- 十年前 海鳴市 はやての家 リインフォースの部屋前(シンが消えてから79時間35分後)
俺は少し緊張しながら、リインフォースの部屋をノックした。
他のメンバーはだいたいどんな人間かわかってるけど、彼女とはほとんど初対面だからな。
シン 「俺だ、リインフォース。少し話があるんだが・・・」
リインⅠ「かまわん、入っていいぞ」
ドアを開けると、リインフォースは電気もつけずに窓を開け外を眺めていた。
シン 「なにやってんだ?風邪は・・・引くわけないか」
リインⅠ「ん、すこしな。月を眺めていた。」
今夜は満月だ。この部屋からならよく見えるだろう。
俺は無言でリインフォースの隣に並んだ。今日は不思議と虫の音がよく響く。
シン 「はやてが心配してたぞ。あんたがいきなり消えるんじゃないかって」
リインⅠ「そうか。本当はお前とあった日に消えるつもりだったのだがな。見ての通り、死に損なってしまった」
リインフォースは悲しげに微笑んでいる。
その表情があのときのはやてと重なって、俺は思わず目をそらした。
シン 「はやてから話は聴いたよ。何もそんなに急がなくてもいいんじゃないか。この前だって、皆助かったんだし」
リインⅠ「次に防衛プログラムが再生したとき、おそらく主はやての体は持たないだろう。この前のような奇跡はそう何度も起こらない。」
シン 「……防衛プログラム再生までの時間は?」
リインⅠ「遅くても三ヶ月、早ければ三日後に再生する」
俺は絶句した。まさかそこまで早いなんて・・・。
リインⅠ「シン、私は明日消えるつもりだ。」
シン 「リインフォース!」
リインⅠ「これまで私は幾人もの人々の人生をゆがめてきた。これはその罰なのだろうな」
シン 「・・・・思い出を作る時間ぐらい・・・・・あってもいいはずだ」
リインⅠ「思い出があれば・・・・別れがよけいに辛くなる」
俺はリインフォースの言葉を否定できなかった。失った者なら誰でもわかることだ。
大切な人が思い出になったとき、どれほど辛いか。 楽しかったはずの思い出にどれほど苦しめられるか。
だけど、だからって思い出にも残らないなんてさびしすぎるだろ。
リインⅠ「主はやては強い。今は悲しくても、きっといつか乗り越えていくだろう。今夜こうして満月が見えたのも、お前のおかげだ。ありがと
う」
俺はポケットの中にあるマユの携帯を握り締める。
わかってるのか!その人の死を乗り越えるってことは、その人を忘れていくってことなんだぞ!
声も、顔も、人格も、どこに行ったかも、何をしたのかも、その笑顔すらも・・・。
そんなことは俺がさせない!お前を、リインフォースを、はやての思い出になんてさせてたまるか!
シン 「・・・リインフォース、明日一日待ってくれないか?」
リインⅠ「・・・なぜだ?」
シン 「明日、闇の書の修正プログラムが見つかるから」
顔を見なくてもリインフォースが驚いていることはわかったが、俺は無視して言葉を続けた。
シン 「明日ユーノが、闇の書の修正プログラムを無限書庫で見つけるんだ。俺はそれを知っている」
リインⅠ「・・・なん・・・・だと。シン・アスカ、お前は一体?」
シン 「今は・・・・何もいえない。でも、これだけは信じてくれ!『あんた達は俺が守る!』」
呆然としているリインフォースを残して、俺は部屋を出た。
やることは山ほどある。まずは、クロノに連絡して、午前中に無限書庫に行かないといけない。
あとは午後からユーノを誘って、もう一度無限書庫に行けばいい。普段からあそこに言っているユーノなら、特に違和感もないはずだ。
そこであいつに修正プログラムを見つけさせれば、俺の役目も終わる。
シン「マユ、ステラ、ハイネ、レイ、俺はリインフォースを助けたい。力を貸してくれ」
これは修復プログラムの完成が早いか、それとも暴走プログラムの再生が早いかのでかい賭けだ。
もはや一国の猶予もない。俺はリビングの受話器に手をかけた。
- 十年前 海鳴市 はやての家 お風呂へ続く廊下(シンが消えてから79時間28分後)
ようやく、全て終わった。なのはに連絡先を聞けたおかげで、案外楽にクロノとユーノに約束を取り付ける事が出来た。
これも、デス子の嘘のおかげか。あまり感謝したくないけど・・・。
さあ、あとは明日がんばるとして、はやての言ってた通り今日はゆっくり休まないとな。
シン「おっと、早く風呂に入らないと・・・冬場は電気代が高いからな」
俺がおもむろに風呂の戸を開けると
シグナム「・・・・・・・」
シン 「・・・・・・・」
実に認めたくないことだが、シグナムが先に風呂に入っていた。
いや、なんか水の音がするとは思ってたんだよ。 考え事してて、気にしなかっただけで・・・。
シグナム「・・・・・シン・アスカ。なにか言い残したいことはあるか?」
シン 「・・・油断した 俺の女難は 消えてない」
シグナム「・・・辞世の句は読み終わったようだな、行くぞ!」
シン 「ちょ、紫電一閃は風呂が壊れ・・・ぎゃああああっ!!!」
吹き飛ばされながら考えていたんだが、女ばかりの家に毎日いるってことは
もしかして、終始こんなことが起こるんじゃ・・・(ドグシャ)
俺の意識が持ちこたえたのはここまでだった。
翌日、無限書庫に行ったユーノ・スクライアは闇の書の修正プログラムを発見
以降、時空管理局はリンディ提督の下、このプログラムの完成に全力を尽くすことになる。
修正プログラム完成まで あと28日
シンの日記
○月?日
俺は十年前の海鳴市に来た記念に、日記を書き始めることにした。
早速だが今朝俺が寝ていたら、いきなりヴィータが捨て身タックルをかましてきた。 完全に無防備な状況でこれはきつい!
なんでも朝飯は皆で食べるのが八神家のルールだそうだ。 あとでリインフォースに聞くと彼女は普通に起こされたらしい。
なんか、納得がいかない。
デス子の日記
同月 同日
私もマスターと一緒に日記を書き始めました。
早速ですがここでもマスターは、シャマルさんとヴィータちゃんにパルマをしていました。
シグナムさんは着替えを覗かれ、はやてちゃんに至ってはついでに一緒にお風呂に入ったそうです。
もちろん、はやてちゃん以外の皆さんからはフルボッコでした。 まだ二日目だというのに、こんなに飛ばして体はもつんでしょうか?
シンの日記
○月××日
今日は休日だったので、皆でデパートに行くことになった。
俺とリインフォースの服を買うのが主な目的のようだ。 まさかあと一ヶ月でいなくなるとは言えず、俺はしぶしぶついていった。
ちなみにザフィーラとデス子はお留守番、ヴィータはゲートボール、シグナムは道場だ。しかし、女の買い物ってとにかく長い。
はやてとシャマルはおもいっきり自分達の世界に入っていたため、俺とリインフォースは完全に置いてけぼりだった。
言っておくが、金はちゃんと俺が出したぞ。
デス子の日記
同月 同日
今日は一日中はやてちゃんの家で大人しくお留守番をしてました。
でも、お土産を楽しみにしていたのに、マスターは買って来てくれませんでした。
なので仕返しに、シグナムさんの下着をマスターの部屋に隠しておきました。
ばれたときが楽しみです♪
追伸
マスターは疲れているといいながらヴィータちゃんのお風呂に遭遇し、シグナムさんにパルマを仕掛けていました。
どうやら、マスターのらき☆すけ回路は疲れ知らずのようです。
シンの日記
○月△?日
夕飯のとき皆で恋愛ドラマを見ていると、ヴィータが唐突にチャンネルを替えたいと言い出した。
なんでも、ドラマの主人公が気に入らないらしい。
ヴィータ「だれがこんな女々しい主人公に惚れるんだよ。こいつも男ならバシッと言ってやれば良いじゃねえか」
シグナム「ふむ、たかがドラマとはいえ一理あるな。醤油をとってくれ」
リインⅠ「私もそこが気になっていた。醤油だ、受け取れ」
はやて「う~ん、私はこんな彼氏でもいいと思うんやけどな。そうや、シン兄はどう思う?」
シン 「え、そうだなぁ。この主人公の事だけど、自分の気持ちに気付いてないだけだと思うんだ。本当に好きなら、どんなことをしてでも相手
と一緒にいたいって思うだろうからな」
ザフィーラ「なるほど。では、このヒロインはどうするべきだと思う?」
シン 「相手が気付いてないんだ。気付くまでアタックし続けるしかないさ。」
はやて「そんなことしたら逆に嫌われるんやないか?」
シン 「その時は所詮その程度の関係だったってことだろ?まあ、俺も彼女が出来たことがないから、偉そうな事は言えないんだけど・・・」
今日の夕食は、恋愛話でもちきりだった。しかし、女の子って皆こういう話が好きなんだな。
マユやステラのことを思い出して、俺は少し胸が痛んだ。
デス子の日記
同月 同日
マスターは自分で自分の死亡フラグを立てたことに気付いてないようですね。
まさか、十年後はやて部隊長がああなったのは…。
深く考えるのは怖いのでやめます。
今日は、ヴィータちゃんのお着替えを覗いた後、はやてちゃんとシャマルさんにパルマして、私のお風呂に乱入してきました。
…懲りない人です。
シンの日記
○月△▼日
最近は財布の中身まで冬に近付いてきた。原因は他でもないデス子の食事代だ。
デス子の食事代はスカリエッティから支給された金で支払っていたのだが、もはや限界に近い。
八神家は大人数にもかかわらず収入が少ないので、はやて達には頼れない。
意を決した俺は、リンディ提督に臨時艦長補佐として雇ってもらうことになった。
リンディ「ちょうどよかったわ。エイミィもクロノも最近働き詰めだから、少し休ませようと思ってたの」
仕事は機動六課でやっていた雑務と変わらなかったのですぐになれることが出来た。
これからも時々手伝いに来てほしいとのことだ。ただ、リンディ提督が出してくれた『砂糖の塊みたいな緑茶』だけは勘弁してほしかった。
(なぜかこのときシャマルの顔が浮かんだ)
デス子の日記
同月 同日
今日はマスターの恐ろしさを改めて実感しました。
なんと、時空管理局の重鎮ギル・グレアム顧問官の双子の使い魔にツインパルマをかましたのです。
ロッテ「ほう、いい度胸じゃないか」
アリア「どうやら地獄を見たいようですね」
マスターは二人に引きずられていったあと、訓練施設で仮面の男にボコボコにされたそうです。
顧問官の使い魔に手を出すなんて、マスターは命が惜しくないんでしょうか?
追伸
不思議なことに、臨時艦長補佐は奇跡的に続けられることになりました。
最終更新:2008年07月03日 23:42