――前回のあらすじ。
真 「どーしよ?(´・ω・`) 」
シン「どーしろと……」
あらすじ終わり。
ゲームセンターを後にして途中追いかけてきたファン――主に真の追っかけ(♀)だったが――を
なんとか振り切り、今度は大型書店へと足を踏み入れていた。
「初めて来たけど、こんなにデカイとこだったんだな」
「ここらへんじゃ一番大きな本屋だからね。品揃えもいいしたまに寄るんだ」
「……そんなにいっぱい本があるんだ」
「あ、そうだ。お茶の本のコーナーもあるんだ。こっちの方なんだけど……」
もはや慣れてしまったのか、先ほどの騒動などなかったかのように真は嬉しそうに説明し始めた。
誰かに何かを教える立場になる機会が少ないからか、はしゃぎ気味の真にシンはそっと耳打ちした。
(……おい真、最初の目的忘れてないよな?)
(わかってるって。収録で失敗して落ち込んでる雪歩を元気づけるためにこうしていろいろ周ってるわけだし)
(分かりやすい説明はいいけど、さっきのゲームセンターみたいなことにはならないよな?)
(大丈夫、ボクに任せといてよ。へへっ!)
軽く突き出された拳に反射的に拳を合わせ、本を読み耽る雪歩の元へ駆け寄った真の背中を見つつシンは嫌な
予感を拭えずにいた……
「……マンガ?」
「うん、雪歩が好きなマンガとかってある?」
「私は、その、あんまりそういうのって読まないから」
「あ、それでなんだ。事務所でボクや亜美真美のマンガ楽しそうに読んでたのは」
「ふぇっ!? そ、それはその……」
「ははっ、そんなに照れなくてもいいのに。じゃあさ、これからマンガを買いに行こうか」
「え? で、でも……」
「大丈夫、事務所に置かせてもらったりボクが預かるって手もあるからさ」
「……そ、それじゃあ買ってみようかな?」
「よしっ、決まりっ! シン、マンガのコーナーに行くよ!」
「あ、あぁ……」
言われたとおりに真にすべて任せていたシンはあまりにもスムーズに決まった一連の流れに目が点に
なっていた。
自発的に行動することがほとんどない雪歩を誘うのはある意味当然なのだが、それでも引っ込み思案な
性格故に動けなくなる場合も多いのでこういった説得は難しいと思われたのだが……
「? どうかした?」
「……いや、なんでもない」
――真ってジゴロの才能あるかもな。
などと思っていたなど言えるはずもなかった。
言えばこんな人のいる場所であろうと即正中線五段突きをお見舞いされた挙句『当てない打撃』のフルコース
をいただくことになるだろうということは容易に想像できた。
……765プロダクション、
社長・高木順一郎の「ティンときた!」の一言から周囲を巻き込むとんでもない事態が日常的に巻き起こる
魔窟である。
(……本当に仲が良いんだな)
手を引き笑顔で歩く真と手を引かれ困惑気味ではあるが小さく笑みを浮かべる雪歩。
その二人から数歩分離れて後を追いながら、そういえば自分がこちらに来たときから仲が良かったなとシンは
思い出していた。
「……マンガって、こんなにあるんだな」
「まぁこれだけ揃えてるのは珍しいけどね。でも大体どこもこんな感じだよ」
ズラリと立ち並ぶ本棚の数に圧倒され、半ば呆然とするシンに真は得意げに語る。
しかし隣の雪歩もポカンと口を半開きにしているのを見る限りはとてもではないが普通とは言い切れない
ようだ。
「あ、そういえばシンは普段どんなマンガ読んでるっけ?」
「俺? 俺はあんまり読まないから……」
「じゃあシンも探してみなよ。自慢じゃないけどボク結構詳しいからさ!」
そう言いながら真は一瞬雪歩に目を向け、すぐにシンへと戻した。
(……あぁ、そういうことか)
もしここで遠慮してしまっては雪歩も素直に楽しめないかもしれない。そんな可能性も考慮した上での誘い
であると察したシンは小さくため息を吐きながらできるだけ自然に仕方なさそうに頷いた。
「はぁ、わかったよ。でもあんまり変なのは勧めるなよな」
「へへっ、大丈夫! シンも楽しめそうなものもきっと見つかるって!」
「だったらいいけどな……ってそっちは少女コミックとか書いてあるだろ!?」
宣言からすぐに予想外な方向に進み始めた真を慌てて止めるシンだったが、ビシッと目の前に指を突き付けら
れて動きを止めた。
「ちっちっちー、最近は男の人でも読める少女マンガも多いんだよ」
「だからっていきなりそれは敷居が高すぎないか?」
「まぁまぁ、騙されたと思って読んでみてよ。ほら、これなんかどう?」
「ホスト……? どんなマンガなんだこれ」
「ある女の子が学校のホストクラブに入部させられてさ……」
そうして盛り上がり始めるシンと真だったが、その様子を雪歩は半歩離れたところで複雑そうに見つめていた。
(……真ちゃんとシンさん、楽しそう)
二人は雪歩も会話に入りやすいようにしているつもりなのだが、雪歩にとってはその間に自分が入り込める
ことなどできないと思いこんでしまうほどの疎外感を覚えていた
胸の内に不安が募る。そして普段自分といるときとはまた違う顔を見せる真を見て、とある予感に行き着いた。
(真ちゃんって、シンさんのことが好きなのかな……?)
――ドクン!
「ふえぇっ!?」
「っ!? どうした雪歩?」
「大丈夫? 何かあったとか?」
「な、なん、なんでもないですぅっ!」
ブンブンと頭を振る姿はどう見てもなんでもないようには見えないのだが、とりあえず二人はそれ以上追及
しないようにした。図らずともこの事態で雪歩を置いてけぼりにしてしまったことに気付いたので今度こそ
雪歩も交えてマンガ探しをすることとなった。
しかし、雪歩の鼓動はしばらくの間落ち着くことはなかった。
最終更新:2009年06月02日 16:25