~ハマーンさん家のシン君~ 03

1

それは特別な出会いなんかじゃなかった。

何て事のない日
何て事のない場所
何て事のない出会いだった。

大学入学が決まって、新しく一人暮らしを始める事になった私は街並を覚えがてら散歩していた。
それなのに、どんくさいとよく言われる私は転んだ拍子にコンタクトを落としてしまった。
私は周りの目も忘れて座り込んで必死に探していた。迂闊な事に予備の眼鏡も持っていなかったのだ。
かといって裸眼で歩くには余りにも私の視界は覚束なくて、正直途方に暮れていた。

周りの人はただ、ただ私を見ながら通り過ぎていくだけ。
見知らぬ街、見知らぬ人々、空でさえも私には見知らぬものに見えた。
転んだ拍子に擦り剥いた膝はじくじくと痛みを訴えかける。
座り込んで這い回る自分が何だかとても惨めに思えて、情けなくて、悲しかった。
滲んでくる涙はどうしようもなくて、堪えようとすればするほど私の視界に溢れてくる。
泣いている顔を見せるのが恥かしくて、悔しくて、私は意地でも顔を上げるものかと、せめてもの意地を張っていた。


「あの……大丈夫ですか?」


とても近くからかけられた声に、座り込んで俯いていた私は咄嗟に顔を上げた。
滲んだ視界にその紅の瞳だけが、ひどく煌々と鮮やかに映った。
その時の私の気持ちを一体どうしたら伝えられるのだろうか。
その時の私の悦びを一体どんな言葉に置き換えられるだろうか。
寂しくて、心細くて、悲しい気持ちに不意に与えられた何気ない温かな声に、私は更に泣いてしまった。
声の主は、自分が何か不味い事を言ってしまったのではないのかと、酷く慌てふためいていた。
それでも、逃げ出さずに、訳を聞くと私に付き合って日が沈むまで一緒にコンタクトを探してくれた。
結局見つからなくて、もう諦めようと折れたのは私の方だった。
それでも諦めずに探そうとするのを、何とか説き伏せて、渋々帰る事にした時だった。

「遅いから送りますよ」

そう言ってくれたのを、流石に其処までしてもらっては申し訳ないと言うと、逆に怒られてしまった。

「何馬鹿な事言ってるんですか!!アンタみたいな綺麗な人が夜道を一人で歩いていたら襲ってくださいって言ってるようなもんだろ!!」

そういって、半ば強引に私の手を引っ張って送ってくれた。
声には何処か幼さが微かに残っていて、一体幾つなんだろうかと疑問に思った。
でも掴まれた手の温かさと、細くてゴツゴツした男の人の感触に、それを聞き出す勇気が出なかった。
家までの道を、手を繋いで、目が殆ど見えずにいる私が転んでしまわないように、ゆっくりと歩幅を合わせてくれた優しさにまた涙が出て、
日が沈みすっかり暗くなった闇の中でこっそりと拭った。

具体的な住所を聞かれて答えると、声の主は酷く驚いていた。
彼の家の隣に建ったアパートの一室が私の新たな住処だったのだから。
家に着くと、帰ろうとするその人を私は部屋に上がるようにお願いした。
せめて、お礼にお茶でもと思ったからだ。
ところが、私はそこでまた怒られた。


「こんな時間に男を部屋に入れるなんて、無防備にも程があるぞ、アンタ!!」


負けん気の強そうな男の子の声だと思っていたが、その割りに妙にしっかりした口調であった。
あまりの剣幕に、思わずゴメンなさいと謝ると、今度は一転してオロオロとし始めた。

「ご、ゴメン…俺、口調がキツイってよく言われて、その、とにかく、アンタみたいな人は警戒のし過ぎで丁度いいんだから気をつけろよ」

と拗ねたように漏らした言葉に、私は思わず笑ってしまった。
そんな人が送り狼になるとは思えないのだけど、彼の気遣いを無にするわけにもいかず、私は後日お礼に伺いたいから、と家の住所を教えてもらった。

次の日、私は何故か酷く緊張していた。
鏡の前で何度も髪の毛の乱れが無いか、服装は可笑しくないか、何度も何度も入念にチェックを怠らなかった。
ぼやけた視界で顔も見えない相手に、しかもお隣さんにお礼に行くだけなのに、何度も何度も入念にチェックをした。

家の前に着いて、インターフォンを鳴らそうとして重大な事に気付いた。
名前を聞いていなかったのだ。
一体何と言って鳴らせば良いのだろうか。
名前も知らないのにお礼っておかしいだろうか。
一度悪い方向に考えてしまうと、どんどんその方向へ思考が沈み込んでしまうのが私の悪い癖だった。
そうやってまごついていたのは一体どれ程の時間だったのだろうか。


「アンタ、一体何してるんですか?」


後ろから不意討ちのように声をかけられ、叫び声を上げなかった自分に拍手喝采を送りたかった。
不審気な声に、どう弁明すれば不審者以外の何者でもない我が身を説明できるのかと、あれこれ考えながら振り向くと、

「アレ…もしかして、昨日の…?」

そこには、制服を着崩して、カバンを肩にかけ、部活の帰りなのか微かに汗の香りをさせた黒髪の凛とした少年がいた。
まだ幼さの残る顔立ちに、ぶっきらぼうな空気を纏う少年がすぐに昨日の彼だとわかった。
その相貌に煌く真紅の瞳に再び釘付けになり、その時私は完全に魅入られてしまったのだった。



yagami「……一体なんやこれはーーーー!!」

背景に大津波を巻き起こしながら放り投げたのは日記帳。
表紙には『せっちゃんの日記』とある。
日付から見るに、シン君と初めて出会った日のセツコさんの日記のようだ。

なのは「……時空転移とか空から落ちてきたとか、流れ着いたとかじゃないの?」
フェイト「普通の恋愛モノみたいな出会いなのが…」
ティアナ「逆に危機感を煽るのは……何故かな?かな?」

yagami「ええーい!!立てよ六課!!我々の戦力は圧倒的ではないか!!」

~ハマーンさん家~

ハマーン様「フッ…腕力がモノを言うのはファンタジーの世界だけだよ」(ピキーン)

シン「ん?母さん何か言った?」
ハマーン「いや、お前がセツコ君を初めてナンパした日の事を思い出していただけだ」
セツコ「な、なんぱ…////」
シン「な、何人聞きの悪いこと言ってるのさ!!」

カミーユ「そうだよ、母さん。シンはそんな破廉恥な真似をする子に育てた覚えは無いよ!!」
アムロ「カミーユ…そのセリフは普通父さんが言うものなんだが…」

クワトロ「な…なん…だと…?ナギ様中古問題…鬱だ死のう…」

アムロ「うん、なんでもない」
ハマーン「フン、セツコ君の見目が麗しくなかったら果たして夕暮れ時まで付き合ったかな…?」
シン「なッ…////」
ハマーン「シン…『エッチで綺麗なお姉さん』…ベッドの下というのは芸がないぞ」
シン「!?////////あ、あああ、あれはアム兄が……」

アムロ(シンが気に入ってたからあげたのだが…)

ハマーン「ふ、それより、料理教室の続きでもしたらどうだ?」

シン「あ、ああゴメンよ、セツコさん。えっと、ほら包丁はこう持ってリズミカルにトントントンと…力入れちゃダメだってば」

後ろから手を重ねつつ指導。

セツコ「は、はひ…///////」



カミーユ(まぁ、あの体勢で力むなって言う方が無理だよ…
     ていうかいつも思うんだけど、シンは何とも思わないのかな兄さん)
アムロ(いや、シンは料理を作ってる時は恐ろしく集中してるからな。雑念が一切無いんだよ)
カミーユ(ああ…だからセツコさんが帰った後でベッドでゴロゴロしてるんだ…)
ハマーン(ちなみに、同時刻にセツコ君もゴロゴロしてるぞ)


2

「サンドマン…あれは一体…!?」
「エイジか…あれは、私がグラヴィオンのモデルにした機体だよ…」
「何だってんだよ奴らは!?」
「重力を、そして次元を操る許されざる者達」
訪れる破滅の足音。
傷だらけのアルティメットグラヴィオン。



「セツコさん……この設計図を…シンに…」
「カミーユ君、これは…ッ」
「グルンガスト……ロストマウンテンで見つかった機体の設計図を元にシンの為に俺とアムロさんが設計したものです」
「どうして私に…?」
「この機体には貴女が必要ですから…さぁ、ここは俺が引き受けますから早く!!」
涙を振り切り、親友の元へと羽ばたくバルゴラを見送ると、大軍となって押し寄せる宇宙クジラの大群に立ち向かうたった一機のゼータガンダム。



「ホント……ソックリだね…殺してやりたいくらいだよ……」
「何なんだよ!!アンタは!?」
「僕はレン・オハラ……初めまして、『お父さん』?」
奪われたはずのデスティニーに、シン専用ヒュッケバインは翻弄される。
そしてシンとは似て非なるクリムゾンの瞳を持つ少年に告げられる衝撃の事実。


「セツコさん…」
「シン君…」
「コレが、カミーユが…アムロさんが俺達に託してくれた機体…」
「シン君、一緒に…一緒に行こう?」
「ああ、ずっと…ずっと俺達は離れない……これが俺達の剣……」
「うん。お互いを想い合う力で事実上無限のエネルギーを生み出すオーバーテクノロジーの結晶」
「バルディオスの次元跳躍能力…アクエリオンの想いを力にする能力…サイコフレーム…」
二人が見上げるのは、人類の、銀河系の最後の希望。



「これが俺達の…」
「これが私達の…」
「「運命を断つ剣…ッ!!ダイゼンガー・極限太極式!!!」」

銀河を切り裂く大剣を掲げ、遂に最後の戦いが始まる。



スーパーロボット大戦ZZ


君が見るのは人類の最後か、人類の未来か、それとも…




シン「母さん…これ何?」
ハマーン様「最初は本職ではないからと辞退していたのだが、なにぶん仕事が早く片付いてしまって暇だったのでな。
戯れに断っていたゲームのシナリオを1、2時間程度で書き上げたのだ。
携帯ゲーム機だというのでまぁいいだろうと思って適当に引き受けたのだがまさかPS3で発売されるとはうっかりしていた」
シン「っていうか、実名な上に、セツコさんまで出てるよ……しかも、何時の間にこんな声録ったのさ?」
ハマーン様「クワトロがボーカロイドを自作して作ったのだ」
シン「父さん凄いな!!」

クワトロ「見たまえ。シンの私を見つめる尊敬の眼差しを」(うっとり)

カミーユ(凄いけど、ああはなりたくないって顔してる…)
アムロ(凄いけど才能の無駄遣いって顔でもあるな…)


~セツコさんのアパート~
セツコ「え、えええッ!?そ、そんなゲームとはいえシン君とキス……それに子供って……//////////キュウ…」(くらッ)


3

カミーユ「シ~ン♪ガンガンやろうか~」

カミーユ兄さんゼータが出て、レジェンドがプレイヤーキャラとして出なかった事が余程ご機嫌なようです。
何故かGa○ktを歌いながらPSP片手に楽しげにリビングにやってきます。きっと綺麗なカミーユだからでしょう。
ちなみにあれだとZZは無い事になるそうなので無問題です。ハマーン様が凄まじいコスプレをしているのを見ずに済みますから。
ところで家でしか使わない携帯ゲーム機というのは果たして正しいのでしょうか?

アムロ「兄さんもまぜてもらおうかな。今日は仕事もないし」

兄さんはオーソドックスに初代様で行くかνで行くか贅沢な悩みを抱えながらやってきます。


ハマーン様「痴れ者共!!PSPでは大人しく狩りにでも出ていろ。弟離れの出来ない俗物どもが、家事を終えたシンの身体を愛うことも出来んのか」

わいわい、がやがやとやってきたお兄ちゃん達にハマーン様の一喝が響き渡ります。
ハマーン様の一喝、ファンには垂涎モノでしょう。現にハマーン様の担当をしているマシュマーさんは大枚をはたいて罵ってもらっています。
編集長は寧ろ大枚ではたかれています。無論「貴様の脂ぎった頬を叩いた札などこの私が受け取れると思うか?」というセリフがオプションで付きます。
その場合は+の金額を振り込まなければいけませんが、編集長は韓流スターを追いかけるお金を妻に回さない代わりにハマーン様に回しているのです。
振り込まれたお金はシン君に回されますが、シン君は基本的に無駄遣いせずに、主に食費に当てて他は貯蓄に回します。
そのかわりこだわりの食材を使って美味しい手料理を作ります。

美味しい手料理を食べたハマーン様やアムロ兄さん、クワトロ父さんは明日の活力を付け、仕事に精力的に取り組み会社に大きな利益をもたらします。
一部上場企業の利潤アップは国内の経済を支える事につながります。世の中は上手く出来ていますね。
つまり、ハマーン様は国内資金の海流出を防ぎ尚且つ国内のお金の循環をスムーズにしているというわけです。


クワトロ「このキュベレイのパイロット私に(性的に)プレッシャーをかけてくるとは……何という事だ、私が出ていなかったZZに限って…
     このキュベレイであれば私はZで(萌え)死んでいたな……」


因みにクワトロ父さんは政治家だったりします。誰ですか?今「ニートだろ?ぷげらw」と笑ったのは。
政治家なんて大体こんなものですよ?こう見えてもクワトロ父さんは優秀です。秋葉原に造詣の深い現首相以上にサブカルに詳しく、また
自分たちで選んどいて好き放題批判し放題の他の政党の党首よりも理想に燃え、(黙っていれば)甘いビジュアルに女性支持者が後を絶ちません。
その影に、スーツをノースリーブにしようとする父さんを必死に止めたシン君、アムロ兄さん、カミーユ兄さんの苦労があったのは知られざる事実です。
歴史を左右する事というのは存外知られていないものです。


カミーユ「そんな、せっかくガンガンも出たんだし、兄弟の絆を深めるためにもタッグプレイを!!」
アムロ「それはエゴだよカミーユ。Zであれだけ仲良しだったんだから此処は兄さんに譲るべきだろう!!」

ハマーン様「黙れ!!愚息共が。家で携帯ゲーム機などしおって。白いキュベレイが出ていなければ何の価値も無いのだ、そのようなゲームは!!」

全く同感です。

ハマーン様「全く…揃いも揃って弟にベッタリの奴らめ…アムロ、お前はだから特定の彼女も出来んのだ。カミーユ、弟を優先して修羅場を作るのも大概に しておけ、いつシンに火の粉が掛かるかわからんのだ。ナイスボートはお前だけで済ませておけ」

末っ子は一番可愛いとはこの事でしょう。ハマーン様は実の子であっても容赦がありません。


クワトロ「しかし…このゴールドスモー…見れば見るほど趣深い機体だな…」

個人的にカプルよりも出て欲しい機体でした。
最近のクワトロ父さんのマイブームはゴールドスモーと百式のパイロットを交換して、アカツキを含めて金色小隊で出撃することです。

余談ですが、クワトロ父さんの収入は寧ろ副業の方が高いです。副業が何かとはいえません。夏と冬の陣とか、もうすぐカタログがとか、
お父さんはシャッター前なんだよとか、一切わかりません。
一つ言えることが、秘書で女性向けの副業を担当している方の進言で女性向けのスペースにシン君を○音ミクの格好で売り子をさせようと画策
しているところをハマーン母さんに知られ、生きたまま生皮を剥がされる豚の如き悲鳴を上げた夜があったことだけは追記しておきます。
その事はお兄ちゃん達の連携プレイによりオールナイトのカラオケに出かけていたため、ただ一人NTじゃないシン君は知らないことです。


シン「母さん、言いすぎ。アム兄もカミ兄も俺の相手してくれるって言ってるんだから。それと動いちゃ危ないよ」
ハマーン様「ム?すまないなシン」

カミーユ「母さん……俺達には弟離れしておけとか言っておいて…」
アムロ「何で自分はシンの膝枕で耳掃除をしてもらってるんですか…」

シン「え?そういうものなんじゃないの?母さんが言ってたけど…」
ハマーン様「いや、間違っていないぞシン。末っ子というものは自分勝手に育ちがちだ。何故なら親兄弟に甘やかされ、自分は誰かの面倒をみるという
機会に乏しいからだ。だからこそ他人の面倒を見ることで自立心を失わぬようにするのが我が家の教育方針なのだ」

シン「へぇ~成る程ね。さすが母さん。あ、母さん、今度は右耳やるから反対向いて」
ハマーン様「わかった」

カミーユ(シン…また母さんに騙されてる……)
アムロ(母さんが単にシンに甘えたいだけなのに……でも命は惜しい)

流石にNTだけあって兄さん達は逆らったらどうなるのか、どういうオチが待っているのかを見切っているようです。
何はともあれ、今日もハマーンさん家はみんな仲良しです。



クワトロ「ゴールドスモーのマスターグレード化と、アナ姫のフィギュア化の嘆願書を書かねば…」


~セツコ宅~

セツコ「このクリスって人何か私に似てる?っていうかシン君……キュベレイの子にも『守る』って言ってるぅぅ……」




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最終更新:2008年12月07日 10:59
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