遡ること数ヶ月。
異端者である少年がまだ己が世界で死闘を繰り広げいた頃の話。
「これは興味深いものを見つけたものだ」
後に反旗を翻すジェイル・スカリエッティは一つの巨大な鉄くずに目を奪われていた
この世界では機動兵器の技術は確立されていない。
その中で彼は機動兵器だった残骸を発見したのだ。
人型をしたそれは、手足を破壊され、背面に装備された翼を思しきモノは切り裂かれている
だが、OSはまだ生きていた
モニターに映し出されるGunnery United Nuclear-Deuterion Advanced Maneuver Systemの文字
「なるほど…頭文字を取ってGUNDAM、と言うワケか」
楽しげに口元を歪めるスカリエッティ
「これをベースにすれば或いはディーンの火が使えるやも知れんな…」
その後逮捕、拘束された彼のアジトからはこの機動兵器は発見されていない
ORIGINAL GENERATIONS 第1話 折れた翼
その後、シンはなのはの元で〝保護〟と言う扱いになった。
待遇は改善されたものの彼としては居心地が悪い。
高町なのは。彼女は管理局のエースオブエース。
教導官で現在は新人達の訓練を行っている。
以上が今までの話を総合した上でのシンのイメージだ。
(けど、まぁ…)
訓練、と言うが彼が受けていた訓練とは違う。
お遊びとは言い過ぎだが、元軍人の身としてはそう感じてしまう。
コズミック・イラではMS戦が主ではあったが白兵戦の訓練も受けている。
戦場では常に死と隣り合わせ。
自分が生きていると言うことは相手が死んでいるということ。
それがこの世界が魔法を使い非殺傷で戦っている、ときたものだ。
魔法、などと言われてもピンとこないのだが目の前で見せられたのでは信じざるを得ない。
眼下でも訓練の最中だ。
なのはの放つ十数個のアクセルシューターをスバル、ティアナ、キャロ、エリオが回避しつつ反撃を試みている。
だが、どれもすんでの所回避、或いはタイミングを外され直撃には至らない。
実力差もあるのだろうが、このままではじり貧になるだけだ。
「じり貧になるのなら全力で追い込めばいいのに…」
そうシンが呟いたとき
「それも難しいね。それに倒せばいいって訓練でもないし」
傍らにはフェイト・T・ハラオウン、彼女は空いた時間をシンと過ごしている。
「元軍人の君には甘く見えちゃうかな?」
「それは…」
本心ではそう思いつつもそれをこの場で口にするほどシンも子供ではない
「確かに、君が超えてきた戦いには劣るかも知れない。
けどね、みんなそれぞれ悩んで苦しんで悲しんで、それでも誰かのために戦うことを選んだの
これだけは覚えておいて」
それは自身にも当てはまる。
フェイトも、悲しみを超え自らと同じ境遇の者を救うために戦っている。
「――――――」
一瞬、フェイトにはシンの瞳が揺らいだように見えた。
この少年はどこか寂しげに思える
冷めているように見えて、まだ心では何かが燻っている。
…彼の口からは語られていないが、きっと彼は最後の決戦で敗れたのだろう。
互いの信念を賭けた戦い、彼の信念が何かは推し量れないが、
それはまだこの世界でも果たせるのではないだろうか?
訓練終了後、シンはフェイト、なのはらと共に昼食を摂っている。
「どうかな、訓練を見た感想は?」
シャワーで汗を流したあとになのはは問うた。
「どうもこうも…」
魔法の存在には驚かされたが、内容としては軍と似たり寄ったりだ
「ウチの教官にも見せたやりたいくらいですよ、ナイフのフレッドに」
やや皮肉気に語るシンにティアナはマユをピクピクと動かしている。
「それは、あたしのことを言ってるのかな…?」
いきなり現れた男にこうも言われては文句の一つも言いたくなる、と不快感を顔に表し
スバルが宥めなければ今にも突っ掛からん状態だ。
「…それでよく生き残れたもんだ」
と、シンは思わず皮肉でもなく感想を口にしてしまった
「―――ッ!」
怒ったティアナをスバルが抑え、今度はなのはまで宥めにいっている。
「…まぁ、ティアだって上達してるんだし、それに彼はちょっと特別だから、ね?」
異端者である彼が刺々しいのは仕方がないことだ、とティアナを宥めるなのはを見ながら
フェイトは全く別のことを考えていた。
(…ティアナも伸びてきてるし、実力的には悪くないかな?)
シン・アスカに再び空を駆ける翼を与えること。
無論、間違えれば彼自身が破滅してしまうだろう。
しかし、上手く導くことが出来たのなら、彼はきっと…
「なら、ナイフで勝負を付けてみたら」
フェイトの提案に望むところだと意気込むティアナに対し
「フェイトちゃん、どういうこと?」
親友の真意を測りかねるなのは
「お願い、責任は私が持つから。きっと、彼にはこうするのが一番いいんだと思うから」
と、フェイトは真剣な眼差しで親友を見つめ返した
勝負は単純にナイフで一本取った方が勝ち、と言うことになった。
握ったナイフを見つめるシン。
磨き上げられた刀身には自身が映し出されている。
(…俺は何をやってるんだろうな)
こんなことに意味はないし、そもそもあんなことを口にした時点でどうかしてる。
…何故、あんなことを口走ったのか自分で理解出来ない。
かつて、アスランに突っ掛かったときと似た感情が湧く。
何かを許せない、けれども何を許せないのか。
目の前にいる少女を愚弄する気は無いというのに
対するティアナは怒りで満ちながらも冷静に相手の戦力を分析する。
(元軍人ってことは訓練を受けていると思った方が良い…そうすると…)
元より本気でいくつもりの彼女の手に力がこもる。
互いの獲物が同じなら勝機はあると思う、ならば小細工無しの真っ向勝負で打ち倒す
今までの訓練の成果を出す、と意気込みながら。
開始の合図とともにティアナが突っ込む。
そのまま首筋を狙った一閃―――
シンはそれを身を捻って躱す。
(言うほど悪くはないのか)
相手に対する評価を改め、連撃を受け流す。
「はあああっ―――!」
ここぞとばかりによりいっそう鋭く斬りつけてくるティアナのナイフ
あろうことかシンはそれを素手で受け止めた。
「!」
突然の出来事に反応が遅れる。
それが命取りと言わんばかりに、シンはナイフをティアナの首筋にあてがう。
「ね、彼の能力なら必要なデバイスさえあれば戦えると思うんだ」
端から見ていたフェイトはなのはにそう告げた
「でも、魔力が無いんだよ?」
「それなら魔力無しで使えるデバイスさえあれば」
フェイトが彼を戦場に戻そうとする理由
それはなのはとて薄々感じている。
結局、彼が失ったものは彼自身が取り戻すしかない。
シンが六課メンバーの訓練を甘いと言ったのは、自分ならばもっと上手くやる、と言う気持ちの表れだ。
自分ならば、被害を最小限にしてみせる、否、被害など出さない、といったような。
「――――――」
分かっていてもデリケートな問題だけに即答は出来なかった。
「もし、彼が自分から言い出したら。それが条件だよ?」
シン自身が再び戦場に戻ると言い出すのなら、その時は出来ることはしよう。
だが、自身で戻ったので無いのならまた失うだけだ
「…分かった」
フェイトは頷き、再びシンを見た。
戦いに敗れ、信じたものに裏切られた彼が再び自ら羽ばたけることを切に願いながら。
最終更新:2008年09月08日 14:25