時間が無いので、事態が沈静化したところからお送りいたします。
ユーノ 「こほんっ、無限書庫の闇の諸関連の本を全て漁ってみたんだけど、残念ながら暴走を止める方法はわからなかったよ」
シグナム「すまない。結局お前の案に頼ることになりそうだ」
シン 「しかたないさ(最初からそれほど期待してなかったからな)」
もしも無限書庫を探したぐらいで方法が見つかったなら、未来の世界でリインフォースは死んではいなかったはずだ。
あんな身近な場所を(仕事においては)切れ者であるリンディ提督が見逃すはずは無い。シンにとっては、念のために確認しておくか、ぐらいの気構えだった。
ザフィーラ「ではシン、そろそろ具体的な方法を聞かせてもらおうか?」
シン 「ああ、用は自動防衛プログラムの再生を遅らせればいいんだろ。なら、話は簡単だ。闇の書の中に入って直接そいつを破壊すればいい」
シャマル「闇の書の中に、って・・・」
全員「「「「え、ええぇぇ~~~~~!!!!!」」」」」
シンの言い出した作戦は、なのは達の度肝を抜き、ヴォルケンリッターを驚愕させた。
自動防衛プログラムがこちら側に呼び出せないなら、自分達で闇の書の中へ乗り込もうというのだ。
一見乱暴な理論に聞こえるが、時間の無い現状ではこれが一番手っ取り早く判りやすい。
なのは「そ、そんなことできるの?」
シン 「闇の書の特性にリンカーコアを持つ生物を『収集』する機能があっただろ。あれを使って内部に入り込む」
ヴォルケンリッターはリンカーコアだけを抜き出すことで、対象を闇の書に直接『収集』することは無かったが、本来は闇の書内部に丸々取り込むことも可能である。前の戦いにおいても、戦闘中にフェイトが闇の書に取り込まれる事態が発生している。
ヴィータ「ちょっと待てよ、シン。そもそもお前にはリンカーコアがねーだろ!」
シン 「ああ、それなんだけどな。どうやら、デス子とユニゾンしたときだけ、リンカーコアが発生するらしいんだ」
これは少なからず、古代ベルカの時代から存在していたヴォルケンリッターに衝撃を与えた。
自分達の薄れかけた記憶をたどってみたが、そんな話は聞いたことが無い。それならば、デス子と名乗る摩訶不思議なユニゾンデバイスは一体なんなのか?
シャマル「そんな・・・リンカーコアがない人間が魔法を使えるようになるなんて・・・。(古代ベルカでもそんな技術はなかったはずなのに・・・それ
になぜリインフォースとの戦いのことを細部まで知っているの?彼は一体・・・?)」
シャマルはシンに悟られないように、リインフォースにそっと念話で連絡を取る。
シャマル(リインフォース、あなたは彼の素性について何か聞いてないの? )
リインⅠ(いや、話してくれた以上のことは何も・・・。私も今回の事件が終わったら、聞かせてもらおうと思っていた。だが、まだ止めておこ
う)
ザフィーラ(奴が何者かなど、今はたいした問題ではない。我々は主はやての信じた人間を信じるだけだ)
守護騎士達にはそのやり取りだけで十分だった。
シンが裏表の無い人間なのは、一緒に暮らしていた彼女達が一番よく知っている。
彼が自分から話してくれないのは、それなりの理由があるからだ。あえて言葉に出さなかったが、誰もが心の中で納得していた。
アルフ「というかデス子は本当にユニゾンデバイスだったんだ!?」
デス子「もちろんです! いったいなんだと思ってたんですか! この作戦で汚名返上です! これからは食ってばかりの駄目デバイスなんて言わせませんよ! (そして、ご褒美に翠屋のシュー・ア・ラ・クレムをおなかいっぱい・・・ぐへへっ)」
デス子は誰に言うわけでもなく自身の決意を叫びだしたかと思うと、自身の妄想に浸り始める。先程からしきりにヨダレをぬぐっているから、どうせまた食べ物関係だろう。ちなみに、駄目デバイスの自覚はあったのか、と全員が思ったのは言うまでもない。
シン 「まぁ、こいつはいろいろ規格外だからな。(元人型兵器だし、中に正体不明のロストロギアも入ってるし)」
フェイト「でも、『収集』ではいるってことは『夢の牢獄』に囚われることになるよ。シンお兄ちゃんを信じてないわけじゃないけど・・・あの場
所は・・・・」
それこそ一番の問題だった。取り込んだ生物を無力化するための『夢の牢獄』は、心の傷が深ければ深いほど取り込まれやすくなる。
おまけに今回はタイムリミット付き、なんとか呪縛から逃れても防衛システムが再生すれば本末転倒だ。
シン「心配要らないさ、フェイト。俺の場合は、デス子と分離すればリンカーコアも消滅するし、そうなれば異物として『夢の牢獄』から弾き出
されるはずだ。あとは闇の書の闇を発見して破壊すれば終了だろ」
シンは安心させるために頭を撫でるが、フェイトの不安は消えていないようだ。
確かに不安要素は多い。『夢の牢獄』についてはフェイトだけしか体験しなかったため、あまりに情報が少なすぎる。
しかし、フェイトに涙目で上目遣いをされては、リンカーコアが消滅しても、『夢の牢獄』から出られないかもしれないとはとても言いだせなかった。
シャマル「・・・え、まさか、シン一人だけで闇の書の中に入る気ですか!」
ヴィ-タ「冗談じゃねぇぞ! たった一人で自動防衛プログラムを破壊なんてできるわけねぇだろ! アルカンシェルまで持ち出してようやく倒
した化け物なんだぞ!!」
焦りだすヴィータたちを尻目に、シンは厳重にケースに保管された赤い結晶を取り出した。
素人ならば唯の大きな宝石に見えただろう。だが、ここにいる人間にはソレがどれだけ危険なものか本能で理解できた。
シン 「そこでクロノから借りた(貰った)こいつの出番だ。レリックという名の超高エネルギー結晶体で、こいつを使えば、いくら自動防衛プ
ログラムでも粉々に吹き飛ばせる・・・・はずだ」
なのは「でも、そんなすごいものを闇の書の中で爆発させたらリインフォースさんが・・・」
リインⅠ「私なら大丈夫だ。もともと闇の書は強大な魔法を収集するために作られたもの。そのくらいの魔力なら問題ないだろう」
レリックをその程度扱いとは、つくづくとんでもないロストロギアだ。
まあ、街の大半を破壊しておいて、まだ、本格的な暴走が始まってない、などと言い出すのだから始末におえない。
最初に作った人間はおそらく相当の天才だったのだろう。
リインⅠ「それより、シン。聴きたい事があるんだが」
シン 「なんだよ、俺が話せることは大体話したと思うけど・・・」
リインⅠ「主はやてのリンカーコアが元に戻るまで、一年は掛かる。『収集』で内部に入ったとして、お前はどうやって闇の書から出る気
だ?」
なのは 「え、どういうこと!!」
シャマル「なのはちゃんとフェイトちゃんを足したくらいの莫大な魔力を持ってないと、闇の書からの脱出は不可能なのよ。
いえ、例えあったとしても、夜天の書の主であるはやてちゃんのサポートがないことには・・・・」
それこそが、シンが一人で向かうといった本当の理由だった。
確かに皆で行けば生存率、成功率は上がったのだろうが、自動防衛プログラムを倒したとしても、
闇の書から脱出が出来なければ唯の自殺行為にすぎない。
ちなみに、ユニゾンによって魔法が使えるようになっても、シンに生まれる魔力はせいぜいC-。(エリオにもボロ負けしたし・・・)
そんな貧弱な魔力では、はやてのサポートなしで闇の書からの脱出は不可能だ。
ヴィータ「まさか、死ぬ気じゃねえだろうな、シン!! だとしたらお前を生かせるわけにはいかなねえぞ!!!」
リインⅠ「私をあれだけ引き止めておいて、今更自分が消えるなどと言い出してみろ。
私はこの身が消えることになっても、全力でお前を止める!」
リインフォースの言葉を皮切りに、シン以外の全員が騎士甲冑やバリアジャケットを装備し、デバイスをシンに向けた。
ヴィータなど、既にカートリッジリロードを済ませている。
シン「し、心配しなくても大丈夫だ。方法はちゃんとあるから、絶対に生きて帰ってくるって!」
ヴォルケンリッター達の殺気立った視線を、シンは目を逸らさずに(冷や汗をかきながら)真っ直ぐ見返した。
あえて言わないがすさまじく怖い。方法が無いなんて言ったら、その場で再起不能になりそうだ。
そう思わせるだけの殺気がシンに向けられていた。
シグナム「・・・・・嘘はついていないようだな、安心したぞ」
そう、脱出の手段はある。だが、それは時間跳躍システムによる十年後への再転移によってだ。
時間を見積もっても、あと一週間はかかるはずだったが、色々調べた結果、 ご都合主義的に、スカリエッティが緊急時の強制再転送システムを組み込んでくれていた。 未練がないとはいえないが、どの道いつかは戻らなければならないんだし、
リインフォースを救って未来に凱旋するのも悪くない。 それと、もう一つ話しておくことがあった。
シン「あ、リインフォース。少し話があるんだけど・・・」
リインⅠ「なんだ?」
シン 「・・・定時までに戻らないようなら、さっき言ってたとおり、俺ごと闇の書を破壊してくれてかまわない」
リインⅠ「・・・お断りだ。弱音を吐くとはお前らしくないぞ?」
シン「ごめん、だけどさすがに今回ばかりは・・・・」
リインⅠ「シン、私もこの計画が成功すると信じている。一緒に八神家に帰る約束、忘れていないだろうな?」
シン「・・・そうだったな。少し弱気になってたみたいだ。(ここまで来て、後戻りはできない。絶対に成功させないと・・・)」
負けられない戦いを前に、シンはあの穏やかだった八神家での生活を取り戻す決意と、自身の全てをかけて戦い抜く覚悟を決めた。
『収集』の準備が整い、装備の最終点検をするシン。
持っていくものはできるだけ少ないほうがいいのだが、相手は精鋭が十人がかりでようやくしとめた化け物だ。
なのは達は今持っている物の中から役に立ちそうなものを選び、シンに手渡した。
ユーノ「これは小型のデバイスみたいなもので、いくつか魔法が登録してあるから魔力をそそげばオートで発現するよ。
まあ、本当はロストロギアなんだけど僕にとってはお守りみたいなものだから。」
シン「でも、そんな大事なもの本当に貰っていいのか?」
なのは『あげるんじゃないよ、貸すんだけだよ。あとで絶対ユーノ君に返してね」
そう言われても返すのは十年後になるのだから、どちらかといえばユーノのほうが忘れていそうだ。
苦笑いを浮かべるシンを見て、なのは達は不思議そうに顔を見合わせた。
ヴォルケンリッターからは魔力カートリッジをあるだけ貰った。
シグナム「我々全員分のマガジンだ。少しは魔力の足しになればいいんだが・・・」
ヴィータ「唯でさえ、キケンな戦いなんだ。装備だけでもしっかり整えておかねぇとな」
シン 「気持ちはありがたいんだが、さすがにこんなには持ってけないだろ!」
シンの目の前には魔力マガジンが山のように積まれている。
冗談ではなく、どこからこんなに集めたのかってくらいにマガジンの山ができているのだ。
シャマル「風呂敷に包めば問題ありませんよ。ほら、こんなに簡単♪」
シン 「ど、どんだけ・・・。じゃなくて、機動力も下がるし6,7個で十分だよ」
懸命に断ってなんとか諦めてもらったが、三人ともあからさまに残念がっていた。 天然の恐ろしさを改めて実感したシンであった
フェイト「あの場所は本当に人の心を引き付けるから、何があっても夢だってことを忘れないで必ず帰ってきてね!
確かに夢は心地いいかもしれないけど、終わってしまった過去は変えられないんだから・・・」
シン 「だからそんな心配そうな顔するなって。帰ってきたら、またどこかへ遊びにつれてってやるからな」
フェイト「・・・・・うん、今度は海に行きたい。もちろん二人っきりでね♪」
シン 「・・・・さすがにそれは勘弁してくれ」
誰のものかはわからないが、背中に突き刺さっている幾多の圧迫感が「私も連れてって」と恨みがましく告げていた。
リインⅠ「この前と違って戦いの場は闇の書の中だ。おそらく奴の戦闘力も大幅に上がっているはず…。
例えお前が失敗しても、ここにいる誰もお前を責めはしない」
ザフィーラ「・・・・どんなことがあっても、必ず生きてもどれよ。リインフォースとお前を同時に失えば、あの主でも発狂しかねん。
多少心は強くても、いまだ、九歳の女の子なのだ」
シン「わかってるさ、できるだけ早く帰ってくる」
前に資料として戦闘データを見せてもらったときがあったが、あの化け物は半端じゃない。
四つ重なった物理魔法混合結界に、おそらく主力魔法だろう広域殲滅魔法。そして、幾多の魔導師達を絶望させた、ほぼ無限の自己再生能力。
例えレリックを使うとしても、困難どころかほぼ不可能に近い成功率だ。
(試しに計算してみたが、0が小数点の後ろに6つ並んだ時点で電卓を投げ出した)
だが、どんなに希望のない状況でも、リインフォースを救えなければきっと俺は俺が許せなくなる。
大切な人たちを守れずに、何度も何度も後悔と懺悔を繰り返してきた。 それも今日限りだ。俺はリインフォースを救って前に進んでみせる!
シャマル「準備は完了しました。いつでも行けますよ」
デス子「行きましょうか、マスター(これで皆さんともお別れですね)」
シン「それじゃ行って来る。(さよならだ、十年後にまた会おうみんな。その時はリインフォースも一緒だ)」
シンとデス子は闇の書の光に消えていった。
どれだけ時間がかかっても、必ず帰ると心に誓って・・・。
君たちに最新情報を公開しよう。
大切な人達を失った運命の日から数年。
シンの前に再び選択のときが迫る! 逃れられない過去、失った絆、そして現われるマユ・・・。
自動防衛プログラムが復活したとき、はたしてリインフォースの願いは彼に届くのか?
次回、GUNDAM PARUMA DESTINY 『夢の牢獄』
君もこのスレで、エクストリームブラスト承認!」
さあ、嘘設定はどれでしょう。
目が覚めると俺は自分のベットに寝転んでいた。おかしい。ユニゾンしていた筈なのに、いつの間にか服も私服に変わっている。
・・・・・・自分のベット?
身の毛がよだつような感覚に、俺は急いで起き上がると見覚えのある部屋を見回した。
(・・・俺の・・部屋? ・・・だってあの日、俺の家は燃え尽きて・・・・)
ここが二階であることなどまるで考えずに、ベランダから外に飛び降りた。
落下の勢いを殺すために回転着地を決めて、服が汚れるのも気にせず上を向く。
庭(そこ)から見上げた光景は、俺にとって信じがたいものだった。(そんな・・・これが俺の望んだ世界・・・)
何年も忘れていた、忘れようとしていたアスカ家が、そこにあるのが当たり前であるかのように悠然と建っていた。
これは・・・本当に夢なのか?
いつも家族で過ごしていたリビング、母さんが料理を作りマユがソレを手伝っていた台所、
俺や父さんがよく寝転んでいたソファー。家と共に燃え尽きてしまった懐かしい思い出が次々と俺の中に蘇ってきた。
全てがあの日のままだ。みんなが逝ってしまった、あの時の・・・。
分からなくなってきた。これが・・・夢? 本当は、こちらが現実だったんじゃないのか?
オーブは焼かれないで、母さんと父さんとマユとみんな一緒に平和に暮らして
アレは全部俺の妄想で・・・本当は戦争なんて最初から・・・。
マユ「お兄ちゃん? 起きたの?」
シン「えっ、マユ? 本当にマユなのか!」
ドアを開けてリビングに入ってきたのは間違いなく死んだはずの俺の妹、マユだった。
通りすがりの女子中学生を見て、何度考えただろう。生きていたら13歳、ちょうどあんな感じだったのかと・・・。
マユ「な~に、お兄ちゃんまだ寝ぼけてるの? もう私の入学式は終わっちゃったよ」
シン「入学・・式? ・・・そうか、もう中学生だったな。制服もよく似合ってるよ」
マユ「ふふっ、ありがと?」
ああ、そういえば、今日は入学式だったな。
ずいぶん背も伸びたな、もう母さんと並ぶくらいにまで成長してる。もっとも俺や父さんに比べれば、まだまだだけどな。
マユ「朝ごはんは食べたの? 買い物に行ったお父さんもお母さんもカンカンだったよ?」
シン「あ、ああ、そうなのか? 入学式に行けなくて悪かったな、マユ」
マユがここに居る。一緒に喋って、一緒に笑って、もう一度同じ時間を過ごせる。
そう考えると今までくだらないことを考えていた自分が馬鹿みたいに思えた。何を馬鹿なことを考えてたんだ。俺の居場所はここ以外にないだろ。子供じゃあるまいし、魔法なんてあるはずがない。あれは夢だったんだ。
ははは、馬鹿みたいだな、まったく、この年になってまるでゲームみたいな夢を・・・。
マユ「もう! 近所のステラお姉ちゃんとレイお兄ちゃんも来てくれたのに、お兄ちゃんだけは全然起きないんだもん」
シン「・・・・・あ」
その一言が、俺の中の何かを粉々に打ち砕いた。
俺が守れなかったせいで死んでいった二人が、オーブに居るはずがない。心に焼きついた凄惨な記憶が、俺に何もかも思い出させた。
マユ「さ、皆のところへ行こう? みんなお兄ちゃんを待ってるんだよ」
俺はマユが伸ばしてくれた手を、乱暴に振り払った。
そうでもしないと飲み込まれそうだった。何も考えず、何の不安もなく夢を見ていられた・・この懐かしい幸福に・・・。
マユ「お兄ちゃん?」
シン「・・・・・・やめよう、マユ。俺がマユに会っていいのは思い出の中だけなんだ」
マユ「・・・・・お兄ちゃん、どうしてそんな悲しいこと言うの?」
シン「マユ達と一緒にそっちにいけば、俺は俺を待ってる守りたい人達を守れなくなる!それに、俺はそっちに行っちゃいけない!行っていいは
ずがないんだ!!」
今でも夢に見る、マユや父さん母さんが死んだときのことを。
ステラが殺されたときの、レイが死んだときの、悪夢のような光景が頭から離れない。
そして、多くの命を奪ってきた自責の念は、俺が幸福に浸ることを絶対に許さなかった。
シン「命令に従って、多くの人の未来や幸せを奪ってきた。殺して、殺して、俺みたいに家族を失った人間をたくさん増やしてきた。
そんな俺が、みんなと同じところへ行けるわけが無い!」
マユ「・・・・せ、戦争をしたならみんなそうだったはずだよ! お兄ちゃんだけが悪いわけじゃないよ!!!」
シン「俺は多くの人を不幸にしておきながら、何の罰も受けてない。それどころか、俺は今誰よりも幸せなんだよ!
そんなことが、そんな不公平が許されていいはずが無いだろ!」
マユ「・・・・・そんな」
シン「俺は戻って守らなくちゃならないんだ、帰って救わなくちゃならないんだ。そうして、犯した罪を償わなくちゃならなくちゃいけないん
だ!そうじゃないと・・・俺は、俺はぁぁ!」
罪の意識に心が折れそうになる。頭がぐちゃぐちゃになって、もう何も考えられなかった。救えなかった。守れなかった。助けられなかった。
俺がもっと強かったら・・・。誰にも負けないくらい強かったら、この夢と同じ世界に居られたはずだ。
だからもう負けられない! 失えない! そのためにはどんなことをしてでも・・・。
マユ「もうやめて! お兄ちゃん。もういい、もういいよ」
シン「そんなわけが・・・・」
マユは俺に抱きついて、錯乱した俺を必死に止めようとしてくれる。突き放そうとした俺の腕は、マユの涙を前にあっけなく力を失った。
ああ、また大切な人を泣かせてしまった。俺はいつまでこんなことを続ければいい。
もう耐え切れなかった。人のやさしさが苦しい。誰かの温もりすら寂しい。そんな矛盾に何年苦しんできた?
あと何回失って、あと何回大事な人を泣かせれば、俺は安息を得られるんだ・・・。
シン「ごめん、マユ。僕は・・・マユを・・・皆を・・・うああぁあぁぁああぁ」
マユ「大丈夫、もう苦しまなくていいよ。私達はここで幸せに暮らしてる。だから、泣かないで・・・・やさしいお兄ちゃん」
俺はマユを抱きしめていた手を離すと、マユと一緒にソファーに座った。
子供のころは二人で座っても隙間だらけだったのに、今ではぎゅうぎゅう詰めなのが、時の流れを思い出させて・・・なぜだか少し寂しかった。
シン「・・・・俺はやっぱり馬鹿だ。マユやステラを守れなかったから、替わりにリインフォースを救えば許されるかもしれないって、心のどこかで
考えてた。俺は許して欲しかったんだ。戦争だから仕方がないといって殺した人たち、守るといいながら見殺しにした大切な人々、そし
て、目の前で死んでいったマユや父さん達に・・・・」
マユ「誰もお兄ちゃんのことは恨んでない。だから安心して、もうお兄ちゃんが苦しむ必要なんかないんだよ。一緒に向こうへ行こう。そうすれ
ばそんな苦しみすぐに忘れるよ」
シン「・・・・そうかもしれないな。・・・俺も・・疲れた・・・・」
それができたら、この幸福な世界で一生を過ごせたら、俺はきっと最高に幸せだろう。
もう戦って大切なものを失うこともない。誰もが幸せで誰も傷つかない。たとえ夢でも、それは俺が叶えたかった一番の望みだったはずだ。
でも、約束したから・・・・。
なのは「あげるんじゃないよ、貸すんだけだよ。あとで絶対ユーノ君に返してね」
フェイト「・・・・・うん、今度は海に行きたい。もちろん二人っきりでね♪」
はやて「家族は信じあうもんやで、シン兄」
リインⅠ「シン、私もこの計画が成功すると信じている。一緒に八神家に帰る約束を忘れたのか?」
シン 「わかってるさ、できるだけ早く帰ってくる」
自分の心の内を明かして何もかも吐き出したおかげで、俺はようやくわかった。俺が望んでいたのが本当は何だったのか。
そして、いま何をすべきなのか。
シン「・・・・俺は、もう行かないと・・・・」
マユ「そんな・・・いや!絶対に行かせない!」
俺を必死で止めようとするマユを見て、心がずきりと痛む。
それでも、俺を待ってくれている人達のためにも、ここに留まることはできない。
シン「マユ、わがままを言うんじゃない。・・・・時間がないんだ」
マユ「どうして!? 戻ったらきっとまた苦しむことになるよ。お兄ちゃんは私達と一緒にいたくないの? ここには何でも有るんだよ。お兄
ちゃんが守れなかった物だって、おにいちゃんが欲しかった物だって!」
シン「・・・・」
マユ「望めばなんでも手に入るんだよ。それなのにどうして・・・」
シン「俺はここに来ても構わない。むしろあれだけ酷いことをしたのに、みんなといられるなら喜んでここに残る。でも、あいつはまだここに来
るべきじゃないんだ。俺の勝手な理屈でリインフォースまで死なせるわけにはいかないだろ?」
マユ「・・・・自分のことより皆のことを先に考える性格、変わってないねお兄ちゃんは」
マユは掴んでいた俺の手を自分の両手でそっと包み込んだ。
マユ「・・・・・悔しいけど、お兄ちゃんにとって私達はもう過去なんだね」
シン「・・・そうだ、過去は消せない。だからこそ、唯の自己満足でもいいから、新しい仲間を守って、一緒に未来を作らなくちゃいけないんだ。
それが、俺の贖罪だから・・・」
マユ「少し寂しいけどしかたないよね、私達は死んじゃったんだから」
シン「ごめんな、マユ。これが俺の選んだ道なんだ。たとえ夢でも、もう一度話せて嬉しかった」
マユ「お兄ちゃん、私も嬉しかったよ。でも・・・」
シン「・・・そんな寂しそうな顔するなよ。そうだ、いい事考えたぞ!」
マユ「えっ?」
シン「何十年先かわからないけど、いつか俺の代わりに俺の仲間がそっちへ行くと思う。みんな優しいから、マユもきっと友達になれる。それな
ら俺がいなくても寂しくないだろ。マユは強い子だから」
そこに俺はいちゃいけない。たとえ許されても、この血塗られた手でマユの頭は撫でられない。
この返り血を浴びた体じゃ、目立ちすぎてみんなと遊びに行くのも無理だ。
だけど、みんながマユと同じところへいけるなら、俺は・・・どんな敵とだって、戦ってやるさ。
シン「さあ、もういかないときっとみんなも心配してるぞ」
マユ「・・・うん、わかった。でも、何年かかってもいいから、お兄ちゃんもいつかきっと来てね。また、昔みたいに色んなことして遊ぼうよ。今
度はおにいちゃんの友達も一緒に♪」
シン「・・・・・・ああ、約束だマユ」
マユ「うん、約束だよお兄ちゃん」
その言葉を最後に、マユの体が輝き始めて、あっという間に消えていった。
輝きを放ちながら消えていくマユはとても綺麗で、とても可憐で、大げさかもしれないけど俺には天使のように思えた。
シン「何度も約束を破り続けてごめん。俺は最後まで悪いお兄ちゃんだったな。でも、俺は俺の全てを失ってでも、皆を守りとおすって決めたん
だ。だから、さよなら、マユ。」
風に懐かしい塩のにおいが混ざっている。
シンが目を開けると、夕焼けに照らされた慰霊碑の前に立っていた。
色とりどりの花も今は茜色一色に染まっている。周りには誰もいない。波の音だけが静かに、そして延々とながれていた。
シン 「デス子、いるんだろ。いや、最初から居たはずだ」
デス子「・・・はい、あなたの傍でずっと見ていました」
たとえ服が変わっても、ユニゾンをとかない限り、俺達が離れることはない。
だったら、答えは一つだ。こいつはわざといない振りをしていた。
シン 「なんで黙って見ていた? たとえ見かけが変わっても、一声かければお前が居るとすぐに気付いたはずだ。
俺があのまま夢に飲まれたらどうするつもりだったんだ?」
デス子「マスターが夢の中に留まるなら、それでもいいと思っただけです。あれも一つの幸福の形ですから・・・」
永遠に夢を見続けることが幸福、か・・・そうかもしれないな。間違っている、「そんな幸福は偽者だ!」なんて言えるのは、
正義という言葉に踊らされた偽善者か、自分が幸せである事に気づいてない愚か者だけだ。
どん底に落ちた人間はそれがどんな幸福でも掴みたがる。そこには本物と偽者の境界線などありはしない。
俺がそうだったから、よくわかる。
シン 「一つだけ聴きたい事があるんだ。俺は・・・・マユが消えるとき笑っていられたか? ・・・それとも悲しい顔をしていたのか?」
デス子「・・・・終始・・・笑っていました。ご立派でした、マスター」
シン 「・・・・・・・・そうか、やっぱりお前は嘘が下手だな、デスティニー」
デス子「・・・私は、マスターの愛機ですから」
シン 「・・・情けない所を見せたな」
です子「いいんですよ(そんなところも含めて、私はマスターが大好きなんですから)」
シン 「・・・・ありがとう。そろそろ、行こうか。思ったより時間がかかったみたいだ」
住み慣れた家が崩壊していく。
俺の望んだ夢が消えていく。
残ったのは何もない闇と・・・目の前に立ち塞がる馬鹿でかい化け物だ。
シン「あれが、闇の書の闇。再生機能によって無限再生する化け物か。再生はほとんど終わってるな」
デス子「行きますよ、マスター。もう一度ユニゾンです!」
シン「感謝してるよ。たとえ夢だとしても、お前のおかげでもう一度マユと話せた。
その礼だ!今日この場所で、破壊しかできないお前の運命を俺が終わらせてやる!」
再び輝きを取り戻した赤い翼が深遠の闇に舞い上がる。
シンの魔法を使った初めての実戦が、今始まろうとしていた。
最終更新:2010年11月09日 14:23