赤い羽根から粒子を散らし、デスティニーは剣を押し出す。その高出力のビームソードで今にも両断されかね
ない場所に立つ少女は、しかし口を大きく開けて笑った。
「ハッハー! 素直な反応がカワイイねぇっ!」
そして同時に刃を受けとめているサーベルを握る手の力をわずかに緩める。
真っ向からほぼ同じ力で止まっていた大剣が、まるですべり落ちるようにビームサーベルの刃に沿って地面に
叩きつけられた。
「っ!?」
「けど素直すぎるのも考えもんだ。ちょっとしたテクでされるがままにされちゃうぞ、と」
「さっきから……うるさいですっ!」
振り下ろした大剣を真横に薙ぎ払う。轟音を上げて迫る光刃を軽く避けながら、ストライクフリーダムは翼を
広げフワリと飛び上がる。
「積極的な子は大好きなんだけどなぁ。ちょっとハッスルしすぎじゃね?」
やれやれと両手を広げるストライクフリーダムを黙ってデスティニーは睨みつける。両手に構えた大剣を大上
段に構えた。
「……もういいです」
「お?」
「もう、あなたたちの目的が何なのかもどうでもいい。だから、」
そして、刃を振り下ろすと同時に眩い光の翼が広がった。
「――全力で、あなたを倒します!」
「なっ……おいデス子!」
EBMを発動させたデスティニーを目の当たりにしてシンは反射的に叫んでいた。
∞ジャスティスを相手にしたときですら使わなかった全力を、今この場で出すつもりなのだ。
つまりそれは、本気でストライクフリーダムを倒しにかかるということ……!
「……うん、いいねぇ。ゾクゾクしてきたよ」
端から見ているシンですら肌を震わせるほどの闘気を発するというのに、それを直接叩きつけられているはず
のストライクフリーダムはうっすら笑みを浮かべていた。
「酔いも空の彼方に吹っ飛んじまった。だってのに宇宙までスッ飛んで行きそうないーい気分だ」
低い声で笑いクルクルとサーベルを右手で回しながら、左手でビームライフルを抜く。
「さぁ、遊ぼうぜぇ!」
「その減らず口ごと……叩っ斬るですっ!」
疾風と残像を引き連れてデスティニーが宙を駆け、ストライクフリーダムはその初撃をサーベルでいなした。
「おっ、と……!」
それまで余裕の表情を保っていたストライクフリーダムから笑みが消える。次いで繰り出される一撃もなんと
か防いだのだが、弾かれたサーベルが手を離れ、刃を失って地面に転がった。
「……なるほど、こりゃ厄介だ。なら!」
そう叫ぶと同時にストライクフリーダムの翼から蒼い部分が射出され、金色のフレームが姿を現す。
そして、フレーム部分から蒼光が溢れ出た。
「二番、いや三番煎じの! 光の翼ぁ!!」
「何っ!?」
「っ……!」
蒼い光の翼を見たシンは声を上げ、デスティニーは歯噛みする。
それはデスティニーのEBMと同じ技術を基に生み出された推進システム。あまりにも特徴的なその機構から
二人はすぐにそれを看破した。
「それが、なんだって言うんですかっ!?」
裂迫の気合いを発してデスティニーは再度突撃を仕掛ける。だが同等の速さを手にしたストライクフリーダム
は難無くそれを避けると両手に持ったビームライフルを連射する。エメラルドグリーンの光弾が残像を貫いてい
くが、そのことごとくを彼方の後方へ置き去ったデスティニーはアロンダイトを振り下ろす。
一撃必殺を狙うデスティニーと、その間隙を狙い撃つストライクフリーダム。
幾度も接近しては離脱する赤い翼と蒼い翼をなんとか視界に収めつつ、シンはどうすればこの戦いを止められ
るのかと答えの出ない思考の迷路に迷い込んでいた。
――やがて、もう何度目かも分からない激突の末に、一つの光が弾き飛ばされた。
「うわったったったぁ!?」
空中を転げるようにストライクフリーダムは危ういところで体勢を立て直す。
「セーフ……なんだけども参ったね、単純なスピードはそっちが上か」
うーん、と動きを止めて腕を組むストライクフリーダムに、デスティニーは容赦なく追撃する。
だが、
「うん、なら仕方ないね。小細工使わせてもらうよん」
「……っ、避けろデス子!」
シンの声で周囲に展開する複数の気配を察したデスティニーは真横にロールする。直後に複数の光がデスティ
ニーがいた場所に走った。
「これは……!?」
謎の気配の正体を知ったデスティニーは知らず息を呑んだ。
――ストライクフリーダムから射出された八基のドラグーン。一度その奇襲を受けたこともあるというのに、
デスティニーは重力下であるということから無意識の内にその危険性を失念していた。
「ペイバックターイム!」
「くぅっ!」
四方から放たれるビームと、変則的な機動を続けるストライクフリーダムの攻撃に翻弄されながらもデスティ
ニーは空を駆ける。ミラージュコロイドによる残像が生み出すジャミング効果でかろうじて直撃を免れているも
のの、その攻撃の密度は一瞬の気の緩みで瞬く間に蜂の巣にされかねないほどだった。
「こん……のぉぉぉぉぉぉ!」
ビーム砲を展開し、天を薙ぎ払うように照射する。
だが小さく動きの素早いドラグーンはすぐさまその軌道から退避し、撃墜を免れた。
「デス子!」
「えっ……?」
ドラグーンに翻弄されるがままのデスティニーの背後に、ピタリとストライクフリーダムが貼りつく。
ライフルはおろかサーベルの間合いにしても近すぎるその距離で、少女はさもおかしいそうにケラケラと笑っ
ていた。
「注意一秒怪我一生、油断大敵ってヤツかな? ドラグーンにばっか目を向けすぎるとこーんな風になっちまう
から気を付けなよ。もう遅いけど」
その嘲りを無視し、デスティニーはアロンダイトを横薙ぎに背後へと振るう。
だが不発……デスティニーの目はその影すらも捉えることはできなかった。
「速さは譲るが、小回りはこっちのもんだ。引き離すのは諦めな」
「誰がっ!」
左手で抜いたビームライフルで振り向かず背後に乱射するもまるで当たらない。相手の姿をまるで見ることの
出来ない恐怖に、徐々にデスティニーの精神は蝕まれていく。
「くっ……!」
焦燥感に駆られながら、デスティニーの頭には彼女のマスターのことが浮かんでいた。
訳も分からずこの世界に飛ばされ、その傷ついた心にはあの敗北の記憶が抜け落ちていた。
そんな彼に、愛想笑いを浮かべながら近づいてきたこの少女……
「絶対に……許せるもんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
再びアロンダイトが弧を描くが――不発。
相も変わらずデスティニーの背後にピタリとくっついているストライクフリーダムはやれやれと嘆息し、つま
らなそうに口を開く。
「ここまでかな……まぁそこそこには楽しめたけど、これで終わりさ」
デスティニーの背筋が凍る。こんなにもあっけなく、あまりにも唐突に、終わってしまうのか?
いやだいやだいやだ、そう強く願っても喉元に刃を突きつけられたように動けない。
動けばそこで終わる、無意識のうちに身体がそう確信していた。
「それじゃ――いただきまぁす」
そしてストライクフリーダムは両手を伸ばし……
デスティニーの胸の装甲の隙間に突っ込んだ。
「―――――――――へ?」
呆けたようにデスティニーは自分の胸を見下ろす。
脇腹あたりから潜り込んだ小さな両手が少しずつ胸部の中心へと進んでいっている。わずかな隙間も強引に
ではなく広げていきながらじわじわと進むその様に、デスティニーは先ほどとは異なる悪寒に襲われた。
「なっ……ななななな何をするですかっ!?」
「ん? 「いっちょ揉んでやる」って言ったじゃん」
「そのままの意味で!?」
「そのままの意味で」
しれっとした顔で答えるストライクフリーダムにしばし呆気に取られたデスティニーだったが、迫る危機が別
のものに変わったことに気付いて慌ててその手を引き剥がしにかかる。
「は、放すです!」
「ムリー、そしてムダー。っと、ここかな? うりうり」
「やっ……!?」
背筋を駆け抜けた感覚にデスティニーの身体がビクリと震えた。その反応に確かな手応えを感じたストライク
フリーダムの口元が歪み、さらに複雑な動きも織り交ぜる。
「やっ、あ……やめっ!」
「やめ、何?」
「あ、う……」
耳まで赤く染め上がったデスティニーの顔を楽しそうに眺めながら舌舐めずりをし、これでもかと言わんばか
りに激しく責め立てる。
デスティニーの息は乱れ、胸部装甲が蠢く度に四肢が震える。幾度目かの責めの中でその手からアロンダイト
が滑り落ち、石畳に突き刺さった。
「ふむ、感度は良好。抑え付けられてたから大体しか分からなかったけど、こりゃ中々の逸品だねぇ」
「や……やめて、くださ――」
「ダメー」
目尻に涙を浮かべて懇願するデスティニーに無情な言葉を投げかけ、左手を胸から離して装甲の一部を弄る。
バチン! という音が響き、デスティニーの胸の装甲が弾けるようにパージされた。窮屈な鎧に包まれていた
双丘が解放されたことで揺れ弾み、それを見たストライクフリーダムは目を見開く。
「ん~、マーベラス……人間で言うなら86、いや87はあるね」
もはや隠すのは薄いインナー一枚のみになった乳房の輪郭に沿うように指を這わせる。もはや抗う気力すらも
刈り取られたデスティニーは痙攣するように震えるだけで抵抗の素振りすら見せない。
「すっかり出来上がったねぇ。けど、まだまだこれからだよ?」
「ひっ……!」
「怖がらない怖がらない、おねーさんに全部任せなさい。おっπ紳士は優しい初めてをプロデュースします。
そんなわけで、おかわりいただきまーす!」
そう叫んで、ストライクフリーダムはデスティニーの胸を背後から鷲掴みに……
「――って、何をやってんだよお前はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「おぅっと」
あまりにもあんまりすぎる展開にそれまで呆然としていたシンだったが、ようやく我に返った瞬間袖に仕込ん
でいた投げナイフをストライクフリーダムに向かってブン投げた。
それをヒョイと避わしたストライクフリーダムは目をぱちくりさせていたが、すぐにむくれた顔でシンを睨み
つける。
「あっぶねーなぁ。いきなり何すんのさ」
「そりゃこっちのセリフだ! 往来のド真ん中で何やらかしてんだよ!?」
「日課のπタッチを、慣らし程度に。今から生本番」
「それ以上やったらいろんな意味でマズイだろ!? さっさと降りて来いこのバカ!」
「ちぇー」と呟きながら渋々ストライクフリーダムは地面に降り立つ。解放されたデスティニーは自力で立つ
こともできないのか、自身の身体を抱くように胸を隠して膝をついてしまっていた。
「んー、いい乳揉んだ!」
満足にそうに背筋を伸ばすストライクフリーダムをとりあえずは放置し、シンはデスティニーに駆け寄る。
「う、うっ……」
「デス子! 大丈夫かおい!?」
震えながら涙まで流すデスティニーに呼びかけてみるも反応がない。相当ショックを受けたらしい。
「フフン、アタイのテクにかかればどんなにお堅い娘もイチコロよ」
「いいから黙ってろお前はっ!」
勝ち誇るストライクフリーダムに怒鳴り返すシンだったが、その瞬間デスティニーの口から漏れた言葉に
動きを止めた。
「――ま、マスターにしか触らせたことなかったのに……」
……
…………
………………
一迅の風が、冷たく吹き抜けた。
「……え? あの、お二人はそういう関係? それは、あー、そのー、ごめんなさい」
「謝るな! 否定しづらくなる!」
「で、で? 二人はどこまでいったのかな? どこまでイッたのかなぁ!? うは~! ヤバい! 私のロマン
スがもう止まらねーーー!」
「うるさい! 近づくな! 鼻血を出しながら近寄るなーーーーーー!!」
ボタボタと赤い血を撒き散らしながら詰め寄るストライクフリーダムを押しのけようとするシンだったが、
遠くから響いてきた鐘の音に身をすくませた。
「むっ、自警団か。急いでズラかろうぜ旦那! とりあえずはすぐそこまで!」
「何勝手に仕切ってるのお前!? っていうか待てよおい! デス子、悪いけどおぶってくぞ!」
一目散にさくら亭に逃げ込んだストライクフリーダムを目で追いかけながら、デスティニーを背負い散らばっ
たパーツを拾い上げてシンもその後に続いた。
最終更新:2009年03月30日 11:54