火焔猫燐編

「おや? この灼熱地獄にお客さんとは珍しいね、しかも烏天狗のお姉さんとはね」

「ん?あたいに聞きたい事があるって? シンお兄さんの事について話して欲しい?」

「そうだねぇ、別に話してもいいけど… タダとはいかないね、お姉さんの死体と交換でどうだい?」

「あぁ、別に今から死ねとは言わないさ、お姉さんが死んだ時にその死体をあたいが貰い受けて此処まで運ぶだけさ」

「ん? そりゃ此処に運ばれるから怨霊になるだろうねぇ 嫌かい? 怨霊生活も良いもんだけど、まぁお姉さんが嫌ならこの話はここまでで……」

「別に交換条件がある? そ、それは……!!」


「お姉さんも憎いことするねぇ、まさか大吟醸―ネコ殺し―を持ってきてるなんて、それなら早く言ってほしかったよ」

「んで? 何が聞きたいんだい? あたいとお兄さんとの出会いから?」

「そうだねぇ、あたいとシンお兄さんが出会ったのはこいし様が地霊殿にお兄さんを拾ってきた時だね」

「そのあたりはさとり様に聞いた? なら話は早いね、まぁ、お兄さんが新しいペットになったって訳であたい達と顔合わせした時が初めてだね」

「顔合わせの理由は簡単さ、あたい達が間違ってお兄さんを食べたり運んだりしないようにって事さ、あたい達も今や立派な妖怪だからねぇ」


「それで、新しいペットになったお兄さんの主な保護者役があたいだったのさ、死体運びで動かない人間とかを運ぶのはなれてたからね」

「朝起きたらお兄さんをベッドから居間に移動させて、食事が終わったら近くの椅子に座らせて、仕事から帰ってきたらお布団まで運ぶ」

「之が基本だったんだけどね、お兄さんの面倒見初めてから四日位してからかな? こいし様が急にお兄さんの面倒を見てくれるようになったのさ」

「まぁ、目的あってだったようだけどね、目的? 簡単な事さ、お兄さんの膝枕で昼寝する為に眠りやすい場所に移動させる為だったよ」

「あたいも最初はただ、こいし様がお昼寝しているのを見てるだけだったんだけど、こいし様が安心しきった顔で寝てるのに気付いてね」

「お兄さんの膝枕はそんなに安らげるのかな~ っと少し疑問に思って、こいし様がお散歩に出ているときに試してみたのさ」

「いやぁ~、凄かったね、なんていうか、心の奥底から落ち着いちゃったよ、なんていうか、居場所を『用意』してくれてるような感覚だったね」

「そう、用意さ、最初から居心地がいいんじゃなくて、あたいが膝の上に乗ったら居心地が良い場所にお兄さんが無意識にしてくれてるって感じだね」

「それでまぁ、こいし様だけじゃなくてあたいもお兄さんの膝枕に嵌っちゃったわけさ、猫は一番居心地が良い場所で眠るのが本能だからねぇ」

「そんなあたいとこいし様を見ててか、おくうも我慢できなくなったのかお兄さんの膝枕で眠るようになってね、最近ではさとり様もそうさ」

「でもまぁ、あまりに気持ちよすぎてあたいやおくうはついつい元の姿に戻っちゃうんだけどね、昔にさとり様の膝枕で寝てた時よりも気持ちいいからね」



「ん? その部分は後でいいからシンお兄さんが元気になった後の話を聞きたい? あぁ、さとり様は話してくれなかったってことかい?」

「まぁ、確かにお兄さんが元気になって直ぐ位の話はあたいに聞くのが最善だろうね、ただ、ネコ殺し一本じゃあ此処から先の話には足りないねぇ」

「お~、やるねお姉さん、鬼焼酎『火焔車』まで隠し持ってたとは、良いねぇ、最近地霊殿にも温泉を作ったし、そこでクイっと……」

「ん? あぁ、商談成立でいいよ、んじゃま、続きを話すとしますかね」


「元気になった経緯はさとり様からもう聞いてるよね? んじゃ其処から先の話をするとしますか」

「さとり様のお陰で元気になったシンお兄さんは先ず色々とこの幻想郷について学ぶ事になったのさ、外の人間だったからね」

「まぁ、そのお勉強自体はあまり時間はかからなかったよ、なんだかさとり様のお話はあっさりと受け入れてたようだから」

「さとり様に助けてもらったって事、多分本能的に理解してたんだろうね、だからさとり様のお言葉は信じるに値すると理解してたって訳さ」

「んで、そのお勉強が終わった後、お兄さんは「何もせずに居るのは気が引ける」っていって何かお仕事は無いかって働き始めたのさ」

「最初は地霊殿の掃除とか、鬼に手紙を届けてもらったりとかしてたんだけど、まぁそれで色々変な事に巻き込まれまくってね」

「その変な事の詳細? 残念だけどあたいの範疇じゃないね、鬼の星熊勇儀様や橋姫のパルスィ、あと土蜘蛛のヤマメあたりが騒動の中心らしいけどねぇ」

「そのあたりは直接本人達に聞いてみればいいさ、此処までこれるお姉さんならさっき言った面々に会うくらいはできるだろ?」


「まぁ、そんなこんなでお兄さんのトラブルメイカーっぷりを見かねたさとり様が地霊殿管理の仕事を任せる事にし始めたのさ」

「今じゃあおくうと一緒に地下核融合炉の制御を担当してるけどね、最初はあたいと一緒に死体運びと怨霊達の管理をしてたんだよ」

「まぁ、管理と言ってもあの頃のお兄さんは弾幕ごっこもできなかったし空も飛べなかったからもっぱら死体運びのお手伝いだったね」

「死体運びと言っても別に難しくは無いさ、あたいが地上から拾ってきた死体を燃料としてくべるだけだったから危険は無いさ」

「ただまぁ、その時お兄さんが不思議な行動してたんだよね、まぁ人間のお兄さんだから当然と言えば当然なんだろうけど」

「不思議な行動? そりゃ簡単な事さ、お弔いだよ、あたいが拾ってきた死体の身なりを正したり、くべる前に黙祷してたりね」

「人間からすれば当然だろう? ん? じゃあ何で不思議だと思ったかだって? あ~、そうか、お姉さんには理解できない感覚だったっけ」

「そうだね、あたいが不思議に思った理由は一つさ、お兄さんの魂にはおびただしい程の死臭がこびりついてたから、それが理由さ」

「魂に死臭、と言っても理解できないだろうね、まぁはっきり言ってしまえば、シンお兄さんはかなりの数の同族殺しをしてたって事だよ」

「いやいや、嘘なんかじゃないよ、まぁ、あたいだって普段なら気付かないよ、魂にこびりついてる死臭なんて滅多な事じゃ匂わないからね」

「ただ、シンお兄さんの匂いは格が違ってたって事さ まぁ、お兄さんは軍人だったって言うからその経由で殺しをしまくってたってことだろうね」

「しかし惜しいねぇ、お兄さんからアレだけ匂いがしてくる世界だったらあたいの仕事も捗りまくるのに…… ん?話がずれてる?」


「ん、あぁ、シンの兄さんがお弔いをしてた事からだったね、まぁ、さっき言ったようにあたいからすれば不思議だったからね、お兄さんに聞いてみたのさ」

「そ、『なんでそんな弔いなんてできるんだい? かなりの人間を殺してるだろうに』 ってね、あたいは回りくどいのが嫌だからね、はっきりきいたさ」

「それで、お兄さんは一言でその疑問に答えてくれたよ、『誰だって、死ぬ時は見送られたいと思うだろ?』ってさ」

「後で詳しく話を聞いたら、お兄さんの親友って人が『誰だって生きれるのなら生きたいだろう』っていう言葉をお兄さんに言ったらしくてね」

「それをお兄さんなりに吟味して、あたいが運んできた死体を見た時にそんな思いが出て来たって言ってたよ、案外それだけじゃないかもしれないけど」

「まぁ、お兄さんがお弔いしても怨霊が生まれなくなるわけじゃない、言っちゃえばお兄さんの自己満足の為の行動ではあったけどね」

「……それでも、少しは効果はあったよ、怨霊達がお兄さんに害をなそうとはしなくなったからね、それで結果的に仕事は捗るようになったわけさ」

「でもまぁ、しばらくして山の神様とお兄さんとの間に一悶着あって、その後からはお兄さんはおくうの仕事手伝いになっちゃったけど」

「あたいから話せるのはこんな所かね、もうこれ以上は代償ありでも話せないよ、ん? 最後に質問に答えてほしい? さとり様にも似たような事してなかったかい?」


「あたいから見たシンお兄さん? そうだね、あたいから見たシンお兄さんは…… 一言で言えば『寂しがりやの不器用な黒猫』かな」

「そ、黒猫さ、黒猫ってのは人間達には不吉の象徴とか言われて見た目だけで嫌われる事が多いだろ?」

「まぁ、シンお兄さんも不器用なせいで甘える事が苦手みたいだし、その癖寂しがりやだから孤高な生活なんてできない猫なのさ」

「それだったら他の動物でもいいだろうって? わかってないねぇ、猫ってのは好奇心も強いけど警戒心も強いんだよ? それでも、心を許した相手には甘えまくりさ」

「お兄さんは色んな相手に警戒してるけど、一度でも心を許した相手には甘える事も多いからね、だからこその猫なのさ」

「…あぁ、こうやって例えてて何となく気付いたよ、お兄さんがお弔いした本当の理由、きっと、シンお兄さんが最後に誰かに見取られたいって意思の表れだろうね」

「そう、自分の最後にさ、烏天狗のお姉さんは猫の最後って苦痛から逃れる為に安全な場所に逃げようとして、其処で死に至るって話を聞いた事ないかい?」

「まぁ、きっとシンお兄さんはその最後の時に、誰かの傍にいられる事が『安全な場所』だって思えるようになりたいんだろうね、 やっぱり寂しがりやの猫だねぇ♪」


「まぁそんな所かな…… そうそう、猫の発情期ってどんな物かカラスのお姉さんは知ってるかな?」

「簡単な物さ、雌が完全に主導権を握って、相手も雌が選ぶ、発情期のタイミングだって雌にあわせてになるのさ」

「何でこんな話をするかって? ん~…… まぁ、お姉さんを通してさとり様やおくう達への宣戦布告、かな? あたいはお兄さんの死体だけで満足する気はないってね」

「ま、あたいの話は此処まで、仕事もあるからここらで失礼するよ、お酒はありがたく貰っていくから♪」



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最終更新:2009年02月03日 22:34
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