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水橋パルスィ編

「あら、こんな所に烏天狗が何の用かしら? 貴方の妬ましい程の速度ならば私を気にせず先に進めるでしょう?」

「私に話し? へぇ… 地霊殿に住む人間についての新聞を作る為に取材をしてるって?」

「それで、私にもシンについて聞きたいって事なのね、別にいいわ、貴方のその図々しさが妬ましいけれど話してあげる」

「そうね、私とシンが出会ったのはシンが旧都の鬼、その中でも最強クラスの一人、力の四天王… そう、あの星熊勇儀と一緒に飛んでいた所ね」

「一緒に飛ぶ、と言ってもシンは勇儀の手に捕まってぶらさがっていると言う方が正しかったわね、仲睦まじそうで本当に妬ましかったわ」



「えぇ、あまりに妬ましかったからちょっと邪魔をしてやろうと星熊勇儀に弾幕ごっこを仕掛けたのが出会いのきっかけよ」

「流石に私の力であの鬼に勝てるはずなんて無いわ、それでも雰囲気を壊すくらいは出来ると思って嫉妬の弾幕を放ったの」

「伊達に鬼の四天王ではないと言うべきね、妬ましいほどの反射速度でシンを地面に降ろすと直ぐに私との弾幕ごっこを開始してたわ」

「そうなったら後はジリ貧ね、私が一つ、二つとスペルカードを使っていくなか、あの鬼は余裕の顔を一切崩そうとしていなかった」


「でも、戦いは強制中断になったわ、私が出した『大きな葛籠と小さな葛籠』の反撃弾幕にシンが巻き込まれたからよ」

「流石のあの鬼もそのまま戦おうとはしなかったし、私も別に本気で戦うつもりではなかったから其処で勝負はお流れ」

「それで、あの鬼は私に『気絶させた直接の原因なんだから起きるまで様子を見てろ』と言うと地霊殿のほうに飛んでいったわ」

「頭を強く撃ったから動かさない方がいいという判断だったようね、帰りに安定して運ぶ為に火車を呼びにいったんでしょう」



「それで、私はシンと二人っきりになってしまったわけよ、あの妬ましすぎるシンとね…… あら?何が妬ましいか分からないって感じね」

「いいわ、一つ一つ私が妬ましいと思う理由を詳細に語ってあげる」

「まず、私が一番最初にシンを妬ましいと思った理由、それは私と真逆の存在であったと言う事よ」

「いいえ、嫉妬をしないと言うわけじゃないわ、私以上に強い嫉妬をしてる時もあるくらいよ、でもね、シンは私とは逆の方向にその嫉妬を走らせたのよ」

「…貴方は私が橋姫となった経緯を知ってるかしら? 一応調べてきたようね、えぇ、私は夫に裏切られ、裏切った夫と夫と結ばれた女への嫉妬から鬼に代わったわ」

「そう、人間の強い嫉妬は人を鬼へと変貌させる、人間の心の醜さと、底知れぬ恐ろしさを持った妖怪でもあるのよ、この私は」

「だからこそ、私はシンの心の奥深くに渦巻いている嫉妬に気付いたわ、『幸せそうな家族が妬ましい』 『力を持っている奴が妬ましい』 他にも色々……」

「ふふふ、そんな私の持つ嫉妬さえも小さく見えそうな、あまりに大きな嫉妬に気付いた私は、あまりの妬ましさのあまりシンが起きた時にその事を叩きつけたわ」

「えぇ、てっきりシンが見てみぬ振りをしているから『人間』のままでいられるのかと思ってね……」

「でも、私の思いは裏切られたわ、シンはね、それさえも自覚していたの、自分の奥底に眠る膨大な嫉妬、それに気付いていながら、全てを恨み生きる事をしていなかったわ」


「寧ろその逆よ、自分がそんな境遇になったのだから、こんな『存在』をこれ以上作らない為に動いていたと言うのよ、私を全否定するような言葉よね」

「あまりに妬ましいわよね、あぁ、今思い出しても妬ましい、狂う位の嫉妬を抱え込んでおいて、それでも平然と人間として生きているシンが妬ましい、本当に妬ましい」

「……話が脱線しすぎている? 本当に、貴方の図々しさも妬ましいわね、まぁいいわ、話の続き… シンに彼の嫉妬の感情を叩きつけた後ね?」


「さっきも言ったけど、そのシンの言葉は私の全てを否定するような物でもあったわ、だからね、あまりの妬ましさにこう… 押し倒したのよ、地面に叩きつけるように」

「その後? 捕食者が獲物を殺さずに捕らえた後はこう…嬲る為でしょう? えぇ、こうやって爪を鋭く伸ばして、ゆっくりとシンの背中に突き刺していったの」

「ふふふ、当然でしょう? 確かに私は橋姫、橋を通る者を守る役目を持っているけれど、外の人間は例外… それが、地上の妖怪達にも通用するルールでしょう?」



「まぁ、結局殺してないって事はシンが今生きている事から分かるでしょうし、あまりこの部分を引っ張っても仕方ないわね」

「さて、私がシンの背中に爪をゆっくりと突き刺した所からだったわね、えぇ、あまりの妬ましさのあまりにいつそのまま引き裂くか解らない気分だったわ」

「それでも、シンは何故か私に手をあげる事もしなければ逃げようともしていなかったわ、ただ、痛みに身じろぎするだけ」

「あまりに反応が薄さに妬ましくなってきたからかしら、何故か私はシンに向かって、私が橋姫になった経緯を話していたわ」

「真意? そうね… 結局人間なんて『自分の都合のいい』方に流れる事、護ろうとしても簡単に裏切られ、最後は捨てられると言う事を見せ付けるためね」

「そうやってゆっくりと絶望の淵に落として嬲り殺そうと思ったのよ、私を裏切ったあの男と、私から幸せを奪ったあの女の様に……」

「そんな事したら地霊殿の妖怪達が黙っていないだろうって? えぇ、そうね、確かに貴方の言うとおり、でも、あまりの妬ましさにそんな事を考えてなんていられなかったわ」


「でも、何故かシンは私の話を聞いて余計に辛そうな顔をしただけだったわ、えぇ、痛みの辛さとは又違う顔、絶望したと言う顔でもなかったわね」

「何でそんな顔をしているのか、あの時の私には解らなかったわ、ただ、余計に妬ましいと思う心が強くなるだけだった」

「そして、あまりの妬ましさに私の臨界点を越えてね、爪を背中から引き抜いて、シンの喉を引き裂こうと思いっきり振りかぶったその時だったわ」


「……あぁ、今思い出しても妬ましい、自分が殺される寸前だったと言うのに、その殺そうとする相手を優しく抱きしめられるシンが本当に妬ましい……」

「えぇ、シンは、自分が殺される寸前だと言うのに何故か私の頭をこう、抱きかかえるようにして来たのよ」

「突然の行動で私はパニックを起こして妬ましいと思う事も一瞬忘れてしまったわ、でも、その後のシンの台詞で直ぐにまた妬ましいと思ったわ」

「そのシンの台詞? 本当に妬ましい言葉よ、『もう、自分を傷つけたりしなくていいから』…ですって、歯が浮くような台詞で妬ましいでしょう?」

「私はその言葉を聞いた瞬間、シンが一体何を言いたいのか分からなかったわ、あの時傷つけられているのはシンで、私は無傷だったもの」

「……でも、その後の言葉で、私はようやく自覚した事があったわ、『俺は殺されてもいいけど、お願いだからもう泣かないでくれ』…って 何のことかわかるかしら?」

「解らないわよね、えぇ、私も解らなかったわ…… 私が零していた涙が、私の靴の上に零れ落ちるまではね」

「……泣いていた理由? そうね…… シンが、あまりにもあの人に似ていたからよ」

「誰にですかって…? 本当、あなたはずけずけと人の心に入ろうとするわね、シンとはまた違った意味で妬ましいわ」

「…後で私が生み出したスペルカードの実験台、その代わりに話してあげるけど… 商談成立のようね」


「……私が、シンと似ていると感じた人、それは、私の夫よ…… 人間であった頃、私が初めて、そして唯一愛した夫………」

「私の髪、金色でしょう? これはね、生まれつきなのよ、目と耳は鬼になった後に変化したものだけど、この髪だけは生まれつきのまま」

「私が人間の頃はこの髪の色もあって珍しがられるか、恐れられるかのどっちかだったわ、今の外界だとあまり恐れられないというけどね、本当に妬ましい」

「…えぇ、恐れられた理由は一つよ、私の髪の色はこの幻想郷がある東方の世界には無い物だったから、所謂漂流者だったのよ、あの時の私は」

「力もなければ身寄りもない、そんな私を助けてくれたのが最初の夫、彼は私の髪の色なんて気にする事無く優しくしてくれたわ」

「えぇ、その辺りはシンも同じね、相手の外見を気にせずに優しくして、何時の間にか相手の心の奥に住み込んでしまう、本当に妬ましい才能の持ち主よね」

「でも、先に話したとおり夫は私を裏切ったわ、私があの人の子を宿し、つわりで苦しんでいる間に、あの人は外で女を作り、その女と生活する事に決めていたのよ」

「ふふふ、その後は改めて語る必要は無いわね、そう、私は鬼となり、夫とその女を嬲り殺したのよ、その一族もろともね………」

「その時の夫の言葉は今でも覚えているわよ『化け物!! 近寄るな!! 御前なんかと一緒になるんじゃなかった!!』って… 本当、人間らしい反応で妬ましかったわ」


「……本当、妬ましい、あの時、もしも、シンと同じような言葉を言ってくれれば、私が嫉妬のあまり鬼にならなければと、今でも少し思うくらいにね……」

「………今更そんな事を言っても仕方ないわね、あの人が私を裏切り、拒み、憎悪しながら死んでいったことも、私が鬼になった事も変わらないもの」


「さて、話を戻すわね、まぁ、私はシンに抱きしめられてもう妬ましいなんて思う余地がなくなってしまって、そのまま号泣してしまったのよ」

「…えぇ、号泣よ、何年… いえ、何百年ぶりにあんなに泣いたかしら…… あの人じゃないのに、ずっとほしかった言葉を言ってくれた事が嬉しくて……」

「…笑うかしら? 私はね、ずっと誰かに『もう泣かなくて良い』と言って欲しかったのよ、私の想いが、『悪』だと言われたくなかったのよ」

「そんなにおかしいかしら? 自分が愛した人に裏切られた悲しみのあまり復讐をしようと思う心が、そして、その心を理解して欲しいと思うことが」

「ふふふ、と言ってもそれを思い出したのはシンに言われてからだけどね、人間に退治されて、護りの橋姫となってからはずっと忘れていたわ」



「後で知ったけど、シンも私と似たような経験はしていたみたいね、シンの場合は裏切りではなく強奪、奪われた悲しみのあまり復讐に走ったらしいけど……」

「だとすると本当に運命の悪戯というものは妬ましいわね、裏切られた結果と、奪われた結果の『嫉妬心と絶望』が行きついた先を出会わせるなんて」


「その後の話を聞きたい? 別に特別な事なんてないわ、ただ、私がシンを傷つけたことを謝罪して、傷が癒えるまで私の隠れ家で住まわせるようにしただけよ」

「さとり達が文句を言わなかったかですって? いえ、特に無かったわね、まだあの地獄烏の騒ぎの後で地上から地霊殿に帰ってくる怨霊も多かった頃だもの」

「えぇ、怨霊よ、あの頃のシンはまだ怨霊から狙われる事も多かったもの、傷を癒すには不似合いな状況だったから私の家で休ませる事になったわ」


「……別にあなたが期待するような事件は起きてないわ」

「そうね、何かあったとすれば… リハビリついでにシンが散歩していた時にヤマメと知り合いになってちょっとした事件を起こしていたくらいね」

「……本当に妬ましい、誰彼構わず相手の心に入り込むシンのあの無邪気さが、他人を助ける為にあそこまで熱くなれるシンの優しさがそれを受けたあいつが妬ましい……」

「ン…? あぁ、御免なさい、ちょっと思い出し嫉妬をしてしまったわ、まぁ、私の話は此処までよ……」


「あら、何処に行こうというのかしら、スペルカードの実験台になってくれるって約束でしょう? 安心なさい、動けなくなったらワカメ汁位は食べさせてあげましょう」

「何故ワカメかって? それはどういう意味で? ……あぁ、そういえば此処では海の幸は貴重品だったわね てっきり忘れかけていたわ」

「えぇ、だってシンが定期的に乾燥ワカメとかを持ってきてくれたりする物、おすそ分けと言ってたわね、勇儀はスルメとかをもらうほうが嬉しいそうだけど」

「何処から仕入れているか? それは私は知らないわね、え? 秘密の仕入先があることが妬ましくないのかですって? こうやって分けてもらっているから妬ましくないわね」


「まぁ、お話は此処までよ、じゃあ、スペルカードの実験台になってもらうわよ、あのさとり以上の物を生み出さないと妬ましくて眠れなくなるもの」

「あぁ、別に打ち込んできてもいいわよ、耐え切れるなら…ね 嫉妬『エンヴィー オブ クリムゾンアイ』!!」





※弾幕を経験した射命丸記者曰く  文「あれは、葛篭とは比較にならない反撃です、早くなりながら、密度増加は…反則」




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最終更新:2009年02月06日 22:32
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