東方ネタ 簿記入門氏-05

「竹を取ってきなさい」

クリスマス、クリスマスといえばクリスマスツリー、クリスマスツリーといえば当然もみの木
なのだが、500歳にもなる永遠の幼女である当主から言われたのは竹をとってこいの一言であった。

「あの、お嬢様。クリスマスツリーに竹は…」
「何を言っているの、クリスマスには竹じゃない?」
「い、いや…っていうかいくら外と文明を遮断してるっていってもあんたらキリスト圏内なんだから
 そんくらいわかるだろ!」

シンの叫び声が紅魔館に響いた。当然であろう、この幻想郷は文明レベルは精々日本の明治レベル。
加えて外からの情報を遮断している為に日本はおろか外国の文化の新しい情報などあまり入ってこない。
結界のほころびから外の世界の住人が迷い込んでくるか、妖怪の山の神社のように新たに幻想郷入りを
果たすか、隙間妖怪が意図的に情報を流すかの方法でしか新しい情報はやってこない。
さらに情報が制限されているこの状態では正しい情報も違う情報に摩り替わる事だってある。
以前、牛追い祭りというあらたな文化が流れ白沢と化した慧音が里の男と一部女性から追い掛け回される
事があった。景品は牛を一日思い通りにできる権利である。それが、人や妖怪の口に伝わり虫追い祭りに変化
し今度はリグルが追われる事になった、今度は女性が多かったらしい。
ちなみにたまの休みに里のカフェに行こうとしていた地獄の閻魔がリグルに間違われ大変な目にあったという。

そんな環境である、クリスマスツリーのもみの木が竹に変化するのもやむ仕方なしと思いたいが、残念な事に紅魔館
勢はメンバー構成から考えてキリスト教圏内の出身であった。

「とりあえずいいから竹を取ってきなさい」
「だーかーらー」
「はぁ、いい加減にしなさいシン。それにこれはサンタ対策でもあるのよ」
「ぱ、パチュリー様…その格好」

と、出てきたのは何時もの寝巻きをサンタ風にあしらった服を着たパチュリーであった。
そして傍らにはミニスカサンタ服を着たフランもいる、健康的な生足が実に魅力的だ。
フランはテンション高めだが、パチュリーは少し恥ずかしそうに顔を赤らめている。
シンは、そんな二人を見て急に言葉を失った。

「サンタクロース…その姿は普通の倍以上の体を持ち筋肉質な暴れトナカイに跨り御する豪傑。
 着ている衣服すらその肉体で破けんばかりのまさに鋼鉄の様な肉体をもつ修羅。12月24日
 深夜に必ず、子供のいる家庭に忍び込んでは傍らにプレゼントを置きに回る。しかし、その最中
 目を合わせたが最後、その哀れな子羊はそのサンタ服をさらに紅く染める事になるであろう………」

そうして、新たな哀しみを背負ってサンタは再びプレゼントを配りに回るのだ。サンタ服の赤は哀しみ
の赤なのだ。っていうか嫌だそんな世紀末覇者なサンタ。

「竹はいざと言う時、サンタと対峙した時に為の武器よ」

つまりは、クリスマスツリー兼竹槍である。

「なんて物騒なクリスマスなんだ…」
「闘争のクリスマス………紅魔のクリスマスはかくあるべき姿だと思わない?」
「昨日、明日がクリスマスだからってテンション高くなって眠れなくなった御仁が言いますか」

ねぇ、シン!まだ明日にならないかな、カナ?
昨日、夜中にあった仕事をかたづけていた時にレミリアとフランに言われた言葉である。当然ながら二人
とも目を爛々と輝かせ見た目相応の反応を見せていた。なお、この後美鈴に宥められて仕方ないから美鈴と
共に寝たという。

「咲夜、咲夜!」
「はい、お嬢様」

パンパンとレミリアが手を打つと咲夜が不意に目の前に現われた。その姿はサンタ服などではなく、コートにマフラー
とフル装備であった。

「シンを連れて竹を取ってきなさい」
「はい、わかりました」
「ってあんたも止め………っていつのまに着替えさせられてるし!」

とシンも気付けばコートにマフラーのフル装備、おそらく咲夜が時を止めてやったのだろう。

「といわけでほら、シン。行くわよ」
「ってえぇ~」
「あ、そうそう。そのマフラー、一応私の手編みだから」
「え…」
「それでは行ってきます」
「あぁぁぁぁぁ…」

とシンはそのまま咲夜に引きずられ、何人かの妖精メイドを引き連れ竹取に出発したのであった。
ちなみに咲夜のマフラーは紅魔館の住人ならば誰でも持っている、ああ見えて世話好き、それが咲夜という人間なのであった。



街灯がない幻想郷では日が暮れるとすぐあたりが暗くなってしまう。
そのため、夜行性の妖怪といった者や力の強い者以外は人里以外の場所で活動をする事は滅多にないのだが、
竹林のはずれの場所において、二人の人間が壮絶な殺し合いをしていた。

「迂闊なっ」
「見えるっ」

一人は不死鳥のごとく炎を纏い、もう一人は神々しいオーラを身に包んでいた。

「輝夜!ケッチャコ」
「モォコォタン!!」

永遠亭の主にして月の姫の蓬莱山輝夜と彼女と因縁のある少女藤原妹紅である。

「妹紅、しつこいわよ」
「そういう風にさせたのが輝夜ならそういう風に思わせたのも輝夜なんだよ!」
「自分勝手な解釈をするな」
「だけどお前は闘っている、闘争本能を刺激されているんだよ」
「くっ、ユニバーーーーース!!」
「フジワラヴォルケイノである!!」

綺麗な弾幕と炎があたりを包む、その中心にいる二人はなお激しい戦いを繰り広げている。

「純粋に戦いを楽しむ者こそ!!」
「自分を捨てて戦える者には!!」

その戦いも最終局面を迎えた。
輝夜の手刀が妹紅の顔面を貫き、妹紅の手刀は輝夜の腹部を貫いた。相打ちである。
そして、力を失った二人はそのままの状態で地へと落下した。そして妹紅の体から炎が上がり、二人の死体に
着火、二人の少女の壮絶な殺し合いは相打ちによる焼死となったのである。


「な、なんてこった…」

そしてその一部始終を見ていた男が一人、ちょっと緩んだ靴紐を結び直している間に一団からはぐれて
迷子になったシン・アスカである。さすがに迷いの竹林というだけあってどちらが正しい道なのか検討も
つかず、また日が落ちきってしまったため状況は悪化。ここは兎が多いところであるが普通の妖怪、妖獣も
いる。出口があるのならば逃げおおせる自信はあるが、こうも出口がわからないとなるとそれも怪しい。
とりあえず、歩き回った末運良く竹林から抜け出す事ができた。そこが、妹紅と輝夜の決闘場であったのだ。

「こ、これ…やっぱり死んでる…よな…」

リアルな焼死体を目の前に妹の最後の姿がフラッシュバックし、もどしそうになったのを何とかこらえる。
なんなのかわからないが体の震えが止まらなかった。

「う…、こんなのって…あんのかよ。ここは楽園じゃなかったのかよ。…まぁ、墓くらいは立てて(ぴきぴき)
 ぴきぴき?」

とシンが考えている内、二つの焼死体に亀裂が走った。そしてその割れ目からはうっすらと光が漏れていた。

「な、ひ、ひびが入って。光ってる!?」

そして、まるでその亀裂は何本も増え…

「「リザレクション!!」」

卵から孵る雛のごとく二人は復活した……………真っ裸で

「ちょっと、もこたん。なにやってくれるのよ。寒いじゃない!!」
「こっちだっててるよ!!顔面はないだろ!顔面は!」
「こんな冬の寒空に真っ裸で放り出すなんて、真っ裸で帰った時に永淋やイナバ達にどんな目で見られると思ってるの?
 それとてるよいうな」
「お前なんかてるよで充分だ、うわひっつくなやめ。燃やすぞコラ!」

半月の光が当てられ、真っ裸の少女の肢体が浮かび上がる。真っ裸の二人はそのままキャッキャウフフの第二次キャットファイト
に移りそうな勢いであった。ちなみに胸の方は両者とも至極残念であり揺れる事はなかった。たださくらんぼが四つ並んでたと
しか言い様がない。そして、そんな光景をポカンとした感じで見やるシン。

(え、あの焼死体から蘇ってキャッキャウフフって。うわぁ、二人とも綺麗…きれ…きれ…はうあ!!)

と真にかえるシン。そしてもこたんとてるよもシンの存在に気が付いた。

「さ、さくらんぼがよ、よっつ………(ぶしゅぅっ)」
「「きゃーーーーーーー」」

いかな発展途上の少女達の肉体とはいえ、女だらけの紅魔館に放り込まれた挙句おいしい思いをしているのはラキスケ時のみ。
色々と難しい立場の思春期のシンにとって二人の真っ裸は幻想郷で一番過激な光景だったに違いない。
ありていにいうとそのままうつむいて鼻血を垂れ流していた。

「な、どうしたもこーーーーー」
「姫様何がありましたか!!」

とここで保護者が登場。もちろん慧音と永淋である、そして永淋の後ろではサンタ服に身を包んだ鈴仙とてゐがいた。

「あ、赤目」
「どうして、シンが…そして姫様方は素っ裸…は、もしやっ!!」
「いや、仮にそうだとして。鼻血を噴出して俯いてちゃ意味ないでしょ」
「はっ、そ、そうだな。それにシンに二人を襲える力もないしな」

と上からてゐ、鈴仙、永淋、慧音である。
一応、輝夜以外の永遠亭メンバーとは人里においてあった事があるので面識はある・
てゐは関心なさげに、鈴仙はシンを二人を襲う暴漢だと疑い、永淋はその場の状況を把握し冷静に答え。
慧音は一瞬シンが妹紅になにかをやらかそうとしたのではないかとかんぐり満月でもないのに白沢と化した、すぐ引っ込んだけど。

「え、えーりん…もこたんがー。あとそこの男に裸見られたーーーー」
「はいはい、姫。そうだろうと思ってお召し物は持ってきましたから」
「ううう、男に…男に裸見られた…」
「よしよし、第一お前も服を燃やそうとするのも悪いんだぞ。ほら、着物もってきたからあっちの茂みで着替えて来い」
「ううう、やべぇ…ティッシュたんねぇ…」
「ほら、俯いてちゃ止まる物も止まんないわよ。顔、あげる。にしても凄いわねあんたのラッキースケベ、てゐの加護がなくてもこうなるんだから」
「で、どっちが大人だったの?」
「黒い髪の方」
「きーーーーーーさーーーーーーーまーーーーーー!!」

てゐの何気ない誘導尋問に素直に答えるシン、その違いは毛があるかないか。え?どこにだって。どこだろうね。
そしてその答えに我慢していた永淋がぶち切れし、再びあたりは騒然とした。

「あらあら、こんなところで集まってどうしたのかしら」

場が一旦沈静化したところで咲夜が登場、あれからシンがはぐれた事に気が付き探しに来たのだ。

「サ、サニー。なんかあいつぐったりしてるよ」
「鼻血も垂らしてすでに手遅れってやつ?」
「私のレーダーも意味なしだったてわけね」

以前に紅魔館でひと悶着をおこし、メイドととして雇われていた三月精も同伴している。その能力を買って咲夜が念のために連れてきたのだ。

「い、いきてるぞ…一応な」
「わ、さすが不死身のシン・アスカ」
「ま、こんなんだろうと思ってたけどね」
「何、冷静ぶってんの?スター、シンいなくなって慌てたのあんたじゃない」
「な、何言ってるの。ルナ!」

「不意に思うんだけどあの子蓬莱人じゃないのかしら」
「いや、きっと他より頑丈な体なだけだ…多分」
「慧音ーーーー!!何なんだこれは!」
「ひざがスースーするわよ!せめてニーソくらい入れておきなさいよ!!」

とシンが紅魔の捜索隊と再開を祝っている頃、茂みで着替えを終えた妹紅と輝夜が出てきた。ミニスカサンタ服姿で。

「おお、似合ってるぞ。妹紅」
「あ、それは失念していましたわ姫」
「じゃなくて、これはなんなんだ!」
「紅魔のクリスマスパーティに普段のもんぺにサスベンダーはどうかと思ってな」
「いいよ!、もんぺにサスペンダーでいいよ」
「いや、それ以前にストックももうないんだ。決闘となると毎回だめになるからな、服」
「慧音ぇ…」
「これにこりて、今度は服を台無しにしない決闘方でも考えろ」

そう、妹紅と輝夜の決闘は結果はどうあれ結局服は灰になるか血だらけになるかで再利用は不可能。
慧音はそもそもこんな血生臭い決闘を妹紅に望んではいないし永遠亭は輝夜の衣服代で頭を悩ましていたのだ。
そこで考え出したのが、このサンタ服である。こうすれば二人にも抱えている悩みをわかってもらえるかもしれない。
それに見ているこっちも得、一挙両得の名案であった。

「くっそー真っ裸で殺り合うわけにもいかないしなー」
「きっと里の男どもが観戦にくるウサ」
「マッパ…うっ」
「わ、また鼻血噴出した」
「このスケベ!!」

シンの顎に鈴仙のストレートが綺麗に決まり、シンの意識は綺麗に刈り取られてしまった。
シンは意識を失う直前にこう思ったという
こっちのサンタのイメージって世紀末覇者なのにサンタ服だけはしっかりコスプレ衣装として認知されてるんだな、と。



「メリークリスマース」

プリズムリバー三姉妹のBGMをバックにクリスマスの宴が開始された。
今回はクリスマスという事もあり、紅魔の面々は全員がサンタ風メイド服、もしくはトナカイ風メイド服を着込み
給仕に走る。かくいうシンもトナカイ風執事服を着込み給仕をしていた。

「もう、空気を読みなさいよ」
「さすがにそれは勘弁ですよ」

サンタ風メイド服に身を包み苦言を呈する咲夜にトナカイ風チャイナ服を着込んだ美鈴はやれやれ
といった愛想笑いを浮かべた。今なんの話をしているかというとシンの服について、つまりはサンタ風メイド服
を着なかった事に対しての話しである。もちろん、これについては種割れを起こして拒否した。
今回は幻想郷中の住民が集まってくるのである。そんなところで無駄な恥はかきたくない。

「お、なにやってんだよ。そんなところで」
「お酒が足らないわよ」

と、不意に黒白のドレスを着た少女と紅白の腋出し巫女服を着た少女がやって来た。
魔理沙と霊夢だ。

「それにしてもあれだな、永遠亭の連中なにかあったみたいだぜ」
「輝夜と妹紅はあの天狗にあんた達の主人姉妹共々フラッシュされてるし、薬師はあそこで『永遠に淋しいってなんなのよぉっ!?』
 っていいながら飲んだくれてるし、どうしたの」
「いや、前者はまぁ自業自得で後者は誤字のせいだ」
「何顔赤らめてるのよ」

と、霊夢達の質問に答えるとどうしても竹林のはずれで見たあの光景が頭をよぎり鼻に血が昇りかけるシン。
仕方ないよね、だって思春期なんだもん。

「サンタ来てくれるかな」
「あたい、サンタが来るまで絶対起きてるんだ」
「ダメだよチルノちゃん、殺されちゃうよ」
「あたいはさいきょーなんだ!サンタなんかやっつけてやる」

こちらは子供達が集まっている、メンバーはチルノ、橙、フラン、ミスティア、リグルなど
パーティを楽しみつつ、明日のプレゼントの件で盛り上がっている。

「年甲斐もなくその格好はきつくないかしら」
「あら?やはり稗田公認で老人扱いされてる妖怪にはきつい格好に見えるのかしらね」
「へぇ、こっちでは竹に飾りつけするのかい。変わってるねぇ」
「御柱に飾りつけするうちらに言われたくない台詞だよ、神奈子」
「あら、そこのメイドさん。そのメイド服一着余ってないかしら。ん?もちろんこの子に着させるに決まってるじゃない」
「お嬢様ぁ!!」

こちらも色々と盛り上がっている。
サンタ風のドレスに身を包んだ紫に食って掛かる幽香。
唯一まともなクリスマスを知る最近こちらに神社ごと越してきた守矢の神様ペア。
そして従者にサンタ風メイド服を着させようとする幽々子。
また、それ以外でもいたるところで色んな妖怪、人間達がクリスマスをいや、この宴会を楽しんでいた。
そして、それからは妖夢がサンタ風メイド服に着替えさせられたりゆかりんとゆうかりんがお互いクロスカウンターを
決め潰れあったり、閻魔が頼んだシャンパンがシャンメリーになっていたり、シンが妖夢の着替え現場を偶然目撃して斬られたり
と様々な事が起きたが、無事に宴はお開きとなった。

「ふう、片付けが大変そうだなぁ」

頭から包帯を巻いたシンが一息ついた、ちなみに今日は血を流しすぎた為か若干貧血気味である。

「片付けは明日ですねー」
「ですね、メイド達も疲れて寝ちゃってますし」
「まぁ、大掃除もかねて明日ね」

背中に疲れて寝入ってしまったレミリアとフランを背負う咲夜と美鈴がシンに続けてそういった。

「むきゅ、さすがに今日は私も疲れたわ。ちょっと早いけど、私も寝ることにするわ」
「あ、そういえばパチュリー様のところのシーツまだ変えてなかったな」
「なら、替えてちょうだい。私は先に行っているから」

とパチュリーのベッドのシーツ交換をするためシーツ庫からシーツをとり、パチュリーの部屋に赴くシン。
そして、シンがパチュリーの部屋を開けるとそこには…

「パチュリーさ…ま゛っ」
「………部屋を空けるときはノックくらい…しろーーーっ!!」

ちょうどネグリジェに着替え途中のパチュリーがそこにいた。残念ながら、下着類は身につけていたので裸を晒す事はなかったが。
さすがにそれを恥ずかしいと思わない女性はいず、至近距離でのロイヤルフレアが炸裂した。
体中からもうもうと煙を上げつつ、薄れいく意識の中シンは思った。

(アンハッピー…メリー…クリスマス…)がくっ





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最終更新:2009年02月08日 12:44
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