「(あら?あれは・・・)」
少し早起きしたレミリアが庭を散歩している時、目に映ったのは以前パチュリーが空を飛べないシンの
為に作ったエアバイク『インパルス』(シン命名)だった。空が飛べるパチュリーには無用の長物な物
ではあるが、たまに玩具で遊ぶ子供の様に目を輝かせながらインパルスを整備するシンを見かけている
レミリアは少しこの機械に好奇心がそそられた。いくら500年生きている吸血鬼とはいえ『永遠に紅
き幼い月』の異名は伊達ではないのである。早速、レミリアはインパルスに乗ろうとシンが動かしてい
る様子を思い出しスロットルを思いっきり回し、バイクは見事に空を飛んだ。
「うおっ!!なんか今大きい音した・・・あーーーっ、インパルス!!」
大きな物音がしたのでシンはその音がした場所に向かうとそこには倒れているインパルスの姿が。
「お、おお。何だ、何も異常は無いな。それにしてもなんでこいつがここに、きちんとしまってあった
のに」
バチャバチャバチャバチャ
「誰だろう・・・、外に買出しにいくにはちょっと遅いし。それに、そうだとしても皆空飛べるし・・・」
バチャバチャバチャバチャ
「ってバチャバチャうるさいな、一体何ーーーーっ!!お嬢様ーーーーーー!?」
そこには湖で溺れてバチャバチャやっているレミリアの姿があった。
「ハァッ、ハァッ、ちょっと、遅いわよ!!」
「す、すいません・・・っていうか何でお嬢様がここで溺れているんですか!!」
まさか、バイクで事故りましたとは言えないレミリア(500歳児)
「別にそんな事あなたに関係ないじゃない!咲夜!咲夜はどこ!」
「お呼びでしょう・・・シィィィィィン!!」
「ヒィッ!」
レミリアの呼びかけにすぐさま駆けつける咲夜。しかし、水浸しのレミリアの姿を見て何を勘違いした
のかシンの眉間に目掛けてナイフを投げつけた。
「シン!貴様、お嬢様に何をしたぁっ!!」
「な、何もしてませんよ!落ち着いて下さい!」
「咲夜、なにもないから。落ち着きなさい」
レミリアが静かに言うと、咲夜はすぐに落ち着きを取り戻した。
「少し足を滑らしてしまったわ、風邪が引くといけないから着替えを」
「はい、お嬢様」
そういってレミリアは咲夜を伴い館内に戻っていった。
「何だったんだ・・・」
眉間に銀のナイフが刺さったままのシンを残して。
そして、後日。
「パチェ、できて」
「ええ。」
中庭で紅魔館の主要なメンバーが集まっていた。そこにはロケットのような物を背負ったシンの姿がいた。
「これ、大丈夫なんですか?」
「ええ、落ち度がなければ大丈夫だと思うわ」
シンが背負っているもの・・・以前、レミリア達が月へ行こうと計画した時に作ろうとしたが全員空を飛べる
という事で開発が見送りになっていたジェットパックである。今回、ようやく空の飛べぬ者が紅魔館に出来た
為、ようやく開発の運びとなったのである。ちなみに実験体がシンなのは最初は美鈴だったのだが、シンが
それを止めて自分がやると言い出したからである。
「(しかし、まさかこんな形で空を飛ぶ事になるとは・・・)」
「ううう、すいませんシン君。身代わりになってもらって・・・」
「いやぁ、中国さんは妖怪ですけど。その、女の方ですし」
「シ、シン君・・・」
美鈴は感激のあまり涙を流した、果たして今まで自分をここまで大事にしてくれる人がいただろうか。
いや、いない。あときちんと名前で呼んで欲しい。
「お姉さまー、私もあれ欲しい」
「フラン、それはシンで試してからよ」
「それじゃあ、そろそろ始めるわ。カウントダウンするから、きちんとスイッチを押してちょうだい」
「はーい、いきますよー。5、4、3、2、1、GO!」
ざわざわと騒ぐギャラリーをよそに、パチュリーと小悪魔がカウントダウンを開始して。シンは起動スイッチを
押すと、ジェットパックは景気のいい音を立てシンは体が地面に離れて行くのを感じた。
「わぁ、成功ですよ。お嬢様」
「さすがはパチェね」
「当たり前よ、レミィ。」
飛行に成功した事を喜んでいる人たちを他所に、咲夜はトランシーバーでシンに確認をとる。
「調子はどうなの?シン」
『調子ですか?絶好調ですよ、きちんと前後左右に移動できますし。』
「そう。」
あからさまに喜んでいるシンの声を聞いて咲夜はくすりと微笑んだ。
ヒュルルル、ポトン
「(ポトン?)」
トランシーバーからはシンの歓喜の声と今まで見ることの出来なかった幻想郷の一帯に関する感想が聞こえて
くるのを他所に、咲夜は空から落ちてきたネジ数本と睨めっこをしていた。
『あのーそろそろ、下に降りたいんですけどどこ押せばいいんですかね』
「左右の腰部にレバーみたいなのない?それがブレーキレバーよ」
喜ぶのもいいが、これはあくまでもテスト飛行。そろそろ地上に降りようと思いシンはパチュリーと交信した。
『あーあったあった、よっと。・・・・あれ?』
「当然だけど、急に止めたら一気に落ちるから少しずつ調整して降りなさい」
『いや、それはわかってますけど。おかしいな、ブレーキが聞きません!』
トランシーバーからは少し焦ったシンの声が聞こえた。
「ふふふ・・・・」
「レミィ、どうしたの?」
『ん?なにかあったんですか、お嬢様』
「フフフフ、シン。聞こえていたら自分の衝撃を呪うがいい。」
「お嬢様!?」
『な、何ですか衝撃って?』
「そう、衝撃よ」
『レ、レミリア。貴方は・・・』
「貴方はいい執事であったけど、君のインパルスがいけないのよ。フフフフ、ハハハハハ」
『謀ったな・・・レミリア・・・謀ったな!!』
そう、このジェットパックのテストはレミリアの一言で始められたものであったのだ。先日のインパルスでの
事故に逆恨みしたレミリアがシンに一泡吹かせようと計画したのだ。
『くそ!緊急脱出してやる』
「無理よ、がっちりとランドセルを絞めてるから一人じゃ脱着できないようにしてあるわ」
パチュリーが答える、なお、これもレミアリアの要望であった。
「ちょ、ちょっとお嬢様!」
「気にしなくてもいいわ、中国。マスタースパークやらレヴァンティンやら喰らっても死なない男なんだから
この程度でくたばる玉じゃないわ」
「あー、なんかお空が光ったよ。」
「妹様、それはきっと星になったシンですわ。」
こうして、シン・アスカは幻想郷の星となった。
なお、後日談としてシンは幻想郷の結界を突き破る事なく。ちょうど結界のてっぺんに突き刺さっている所を点検に
きた八雲藍に発見され無事保護されたという。
最終更新:2008年09月06日 17:59