突発的思いつき企画
○○はシンの嫁シリーズ第3弾
yagamiはシンの嫁
或いはもしもの可能性
機動6課解散から数年後。
ミッドチルダ、時空管理局地上本部内に新しい部隊が創設された。
その名を第6独立部隊、緊急機動対策班。通称『新機動6課』
その長は勿論八神はやて。 そしてその傍らには赤い目を持つ黒髪の男、シン・アスカの姿があった。
これはそんな有り得るかも知れない可能性の話。
「なあ、シン」 書類の山に埋もれながら、はやては姿の見えない公私共に頼れる相方に話しかけた。
「なんですか隊長? あっ、リィンついでにこれ、コピーしてくれ」 シンはリィンⅡに書類を渡し、答えた。
「……仕事なんかやめて、デートにでもいかへんか?」 その言動に配属されたばかりの周りの隊員は思わずずっこけた。
「何言ってるんですか、やらなきゃいけない仕事は山積みですよ……あ、これサインください」
「ううー冷たいなあシンは……」 がっかりとした表情でうなだれるはやて。
それでもサインを書く手を止めないのは流石というべきか。
「そんな事ありませんよ。 あっ、お昼はどうします?」
サインが書かれているか確認し終えたシンは、首だけをはやてに向けた。
「そやなぁ、午後から聖王教会に用事があるから、どこか外で食べよか」
先程のがっかりとした様子はどこ吹く風で嬉しそうにはやては言う。
「じゃあ、この間美味いレストラン見つけたんですよ。 其処にしましょう」
「うん、私は何処でもええよ……ああ、どこか旅行でも行きたいなあ(シンと二人きりで)」
遠い目で何処か遠くを見つめ、はやては呟く。
「俺は兎も角、隊長は休み取れませんよ」
リィンから書類を受け取り、シンは答える。
「わかっとるけど夢ぐらい見させてくれてもええやん」
「業務に差し支えない限りならどうぞ」
「フフフ、言うたな後悔してもしらへんで」
不気味な笑みを浮かべるはやて。
周りの職員はまたかと、呆れながら仕事を続ける。
以下はやてもとい、yagamiの妄想。
「はやて、愛してる」
「シンだめや、まだ業務中やで」
「そんなの関係ない今はやてが欲しいんだ」
「シン………」
「うおオおオおオお二人の愛は不滅やーーーー」
俯き、何かを呟いていたはやては突如として立ち上がり、叫んだ。
そして書類の山を次々に処理していく。
それはまるで巨大な印刷機のようであった。
「ただいまもど……また始まったのか?」
「またなの……」
別の部署へと出かけていたティアナとヴァイスの二人は、自らの上司の状態に同時に溜息をついた。
「すごいよなー、印刷機みたいだよ、あっここ判子二ヶ所です」
本来暴走を止めるべき役目のシンは安全な距離を保ったまま、飛んできた書類を整理し、時折間違いを指摘した後
印刷機と化したはやての目の前に投げ入れている。
「あんたが止めないからでしょう!」 軽い頭痛を感じたティアナは思わず叫んだ。
ちなみにヴォルケンの面々は現在出張や外出中であるためこの場にはいない。
いたとしても妄想爆発状態のyagamiを止められるとは思えないが。
「隊長、二人がきたんで一息入れましょう、俺コーヒー入れてきます」
そんなティアナの意見を聞いているのか、飄々とした態度でシンははやてに話し掛ける。
「うん、そうやね、私いつものでな」
シンの声を聞いた途端はやての動きはぴたりと止まり、さわやかな笑顔をシンへと向ける。
「了解です」
それを聞いたシンは鼻歌交じりに給湯室へと歩いて行く。
(こいつ、こんな性格だったかな?)と悩むヴァイスの横でティアナは思う。
(私は何処で道を間違えたのだろう?)
(…………いや、分かっている、あの日だ)
旧機動6課解散が数日まで迫ったあの日。 シンの愛機、デスティニーはその機能を停止した。
正規の交換部品も無いまま、有り物の部品で何とかその寿命を延ばしてきたデスティニーだったが、今回はどうしようもなかった。
何故なら、今回不具合を起こしたのは、デスティニーの心臓部分。
ハイパーデュートリオンの核分裂炉だったのだ。
核エンジンのパーツ等、いかに管理局とはいえど手に入るはずも無く。
動かぬ鉄塊となったデスティニーは核エンジンを取り外されされ、管理局本部へと移送された。
自分の半身とも言える機体を失い、存在意義を失ったと思い込んだシンの落ち込み様は半端ではなく、
数日間自室に閉じ篭り、水の1滴すら飲まなかった。
そんな状況を打破したのがyagamiもとい、はやてだったのである。
シンの部屋の扉を蹴破ったはやては、
「シン! デスティニーが有ろうが無かろうが、私には関係あらへん! 仕事が、居場所が無い言うなら私が作ったる!」
「あんたのことは、私が責任を持って、『一生』面倒(旦那的な意味で)見たる!」
「隊長、貴方は其処まで俺の将来の事を(職業的な意味で)考えてくれるなんて……」
「俺、一生隊長、いえ八神はやてについていきます!(部下として)」
「シン、私もうれしいわ、付いて来てくれるんか!(伴侶として)」
「当たり前じゃないですか!」
誤解の積み重ねである。
だが世界は、はやてに追い風だった
誤解であることに気付いた後もシンははやての傍らに居た。
本人曰く、「何て言うか、目の離せないって言うか、この人には俺が付いて無きゃって思ったんです」
もう某の○太君に対する某し○かちゃん状態である。
普通逆だろと突っ込む無かれ。
その後魔力の無い欠点を補うため、ありとあらゆる次元の戦術、戦略を学び、
管理局入りしたシンは戦術参謀としてはやての副官となり、現在に至るわけだ。
これに関してシンは、『今迄で軍人やってて一番つらかった』
『アスランや艦長、副長、白服、黒服の人の気持ちがやっと分かった、出来るなら会ってあやまりたい』とコメントを残している。
本来シンの特性は先走りがちな性格からから戦場に楔を打ち込むフロントアタッカー(切り込み隊長)
もしくは全距離対応能力から考えて攻撃にも防御にも使える遊撃手である。
どう考えても後方にいて、指揮及び作戦立案をする参謀型ではない。
ものすっごく甘く見ても前線指揮官が精々である。
そんなシンが参謀役として板に付くまで血の涙を流すほどに勉強したというのは想像に難くない。
そりゃ性格すら変わってもしょうがないのである。
ちなみに暴走しがちだったはやてを押さえ込めるということで上層部は喜んでシンの管理局を了承し、さっさと副官にした。
暴走しなければ、はやては(政治的な)仕事は出来る人だが、戦闘、戦術指揮に関してはイマイチなので。
戦闘、戦術面に特化したシンの存在は、はやて、上層部からしてみれば願っても無いことで。
シンからすれば、はやての側に居れると言う最高の条件で、シンの管理局入りはみんなが幸せになれるすばらしい提案だったのだ。(数人の女性は除く)
「アナ、……ティアナ!」
「なっ、何?」
前述の数人の女性の一人こと、思考の海に飲み込まれていたティアナはシンの声に現実へと引き戻される。
「いや、いつもみたいにミルク抜き、砂糖二つで良いよなって聞いたんだが……」
「あはは、うん、いつもので大丈夫」
何とかぎこちない笑みを作るとティアナは答える。
「疲れてるんじゃないのか? 気を付けろよ」
本当に心配そうにティアナの顔をシンは見つめる。
「う、うん」
「おーいシン、俺ブラックなー」 ヴァイスの声にシンは振り向く。
「はーい、了解です」
答えるとシンは給湯室へと足どり軽く向かっていった。
「あっ、もうこんな時間か」
再び書類の整理を行っていたシンは、ふと時計を見上げ、呟いた。
「八神隊長、なのはさんから、近接戦闘訓練の手伝い頼まれてたんで、ちょっと行ってきます」
足元から手提げかばんを取り出し、シンは、はやてに言った。
「うん、気をつけてな、あとなのはちゃんによろしゅう言うといてな」
今は教導隊へと戻った親友の顔を思い浮かべ、はやては微笑む。
「はい。 昼までには戻れると思いますので」
時間がないのかシンは一礼すると、足早に部屋を後にした。
「はああーーーーー」
シンの顔が見えなくなった瞬間、はやては大きな溜息をついた。
「どうしたんですか、はやてちゃん?」
リィンⅡが心配そうにはやての顔を覗き込んだ。
「リィン、ヴァイス君、シンは私の事愛してるんやろうか?」
はやての爆弾発言に、リィンⅡはずっこけ、思わずヴァイスはモニターにコーヒーを噴出した。
「いきなり、なにいってるんですか!」
コーヒー塗れのモニターはさておき、口元を拭うとヴァイスは叫んだ。
「なんか態度も冷たいしなぁ」
ヴァイスの叫びも空しく、はやては再び溜息をつく。
「………いらないなら貰いますよ(ボソ」
白い目でそんなやり取りを見つめ、聞こえないような声でティアナは呟く。
「それは駄目や!」
「何が駄目なんです?」
思わず立ち上がり机を叩いたはやての後ろから声が掛けられる。
「シン! 何で戻ってきたんや!」
「いや、その、ナイフ……忘れちゃいまして」
照れくさそうにシンは答える。
「そ、そうか、早く行かんと時間なくなるで」
はやてもまた照れくさそうにシンを促す。
「あっ、はい。 ああ、それと隊長」
ナイフをカバンへとしまったシンはドアの前で立ち止まり振り向いた。
「俺、ちゃんとはやての事好き、ってか愛してますから」
「それじゃあ行ってきます」
真顔で言うとシンは小走りで駆けて行く。
「……………」
沈黙に包まれる室内。
(気、気まずい)
気を利かせたヴァイスが声を出そうとした瞬間。
ボン、ガシャーーン
そんな音をたててはやてが倒れる。
「たッ、隊長!」
「はやてちゃん!」
あわててヴァイスとリィンが駆け寄ると真っ赤な顔をしたはやてが、幸せそうに倒れていたそうな。
「ハァーーー………やってらんないわ」
ティアナの溜息が空しく室内に響いた。
最終更新:2008年09月23日 03:27