「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「っ!?」
向かってくるセイバーに反射的にナイフを向けようとして、シンは思い止まる。
明らかにジャスティスにけしかけられた末の、自棄になった突撃。そんなセイバーに対してどうすればいいの
か、その判断ができずにシンは硬直してしまう。
そして葛藤するシンの目の前で、セイバーに異変が起こった。
「なっ!?」
背中のビーム砲と砲身の翼が回転して砲口を前に向け、。それとほぼ同時に下半身が後ろに回り、膝が折り
畳まれるように曲げられた。
つまり、
――変形した!? この姿になってもできるのか!
元のMSの姿からほぼ人間に近い姿になっていたことからの先入観で意識せず出来ないだろうと考えていた。
しかし、現実はこの姿からでも変形が可能、つまりセイバーにとって最大の特徴であるスピードをこの上なく
発揮できる形体になれるということなのだ。
――ブォンッ!
「ぐっ……!?」
すぐ傍を駆け抜ける赤い機影。それに遅れてやってきた突風にシンは両手で顔を庇う。急ぎ振り向いて空を
見ると、すでにセイバーは遥か先を飛んでいた。
「フハハハハハハハハハ! やればできるではないか! さぁ、その誰も寄せ付けぬ速さで見せてつけてやるが
いい! 貴様の本当の実力を!」
勝ち誇ったように叫ぶジャスティスの声を受けてシンは背筋に嫌な汗が噴き出すのを感じた。
純粋な速さであればデスティニーのEBMの方が速い。そもそも根本的に使われている技術が違うのだ。セカ
ンドステージの機体とサードステージの機体の最大の差と言っていい。
しかし、EBMには時間制限がある。シンが乗っていた頃ですら長時間の使用を控えていたほどだ。今のデス
ティニーがどれほど使えるのかも分からない。
それと比較してセイバーはサードステージ以前の機体の中でもトップクラスのスピード、スペック上ではあの
フリーダムよりも更に速いとされているのだ。並の機体が追いつけるはずがない。
「マスター!」
シンを庇うようにデスティニーはライフルとビーム砲を構える。下手に追いかけるよりもその場に止まって
狙い撃つ方が上策と考えたのだろうが、それもどこまで通用するだろうか。
歯を食いしばり、シンは自身もナイフを握る手に力を込めて覚悟を決めてさらに小さくなっていくセイバーを
目で追いかける。
十分な距離を置いてから最大スピードでの一撃離脱。それも大出力のビーム砲を装備したセイバーがそんな
戦法を取ればどこまで反応できるかも分からない。
すでに距離は十分、旋回して凄まじい速さでこちらに向かってくるであろうセイバーを睨み据え……
「…………あれ?」
旋回して、こない。
大きく弧を描いて軌道を変えてくるはずのセイバーはそんな気配を欠片も見せないままグングン距離を空け
ていく。
まるで、一目散に逃げ去るように。
デスティニーも両手の武器をどうすればいいのかと戸惑っているようだった。
「――上官の目の前で、」
唸るような声と凄まじい殺気を感じてシンは後ろを振り向く。
……砂埃を巻き上げながら脚を高々と天に掲げ、そして両手に背中にマウントされていたリフターを背負う
ように持ったジャスティスが修羅の形相を浮かべていた。
「敵前逃亡とは一体どういうことだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ズン! と石畳に亀裂が走るほど掲げた脚を踏み込み、抱えたリフターをブン投げた。
シンとディスティニーは呆けた表情で轟音を上げて大気を貫き突き進むリフターを目線で追いかける。
ジャスティスの手を離れたリフターは折り畳まれた機首と翼を広げ、スラスターを吹かしながらさらにスピー
ドを上げていく。瞬く間にセイバーに追いついたリフターはそのまま激突、きりもみ回転しながら落下するセイ
バーを旋回し器用に背にキャッチして主の元に戻り、ロールして乗せたセイバーをぺいっと宙に放った。
「制裁の! ジャスティススマァァァァァァァァァァァァァァァァァッシュ!!」
目を回し落ちるセイバーは宙にいる間にジャスティスに容赦なく回転飛び回し蹴りを叩き込まれ、べチャッ!
と壁にぶつかってようやく地に落下できた。だがそれも束の間、すぐに歩み寄ってきたジャスティスに引きずり
起こされてガクガクと肩を揺さぶられる。
「キッサッマッはッ! どこまで腑抜けているというのだッ!? 日々私が鍛えているというのにその腐り
きった性根はなんだッ!?」
「ごめ、ごめ、ごめんなさいぃ~……で、でも「誰も寄せ付けぬ速さ」って言ってたのにセンパイはあっさり
追いついちゃったじゃないですかぁ~」
「あの程度のスピードを根性で出せずに何が自警団かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「えぇ~……」
頭が揺れすぎてグロッキー状態なのか、ちょっと危ない感じでアレな顔になり始めたセイバーを見てようやく
我に返ったシンはおそるおそるジャスティスに声をかけてみる。
「お、おい……」
「何だっ!? 今は取り込み中だ!」
「いや、そこまでにしないとそろそろヤバいんじゃないかそいつ?」
「む?」とジャスティスは改めてセイバーの顔をじっと見る。すでに目は虚ろ、唇の端からよだれを垂らして
いて挙句の果てに口から魂が抜けかけていた。
「……フン、軟弱なコイツが悪い。そんな様だから記憶も戦闘の勘も戻らんのだ馬鹿者め」
抜けかけた魂を強引に押し込み、ジャスティスはセイバーを解放する。まだ頭をフラフラと揺らしていたが、
かろうじてセイバーは意識を手放していないようだった。
「――待て、今「記憶も戻らない」って言ったか?」
さらりと出てきた気になる言葉にシンは思わず声を上げる。その問いかけに∞ジャスティスは眉根を寄せつつ
もセイバーを指差しながら説明する。
「コイツがここに現れたのは二週間ほど前だ。近くの森で震えているのを見つけて拾ったはいいんだが、自分の
名前以外何も思い出せないときた。おまけに妙なトラウマでも持っているのか戦うのが怖いとぬかして一向に
やる気を見せん。最近まで変形はおろか自分の武器すら身に付けるのを拒んでいたほどにな」
それを聞いてシンは思い出す。直接それを目の当たりにこそしなかったが、海底に沈みかけた五体をバラバラ
に切り裂かれたセイバーの姿を。
フリーダムにやられたということだけは分かっていたが、その無残な姿に哀れみと失望を感じたことは今でも
覚えていた。
「だが! この私の下についた以上そのような甘ったれたことなど言わさん! 徹底的に扱き上げてひよっこ
の臆病な目を鷹のそれにしてやる! いや、そうならねばならんのだキサマはッ!」
ズビシッ! と眼前に指を突き付けられてセイバーは両目に涙を溜めながら震え始めた。それほど戦うことが
嫌なのだろう。
――まぁ、コイツの言い分も分かるけど……
かといってこのままではセイバーにとって最悪の無理強いにしかならない。なんとかならないだろうかと思案
していたところで、ジャスティスの闘志に溢れる瞳が向けられた。
「まぁ今はそのことは置いておく! さぁ、今度こそ決着をつけようか!」
「って、待った待った待ったー!」
再び抜刀したジャスティスとデスティニーをなんとか押し止め、シンは考えを貼り廻らす。そもそもなんで
こんな事態になったのだろうか?
「なんだ? 自首か? いまいち盛り上がりに欠けるから却下したいところなのだが」
「違うって……ってそうだ! そもそもなんで俺が自警団にマークされなくちゃいけないんだ!?」
「それは貴様が数多の悪事を尽くしたからで……」
「それの心当たりがまったくないって言ってるんだよ!」
そう、事の発端はそれだった。一体全体自分が何をしたというのか? それをまず知らなければならないだろ
う。その話をしようとしたところで血気盛んなおバカ二人は早々にチャンバラをし始めたのだが。
「フン! 心当たりがないと来たか。典型的な言い訳だな。ならば自分の犯した過ちを噛み締めるがいい! 部下1号ッ!」
「は、はいぃ!? 今度はいったいなんですかぁ~?」
「教えてやれ! こいつらの罪を白日の下で!」
「え、えぇ? センパイが言うんじゃ……ひぅっ!? わかりましたわたしが言いますぅ!」
爛々と輝く双眸にすっかり怯えきったセイバーはあたふたと手帳を取り出す。正直そこらへんにしておけよと
言いたくなったが、また妙なところで話が変わりかねないのでシンは何も口出ししないことにした。
「え~っと、え~っと……」
腕を組み足を鳴らしながらプレッシャーをかけてくるジャスティスをビクビクして確認しつつ、セイバーは
ようやく探していたページを見つけた。
「ありました! シン・アスカ、市街での大規模な戦闘行為、ならびに高級レストランでの食逃げに関与の疑いあり、です!」
――――は?
告げられた言葉の意味を頭の中で反芻させて、シンは知らず呆けた声を出してしまっていた。
市街での大規模な戦闘行為――これは恐らく一週間前のフリーダムとの戦闘のことだろう。というよりそれ
以外に思い当たる節はない。そもそもなんでも起こりえると言われているエンフィールドですら前代未聞の事態
だったのだ。そんなことがそう起こるはずもない。
だが後者の件……高級レストランでの食逃げにはまったくもって心当たりがない。そもそも高級レストランな
どという存在とはまるで縁のない生活を送っているのだが。
とそこまで考えてふとあることに思い当たり、シンはデスティニーがいる方を見やる。
「…………」
そこには、背を向けたまま正座している少女の姿があった。不思議なことに顔が全然見えないのに脂汗を浮か
べていることが容易に想像できた。
シンは無言でその小さな背中に近づき、満面の笑みで後頭部を鷲掴みにした。
「なぁデス子~? なんか俺ぜんぜん身に覚えのないことで疑われてるみたいなんだけどお前は心当たりあっ
たりしないか~?」
「あ、あっちゃったりなかったりしなかったり……」
「つまりあるってことだよな~? さっさと吐けこのダメMS、そんな答えは聞いてない」
ギリギリとアイアンクローで頭を締め上げられる痛みに耐えながら、デスティニーは自供を始める。
五日ほど前、良い匂いに釣られてフラフラとレストラン『ラ・ルナ』へと漂ってきたハラペコデスティニーは
店の目の前で行き倒れたところを店員に発見されて店の中に運ばれたそうな。そこで空腹を訴えると出てきたの
はまかない料理、しかし流石は高級レストランといったところか、およそ普段の食事とはかけ離れた代物がでん
と差し出されたという。瞬く間にそれをたいらげたデスティニーの気持ちいいほどの食べっぷりに気を良くした
オーナーは「こんなものでいいのならいつでも食べに来なさい」と言ったという。
そこで遠慮するのが普通だが、頭の中の八割方が食欲で占めているのがこのデスティニーである。毎日のよう
に『ラ・ルナ』に赴いてはまかないどころか客に用意されたものにまで手を出す始末、そんな事情もあってレス
トラン側は食い逃げとして自警団に届け出を出したのだろう、とのことだった。
「……いくらなんでもありえないだろ、そのふてぶてしさは」
「だってだって! 本っ当においしかったんですよ!?」
「それはちゃんと金出して食ってから言える言葉だろ!?」
あう、と呻いてデスティニーは縮こまる。どうにも最近食欲が落ち着いてきたと思ったらそういう事情があっ
たとは……と頭を抱えながら、シンはセイバーに声をかける。
「その件は全面的にこっちが悪かった。店側にも後で頭下げに行くからそう伝えてくれ」
「は、はい……」
ついカッとなってやってしまったのだが、さらにセイバーを怯えさせてしまったらしい。致し方ないことではあるが。
「で、他にはないのか? 俺やこのバカがやったことって」
「えっと……な、ないです」
そうか、とほっとしたシンだったが、今度は別の方から声が上がった。
「何ィ!? 本当にそれだけなのか部下1号!?」
「あうっ!? ほ、本当にこれだけですっ!」
「悪の組織の幹部とか! 稀代の殺人鬼とか! 実は三つのしもべを引き連れた超能力者とか! そういった
ものも一切!?」
「ないですぅ!」
「な、な、な……なんてこったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
往来の端から端まで届いてそうな絶叫の後、∞ジャスティスは頭を抱えてがっくりと項垂れた。
「……というか、お前はいったいどんな目で俺を見てたんだ?」
いくらなんでも殺人鬼や超能力者はないだろう、と考えている内にガバッとジャスティスは頭を上げた。
「そこの奴ッ!」
「シンだ……今度は何だよ」
「すまなかったッ!」
ジャスティスはざっと手を着き、ガツンと石畳に頭をぶつける。あまりの衝撃に石畳にヒビが走っていた。
「……え?」
「本来なら守るべき市民であるというのにあらぬ疑いをかけて刃を向けてしまったこと! この場で詫びさせ
てほしいッ!」
そう言いながら再び頭を叩きつける。額から光の血を撒き散らしながら土下座する姿は見ている方が痛くなっ
てくるほど気迫に満ちたものだった。
「お、おいよせって!」
「しかしッ!」
「こっちにも――っていうかデス子がだけど――非はあったんだ。そこまでする必要なんかないだろ。そりゃい
きなりあんなことされていい気分はしなかったけどさ……もう十分だって」
むう、と呻くジャスティスだったが、渋々立ち上がって額の血を拭う。
「そこまで言うのなら、ここまでにしよう。重ね重ね申し訳なかった」
「だからいいって……」
直角に腰を曲げる∞ジャスティスにシンは呆れてやめるよう言おうとしたが、そこでセイバーが思い出したよ
うに手帳のページをめくった。
「あ……ご、ごめんなさい。事故を装ったセクハラかもって相談が未遂を含めて複数……」
「――ほう?」
「待てっ! それは不慮の事故であってわざととかそういうわけじゃ……!」
腰を曲げたまま顔だけで睨みを効かせてくるジャスティス。そしてそれに慌てながら身振り手振りで身の潔白
を訴えるしかないシンだった。
「――わかった。ひとまずは信じよう」
「あぁ……そりゃよかった」
――結局、ジャスティスが納得する形で話がまとまったのはそれから一時間後のことだった。
先ほどまでの腰の低さはどこへやら、すっかり出会った頃の不遜さを取り戻したジャスティスは身を翻して
シンたちに背を向ける。
「今後また騒ぎを起こした時、あるいは騒ぎに巻き込まれた時はまた会う機会もあるだろう。何か用があるとき
は自警団の詰所まで来るがいい。私か部下1号のどちらかはいるはずだ」
「ってことは、お前らは俺たちと戦う気はないんだな?」
「当然だ。守るべき市民であるなら迷わず手を差し出し、平穏を脅かす犯罪者なら迷わず武力を行使する。それ
が我々の正義だ。行くぞ部下1号ッ!」
「は、はいぃ!」
歩き出す背中を追いかけるセイバーに、シンは思い出したように声をかけた。
「あ……なぁ、セイバー」
「ひぅっ!? な、なんですかぁ?」
「いや、そんなに警戒しなくていいって。俺のこと、本当に覚えてないのか?」
わずかに考え込むセイバーだったが、やがて力なく首を横に振った。
「そっか……まぁ、ゆっくり思い出せばいいさ。なんか困ったことがあったらジョートショップに来てくれ。
相談に乗ることくらいはできるからさ」
その言葉にキョトンとした後、少し恥ずかしそうに微笑みながらセイバーは小さく手を振ってジャスティスを
追いかけていった。
「……はぁ、なんかどっと疲れたな。俺たちも帰るぞデス子」
二つの影を見届けて家路に着こうとするシンだったが、服の裾を引っ張られる感覚に足を止めて後ろを見る。
「デス子?」
「あの、マスター? 私は、ここにいても……いいですか?」
その瞳が、今にも泣き出しそうで。シンは一瞬息を詰まらせた。
しかし、そんなことは今さら考えるまでもなかった。
「……何言ってるんだよ、まったく。お前が傍にいない方がこっちの心臓に悪いってことは今回のことでよ~く
分かったろこのこの」
「あうううう……痛いです~!」
こめかみを優しくぐりぐりと抉られながら、それでもデスティニーは嬉しそうに笑った。
(――本当に、いいんですよね? マスター……)
たとえ自分が戦いを愉しんでいるような存在だとしても、それを少しでも変えていこう。マスターのために。
そう心に決めて、デスティニーはその優しい罰を受け入れた。
「あたた……それにしてもマスター、セイバーちゃんはともかくあのジャスティスとよく普通に相手できたですね」
「ん? まぁそれなりに複雑な気持ちもあるけどさ……アイツとは向こうでお前の腕斬られたくらいしか思い出はないし」
(――――え?)
デスティニーの胸に小さな違和感が生まれた。
その何気ない一言には、なくてはならない記憶が欠けていた。
嫌な予感に、デスティニーは身体中が総毛立つのを感じた
「あ、あのマスター! 向こうで最後にジャスティスを見たのってどこですか!?」
「え? あ~っと……月で戦おうとしたのが最後だな。それから後は気付けばこっちに来てたし」
――デスティニーは、自分の足元が崩れ落ちていくような錯覚に陥った。
シンからは、あの最後の決戦で受けた敗北の記憶が、
まるで存在しなかったように抜け落ちていたのだ。
……彼はまだ、救われてなどいなかった。
「――こ、これは!?」
「ん~? な~に青ざめた顔してるのかなマイシスタ? そんなにこれが怖い?」
明かりがほとんど差し込まない部屋の中、顔面蒼白で慄くフリーダムに笑いかけながらフリーダムとよく似た
少女は『これ』と呼んだものを突き付ける。
「やめろ……! そんなものを近づけるな!」
「お~っと、こわいこわい。そんなに邪険にするなよな~。せっかく愛とかその他もろもろの爛れたものをたっ
ぷり詰め込んで作った逸品なんだからさ」
ビームサーベルを振り上げて『これ』を両断しようとするが、少女はひらりと身をかわしてフリーダムの背後
に回り、片腕で羽交い絞めして『これ』を直接押し付ける。
「ほらほら~、どうよこれ?」
「よせ……やめろ!」
「カワイイからやめない~」
「き、貴様っ……!」
拘束を振りほどき、フリーダムは背後に刃を振るう。
が、手応えなし。確かにそこにいたはずなのにまるで霞を斬ったような感覚にフリーダムは幽霊と戦っている
ような錯覚すら覚えた。
――するり。
「……ッ!!?」
「ん~、すべすべのお肌はいいね~。『これ』使う前に食べちゃおっか?」
「やっ、あっ……」
ぞわりと首筋を這う感触にフリーダムはサーベルを落としてしまった。
もはや為すがまま、されるがままにその身体を弄ばれるしかない。
「ま、せっかく作ったんだし使わにゃ損だよね。それじゃ動かないでね~」
「なっ!? ほ、本気か!?」
「マジ本気マジ」
「やめろ……頼むから、やめてくれ……」
「あらあら涙まで浮かべちゃってまぁ。大丈夫、誰だって初めてはあるもんだ。怖がらずドンと行ってみよ~」
「やめろ――――――――!!」
暗闇に、光が数度瞬いた。そして抵抗するような声。
だがそれらはすぐに聞こえなくなり、やがて衣ずれの音だけが部屋に響く。
そして、
「――カワイイよ、私のフリーダム」
嗚咽を漏らす少女を満足そうに眺めながら、少女は口を笑みに歪めた。
最終更新:2009年03月02日 11:46