目標、攻撃態勢に移りました。真・運命形態は我々がサポートします】
 「ああ、有難うレイジング・ハート。バルディッシュもここが正念場だ、頼むぞ」
  【了解しました、マイマスター】

片手づつに持った大剣と槍状の魔道杖は静かに頷いた
 「マッハキャリバーはブリッツキャリバーと並列して機動管制、クロス・ミラージュは射撃、火器管制 ナックルズはクロスミラージュの補佐!」
  【【【了解しました】】】 【【……!!】】

一対の紅い羽から虹色の余剰魔力が漏れ出し、周りに射撃スフィアが形成されて行く
 「レヴァンティンはR・HとB・Aの火力サポート、クーラルヴィントは各出力補正サポート グラーフアイゼンはシールドチェック!」
  【【【Ja】】】

バルディッシュが金色に光り輝き、レイジング・ハートが桃色の翼を羽ばたかせた
 「最後にリインⅡ」
  【はい、シンさん。総合管制は任せてくださいね?】
 「ああ、頼む。 さっさとこんな任務終わらせて帰ろう」
  【はい! 絶対死なせません。 貴方は私が守るのです!】

真・運命形態、シンのデバイス・インパルスの最終形態であるデスティニーは巨大な力を秘めていた
しかしそれは最強でありながら未完成。 デバイスが制御できない力を赤い翼として放出する事により
暴走する魔力を無理やり制御下に置く事で初めて運用する事が出来るデバイス。
もちろんそのままでも強いのだが使う魔力よりも放出する魔力が多すぎる事が難題だった
フレームはこれ以上強化できない、そして魔力制御はシンの腕では困難
――ならば外部からそれを無理やり制御してしまえという発想から生まれた真・運命形態は余剰魔力をを各インテリジェンス・デバイスで制御し
圧倒的な爆発力で敵を駆逐する最後の切り札。

 「シュバルリッツ・ロンゲーナ、お前を逮捕する。言い訳は後でたっぷり聞いてやるからそのときに腐るほどしゃべくりやがれ!!」

巨大な紅い翼と3対の黒い翼が羽ばたく
中空に浮き上がり漂った後、物理法則を無視したような軌跡を描き
圧倒的暴力暴虐濁流的弾幕の中、シンは黄流に単身向かって行ったのだった!

 「ふん、何処までもがき苦しむか見せてもらおう、  死  ぬ  が  よ  い  」

 「  お  前  が  な  っ  !  !」


そして―――かくして戦いは終わった 激戦とも言うべき一対一の決闘はシンに軍配が上がった
撃破された黄流は二機に分かれ、最終鬼畜兵器緋蜂は堕ち、4対の色違いの翼を羽ばたかせる運命は空に在った
敗者は破れ堕ち 勝者は勝ちて空に在り、勝者がいて敗者がいた、ただそれだけ。

次元航行部隊XV級艦船「クラウディア」
そこでシンは管理局の仲間たちに揉みくちゃにされていた
様々な声がかけられたり、何処からか持ってきたビールをかけられたりその様子はさながら祝勝会である
 「貴様ら、羽目を外すのは良いがまだこの船は作戦行動中だ。暴れるのは任務中と寄港中だけにしておけ!」
クロノ・ハラオウン提督である
乗組員は敬礼をし、蜘蛛の子を散らすように道を空けた

 「シン・アスカ三等空佐、作戦行動中の命令無視、並びに無許可での真・運命形態の使用…」
 「お叱りはご尤もであります、ですがあそこでああしなければ今後多くの次元世界が消滅していたかと」
 「それを判断するのはお前ではない、私だ。 後で始末書を書いて提出しておけ」

そういうとクロノは踵を返して立ち去っていった。 クロノの雷とシンの命令無視、この対立は日常茶飯事だ、が。
今回は普段とは少し違った対応のクロノにシンは違和感を覚えた

 「ああそうそうシンくん。 通信だよ、本局産婦人科から直通だ。 早く出てやれ、みんながお待ちかねだぞ?」

 「久しぶりだねシン……私達はもうすぐだって先生が言ってたよ」
 「怪我とかしてない? 忙しくても休める時には休んでね?」
 「ちゃんと飯食べとるか? 始まったら命令無視してでもええから来ぃや」
 「妹はしっかりと私の代わりを勤めているか? 出来れば立ち会って欲しいが…」
 「クロノと喧嘩は程々にしておけよ 全くこの責任は重いぞ」
 「おいシン! 無茶はしてないだろうな!? ったく無茶をするのはあたし相手だけだぞ! それ以外は許さねぇからな!」
 「私の手料理が恋しくないですかー? もう、ほんっとシンさんってば……鬼畜ですよねー」
 「ほらほら見てシン!! おなかおっきいでしょー? ヴィヴィオはこっちで元気にしてるよー?」
 「毎回思うのですが、どうして貴方はこうも節操がないのでしょうか? 私が責任を持って捕まえておかなければ今頃もっと被害者が……」
 「別に、心配なんかしてないわよ? 元気なの? シン」

臨月に入った大きなおなかを抱えててを此方に手を振る愛すべき人たちが居た
様々な事があり、重婚許可の為に世界を敵に回しかけた3人がいたことや
プログラムである事を嘆いていたところを諭され、子供ができた事に歓喜の涙を流した4人がいたことや
機械の体に不安を覚え、優しさに触れ、生涯を彼に捧げた14人が居た事や
彼に肉親の暖かさを感じ、兄を思う事から恋を思う事に戸惑いを感じた一人が居た事

芋づる式にいろんな事が判明したり、なし崩し的に結婚したり、実はシンから迫った事は一つも無いことが明らかになるのは、まあ気が向いたら話すという事で…

彼はその全てを受け入れ、今個々にこうしてここに在る。シンが持っているデバイスたちは彼女達から託されたもの
彼を様々な災厄から守る為に、彼とともに居れないかわりにせめて半身だけは彼とともに在りたいと願うが故に。
「管理局の女難」 「紅い翼の女難」 「女難王シン」の物語はここで一旦幕を閉じる、だがまた新しい女難が待ち受けている事は想像に堅くないが……もはや語るまい

「ああそうか、俺は今、幸せなんだな」


インパルス 「お初お目にかかります、私(わたくし) シン・アスカの所持するインテリジェンス・デバイスをしております
        インパルスと申します、デスティニーは所要で出かけておりますので……皆様、マスター共々どうかよろしくお願いいたします」

シン 「で、作者。この状況どうやって収拾つけるんだよ!? 全員と関係もったとかありえないよ!?」

ポーン 作者は逃走しました

シン 「あ! 逃げた!!」

インパルス 「書置きがありますね、変わりに『良いじゃないですか、世の中には優柔不断で首ちょんぱされた不幸で同情できない男もいるそうで
        すし、逆に恵まれすぎてマスターは様々な方面から非難囂々なんですよ? 全員に慕われて全員の愛の結晶を授かるだなんて夢
        まっしぐら猫まっしぐらじゃないですか?』との事です」

シン 「何でそんな事! そんな事態に巻き込まれる俺の事もちょっとは考えてくれよ!!
    俺もう血涙流して流して涙チョチョ切れて今じゃあ流すものが何も無いよ・・・・・・」

インパルス 「はい、前から思っていたのですがマスターの女難の……女難って言う部分はよくわかります
        女性達に囲まれ、様々な事件に巻き込まれる不幸に会うという意味でですね、この巻き込まれて不幸って言うのはわかります
        凄くよくわかります、ですが………女難と言うのは女性に人生を振り回されて自らの行動に自由がなくなってしまう不幸ことです
        よね? 何でマスターは女難にあって女性に人生を振り回されているのに最終的に幸福になっているんですかーーッ!? 『男が
        女に関することで災いを受けて不幸になる事である』という事なのにマスターはとても幸せそうです! 女難以前に不幸でもなん
        でもないじゃないですか!? ハレムですよハレム!! イラ尽きますね全くナメてるんですか作者は!!これじゃあマスターは
        ただのマゾい変態じゃないですか!! いらつくぜチクショウ!! ナメやがって!! クソッ! クソッ!」

シン 「……インパルス?」

インパルス  「失礼、取り乱してしまいました。 こういったことに関して突っ込むのは野暮、世界を敵に回すのですね」





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最終更新:2008年07月22日 19:04
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