「うわあああああぁぁぁぁぁぁ――」
俺は落ちていた。
一切の感覚が消え、ひたすらに落ち続ける。
「うわあああああぁぁぁぁぁぁ――あ――」(今度はどんな世界に落ちるんだろうなぁ……)
まあそれでも、次元移動の回数が二桁を超えると嫌でも慣れてくる。
だから、何だかんだで俺にはわりと余裕があった。落ちているって事は俺は生きてるって事だし。
いつも次元移動が起きる時は命がけの場面だからなぁ……
(……あれ?)
そこで違和感を覚えた。
”命がけ”だった事は覚えている。現に俺の背中は冷や汗でぐっしょりだし。
(……俺は)
考え事に夢中だったから、気が付かなかったんだろう。
(……俺は、今までどんな世界に居たんだっけ?)
その瞬間に、
「ぐえっぶっ!?」「うにゃあぁぁ~っ!?」
何だか柔らかいものの上に、落ちた。
どうも地面から直ぐ上に出たらしい。風を感じてから地面までの到達時間が異様に短い。
「あれ。いつもより痛くな…………うわっ人!? す、すいませんっ!!」
「きゅ~」
誰か知らない女の子を下敷きにしている事に気付き、慌ててその場から跳び退った。
さっきまでの俺の状況はその女の子を押し倒しているような画で、かつ俺の手がやや危険な位置に。
他人に見られたら言い逃れ不可能な状況である。
完全に犯罪者だ。
「せ、セーフセーフ……じゃない! 下敷きの時点で完全にアウトだ! だ、大丈夫かっ……!?」
軽く身体を揺すりつつ、呼びかけてみる。
俺の下敷きになったのは、金髪の長いツインテールが特徴的な、小柄な女の子だった。
「ゅ~……」
「気絶してるだけ……みたいだな。あぁ、驚いた」
とりあえず目だった外傷はなさそうなので胸を撫で下ろす。
さて、どうしようか。
俺がこれからどうするかはともかく、この子をこのままにしておく訳にもいかない。
周囲を軽く見回す。
と、今居るところが家の庭だという事に気が付いた。
「この子の家、かな」
他人の家に勝手に上がりこむのは気が引けるが、このまま放ったらしには出来ない。
とりあえず家の中に運んで寝かせておくとしよう。
他の処置はそれからでいいか。
「うわ。軽」
慎重に女の子を抱き上げる。小柄な見た目どおり、ほとんど重さが無かった。
(小学生…………いや、どっかの制服着てるから中学一年くらいか)
どうでもいい事を考えつつ、歩き出す。
と。
「へ」
おや誰かの声が。
「変質者――――ッ!!!!」
がぁっつーんと顔面に衝撃が。いや自業自得ってのはわかってるんだ。
けど、いきなり投石は酷いんじゃないか……?
そのまま地面にぶっ倒れたいのを何とか我慢して、
地面に膝を突いて、腕をゆっくり降ろして、
女の子を降ろし終わると同時――後ろ側にひっくり返って、俺は意識を手放した。
――それから十五分後。
意識を取り戻した俺は、テーブルにて三人の人間と向き合っていた。
今俺が居るのはさっきまでいた家でなく、その隣の朝倉家。その台所である。
とりあえず最低限の事情の説明(弁明ともいう)と、各自の自己紹介を終えた。
俺の前に居るのは朝倉純一と朝倉音夢の兄妹、そして芳乃さくら。
芳乃さくらは俺が下敷きにした女の子で、朝倉兄妹はそのお隣さんとのこと。
ちなみに、俺に投石したのは朝倉音夢である。
「つまり。お前は誤って気絶させてしまったさくらを介抱しようとした、と」
「まあ……そういう事になるけど」
朝倉音夢の視線が痛い。そんな説明で納得しろって方が無理があるのはこっちも承知している。
ただ、他に言いようが無いのも事実だ。
「じゃあそういうことでいいんじゃないか。さくらにも目立った怪我は無かったし。かったるいし」
「納得いきません!!」
ばーんとテーブルを叩いて立ち上がる朝倉音夢。
「他人の家に上がりこんでる時点で十分不審者です!!」
ごもっともです、ええ。
「不法侵入じゃなくて、空から降ってきたんだよ? 音夢ちゃん」
「そうか。なら不可抗力だな。よし解決」
俺が言うのもなんだが、この二人は軽すぎじゃないか。
「まあ……無茶な言い分だってのは解ってるんだよ。だから我を通すつもりは無い。
俺の事が信じられないなら、潔く」
「潔く?」
聞き返してくる朝倉音夢。俺は答える前に窓を指差して、
「突き破って逃げるから」
「「全然潔くないだろ(でしょう)!?」」
さすがは兄妹というか、見事なシンクロだった。
「まあそれはさておき……俺は信用してもいいと思うけどな」
「根拠は何ですか、兄さん?」
「お前に石をぶつけられた後のこいつの行動だよ。
額から血流しつつも、さくらを無事に下ろしてから気絶したじゃないか」
「う……」
「もうこの辺にしようよ、音夢ちゃん。ボク怒ってないしさ~」
「しょうがありません……不本意ながら今回は不問にします……」
物凄い不服そうな朝倉音夢。どうも俺の疑いは完全に晴れたというわけでは無いらしい。
というかこれが普通か。他の二人が軽すぎるんだろう。
「そうだな、かったるいのはごめんだ。さて、一件落着したところで飯にしようぜ、飯に。
あ、何だったらお前も食ってくか?」
……本当に軽いな。
「しょうがありませんね、今準備するから待っててくださ――」
そう言って、朝倉音夢が立ち上がろうとした瞬間。
「よーし! だったら出前を取ろう! 客も居る事だしな! なあ、さくらっ!!」
「そうだねお兄ちゃん! 出前取ろう出前っ!!」
高速の反応を取る朝倉純一と芳乃さくら。
「……二人とも?」
「シンは何がいい!? ここはやっぱ丼ものか!?」
「ボク蕎麦がいいなっ!!」
「待て! 後ろのあれは放置なのか!?」
二人の背後で真っ黒いオーラを出してる朝倉音夢はスルーの方向らしい。
というかこの空気、覚えがあるぞ。
――ああ思い出した。これはあれだ。シャマルが晩飯作るって言った時の空気だ。
「……なあ、冷蔵庫にモノある?」
「はい?」
俺の問いに毒気を抜かれたのか素っ頓狂な返事をする朝倉音夢。
「……俺が何か作るよ、不可抗力とはいえ芳乃には迷惑かけた訳だし。お詫びにさ」
※擬音にてシンの調理風景をご想像ください
ズカカカカカッザッザッザッチャカカカカジュワアアァァァァァ――!!
――説明しよう。
この話におけるシン・アスカは八神はやてに基礎を教わり、
更に某赤い弓兵によって鍛え上げられた料理の腕をもっているのである。
「まあ簡単に、チャーハンを作ってみたんだ……けど……」
正確にはチャーハンしか作れなかった、だ。
冷蔵庫には冷ご飯と卵と具材がいくらかしか無かったし。だが……
ガツガツガツガツガツガツガツ
朝倉と芳乃が、物凄い良い喰いっぷりだった。
「……たしかに、おいしい」
ただ朝倉音夢は何故か不服そうだった。味付けが合わなかったか?
「「おかわりっ!!」」
「いやもう無いから」
「…………隙ありーっ!」
俺の前に置かれた器に襲い掛かる芳乃。
「うわ! 何するんだ!? お前はどこぞのデ――……デ?」
――あれ。俺は今、何を言いかけたんだ?
色んな意味で波乱だった食事も終わり、俺は晴れて釈放となった。
とはいえ、俺自身の問題はまるで解決していない。
一。行く所がない。
ニ。記憶喪失(?)になっている。
……一はまあこれからどうにでもできるとして、厄介なのは二だ。
どういうわけか、俺はここより一つ前の世界の記憶がすっぽりと抜け落ちている。
何故、どうやって、この世界に来たのかをどうしても思い出すことが出来ない。
(……前の世界で頭でも打ったんだろうか)
今までの経験からありえない、と否定できないのが何か嫌だ。
あともう一つ。
何かを忘れているような……いや、”何か”じゃなくて”誰か”……――?
「ところで、シン君?」
芳乃に声をかけられて、考え事を中断する。
まあ大事な事だったらそのうち思い出すだろう。
「行く所あるの? 記憶喪失なんだよね?」
「……あるわけないだろ。ここが何処かもわからないのに」
そもそもこの世界の人間じゃないしな、俺は。
ただ、俺のベルトに引っかかっていたバッグには、この世界での身分証と、ある程度の紙幣が入っていた。
少しの間なら何とか持つだろう。手持ちが尽きる前にどうにかすればいいだけだ。
むしろ今までに比べればマシな方といえる。貨幣あるし。人間の生活圏だし。治安良さそうだし。轢かれないし。
――息、出来るし。
「ま、なんとか」
するさ、と言おうとしたら。
「だったらさ、ボクの家に来る?」
「……………………はい?」
何か、とんでもない提案をされた。
デスティニー「ふふふふふっ。本当に出番なし……な、名前すら出なかっ…………ゴぅふっ」
つ原稿
リインⅠ 「デスティニーが再起不能のようだから、私が代わりを務めさせてもらう」
デスティニー「ていうかマスターもこのコーナーから消えてるぅ………… orz」
『D.C.ネタスタートの回、シンとのファーストコンタクトはメイン三人でした。
シンが素っ気無いのは警戒心が抜けきってないからです。次回では打ち解けているかと。
あと作者は1しかやってません、そして追加キャラにも疎いです。
ご意見ご感想、こういうシチュが見たい、シンはこんな酷い目に遭うべきだ!
……等々。随時受け付けております』
リイン 「……何かおかしい項目があった気がするのだが」
デスティニー「次はー、次回予告ー。私の出ないー、次回のはなしはー…………」
『次回予告。さくらが忘れた弁当を届ける為、学園に(こっそり)やってきたシン。
何故か不審者と誤解され、追い回される羽目に。
その最中、シンは誰かの歌声を聞く――』
デスティニー「あ、諦めないぃ……マスターの女難がなくならい限り……私はいつか必ずよみがえるぅ……」
リインⅠ 「お前は何処かの魔王か。ほら」 つポテチ
デスティニー「ふん、そんな物では私のブロウクンHデュートリオンは癒せませんよ………………ボリボリボリボリボリボリ」
リインⅠ 「結局食うのだな」
最終更新:2008年07月21日 05:20