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misfortune

misfortune ◇6Pgs2aAa4k氏の作品


“Dead man talK'n ”

 口を開くと不平不満が出るばかりだ。
 クダグダの戦争はグダグダの落着はしたけど何一つ変わっちゃいない。
 いや、変わりつつあるけど悪い方向に向かっている。
 ナチュラルとコーディネーターは歩み寄りつつあるけど、相互の不信感は消えていない。
 ──顔は笑っているけど、心の中はどうなんだか。
 不平不満を口に出すとどうなるのかはすぐに分かった。 密告されて手に縄が掛かって冷たい無機質な牢獄の中に入れられる。
 密告したのは多分ルナマリアだ。俺が不平不満を漏らしたのはアイツの前だけだからな。
 でも、恨む事は出来ない。アイツには家族がいる。
 俺と家族を天秤にかけたら家族に傾くに決っている。
 昨日、彼女が面会に来て泣きながら謝ってたけど、涙を見ると理解出来た。
 さて、そろそろ時間か。死ぬには良くも無いけど悪くも無い日だ。
 天気なんてプラントにはあまり関係ないけどな。

 処刑方法はギロチンだ。全く古典的で派手なもんだ。
 確か、ギロチンは人道的な処刑方法だった筈だ。血腥い事は否定しないが。
 台の上に立つと見た顔が色々ある。……アスハもいるな。暇だからわざわざ見学にでも来たんだろう。
 神父が俺に近寄り、懺悔だのなんだの儀式めいた事をする。
 最後に聞かれたのは何か望みはあるのかという事。
 望みならある。アスハの上着が欲しい。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。
 上着を引き裂いてウサを晴らしてやるだけさ。
 怨みや辛みはこれで帳消しにしてやるさ。
……ルナマリアもいる。まだ泣いているみたいだ。
 泣くなよ。お前が心配で死ねなくなる。
 だから、笑って見送ってくれ。お願いだ。

“call my name,please”

 カーテン越しに光が私の目を貫く。
 時計を見ると、もうお昼に近い。どうやら寝過ごしてしまった様だ。
 隣りにはシンが静かに寝息を立てている。その寝顔はまるで子供の様だ。
 今じゃ泣く子も黙るザフトのトップエースなのに、私には無防備な姿を見せてくれる。
 それはとても嬉しい事だ。 ぼんやりとしながらシンの頭を、子供をあやす様に撫でていると、幸せを感じる。
 勿論、夕べシルクのベッドで愛し合った事にも女として幸せを感じるのだけれども、こんな風に気怠い疲労感を感じながら愛しい人の横顔をみるという事の方が幸せを感じる。
「……………………」

 でも、その幸せをシンが崩壊させた。
 寝言で私じゃない他の女の名前を呼んだのだ。
 私の幸せは一瞬にして砂上の楼閣の様に崩れ去った。
 目眩がして視界が真っ暗になる。私は重力に逆らおうともせずにそのまま後ろに倒れる。
 首だけ動かして横を見ると、飲みかけのカフェオレが分離している。
 もう既に冷めきっているのかも知れない。
 まるで二人の心みたいね、と一人ごちるともう一度シンの横顔を見る為に振り向く。
 何故だろう。シンの顔がぼやけて見える。頬を冷たい何かが伝っている。
 多分、私は泣いているのだろう。
 裏切られた哀れな私の為に? 誰かの代用品として扱われた私の為に?
 違う。この涙は私の為の物じゃない。
 シンと決別する為の涙だ。
 放れてしまった二人の心は二度と近付く事はない。
 平行線の様に、交わる事はない。
 でも私は、精一杯の偽りの優しさで貴方の事を包んであげる。
 紛い物の愛で貴方を虜にしてあげる。
 哀れなのは私じゃなくてアンタよ、シン。
 アンタが人生の絶頂を迎え時、次の瞬間に私が奈落の底に落としてあげる。
 それが、私の細やかな復讐。
 でもね、あと10秒だけ待ってあげるわ。それが私に出来る最後の慈悲よ。
 まどろみの中でも良いから……。

 ――私の名前を呼んで。

“ひとりぼっちということ”


 私の目の前でシンは静かに眠っている。
 多分、二度と目覚める事はないだろう。
 私が長い間盛り続けた毒は、ゆっくりと確実にシンを冒していった。
 そして、今日でとうとう致死量。私の細やかな復讐が成し遂げられる。

 シンが眠っているのは、かつて愛し合ったあのシルクのベッドだ。

 皮肉なものね。あの時私の名前を呼んでくれれば、こんな事にならなかったのにね。
 語りかけてもシンは答えてくれない。
 独りぼっちと言う寂しさが酸の様に私の心を蝕む。
 シンは静かに人からただの冷たい屍に変わっていく。

 やつれたシンの顔には昔の面影はない。
 目は落ち窪み、頬は痩せこけ、雪の様に白かった肌は土気色だ。

 残念なまでに無残。
 でも、仕方無いよね。あの時に私がどんなに望んでも貴方は私の名前を呼んではくれなかったのだから。

 悲しさが私を支配しても、私の目から涙は出てこない。 涙なんてとうの昔に枯れ果てた。
 日に日に毒に体を蝕まれていっても、私に優しく微笑んでをくれた。
 私の事を疑いもせずに、ただ、微笑んでくれた。
 その微笑みの為に涙は枯れ果てた。毒を盛るのを止ようと思ったか解らない。

 でもね、寝言では私じゃない誰かの名前を呼ぶのよ、貴方は。
 偽りの優しさが痛かった。
 微笑みが私の心を砕いていった。
 欲しい物は手に届きそうな所にあるのだけれど、絶対に届かない。
 歪んだ渇望が私を狂わせていったのよ。
 私も残酷だけど、貴方はもっと残酷。

 ねえ、シン。一人じゃ寂しいでしょ。寂しいなら私の名前を呼んでよ。ずっとそばにいてあげるから。
 私は寂しいよ。だって私はアンタが好きなんだから。
 好きになった人を簡単に嫌いにはなれないよ。
 だから、私を一人にしないでよ。
 私を一緒に連れていって。
――ひとりぼっちは嫌だよ。






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最終更新:2008年07月15日 17:36
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