1
「シンのばかぁっ!」
私は今ここには居ない恋人の名前をあげると
ベットの上にあったクッションを掴み、抑えきれなくなった感情を込めて壁に投げつけた。
隣の部屋から弟の聡の声――姉ちゃんうるさい!――が聞こえたけど無視だ無視!
私は机の上に置いておいたテディベアを抱きしめるとベットに座った。
「シンの……ばか……」
シンの名前を呟くとテディベアをギュッと抱きしめベットに横になった。
今日は8月20日。 私、田井中律の
誕生日前日だ。
今年の誕生日は運の良い事に休みで、前日である今日はけいおん部のみんなが部室で私の誕生日を祝ってくれた。
更に今年の誕生日は今までと劇的に違う事があった……そう生まれて初めての恋人が出来た事だ。
当然、誕生日当日の予定は完全フリーにして、後はシンの誘いを受けるだけの状態だった。
だけど予想外の事が起きた。
それは……
シ ン か ら の お 誘 い の 連 絡 が 無 い !
誕生日一週間前位までは連絡が来ないな……くらいでいたけど、連絡が無いまま一日一日と迫る誕生日に私は不安を覚えながら過ごした。
耐え切れなくて一度澪に相談してみたけど――大丈夫シンは絶対に律の誕生日を覚えてるから――と微笑むだけだった。
「澪の奴何が大丈夫だよ……全然大丈夫じゃないじゃんかぁ…」
抱きしめている澪からの
誕生日プレゼントのテディベアに向かって文句を言ってみる。
ぬいぐるみに話しかける何て普段の私らしくないけど、こんな時ぐらい良いよね?私だって女の子なんだし……
シンと私の……ううん、シンと私たちの関係は普通とは違っていた。
私はシンの恋人だけどシンの恋人は私一人だけじゃない。
普通じゃ考えられないけど、けいおん部のメンバー全員がシンの恋人だ。
世間からしたら変な事で不誠実だ!なんて言われるかもしれない、実際色々と揉める事もあったりするけど
私達がこの形で良いと思ってるんだから世間の事なんか知った事じゃない。
ただ、不安になる事もある。
私は澪達に比べれば可愛くもなければ美人でもない。
澪は言うまでもなく美人で、恥ずかしがり屋ですぐ赤くなるから美人で可愛いっていう反則みたいな存在だし。
ムギも澪に負けない位美人だし、ぽわぽわした雰囲気なんか凄くかわいい。
唯は普通に可愛いし、シンには手間の掛かる妹みたいに思われてるのか良く構ってもらってる。
梓も背が小さくて可愛いし、シンと一緒に唯の世話を焼く姿はしっかり者の妹といった感じだ。
そんな澪達の中で私は美人でもなければ可愛くもない、せいぜい唯と一緒に騒いでる賑やかし役ってくらいだ。
「ははは……考えてみれば私が澪達と一緒にシンの傍に居られるだけでラッキーな事なんだよな、こんな事でへこんでたらダメだ……」
声が震えて視界が滲みはじめる。
こんな事言えば自分を傷つけるだけだって分かってるのに、ネガティヴな思考が止まらない。
「会いたいよ……シン」
その言葉と一緒に私の頬に涙が伝う。
一度涙が流れてしまえば後は抑える事なんて出来ない、シンを好きだと思う気持ちと釣り合わない自分を責めて泣くしかなかった。
携帯から流れる着信を告げるメロディーで私は目を覚ました。
どうやら泣き疲れて眠ってしまったみたいだ。
時計を見れば夜の十一時を回ったころだ、今日はあのまま眠ってしまいたかったのに……
「誰だよ……こんな時間に……」
私はベットから降りると眠りを邪魔された不機嫌さから、机に置いてあった携帯を少し乱暴に取り上げる。
未だに鳴り止まない携帯を操作して発信者を確認する。
発信者は今一番会いたい人……シンからだった。
少しだけ躊躇って通話ボタンを押す。
「もしもし……?」
『あっ…ようやく繋がった、ゴメン寝てたか?』
「別に………なんの用だよこんな遅い時間に……」
声が聞けただけで嬉しい筈なのに、素直になれず刺のある声でシンに答えてしまう。
『………あのさ、今から出かけないか?』
「えっ……な、なに言ってんだよ、今からじゃ会うのにだって時間が…」
『あぁ、それは問題無い。今律の家の前に居る』
「う、嘘だろ?」
『何でそんな嘘つかなきゃいけないんだよ……外覗いてみろよ』
シンに言われるままに窓から外を見ると、バイクに腰掛けたシンが私に向かって手を挙げている。
訳が分からない、予想外の出来事に上手く頭が回らない。
「わ、分かった、すぐ降りる!」
『あぁ待ってる、あとバイクで移動するから少し厚着の方が良いかも』
「うん、分かった」
通話を切ると私は慌てて着替え始める。シンに言われた通り少しだけ厚着をして部屋から出た。
階段を降りた先にいたお母さんに出かけて来る!と告げてそのまま玄関を出る―――何処に行くのか聞かれたけど、その静止を振り切った。
私は玄関の先でバイクに腰掛けて待っていたシンの元へ歩み寄る。
「シン、お待たせ」
「ん、早かったな………律、泣いてたのか?」
「ッ!な、泣いてなんか無い、ほらどっか行くんだろ?」
シンに言われて私は慌てて顔を隠す。
急いでたせいで涙の跡を隠すの忘れてた……
私はごまかす為に強引に話題を切り替えた。
「…………コレ」
シンは一瞬だけ悲しそうな顔をすると、バイクに跨りフルフェイスのヘルメットを被る。
エンジンを掛けると私にヘルメットを差し出した。
その顔を見て私の胸に鋭い痛みが走る―――バカだ私素直になれないせいでシンを傷つけるなんて……
「…ありがとう」
シンとの間に気不味い雰囲気が流れる。
私は小さく返事をしヘルメットを受け取り被ると、バイクの後部座席に跨りシンの腰へと手を回す。
「律……悪い急ぐから……その、もう少しちゃんと…」
シンが若干の気まずさ、そして恥ずかしさを含んだ声でそう言う。
「!……え、えっと、これで良いか?」
私はシンの要領を得ない言葉に一瞬戸惑うけど、すぐにその言葉の意味に気づく。
胸がシンの背中に当たるくらいに強く抱きつくとシンが一瞬だけ小さく動く。
その小さな反応に私は頬が熱くなっていくのを感じる。
「ッ!……ああ、それで良いそれじゃ行くぞ」
「……うん」
私の返事を聞くとバイクが強く唸り勢い良く走り出す。
エンジンの音を響かせながら夜の住宅外をバイクが風を切って駆けていく。私の火照った頬を風が触れていくけど熱は一行に冷める気配がない。
なんかもう感情がごちゃ混ぜだ。
流れていく景色を見ながら私はそう思った。
シンがデートに誘ってくれなかったっていう怒り、そしてシンに会えない寂しさ。
シンが会いに来てくれた嬉しさ、そしてシンに抱きついている気恥かしさ。
そして、その感情達よりも強く感じるシンを好きだという気持ち……
私はさっきよりも強くシンを抱きしめた。
三十分程走ってバイクが止まった場所は、小高い丘の上にある公園だった。
私はバイクから降りるとヘルメットを後部座席に乗せて公園を見渡す。
確かここって……
「律、こっちだ」
「あっ………ちょ、ちょっと」
シンが公園を見渡していた私の手を取り少し足早に歩き出す。
手を繋いで歩くのなんてデートでは、いつもしている事なのに、また気恥しさを感じて頬が熱くなる。
シンに手を引かれたまま、緩やかな階段を上ると開けた展望エリアに繋がっていた。
その先に広がるのは―――街を一望できる夜景だった。
「うわぁっ!……スッゴイなこれ!!」
私はシンから手を離すと木製の手摺りまで近寄り、目の前に広がる色とりどりの光に私は釘付けになる。
規則的に明滅する光と、全く不規則に明滅し動き回る光、その二つはまるで何か壮大なアートのようで現実にある筈の目の前の景色がとても幻想的に見えた。
その幻想的な景色に魅入られ、動けずにいた私を公園に響く鐘の音が現実へと呼び戻す。
公園の時計に目を向けると長針と短針が重なり合い十二時を指し示している。
そしてそれは私の誕生日になった事を意味する。
少し離れた所にいたシンが私へと歩み寄る。
「律、誕生日おめでとう」
シンは優しく微笑みそう言うと、上着のポケットから長方形の箱を差しだす。
ちゃんと覚えててくれてたんだ、私の誕生日……
「これ、誕生日プレゼント」
「ありがとう、シン……開けても良い?」
シンが小さく頷いたのを見て私は箱を開ける。
中に入っていたのは翼の形をした可愛いらしいデザインのネックレスだった。
「これって……」
「あぁ、前に律がそれ見てたの思い出してさ、デザインも可愛かったし……律に似合うかなって」
もう二ヶ月くらい前の事だ、シンとのデート中に見かけたこのネックレスを少しだけ見つめて買うのをすぐに諦めた。
だって、私にこんな可愛いデザインのネックレスなんて似合うわけなんて無い。
こういったのは澪達が着けた方がよっぽど似合う。
そう……私にはこんなの……
「……わない」
「えっ……?」
「似合わないよこんなのっ!」
私の突然の言葉にシンは驚いた顔をすると、悲しげな表情へと変わる。
その表情にまた私の胸に鋭い痛みが走る――
再び溢れだしてしまった想いは、痛みを無視して私とシン、二人を傷つける言葉を続けてしまう。
「こんなの澪達に渡せよ!……私はこんなの似合うほど可愛くなんかないっ!」
「……律、そんなこと」
「あるよっ! 私なんか澪達に比べたら美人でも可愛くもない!!」
その言葉と同時に私の頬に涙が流れる。
違う…私が伝えたいのはこんな言葉じゃない。
ただありがとうって、伝えてシンと一緒の時間が過ごせればそれでよかったのに……
だけど不安定な心はそれを許してくれない。
「シンはちゃんと私の誕生日覚えててくれたのに、私は自分勝手にシンがデートに誘ってくれないって怒ってた!」
「………」
「澪だってちゃんとシンは覚えてるって言ってくれたのに、澪の言うこと信じてなかった!」
「………」
「シンの事も澪の事も信じられなくて、みんなに勝手に嫉妬して………こんな最低な女別れちゃえばいいんだよっ!」
後戻りの出来ない言葉だった。言ってから後悔したけど、もういいや。
あとはシンから冷たくつき離されて、私とシンの関係は終わり。
これでいいんだ……
私は俯き流れる涙を拭いながらシンの言葉を待つけど、シンは黙ったまま何も喋らない。
顔をあげてシンを見上げた瞬間――優しく抱きしめらた。
「律、ごめん……」
シンが優しく私の耳元でそう囁く。
だけど、その言葉に私は強く反発する。
「ッ!なんで……なんでシンが謝るんだよ!どう考えたって私が悪いのに!」
抱きしめられた腕の中から抜け出そうとするけど、シンがそれを許さない。
さっきよりも強く、だけど優しく抱きしめるシンに私は抵抗するのを諦めた。
「そのネックレス前行った店に売ってなくてさ、一週間くらいずっと探し回ってた」
「じゃあデートに誘ってくれなかったのは、これを?」
「ああ、律にどうしてもプレゼントしたいって思ったんだ……でも一番大事な律を悲しませたら意味が無いんだ……だから、ごめん」
「……なんでシンはそんなに優しくするんだよ。 私いっぱい酷いこと言ったのに」
「大事な彼女に優しくするのは当たり前の事だろ?」
シンは言い淀むこと無くそう告げると、腕を解き私を真剣な目で見つめる。
「律はさっきみんなに比べたら可愛くないって言ったけど、俺は律の事、みんなに負けないくらい可愛いと思ってる」
その言葉ともに私のカチューシャが取り外され、纏められていた髪が下りる。
「明るくて元気で、みんなの事を良く見てて、男優りな所はあるけど本当は凄く女の子な性格してる……俺、そんな律が大好きだ!」
頬を赤く染めながらシンはそう言うと、下りた前髪に隠された私の額に優しくキスをした。
なんでそんなこと言うんだよ、また泣いちゃうじゃんか……
私は三度目の涙を隠すためにシンの胸へと額を押し付け、震える声で言葉を紡ぐ。
「今の言葉…本当?」
「ああ、本当だよ」
「本当に本当?」
「本当に本当だよ……そんなに信用ないのか俺?」
「ううん、そんなこと無い。 シンありがとう……」
シンの腕が再び私を抱きしめる―――今度は拒否なんかしない、私もシンを抱きしめた。
私は涙が止まったのを確認するとシンの腕から離れ、シンを見つめた。
少し気不味いけど、ちゃんと言わなきゃダメだ。
「あ、あのさ、さっきはプレゼントの事、こんなのとか色々酷い事言ってゴメン!」
シンは一瞬だけ呆けた顔をすると小さく笑いだした。
「ははは、もういいよ俺だって律を傷つけてたんだからさ」
「だけどさ、どう考えたって私が一方的に怒ってて収まりが悪いっていうか……」
「そんなに気にしなくて良いのに………そうだな」
シンは手に持ったカチャーシャを見てそう呟く。
うぅ、なんかイヤな予感が。
「なぁ律今日のお昼ごろって、予定空いてるか?」
「ん、空いてるけど?」
「じゃあデートしないか? ただし律は今日カチューシャ着けるの禁止。これでお互い様って事にしよう」
「はぁ? な、なんだよソレ!」
「たまには髪を下ろした律と一緒にデートしたいってだけさ、そんなに悪い条件じゃないだろ?」
「っ~~分かったよ!」
シンの奴なんて条件付けるんだっ!うぅ~明日の事考えただけで恥ずかしくなってくる!
……そりゃデートは嬉しいけどさ。
「……律、言い忘れた事があるんだけど」
「なんだよ?これ以上恥ずかしい条件は聞いてやらないんだからな!」
「そんなのじゃない」
これ以上の恥ずかしい条件を追加されるのを避けようとして、少し大きな声を出したけど茶化す雰囲気じゃなさそうだ。
真剣な目で見つめるシンに応えるために、私も見つめ返す。
「律が別れたいって言っても別れる気は無い、絶対に離したりなんかしないからなッ!」
それはさっき私が自暴自棄になって言ってしまった言葉への答えだった。
シンはそれだけを私に告げるとすぐに背を向けて顔を隠した。きっと顔が真っ赤になってるに違い無い。
だって、私も顔が真っ赤なんだから―――
私も顔の火照りを冷ます為にシンに背を向け夜景へと目を移す。
街が作り出す光のアートを見つめながら、私は今日一日を振り返る――日をまたいでるけど細かい事は気にしない。
シンがデートに誘ってくれないのに怒って、シンに会えないのが寂しくて、シンに釣り合わない自分に泣いて。
それなのに、いざ会ってみれば素直になれなくて、プレゼント貰って怒って泣き出すし。
なんかもう、怒って泣いてばっかの一日だったな……ははっ、こんな滅茶苦茶な誕生日初めてだ。
だけど、そんな悲しい気持ちを消す、暖かい気持ちがちゃんと私の中にある。
シンが会いに来てくれたのが嬉しくて、シンに抱きしめらて心が安らいで、シンが好きだって言ってくれて幸せすら感じて……
悪いことばかりの誕生日じゃないよな……違う、色々あったけど今まであった、どの誕生日よりも嬉しくて素敵だって感じてる。
―――だから
「シン……」
私は夜景を見るのをやめて、背中を向けたままのシンへと声を掛ける。
シンが私へと顔を向けたのを確認して、小さく深呼吸。
―――だから恥ずかしくても、ちゃんと伝えよう素敵だって思える誕生日にしてくれた、シンに私の気持ちを……
「シン、大好き……!」
2
シン「なんで俺がこれを着てるんだよ。 こーゆーのはみんなが着るべきだろ!」
律「いやー」
唯「だって」
紬「私達は一度着てるから」
梓「それにしても恐ろしいまでに似合ってますね……メイド服」
澪「本当だよな。 まったく違和感がない……」
シン「そんなこと言われても全然嬉しくない! 足がスースーして落ち着かないし…」
唯「嬉しくないなんて言っちゃダメだよシン君!」
律「そうだぞ! 女装なのにちょっとドキドキしてる私に謝れ!」
シン「なんで俺が謝んきゃいけないんだよ!」
紬「シン君って肌が白くて目が赤いし、それがドキドキさせるのかしら?」
澪「うん、分かるかも。 シンの見た目ってちょっと現実離れしてる所あるし」
梓「……(お二人の見た目も十分現実離れしてると思うんですけどね)」
律「結構前から思ってたんだけどさ、澪、梓、ちょいこっち来て。 シンはこっちに」
シン澪梓『………?』
律「やっぱそうだな、唯ちょっと手伝ってくれ」
唯「なになに、どうしたのりっちゃん?」
律「ああ、実はさ……ゴニョゴニョ」
唯「ほうほう……なるほど…いいね!」キラーン
律「だろう!」キラーン
澪梓「……(なんかイヤな予感が)」
律「はいは~い、澪しゃんこっちに来ましょうね~」
澪「は、離せよ律!なっ、服を脱がそうとするな!」
唯「あずにゃんもこっちだよ~」
梓「やめて下さい唯先輩! にゃっ!どこ触ってるんですかぁ!」
シン「何をするつもりなんだ律達は……ん、ムギ?」
紬「私、シン君が淹れた紅茶が飲みたいな」ぎゅっ
シン「えぇ~ちょっとこの格好で淹れるのは…」
紬「その格好だからこそなの!」
シン「まったく……分かりましたよムギお嬢さま」
紬「えへへ、ありがとうシン君」
律「おっまたせ~! さぁ、澪はシンの隣に並んで」
唯「あずにゃんは澪ちゃんの隣ね!」
紬「こ、これは!」
シン澪梓『…………はぁ』
律「じゃ~ん!メイド服装備の黒髪三姉妹の完成だ!!」
唯「やったねりっちゃん!!」
紬「凄い、本当に姉妹に見えるわ!」
律「いや~前から似てると思ってたんだよな~ 三人ともツリ目気味で黒髪だしさ!」
澪「そんな事で無理やり着替えさせるな!」
梓「そうです!あんな強引になんて酷いです!」
唯「いい声で啼いてたよあずにゃん!」
梓「変な言い方しないで下さい、唯先輩!」
シン「なぁ……もう着替えたいんだけど俺……」
紬「ダメよシン君、まだ写真撮ってないもの!」
シン「マジで勘弁してくださいムギさん……」
澪律唯梓『……(女装写真ちょっと欲しいかも)』
梓「…えっと、年齢的にお二人が年上ですから、呼び方はやっぱりアスカお姉ちゃんと澪お姉ちゃんですかね?……///」
シン澪『……っ!』
澪「ふ、普段お姉ちゃんなんて呼ばれてないから、少し恥ずかしいな……///」
シン「そうだな、なんか嬉しいような恥ずかしいような変な感じだ……///」←本当はお兄ちゃんと呼んでもらいたい
律「んふふふ~ 何だかんだで三人とも楽しんでるじゃん」
唯「だよね~ あずにゃんも嬉しそうな顔してるもん」
紬「中睦まじい三姉妹ね素敵!」
シン「っ 澪!梓!律達は置いていって、仲のいい俺たち三人だけで出掛けようか!」
紬「えっ?!」
澪「ああ、それ良いな! 仲のいい私達だけの方がいいもんなっ!」
律「ちょっ!?」
梓「それなら映画見に行きませんか? 私、見たいのがあるんです!」
唯「なっ?!」
シン「それじゃあ、映画に決定だな。 着替えたら行こうか」
澪「ああ、わかった!」
梓「すぐに準備します!」
律「ま、待てよ今日はみんなで一緒に過ごす約束だろ!」
唯「澪ちゃんとあずにゃんだけずるいよ!」
紬「ふざけすぎたのは謝るから 私達も連れていって!」
梓「三人はああ言ってますけど」
澪「どうするんだシン?」
シン「……ちゃんと反省できた人は着いて来てもいい」
律唯紬『ごめんなさい!』
澪梓『反応はやいなぁ……』
シン「ふふふ、それじゃあみんな一緒にでかけようか!」
3
シン「新年!」
澪律唯紬梓『明けましておめでとうございます!!』
シン「みんな晴れ着姿良く似合ってるよ」
澪「あ、ありがとう。 シンにそう言ってもらえるなら着て来たかいがあるよ///」
梓「私、晴れ着って着た事なかったんですけど、アスカさんにそう言ってもらえると嬉しいです!」
律「へへっさんきゅ!シン」
唯「ありがとうシン君!」
紬「ふふっ、ありがとう。シン君も晴れ着似合ってるわ」
シン「そ、そうかな? 服に着せられてるって感じで似合わないと思ったんだけど…」
紬「ううん、そんな事ない。とっても似合ってる」
シン「……ありがとうムギ///」
梓「……(むむっムギ先輩が新年早々アスカさんの好感度アップをしてますね)」
澪「律が晴れ着を着て来るなんて珍しいな、どういう風の吹き回しなんだ?」ニヤニヤ
律「そ、それは……みんなが着るって言ってたし、一人だけ着ないって言うのは……」
澪「へぇ~それだけ……なんだ?」ニヤニヤ
律「……わ、私もシンに褒めてほしかったんだ! いぢめるなよぉ///」
澪「ふふっ、一年のときに私だけ晴れ着を着させたお返しだ♪」
唯「りっちゃん、顔赤くしててかわいいね!」
律「ゆ、唯! 恥ずかしいからやめろって!」
梓「え~かわいいですか? 私にはちょっと……」
律「中野ぉっ!!」
梓「きゃっ~~冗談ですよ!」キャッキャッ
シン「ほらほら二人ともそこまでだ」
律「むぅ~っ! だって梓が……」
シン「ほら、いい子だから」ナデナデ
律「……こ、子供扱いするなよぉ///」
シン「ふふっ、分かったよ。さてと、みんなは今年の目標ってなにか考えてるか?」
律「う~ん、これと言ったものは無いな……」
梓「そうですね。私も特には……」
唯「ふっふっふ、新年を迎えるのにそれじゃあダメだよ!りっちゃん!あずにゃん!」
律「へぇ~じゃあ唯は目標が決まってるのか?」
唯「うん決まってるよ!」
梓「珍しいですね、唯先輩が新年早々目標を立てて前向きだなんて」
澪「どんな目標なんだ唯?」
紬「教えて唯ちゃん!」
唯「それじゃあ言うよ、私の今年の目標はそれは……下克上!!」フンス!
シン澪律紬梓『…………え?』
唯「…………え? 私、変なこと言ったかな?」
律「いや、下克上って……何に立ち向かうつもりなんだよ?」
梓「唯先輩……気持ちは分かりますけど、流石に今からじゃ無理だと思いますよ?」チラッ
澪「……なんの事なのか分かるのか梓?」
紬「……私もよく分からないんだけど?」
唯「む、胸の話しじゃないよあずにゃん!!」
梓「えっ!? 違うんですか?」
シン「え、えっと結局なんの話しをしてるんだ唯は?」
唯「えっとね澪ちゃんとシン君の事だよ」
澪「私とシン? それと下克上がなんの関係があるんだ?」
唯「だって澪ちゃんってシン君に一番愛されてるもん、それって正妻っていうんでしょ?」
シン澪『なっ!正妻ってそんな……///』
唯「むぅ~っ綺麗にハモってる……とりあえず私の目標は澪ちゃんから正妻の座を奪うことなのです!」フンス!
律「なるほど、だから下克上なのか……よし! 私も今年の目標下克上にしよっと」
澪「えぇっ!」
梓「それいいですね、私も今年の目標は下克上にします」
紬「澪ちゃんに負けっぱなしって言うのは悔しいもんね、私も下克上にしよっと」
澪「うぅっ梓とムギまで……じゃ、じゃあ、私は絶対にシンの一番は譲らないのを目標にする!」
シン「……(なんか凄く恥ずかしくなってきた///)」
澪「シンは今年の目標って決めてるの?」
シン「ああ、決めてる……その今年だけってわけじゃないんだけど」
律「今年だけじゃない?」
唯「なんか意味深だね」
梓「ですね、気になります」
紬「どんな目標なの?」
シン「……みんなとの絆を失わないこと、ずっと守り続けること……それが俺の目標なんだ」
澪律唯紬梓『……シン(君、アスカさん)!!』
シン「う、うわぁっ! みんな急に抱きついたら危ないって!」
澪「ごめん、でもシンの彼女でよかったって思ったら……」
律「嬉しくなってついさ……」
梓「我慢できなくて……」
唯「シン君は私達みんなの自慢の彼氏さんだよ!」
紬「ずっとそばに居させてね、シン君♪」
シン「みんな…………ありがとう。 そ、そろそろ初詣に行こう!///」
澪「ま、待ってよシン!」
律「歩くの速いって!」
梓「恥ずかしくなって逃げましたね、アスカさん」
唯「赤くなってるシン君かわいいね~」
紬「ふふっ、そうだね。 さあ私達も置いてかれないように行きましょう?」
唯「そうだね、あずにゃん急ぐよ!」
梓「はい!」
3
澪「せ、正妻と聞いてっ……///」ガタッ
シン「いや、立たなくて良いから!」
澪「うぅっ……だって、ちゃんと主張しとかないと」チラッ
律唯紬『正妻と聞いてっ!!』ガタガタッ
シン「律たちまでそんな事を……」
律「なんだよ~もっと喜べよ、私達みたいな美少女から取り合いになってるんだぞ?」
シン「いや、もちろん嬉しいとは思ってるけど、でもみんなに喧嘩とかして欲しくないし……」
唯「でも、喧嘩になるのはシン君がいけないんだよ」フンス!
シン「えっ? 俺がいけないのか?」
唯「そうだよ、シン君の愛が澪ちゃんに偏ってるのが問題なのです!」
紬「私も、もっとシン君と一緒に居たいなぁ~なんて思ってたり……」チラリ
律「あーあ、私も、もっとシンとデートしたいな~」チラリ
シン「うぅっ、それは……ゴメンナサイ」
澪「私はずっとこのままで良いんだけどな……」ボソリ
律「みぃお~聞こえてるぞ!」
唯「澪ちゃんばっかりずるい~~!」
紬「シン君を独り占めするのは良くないと思うの、澪ちゃん!」
澪「ひ、独り占めはしてないだろ、デートはちゃんとローテンションしてるし!」
シン「あ、あの、みんなそこら辺で」
梓「大変そうですね、アスカさん」
シン「梓……いや、大変だなんて思わないさ、みんなと一緒に居られるんだから」
梓「そう言うわりに、澪先輩に愛が偏ってませんか?」
シン「……本当、ゴメンナサイ」
梓「ふふっ冗談です、澪先輩に勝つのは簡単じゃないですからね仕方ありません」
シン「だから、みんなの所には行かないのか?」
梓「はい」
シン「そっか……」
梓「……」
シン「……」
梓「も、もうっ! そんな悲しそうな顔しないでください、本当は澪先輩に嫉妬しちゃってるんですから!」
シン「梓っ」ギュッ
梓「にゃあっ! 急に抱きしめないでくださいよっ///」
シン「ごめん、嬉しくなったらつい……」
梓「……アスカさんはズルイです」ギュッ
唯「あーっ! あずにゃんがシン君に抱きついてる!」
澪「いつのまに……わ、私も」ギュッ
律「抜け駆けはずるいぞ、梓!」ギュッ
紬「私も~」ギュッ
唯「しまった出遅れた!」ギュッ
シン「5人一斉に抱きつかれたら危ないんだって!」
梓「ふふっ頑張って耐えてください、不満がありますか?」
シン「……ない」
梓「じゃあ問題無しですね……しばらくこのままで居させて下さい」
4
梓「はぁ……」
純「どうしたの? ため息なんかついて」
憂「うん、なんか元気がないよ。 大丈夫?」
梓「ごめん、来週まで遠いなって思ったらつい……」
純「あーはいはい、ご馳走さま!」
憂「ふふっ、そういう事か~」
菫「来週なにかあるんですか? 梓先輩」
直「先輩二人は分かってるみたいですね。 私も気になります」
梓「え、えっと来週、彼氏とデートなんだ///」
菫「凄いです! 彼氏がいるなんて!」
直「だからですか鈴木先輩がご馳走さまって言ったのは……で、どんな方なんですか?」
梓「……ふ、ふつうの彼氏だよ?」
直「なんで中野先輩が疑問形で答えるんです?」
憂「梓ちゃん、流石にシンさんをふつうの彼氏って言うのは無理があると思うよ……」
純「そうだよ! 梓には勿体ないくらいカッコイイ彼氏じゃん!」
梓「言っちゃダメだってば憂! っていうか勿体ないって言うな純!!」
直「平沢先輩が普通じゃないって言う程の彼氏ですか……凄いですね」
憂「うん、凄いんだよ! 運動神経抜群だし、成績も優秀で今年の春からD大学に通ってるんだよ」
直「運動が出来て名門大学に入学ですか、本当に凄い方なんですね」
純「料理も得意だよね、憂に負けないくらい上手だし。 本当なんで梓があんなカッコイイ人と付き合ってるのさ~」
梓「しつこいよ純! それに私だけって訳じゃないし……」
菫「私だけじゃないって……まさか浮気されてるんですか?!」
直「もしそうなら早く別れる事をお勧めします、中野先輩に失礼です!」
梓「ち、違うの! アスカさんはそんな人じゃなくて……」
憂「梓ちゃん、ちゃんと教えてあげたほうが良いと思うよ」
純「私も憂に賛成、絶対いつかバレると思う」
梓「うぅ~分かったよ……あのね実は先代の軽音部の先輩達と私を含めた5人と付き合ってるの」
直「なっ 5人ですかっ?!」
菫「先代って……それじゃあお姉ちゃんも?!」
梓「うんムギ先輩も一緒。 でも、それは私達5人が望んだ事でアスカさんはちゃんと一人だけを選ぼうとしてたんだ」
直「それが何で5人と付き合う事になったんです?」
菫「何か理由があったんですか?」
梓「情けない話ではあるんだけど、みんな誰か一人が選ばれたら軽音部の絆が壊れちゃうんじゃないかって気持ちがあって……」
直「それで5人とですか…」
菫「でも、5人で1人の男の人と付き合うなんて大変じゃないですか?」
梓「たまに言い合いになったりして大変だけど……それ以上に先輩達と一緒にアスカさんと居られるのが嬉しいから////」
菫「梓先輩は先輩達の事とアスカさんって方が本当に好きなんですね」ニコニコ
梓「……うん////」
直「……さっきの鈴木先輩の気持ちがよく分かります。 お腹いっぱいでご馳走様って感じです」
純「おおっ! さすが直だね。 私の気持ちを分かってくれるなんて」
憂「ふふっ、二人とも梓ちゃんに悪いよ~」
梓「わ、私、そんなつもりじゃ!」
純「本人はそんなつもり無くても、他人からみれば立派な惚気話なんです~」ニヤニヤ
梓「私は菫の質問に答えただけだもん!」
憂「まぁまぁ、梓ちゃんも落ちつこうよ」
梓「うぅ~」
直「そう言えば中野先輩、相手の方の写真ってないんですか? 見てみたいです」
菫「あっ! 私も気になります、お姉ちゃんがどんな人を好きになったのか見てみたいです」
梓「写真?……な、ないよ?」
直「なんでまた疑問形なんです?」
純「こら梓、後輩にウソをついちゃダメでしょうが。 こんな流れになったのも自分が悪いんだし見せてあげたら?」
梓「だって、見せたらライバルが増える気がするんだもん……」
直「流石に写真だけで好きになるなんてあり得ません」
菫「私もお姉ちゃんの相手を好きになるっていうのはちょっと……」
憂「ここまで来たらスミーレちゃん達に見せてあげようよ、梓ちゃん」
梓「うぅ~みんなで言われたら見せるしかないじゃん……はい」
携帯を取り出してシンの画像を見せる梓
菫・直「……あっ! カッコイイ////」
5
夜 N女大学寮 晶の部屋
晶「なぁそう言えば澪は彼氏っているのか?」
澪「えっ! 私?」
菖「それ私も聞きたいな~」
幸「うん、私も気になる」
澪(シンがいるけど……言えばきっとみんなにも話が回るはず)チラッ
律紬唯「……」コクコク
晶「どうしたんだ? 急に黙って」
澪「ごめん、ちょっと待ってて。 律、ムギ、唯集まってくれ!」
律紬唯『はーい』
晶菫幸『??』
澪(どうしようシンが彼氏だって、言ってもいいのかな?)
紬(五人で付き合ってるとは少し言いにくいもんね…)
律(別に言っても良くないか? 私達には私達の付き合い方があるんだしさ)
唯(私もりっちゃんに賛成、何より彼氏がいないなんて言ったらシン君に失礼だよ!)
澪(唯……)
紬(唯ちゃん……)
澪(確かに唯の言う通りだ、いないなんて言ったらシンに悪いもんな。でも騒がれるのも嫌だし肝心な部分はごまかすって事でいいかな?)
律(まぁ無駄に騒がれるのは嬉しくないしな、それでいいんじゃないか?)
紬(私もそれに賛成!)
唯(それじゃあ決まりだね!)
晶「ん、戻ってきたな……なにを話してたんだ?」
澪「えっと…その、ちょっと」
菖「まぁ、それはいいじゃん晶。それで澪ちゃんは彼氏いるの?」
澪「うん……いるよ///」
晶菖幸『おおっ!』
晶「やっぱり、澪なら彼氏いて当然だよな~」
幸「どんな彼氏なの?」
菖「性格は? 顔はイケメン?」
澪「性格は強気な所はあるけど凄く優しいよ、 顔も……凄くかっこいい////」
幸「ふふっ、澪顔が赤くなってるよ」
菖「お惚気ですな~澪ちゃん」
澪「あ、菖が聞いてきたんじゃないかぁ!」
晶「なぁ律、澪は凄くかっこいいって言ってるけど、第三者的に見てどうなんだ?」
律「ん、本当にかっこいいぞ。 二人並ぶと凄く絵になるし……悔しいくらいに」
澪「律……私は律たちもお似合いだと思うけどな、活発な所とか凄く息が合ってるし」
律「そ、そうかな……」
澪「うん、たまに悔しくなるくらいだよ」
律「澪……ありがとう」
晶「へぇ~律にも彼氏がいるんだな」
律「ああ、私にもちゃ~んといるぞ!」
菖「りっちゃんも彼氏がいて当然って感じだよね、親しみやすいし共学なら男の子に人気ありそう」
幸「クラスの人気者って感じだね」
唯「実際、りっちゃんは高校の時はクラスのムードメーカーだったもんね!」
紬「軽音部もりっちゃんが引っ張ってくれる事が多かったね」
律「ふっふっふ、みんな今になって私の偉大さが分かるようになってきたか!」
澪「……軽音部の練習を率先してさぼってたのも律だったよな」
律「そ、それを言うなよ澪~!」
菖「あははっりっちゃんらしいね! そう言えばムギちゃんは彼氏っているの?」
紬「うん、私もいるよ~」
菖「ムギちゃんにもいるんだ。 やっぱり相手もお金持ちなの?」
紬「ごめんなさい家の事もあって、あんまり詳しい事は言えないけどお金持ちなのは間違いないわ」
菖「おおっ! セレブ同士の秘密の恋だったりするの?!」
幸「家の事情で言えないなんて、改めてお嬢様なの実感するね」
晶「そこまでにしとけよ二人とも、深く聞いたらムギも困るだろうし。 ……これで聞いてないのは唯だけか」チラッ
唯「……フンス!」
晶「あー唯は…まぁ、いいや」
唯「えぇ! なんで私には聞いてくれないの?!」
晶「なんでって……どうせお前はいないだろ?」
唯「私にもちゃんといるよぉ!」
晶「あぁ、あれだろ最近はやりのエア友達ならぬ、エア恋人だろ?」
唯「ちょっ酷い! そんなのじゃないもん、ちゃんといるもん! 晶ちゃんが好きな先輩より、ずっとずぅ~っとカッコいいんだからね!」
晶「なッ!……フ、フン! じゃあ相手の写真かなにか見せてみろよ!」
唯「そ、それは…その…」
晶「フフン! やっぱりいないんじゃないか」
唯「むぅ~っ いいもんじゃあ、見せてあげる!」
携帯を取り出す唯
澪「だ、駄目だって唯!」
唯「だって澪ちゃん! シン君の事を晶ちゃんがエア彼氏って……」
律「気持ちは分かるけど、そこまでにしとけって」
紬「落ち着こう唯ちゃん、 ね?」
唯「りっちゃん、ムギちゃん……うぅ、分かったよ~」
菖「晶もそこまでにしときなよ」
晶「だって先輩のことを……」
幸「最初に文句つけだしたのは晶でしょ?」
晶「……ったく、分かったよ!」
澪「ごめん、なんか変な空気にしちゃって……」
菖「ううん、こっちこそ晶のせいで空気悪くしてごめんね? ……今日はもう遅いしお開きにしよっか?」
律「その方が良さそうだな。 戻ろうぜみんな」
澪「そうだな、それじゃあおやすみ、晶、菖、幸」
紬「おやすみなさい、晶ちゃん、菖ちゃん、さっちゃん」
律「おやすみなー三人とも……ほら、唯も挨拶しろよ」
唯「うん、おやすみ……菖ちゃん、幸ちゃん……晶ちゃん」
幸「四人ともおやすみなさい」
菖「うん、おやすみー ほら、晶もちゃんと挨拶しなよ」
晶「おやすみ、澪、律、ムギ……唯」
澪律紬菖幸『……ふふっ』
晶「な、なに笑ってるんだよぉ!!////」
翌日 夜 N女大学寮近くの公園
幸「バイトで遅くなっちゃった、早く帰ってシャワー浴びたいな」
幸「この公園寮までの近道にはいいんだけど、カップルが多いのが……」
幸「……あそこに居るのは澪? 男の人と手繋いで歩いてる……昨日言ってた彼氏かな?」
幸「ここからじゃ良く見えない、もうちょっと近づかなきゃ」トコトコ
幸(ここなら彼氏の顔も見えそう……わ~本当に凄くカッコいい!!)
幸(中性的な顔立ちの上に、女の子みたいに肌白いし。 これなら思わず惚気ちゃうのも分かるかも)
幸(あぁっ! 二人の顔が近い! も、もしかして……き、キス?!)
幸(見ちゃだめなのに見ちゃう! わ、わ、わ、した! 二人とも顔真っ赤になってる////)
幸(彼氏が赤くなってる澪を抱き寄せて耳元で何か囁いてる……澪、凄く幸せそうな顔してる)
幸(いいな、私も彼氏が欲しくなってきた……あっ! こっちに来る隠れなきゃ!)
幸(…………行ったみたい)
幸「はぁ~っ 人がキスしてるのを直に見るのなんて初めて……」
幸「顔が熱い……火照りが冷めるまで遠回りして帰ろう////」
その翌日 夜 N女大学寮近くの公園
菖「えへへっ、新作の服買ってたら遅くなっちゃった」
菖「ん……あそこに居るのはりっちゃんだよね?……男の人と腕組んで歩いてるって事はこの前言ってた彼氏かな?」
菖「どんな彼氏か気になるな~ もっと近づいてみよっと」トコトコ
菖(ここからならばっちし見えそう……それじゃありっちゃんの彼氏さんのお顔拝見!)
菖(……うっそ! 凄いイケメンじゃん!!)
菖(いいな~私もあんなカッコイイ彼氏が欲しいな~)
菖(わわっ! 彼氏さんがりっちゃんのカチューシャとっておでこにチューした!!)
菖(ここからでも分かるくらい、甘い雰囲気が流れてる……)
菖(ま、待って! 顔が近いよ二人とも! こ、ここでしちゃうの?!)
菖(あ、あ、あ、したぁ!! うわ~りっちゃん顔赤くして、完全に乙女モードだよ)
菖(あんな、しおらしいりっちゃん初めて見た……ってこっちに来た隠れなきゃ!)
菖(…………行ったみたいだね)
菖「はぁ~っ なんか凄いもの見ちゃったな////」
菖「にしてもあんなカッコイイ彼氏がいたら、りっちゃんなら自慢しそうなのに全然してなかったな……何でだろう?」
菖「って門限まであと少ししかないじゃん、急いで帰らなきゃ!」
更にその翌(ry
晶「んっ~! 今日は良く練習したなぁ」
菖「そうだね、なんかいつもより集中出来た気がする」
幸「久しぶりに遅くまで練習出来たしね。 遅くまでで思いだしたけど、この前澪が彼氏とデートしてるの見たよ」
菖「あっ! それなら私、昨日りっちゃんがデートしてるの見たよ」
晶「ふーん、二人ともやる事はやってるんだな。 幸から見ても澪の彼氏はカッコ良かったか?」
幸「うん、凄かったよ。 中性的な顔立ちで肌も白くて、二人とも黒髪で顔立ち綺麗だから絵になるって言ってたのが凄く分かるよ」
菖(えっ……それって!)
晶「幸がそこまで言うなら本当なんだろうな。 いいな、私も先輩と……」
幸「ふふっ、私も見てたら羨ましくなったよ」
菖「幸、あのさちょっと聞きたい事があるんだけど」
幸「どうしたの?」
菖「澪ちゃんの彼氏の………」
晶(ん……あそこに居るのは唯……だよな?)
晶(誰かと一緒に歩いてるな……って男だ! なんだよ本当に彼氏が居たのかよ)
晶(フン! じゃあ、どれだけカッコイイのか見せて貰おうじゃんか!)トコトコ
晶(よし、ここからなら相手の顔見えるな………うっ! 本当に凄くカッコイイな……)
晶(で、でも先輩の方が体格しっかりしてるし、そこは先輩の勝ちだな!)
晶(にしても……唯の奴、さっきからくっ付いたり離れたり、ホント子供みたいだな……)
晶(ん、頭撫でられたら大人しくなったな唯……)
晶(なんか急に雰囲気が甘くなった気が……ちょっ! 二人とも顔近づけすぎだろ!)
晶(待て待て待て! うわ……キスしてる!)
晶(ん、唯が彼氏の首に腕を回して……あぁっ! そんな深いやつまで!!)
晶(どれだけするつもりだよ! っていうか唯から攻めてるみたいだな)
晶(も、もうダメだ、恥ずかしくて見てられない離れよう////)トコトコ
晶「うぅ~っ 凄いものを見てしまった……まさか唯からあんな積極的に行くなんて////」
菖「あれ、どこ行ってたの? っていうか顔真っ赤だよ晶」
晶「あ~いや、今、唯が彼氏とデートしてるのを見つけて、ちょっと……」
幸「それって……」
菖「うん、間違いないよ!」
晶「ん? なんかあったのか?」
翌日 夜 N女大学寮 晶の部屋
律「澪に晶の部屋集まれって言われたから、来たんだけど…」
紬「私も澪ちゃんに呼ばれて」
唯「ねぇねぇ澪ちゃん、晶ちゃんだけじゃなくて菖ちゃん達まで集まってるけど何するの?」
澪「私は菖にみんなを集めてほしいって言われたから、声をかけたんだけど」チラッ
菖「えっと、そのね……どうしよう幸」
幸「どうしようって、ちゃんと伝えなきゃだめだよ」
紬「そんなに言いにくい事なの?」
菖「うん、ちょっと……」
晶「それなら私が言う」
菖「晶……ごめんお願い!」
唯(な、なんか重たい雰囲気だね澪ちゃん)
澪(う、うん)
律(緊張してきた……)
紬(あっ! みんな晶ちゃんが喋るよ!)
晶「はっきり言うぞ! 澪、唯、律お前たち三人は浮気されてる!!」
澪唯律紬『えっ?』
幸「あのね、この前澪が彼氏と一緒に居るところを公園で見かけたんだけど…」
菖「その彼氏さんの特徴が、私が見たりっちゃんの彼氏さんと同じだったの…」
晶「更に昨日のバンド練習帰りに私が見た、唯の彼氏の特徴とも同じだったんだよ。」
澪唯律紬『………』
菖「あの……その、ショックだと思うけど、確認して早く別れた方がいいよ」
晶「いくらカッコ良くったって、三股かけるような奴じゃ意味ないだろ?」
律「……なんだその事か、思った以上にバレるの早かったな~」
晶菖幸『??』
唯「重たい雰囲気だから、どんな事言われるのかドキドキしちゃったよ~」
澪「ふふっ私も、でも、やっぱり三日も続けて同じ公園を使うのは無理があったな」
紬「しょうがないよ、あの公園雰囲気が良いから利用したくなっちゃうし」
律「だよな~ しかも寮への帰り道にあるから使うなって方が無理あるって」
幸「な、なんか想像してた流れと全然違う……」
菖「うん……修羅場になっちゃうのかと思ってたんだけど…」
晶「お、おい! バレるってどういう事だよ! 大体三股されてたんじゃないのかよ?!」
澪「落ち着いて晶、ちゃんと一から説明するから……」
晶菖幸『5人で一緒に付き合ってる?!』
最終更新:2014年02月02日 12:54