ARMORED CORE-10


認識から僅かに遅れ辛うじて動きの取れたジナイーダはミサイルに全武装を指向。
マシンガン、ロケット、マイクロミサイルが放たれ、遅れてシンも全火力をミサイルに集中する。
放たれた殆どが地上へと落ちる中、僅かに辿りついたマイクロミサイルの近接信管が大型ミサイルを捉えた。
空中にて爆散したミサイルの破片と爆風に大型ミサイルは僅かにその軌道を変えた。
シンたちが補給を受けた臨時前線司令部手前着弾し、黒煙が立ち昇った。
「エマさん!」
「シーラ!」
ジナイーダは珍しく声を荒げる。
「……こっ・ちはふ・・・大・・夫よ」
少し遅れ、ノイズ交じりの返答にシンとジナイーダは胸を撫で下ろす。
「「しまった!……奴らは!」」
二人は目を見開き、対峙していた方へと向き直る。
シンの目に入ったのは、機体を回収する為後部を開き、低く飛ぶ輸送機とそれに飛び乗る二機の姿だった。
「この借りはいずれ返す。 生きていたならまた会おう、シン・アスカ!」
「覚えておけシン・アスカ! 今日の屈辱は、いずれ返す」
ムームとガルムの声が通信機から流れ出る。
「何で!? レーダーには……ステルス?」
慌てて、レーダーを見ると、普通ならばくっきりと点の映る表示が点灯している。
レーダーに映り難い様に何らかの加工が施されているのだろう。
最初からミサイルの着弾時間、着弾後、こちらが防衛に徹することまで。
いや、万が一敗北し、回収される時の事まで考えていたのだ、ケルベロス・ガルムと言う男は。
(……これがベテランの傭兵)
自分の様に只前線で命令に従い、敵を倒し続けてきた自分とは違う、計算高く巧妙な、老獪さとでも言えば良いか。
今のシンに欠けている物だ。 
「レイ・ン・通し・・が敵陣地を発見、・・・・部隊と交戦・・との事です、こち・・もどっ・・・迎・撃……」
「クッ、通信施設がやられたのか……シンっ! 奴らとは、いずれ決着をつけよう……今は……任務を果たすんだ」
エマの声にさえ反応しない、呆然としたシンに気付き、ジナイーダは慰めるように声を掛けた。
「分かった。 だがこの借りはいずれ返す。……それは、こっちの台詞だ」
未熟さを噛み締め、拳を握り締める。 勝負に勝って、戦いに負けた。 
シン・アスカの中にある炎は敗北という燃料により強く燃え上がろうとしていた。


「メティス、ニブルヘイム収納完了、後部ハッチ閉めろ!」
大型輸送機内部、後ろに乗組員の怒鳴り声を聞きながら、ガルムは格納ブロックにある待機室の扉を閉めた。
冷蔵庫から酒瓶に入ったよく冷えた水を取り出し、浴びるように飲み干す。
傍らにあるあまり上質ではないソファーに腰を下ろし、天井を仰いだ。
「……ふう、肝が冷えるぜ」
ガルムが落ち着いたタイミングを計ったかのように、背は高いが痩せた、ひょろりとして黒い髪を箒のように固めた男が現われる。
高級そうなそうなスーツを着ているが、余り似合っていない。 
「ズベンか……」
ガルムはその男、ズベン・N・ゲネビを見るとゆっくりと立ち上がる。
角刈りに白髪交じりの黒髪。 身長は余り変わらないが体格が良いせいでズベンよりも一回り大きく見えた
「派手にやったな」
元レイヴンのマネージャー(現在のランク1『ナインブレイカーレイヴン』を騙そうとして逆に痛い目に合ったのが原因で辞めたらしい)は外の機体を見ながら話しかける。
「ああ、情報が正確で助かった。 あのまま続けていたら危なかったかもしれん……すぐ直るか?」
「じょっ、冗談じゃ!  ふっ……だが安心しな、すぐに……とはいかないぜ」
一歩たじろぎ、ズベンは自信満々に口にするが結局駄目らしい。 
「幾らパーツ交換だけすればいいっていっても、調整は必要だ。 ムームの嬢ちゃんはどうした?」
「……じきに来る筈だ」
「あっ、ズベン! 依頼主から通信が入ってるって」
ガルムの言葉を待っていたかのように赤毛の髪をボブショートに切り揃えたガルム達より頭二つほど小さい女性、ムームが扉を開け、通信機をズベンへと投げた。
「通信機投げんな! さんを付けろ小娘! ……こちらズベン・・・・はい・・ はあ」
「おいガルム! ミサイル発射した陣地から救援要請だ。 どうする?」
どうやら通信の相手は今回の依頼主だったらしい。
「冗談! 殺す気!?」
ムームは小柄の体を震わし怒りをあらわにする。
一方、平然と肩を竦めるガルム。
機体の破損状況から考えれば当然だろう。
「……だろうな安心しな、すぐに断ってやるよ! お前らはゆっくり休んどけ」
頼りになる笑顔を見せ、キャビンへと消えていくズベン。
(シン・アスカ、そしてジナイーダ。 ここで潰せなかったのは失敗かもしれん)
(シン・アスカこの借りは必ず返す)
「ああ、言うの忘れてた、迎撃機を振り切るため雲の中に入るから揺れるぜ」
様々な思いを乗せ、輸送機は雲の中に消えていった。

発電施設前面、臨時司令部。
当初辺り一面、白い雪だけだった風景にもはや面影は無い、撃墜、外れたミサイルの破片やら爆風やらで荒野と化していた。
「別働隊より通信です。 敵ミサイル陣地の制圧に成功したそうです」
エマのほっとしたような声が通信機から流れる。
「……やっと終わりか。 あっ、右手がもげた」
不愉快な金属音を立てショットガンを手にしていた右手がもげるように地面へと落ちた。
その瞬間、今までずっと発動していたSEEDが解除され、疲れが一気に押し寄せてきた。
「……久しぶりに疲れたな」
心底疲れたようでジナイーダは大きな溜息をついた。
最初のミサイル以降、実に40発近いミサイルがひたすら撃ち込まれた。
撃墜し、時には機体を盾にした結果、クリムゾンウイングは右手が取れ、両肩が吹き飛んだ。
ファシネーターは左腕が二の腕の辺りから無くなり、頭部もなくなっていた。
「お疲れ様、後続部隊が来たからもう安心よ」
シーラの声に二人はコックピットを開け、ヘルメットを脱いだ。
当初は寒いと思っていた風が、熱くなった体を冷まし、心地よかった。
「……そういえば、ミサイル基地、誰が潰してくれたんだろうな」
「誰でも構わん。 それより奴等の置いていったパーツ拾いに行くぞ……このままじゃ赤字だ」
「赤字は嫌だな(デスティニーのときの借金まだ返済終わってないし)……りょーかい」
「メインシステム戦闘モード終了します」
二機の戦闘コンピューターが同時に戦闘終了を告げた。

「高速輸送機の境域離脱を確認、今から追撃は不可能だな」
妙齢の女性の声が戦場に響いた。
「ACは逃したか」
黒煙が上がり、炎が吹き上がる地獄の中、二機の重装二脚ACが悠然と立つ。
双方が右手に矢をつがえた弓のような形の高出力レーザーライフル、カラサワを構えていた。
機体を闇さえ拒絶するだろう気高い黒に染め、どちらかといえば直線的なラインで構成された見覚えのあるAC。
フリッツ・パーンのアナイアレイターがグラスアイの頭部をもう一機へと向ける。
「仕方あるまい、彼はよくやった。 新人にしては、だが」アナイアレイターとは対照的に白と淡い青と灰色曲線で構成され
バケツのような、中世ヨーロッパの騎士が被っていた兜に似た頭部のAC、フォックスアイがシン達のいる方角を向いた。
高台であるここは下の風景を見渡せた。
「そう言うなよ、ジャック。 ACに触った事もない奴だぜ?」
フリッツはシンを庇うようにジャック、フォックスアイの操主。 レイヴン、ジャック・Oに言った。
「それは初耳だ。 そう言えばレジーナの報告書にそんな事が……使えるかもしれんな」
自分の知らない情報に興味をそそられたのか、何かをジャックは呟いた。
「使える? どういう意味だ、それは?」
使えると言うジャックの言葉に不快感を示し眉を吊り上げ、フリッツは聞き返した。
「……何を悪巧みしている、ジャック・O?」
フリッツに続けて、先程の妙齢の女性、フリッツのマネージャー、ラナ・ニールセンは胡散臭そうに言った。
「悪巧み? 言いがかりはよせ。 それにしても随分彼に肩入れするのだな、かつての自分に似ているからか?」
「ちっ、貴様には関係ないだろう。 陰謀、策謀家がよく言う」
「そう言うな。 数少ないカラサワ使い同士、仲良くやろうじゃないか」
確かに唐沢はその重量から使い手が殆どいなかった。
かといって二人は別段、仲が良い訳ではない。
「言っていろ アナイアレイター帰還する」
アナイアレイターは自分の用は終わったといわんばかりに派手にブーストを吹かし去っていった。
そんな中、ジャックは機体を降りたシンの映像を見ながら思考する。
(シン・アスカか追い詰められたあの時、明らかに動きが変わった)
(可能性があるかもしれん。 ランク1『ナインブレイカー、レイヴン』やフリッツと同じイレギュラーの)
(正確に言うなら先天的戦闘適合人種ドミナント。 いや寧ろ……、いずれにしても、確かめる必要が有るか)

頭部YH14-STING
レーザーライフルWR05L-SHSADE
ミサイルカウンターRURIを回収しました


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最終更新:2008年09月22日 13:52
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