限定イベントテキストまとめ その4

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限定イベントテキストまとめ その4 - (2018/02/27 (火) 20:42:51) の最新版との変更点

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#contents() ---- &aname(20180103) *[[戌の王国 101匹大侵攻>101匹の戌吠岬]] -発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後) イベントスタート 『時限ミッション:戌の王国 101匹大侵攻』を発見しました 今回のイベントミッションの開放期間は1/3(水)~1/20(土)までです 戌の王国 101匹大侵攻  かつてそこは緑あふれる草原だった。    海に向かって突き出した岬の前に広がる草原。  そこには数多くのヤギが群れを作り、緑を食い荒らしていた。    彼らは悪魔の使いとして、死の大地へと変えようとしているかのようだった。  そこに一匹の犬が現れた。  彼は瞬く間に全てのヤギを討ち倒し、その岬の王となった。    そして岬の先端、崖の際に立って海に向かって鬨の遠吠えを上げたと言う。  その時から、ここは『戌吠岬』と呼ばれるようになる。  岬を制した王のもとに、一匹二匹と犬たちが集まってきた。    駅前に放置プレイをかまされた犬。  南の極地に放置プレイをかまされた犬。  交尾したさに海を渡った犬。    そんな我が家を失った犬たちが総勢100匹、王のもとに集ったのだ。  王と百狗軍団は『戌吠岬』に君臨し、国を作った。    その名も『ミサキわんおーわん王国』。  土佐犬リキを頂点とした101匹の犬たちによる、絶対君主制の王国である。  犬のくせに、彼らはすぐに領土の拡大を始めた。  目指す先は岬の近くにある漁村。人間たちの村である。    狂犬病の注射を打っていない彼らに怖いものはなかった。  毒を持つヘビやサソリのように、その黄ばんだ牙は一撃必殺の武器たりえた。  101匹の犬たちの軍隊。  その牙が漁村に届く。    その前に、彼らの侵攻を止めて欲しい。  『ミサキわんおーわん王国』に終止符を。その手で。 『マップ:101匹の戌吠岬』を発見しました -フェイズ1(食事およびマップ移動処理後) 101匹の戌吠岬  突き出た岬、その上にある『ミサキわんおーわん王国』。    国と言っても、何があるわけでもない。  道を作ったり建物を作ったり、そういう能力は犬にはないのだ。    なぜならば犬だからだ。  あるのは無数に掘られた穴だけだった。  それは彼ら自身が掘った、彼らの家となる巣穴である。    かつていたヤギたちに草が食い荒らされ、地面の土があらわになった岬。  穴が掘りやすくはあったろうが、入り口を隠すことはできなくなっている。    ちょっとした窪みのようなものから、細長い竪穴まで。  大小様々な『家』が国中に広がっていた。  王の家。王城とでも言うべきか。  その穴には、体の大きな土佐犬がすっぽりと収まっていた。    深く掘られた穴からは、頭と前足だけがちょこんと出ている。  本来そこは最も安心できる場所であるはずだが、その表情は硬かった。  顔の皮がたるんだ土佐犬は、そもそもムスッとした顔をしているだけかもしれないが。  のそのそと、穴から這い出す。  筋肉質な引き締まった体を伸ばし、細い尻尾をピンと立てていた。    王のその姿に、他の犬も続けて穴から出てくる。  その視線は全て王に向けられ、その一挙手一投足を注視していた。  一匹の戌王と、百匹の犬による百狗軍。  その進軍が始まろうとしていた。 -フェイズ2(なし、探索可能) 百犬伝  戌の王と、彼が率いる百狗軍。  その百狗軍は十個の小隊に分かれていた。  王に選ばれた十匹の隊長犬はどれも、その名に違わぬ強者たちである。    プライドも値段も高い、高級犬種部隊を率いるマスティフのアシモフ。  命知らずの短足歩兵隊はコーギーのマックスがリーダーを務める。  タヌキやキツネなどのイヌ科混成部隊をまとめるダイアウルフのロック。  一騎当千のワンワンアーミー、ピットブルのボス一匹のみの部隊もあった。  それぞれに兵数も犬種も役割も違う。    共通するのはただ一つ。その頂点に絶対王戌、土佐犬のリキが君臨し。  横の連携命令系統は一切なく、彼らはリキの命令にのみ従うということである。    この軍隊、ファミリーが作られた経緯からすれば、それは当たり前のことだった。  兵士が王になったわけではない。リキという王が初めからいて、そこに集ったのだ。  根本であるそこが覆ることはあり得なかった。  この国に権力争いはない。革命は起きない。  王と兵隊。それは強固な一枚岩であり、自滅など起こり得ないのだ。    その硬い岩盤を、正面から破壊するしかない。  都合よくあちらも正面から歩いてきていた。  クリスマスツリー型に展開された各部隊。  一糸乱れぬ行軍で迫る。    その先頭には当然のように、土佐犬のリキの姿があった。 -フェイズ3 戌の王  王はその出で立ちを少し変えていた。    戦争に行く。その先頭に立つ。  そのために、戦装束のようなものを身にまとっていた。  首輪代わりに巻いた太い縄から、白い紙の帯と派手な一枚布が垂れ下がる。  それは化粧廻しと呼ばれる、闘犬の正装だった。    戦装束に身を包み、凛々しい顔と眼差しでまっすぐ前を見据える。  背にした百匹の部下の方は見向きもしない。  自身が一歩進めば進む。止まれば止まる。そして退くことはない。    そこには言葉も、確認もいらなかった。  101匹の視線の先にあるのは岬の東側にある漁村である。  高台にある岬の上からなら、その村の全体を見下ろすことができた。    入り江に作られた船着き場と小さな漁村。  船着き場に船は一艘もなく、今は全て漁に出ている。    つまり村に若い男手はない。老人と女子供。犬にとって組みやすい相手だけだった。  だが、その前に、(PC名)が立ちふさがる。  101匹の犬を見ても動じることはなく、退くこともない。  牙を剥いて唸ってみたところで同じだった。    退かない。ならば、退かせるしかなかった。  リキが吼える。  その声に応えた100匹の犬たちが一斉に動き出した。    クリスマスツリー型の陣形から、一気に左右に翼を広げる。  一瞬にして包囲を完了させ、戌の王は殲滅戦開始の雄叫びを新たに上げた。 (PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント) 戦闘予告 101匹戌軍団に遭遇した! -フェイズ4 101匹の戌吠岬  土佐犬のリキ。  それが王の犬種と名前である。  犬同士では、互いを認識、区別するのに名前を必要とはしない。  彼や、彼の仲間たちが持つ名前は全て、かつて人によってつけられたものだった。    それらをいまだ、大事に抱えている。  魂に刻まれた、などと大げさなものではない。    つまるところそれは、思い出だった。  『ミサキわんおーわん王国』は瓦解した。  兵隊の幾つかは未だ4つ足で立っていたが、王の敗北はその心を折った。    膝が落ちる。  もはやこれ以上進むことも、あの場所に戻ることもない。  王は敗北し、国は敗北し、全ては終わったのだ。  伏せ、の体勢で動きを止める犬たち。  誰に命令されたわけでもない。誰からも命令されない、だからこそ。  その体勢で待機していた。新たな王の戴冠を。    視線は、王国を滅ぼした外敵である(PC名)に注がれていた。  敗者の行末を決めるのは勝者の義務である。  そして、勝者に身を委ねるのは敗者の権利である。    彼らはその権利を行使していた。今度はこちらが義務を果たす番である。  この国を、この犬たちをどうするのか。  新たな年へと時代が生まれ変わった今、答えを出さなければならない。 イベントマップ『101匹の戌吠岬』をクリア! クリアボーナス (PC名)はステータスボーナスを△△得た 戌の王国 101匹大侵攻  『戌吠岬』の東に位置する漁村カモメムラ。  漁に行っていた男たちが戻ったところで、村人の数は100人に満たない。    魚以外には特に産業のない、掛け値無しに小さな村である。  ぶおーーーーーーーー    汽笛の音を別れの言葉代わりに、今日も漁船が男たちを乗せて港を出て行く。  残った村人がみんなで港に集まり、船を見送る姿がいつもの光景だった。    その、いつもの早朝の景色に一つ変化があった。  そこには村人だけでなく、彼らを上回る数の犬が漁港を埋め尽くしていた。 『わおーーーーん』  汽笛に対して、一匹の犬が鳴き返す。  その土佐犬の遠吠えに呼応するかのように、他の犬たちも空に向かって吼えていた。    汽笛と遠吠えに包まれて、カモメムラは新しい朝を迎えていた。  『ミサキわんおーわん王国』の面々は全て、この村に移住してきていた。    この村では若い男たちは一日の大半を留守にし、年に数回は長期の漁に出る。  その間、村は無防備になる。今回彼ら自身に狙われたのも、そのタイミングだった。    そこで、彼ら犬たちをその間の番犬として雇用することになったのだった。  犬たちも失ったものはある。それは名前だった。  かつてつけられた名前。呼ばれていた名前。それらを失い、新たな名前を得た。    村人につけられたその名前でこれからを生きていくことになる。  ちなみに、名前はポチが最も多く、十四匹が同じポチである。    誰が呼んだか、で聞き分ける必要があり、難易度は高かった。 「ロッキー、そろそろ帰ろうかいの」  漁港の桟橋近くで見送っていた老人が、隣で賢く座っている土佐犬の頭を撫でる。    王も名を奪われ、ロッキーへと生まれ変わっていた。  飼い主が村長のロンさんというのが、元王としての尊厳を保てはしたか。  村の犬たちを束ねる立場、というのは変わりなかった。  複数の漁船が海の向こうに消えていく。  その後姿をのんびりと見送って、村人はそれぞれに家へと帰り始めていた。  村の守り神となった、自身の飼い犬を連れて。    ただし、多くの犬は漁港を住処としており、このまま残って港を守る。  人の数に比べて犬の数が多すぎ、そしてその差はこれから広がる一方だった。  ちなみにこの村が、人よりも犬の数のほうが多い『イヌの村』として名を馳せ。  観光地として多くの人が集まってくるのは、まだ先の話である。 ミッション『戌の王国 101匹大侵攻』をクリア! クリアボーナス (PC名)は魂塵を△△Ash得た (PC名)はSPを1得た (PC名)は『白犬鏡餅』を手に入れた -フェイズ5 -フェイズ6 -当日夜(休息処理後に表示) 戌の王国 101匹大侵攻 今回のイベントは終了しました 現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました イベント挑戦ボーナス (PC名)はコスチューム『いぬ』が修得可能になった ---- &aname(#20180221) *檻の中の祭典 -発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後) イベントスタート 『時限ミッション:檻の中の祭典』を発見しました 今回のイベントミッションの開放期間は2/21(水)~3/10(土)までです 檻の中の祭典    冬のスポーツの祭典。  街にある巨大競技場アポロンスタジアムにてそれは行われる。  4年に1度の大会は盛り上がりを見せ、僅かな勝者と多くの敗者を生み出した。  流れる涙は様々な色に輝きながら、大会を彩っていく。  競技である以上勝敗は必ずつくが、真の意味での敗者はそこには存在していなかった。    この祭典は今も続いているが、その裏で、別の祭典も行われようとしていた。  光あるところには必ず闇がある。  という決まり文句があるのは、やはりそれが真実だからだろう。    アポロンスタジアムからは遠く離れた街の果て。  高い外壁の向こうに造られた刑務所『ハデス監獄』にて、それは始まろうとしていた。  そこは特別な監獄だった。  通常収容される犯罪者たちとは違う。彼らは犯罪者ではない。    彼らは様々な理由で『アポロンスタジアム』から追放されたものたち。  大会ルール違反者たちである。  恋人にライバルを襲撃させたものから、双子トリックでの入れ替わり。  マラソン途中で車移動、自転車にモーター装着、靴に車輪、スキー板にジェット。  さらには乱入した客までも。あと、普通にドーピングも。    様々なものたちがスタジアムを追われ、大会期間中はここにぶち込まれている。  そんな彼らによる闇のスポーツ大会、それこそがもう一つの祭典だった。  『ハデス監獄』で行われるそれは、ただのスポーツ大会ではない。  囚われの身となったものたちが、『アポロンスタジアム』への復帰をかけて戦うのだ。    ここで勝者となれば無罪放免。光の祭典へと再び挑戦できる。  今度こそ、スポーツマンシップに則って、正々堂々と。  だがそれは簡単ではない。なにせ一度は罪を犯した身であるのだ。  まさに命をかけた禊が必要になってくる。    スポーツマンとしての、禊の『脱獄』。  この試合に勝つことこそが、罪滅ぼしとなるのである。  無論、監獄である以上は脱獄は簡単には許さない。  断固たる決意と意志で門を閉ざし、誰一人として『アポロンスタジアム』に足を踏み入れさせるつもりはない。  刑期満了、その時が来るまで。    それを阻止する看守役として、腕に覚えのある人の追加参加を募っている。  幾つもの障害を乗り越えた先にある自由、それを手にするための脱獄レース。    もう一つの闇の祭典、『檻ンピック』の開幕である。 『マップ:ハデス監獄』を発見しました -フェイズ1(食事およびマップ移動処理後) ハデス監獄  遠くで歓声が響く。    それは音だけだったが、そこに熱を感じることができた。  気温としてはむしろ寒いぐらいだったが、火傷しそうなぐらいに耳が熱かった。  また誰か、新たな勝者が誕生したのか。  あるいはビッグプレーが炸裂したか。奇跡のような番狂わせがあったのかもしれない。    だが、何が起こったのか、ここでは知ることはできなかった。  高く分厚い壁で隔てられた世界の此方側からは、そこを仰ぎ見ることすらできない。    光の世界へ行くには、まず闇から抜け出さねばならなかった。  『ハデス監獄』と呼ばれる、アスリートたちの収容所。    収容者を中に放り込んでから造られた壁は、切れ目なく一周綺麗につながっている。  それは有刺鉄線を何重にもがんじがらめに組み上げた、トゲだらけの鉄の壁だった。    指をかけて登ることはできる。その手がズタボロになる覚悟は必要だったが。  だがその覚悟があったとしても、その方法はやはり取るべきではないだろう。  その証拠が、有刺鉄線の壁の直ぐ側に落ちている黒い塊である。    それはある収容者が愛用していた元・空気人形。  試しに、と全身に地図のような入れ墨を入れた男が投げた、その末路だった。  空を舞う人形。有刺鉄線に引っかかる人形。  有刺鉄線に流れる電流にしびれる人形。爆発する人形。  黒焦げになり落ちる人形。横たわる人形。泣き崩れる男。    電流爆破有刺鉄線、それが彼らの前に立ちふさがっていた。  それを越えて脱獄することは無理に思えた。  だが、一度は闇に染まってもなお、彼らは奇跡を起こすアスリートだったのだ。    体育館の屋根をスキー板で滑り降り、そのままジャンプ。  同じ場所をボードでトリプルコーク壁超え。  ハンマーやら砲丸やら色々投げて破壊。  色々我慢しながらフリークライミング。  アスリートたちがそれぞれの技を活かし、壁を破っていく。    目的地は一つ。その視線ははるか遠くにあった。  だがそこには、壁を破ってもなお、満を持して看守たちが立ち塞がっていた。 -フェイズ2(なし、探索可能) 『壁』を超えて  光ある場所へ。  『アポロンスタジアム』を目指す脱獄レースが始まった。  そう。ようやく始まったのだ。  あの高く攻撃的で嗜虐的な壁。あれがスタートラインである。    いまだ脱獄レースの参加資格を得たに過ぎない。  本当のレースは『アポロンスタジアム』までの道中、その全てだった。  壁を越えた、その先の沿道には大勢の観客が詰めかけていた。    光の祭典が行われるスタジアムではなく、ここに来ている曲がった人々である。  それは判官贔屓というよりも、野次馬根性に近いだろう。    厳正なるルールの中で行われるものよりも、ルール無用のこちらを選んだのだ。  最初の選手が壁を超えた瞬間、集まった観客たちから爆発的な歓声が上がった。  その音量はスタジアムのそれにも負けていなかったろう。    それはレーススタートの号砲でもあった。  数々の障害、そして雇われ看守たちを乗り越えての『脱獄』レース。  それがついに始まったのだ。 -フェイズ3 『壁』の向こうへ  トップ選手に続いて、第2、第3の選手が次々と壁を超えてくる。  ある選手が壁の一部を破壊したことで、それはさらに加速していった。    その穴を通り抜け、あるいはさらに大きく広げながら。  雪崩のように多くの選手達が飛び出していく。  最初の選手が得たアドバンテージ。  それはそれほど多くあるわけではない。    だが、多くの観客の歓声を一人独占して全身に浴びた。  それはアドバンテージとは言えなかったが、名誉ではあった。    中から外が全く見えない状態から、真っ先に飛び出したのだ。  その勇気は讃えられるべきであると、その場に集まった全員が声を上げていた。  しかし勇気はときに蛮勇となる。  あるいはその歓声が、アドレナリンを創り出し狂わせたのか。  トップの座はあっけなく失ってしまった。    沿道からいきなり飛び出してきた看守によるストックのフルスイング。  それをギリギリで躱した、その瞬間に膝を後ろからすくう小さな衝撃。  膝が落ちて尻餅をつく。その尻の下に潜り込むようにして、死角から飛び込んできたのは一台のスキーリフトだった。  トップ選手をさらって、スキーリフトがハデス監獄へと去っていく。    失格になったわけではなく、リスタートとなったわけだが。  復帰しても、ここからの大逆転は難しいだろう。どこまで盛り返せるか。  そこからは自身との勝負といったところだろう。  トップが消えた。  だがまだこの脱獄レースは始まったばかりである。    無事に『アポロンスタジアム』にたどり着けるものはいるのか。  競技復帰を果たせるものはいるのか。見どころはまだ、この先である。 (PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント) 戦闘予告 闇堕アスリートに遭遇した! -フェイズ4 ハデス監獄  これはあらゆる人々が参加する競技である。  沿道に集まった人々。  観客である彼ら自身が考えた障害が、『ハデス監獄』から『アポロンスタジアム』までのコース上に設置されている。    それらは競技者を足止めするためのものである。  だが、完全に止めてしまうためではない。乗り越える、それを前提としたものだった。  この日のために考えられた障害たち。  それらは単純なものから、趣向を凝らしたものまで様々だった。    跳び箱や平均台、網くぐりなど障害物競走でおなじみのもの。  ハニートラップや下町のアイデアおじさんの考えたアイデア障害。  ピタゴラ的な回りくどい大型装置は、その幾つかは不発で終わったようである。  ただ見るだけではない。声援を送るだけではない。  自身も参加している、ということがその楽しさを倍増させていた。    だが、競技者にとってそれは楽しめる状況ではない。  もちろん、声援の大きさは力になる。より速くより高くより強く、そのための糧となる。    だがそれでも障害は障害でしかなく、それが難しいものであればあるほど。  ゴールを困難なものにすることは間違いなかった。  そしてまた障害物が一つ炸裂し、トップが入れ替わった。    白い粉の中に埋もれた飴玉を探すトラップ。  トップを快走していた選手はその粉を見た瞬間、叫びながらコースを外れて何処かへと走り去っていった。    何かトラウマ的なものが白い粉にあったのか。  逃げた背中を看守が追っていく。どうやら彼はそのままリタイヤのようだった。  代わって、薄い板の下に小さな刃が二本並んだ、簡易なソリに乗った男が先頭に出る。  板の上に仰向けに寝転んでおり、体に対して全てが小さくギアは殆ど見えなかった。    地面の上に寝そべったように見える男が、そのままの姿勢ですごい勢いで滑っていく。  多くの障害物を地面すれすれでスルーできるソリが、飴玉探しを越えてもここまで順位を上げることができた要因だった。  このまま彼がゴールテープを切れるのか。  それとも後を追う、雪中バタフライ男やスノーモービル、イエティなどが並ぶのか。    決着の地『アポロンスタジアム』はもう目の前。  脱獄完遂まで、あと一歩のところまで来ていた。。 イベントマップ『ハデス監獄』をクリア! クリアボーナス (PC名)はステータスボーナスを△△得た 檻の中の祭典  『アポロンスタジアム』に選手が入ってくる。  全ての障害物を乗り越えて、あらゆる困難に打ち勝って。    スタジアム内のグラウンドへと続く、最後の扉は開かれている。  最初からずっと、彼らのために開かれていた。  スタジアムでは、すでに最後の競技が終わり閉会式を待っていた。    満員のスタンドと、空っぽのグラウンド。  日も落ちかけた夕暮れ時のスタジアムに影がさし、終わりを演出していく。    その中に、光のないグラウンドについに姿を見せた。  脱獄レース『檻ンピック』の勝者である。  静まり返ったスタンド。  登場した選手の足音が響いて聞こえるほどの静寂に包まれていた。    それは観客たちが作り上げた世界である。  そしてそれを破るのもまた、彼らだった。  無人のトラックを走る。  ゴールテープもないゴールラインの上を通り抜けた瞬間、世界が割れた。    鋭利な凶器のように突き刺さる音がグラウンドに落ちて、勝者を讃える。  大歓声。大賛辞。それは等しく勝者に与えられる賞品の一つだった。  スタジアムの照明に火がつき、勝者の姿を照らし出す。  勝利の味を噛み締めているのか、まだ受け入れられず味も何も感じられないのか。  その心の中は分からないが、ゴールラインの上で立ち止まり、白い息を吐きながらゆっくりと満員のスタンドを見回していた。  少しばかり遅れて、後続がスタジアムに入ってきてゴールラインを越えていく。    勝利はたった一人のものだが、得られるものはそれだけではない。  未だ続く歓声は、けして勝者だけに向けられたものではなかった。    脱獄を果たした彼らへの激励はいつまでも続いていた。  ついに、『アポロンスタジアム』の門が閉じられる。  脱獄レースは終わり、すべての競技は終わり、閉会式が始まった。    脱獄者はすでにスタジアムにはいない。彼らには閉会式の参加資格はない。  無事『アポロンスタジアム』にたどり着いた彼らが向かうのは、次の大会である。    今度こそ、クリーンに。より速く、より高く、より強くなるために。  そして、たどり着けなかったものはまた『ハデス監獄』へと逆送致となった。  彼らもまた、次へと向かう。    四年後の脱獄レース、『アバシリンピック』に向けて。  すでに準備は始まっているのだ。 クリアボーナス (PC名)は魂塵を△△Ash得た (PC名)はSPを1得た (PC名)は『金メダルレプリカ』を手に入れた 特別ボーナス (PC名)は魂片:『檻ンピックメダル』を手に入れた -フェイズ5 -フェイズ6 -当日夜(休息処理後に表示) 檻の中の祭典 今回のイベントは終了しました 現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました ----
#contents() ---- &aname(20180103) *[[戌の王国 101匹大侵攻>101匹の戌吠岬]] -発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後) イベントスタート 『時限ミッション:戌の王国 101匹大侵攻』を発見しました 今回のイベントミッションの開放期間は1/3(水)~1/20(土)までです 戌の王国 101匹大侵攻  かつてそこは緑あふれる草原だった。    海に向かって突き出した岬の前に広がる草原。  そこには数多くのヤギが群れを作り、緑を食い荒らしていた。    彼らは悪魔の使いとして、死の大地へと変えようとしているかのようだった。  そこに一匹の犬が現れた。  彼は瞬く間に全てのヤギを討ち倒し、その岬の王となった。    そして岬の先端、崖の際に立って海に向かって鬨の遠吠えを上げたと言う。  その時から、ここは『戌吠岬』と呼ばれるようになる。  岬を制した王のもとに、一匹二匹と犬たちが集まってきた。    駅前に放置プレイをかまされた犬。  南の極地に放置プレイをかまされた犬。  交尾したさに海を渡った犬。    そんな我が家を失った犬たちが総勢100匹、王のもとに集ったのだ。  王と百狗軍団は『戌吠岬』に君臨し、国を作った。    その名も『ミサキわんおーわん王国』。  土佐犬リキを頂点とした101匹の犬たちによる、絶対君主制の王国である。  犬のくせに、彼らはすぐに領土の拡大を始めた。  目指す先は岬の近くにある漁村。人間たちの村である。    狂犬病の注射を打っていない彼らに怖いものはなかった。  毒を持つヘビやサソリのように、その黄ばんだ牙は一撃必殺の武器たりえた。  101匹の犬たちの軍隊。  その牙が漁村に届く。    その前に、彼らの侵攻を止めて欲しい。  『ミサキわんおーわん王国』に終止符を。その手で。 『マップ:101匹の戌吠岬』を発見しました -フェイズ1(食事およびマップ移動処理後) 101匹の戌吠岬  突き出た岬、その上にある『ミサキわんおーわん王国』。    国と言っても、何があるわけでもない。  道を作ったり建物を作ったり、そういう能力は犬にはないのだ。    なぜならば犬だからだ。  あるのは無数に掘られた穴だけだった。  それは彼ら自身が掘った、彼らの家となる巣穴である。    かつていたヤギたちに草が食い荒らされ、地面の土があらわになった岬。  穴が掘りやすくはあったろうが、入り口を隠すことはできなくなっている。    ちょっとした窪みのようなものから、細長い竪穴まで。  大小様々な『家』が国中に広がっていた。  王の家。王城とでも言うべきか。  その穴には、体の大きな土佐犬がすっぽりと収まっていた。    深く掘られた穴からは、頭と前足だけがちょこんと出ている。  本来そこは最も安心できる場所であるはずだが、その表情は硬かった。  顔の皮がたるんだ土佐犬は、そもそもムスッとした顔をしているだけかもしれないが。  のそのそと、穴から這い出す。  筋肉質な引き締まった体を伸ばし、細い尻尾をピンと立てていた。    王のその姿に、他の犬も続けて穴から出てくる。  その視線は全て王に向けられ、その一挙手一投足を注視していた。  一匹の戌王と、百匹の犬による百狗軍。  その進軍が始まろうとしていた。 -フェイズ2(なし、探索可能) 百犬伝  戌の王と、彼が率いる百狗軍。  その百狗軍は十個の小隊に分かれていた。  王に選ばれた十匹の隊長犬はどれも、その名に違わぬ強者たちである。    プライドも値段も高い、高級犬種部隊を率いるマスティフのアシモフ。  命知らずの短足歩兵隊はコーギーのマックスがリーダーを務める。  タヌキやキツネなどのイヌ科混成部隊をまとめるダイアウルフのロック。  一騎当千のワンワンアーミー、ピットブルのボス一匹のみの部隊もあった。  それぞれに兵数も犬種も役割も違う。    共通するのはただ一つ。その頂点に絶対王戌、土佐犬のリキが君臨し。  横の連携命令系統は一切なく、彼らはリキの命令にのみ従うということである。    この軍隊、ファミリーが作られた経緯からすれば、それは当たり前のことだった。  兵士が王になったわけではない。リキという王が初めからいて、そこに集ったのだ。  根本であるそこが覆ることはあり得なかった。  この国に権力争いはない。革命は起きない。  王と兵隊。それは強固な一枚岩であり、自滅など起こり得ないのだ。    その硬い岩盤を、正面から破壊するしかない。  都合よくあちらも正面から歩いてきていた。  クリスマスツリー型に展開された各部隊。  一糸乱れぬ行軍で迫る。    その先頭には当然のように、土佐犬のリキの姿があった。 -フェイズ3 戌の王  王はその出で立ちを少し変えていた。    戦争に行く。その先頭に立つ。  そのために、戦装束のようなものを身にまとっていた。  首輪代わりに巻いた太い縄から、白い紙の帯と派手な一枚布が垂れ下がる。  それは化粧廻しと呼ばれる、闘犬の正装だった。    戦装束に身を包み、凛々しい顔と眼差しでまっすぐ前を見据える。  背にした百匹の部下の方は見向きもしない。  自身が一歩進めば進む。止まれば止まる。そして退くことはない。    そこには言葉も、確認もいらなかった。  101匹の視線の先にあるのは岬の東側にある漁村である。  高台にある岬の上からなら、その村の全体を見下ろすことができた。    入り江に作られた船着き場と小さな漁村。  船着き場に船は一艘もなく、今は全て漁に出ている。    つまり村に若い男手はない。老人と女子供。犬にとって組みやすい相手だけだった。  だが、その前に、(PC名)が立ちふさがる。  101匹の犬を見ても動じることはなく、退くこともない。  牙を剥いて唸ってみたところで同じだった。    退かない。ならば、退かせるしかなかった。  リキが吼える。  その声に応えた100匹の犬たちが一斉に動き出した。    クリスマスツリー型の陣形から、一気に左右に翼を広げる。  一瞬にして包囲を完了させ、戌の王は殲滅戦開始の雄叫びを新たに上げた。 (PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント) 戦闘予告 101匹戌軍団に遭遇した! -フェイズ4 101匹の戌吠岬  土佐犬のリキ。  それが王の犬種と名前である。  犬同士では、互いを認識、区別するのに名前を必要とはしない。  彼や、彼の仲間たちが持つ名前は全て、かつて人によってつけられたものだった。    それらをいまだ、大事に抱えている。  魂に刻まれた、などと大げさなものではない。    つまるところそれは、思い出だった。  『ミサキわんおーわん王国』は瓦解した。  兵隊の幾つかは未だ4つ足で立っていたが、王の敗北はその心を折った。    膝が落ちる。  もはやこれ以上進むことも、あの場所に戻ることもない。  王は敗北し、国は敗北し、全ては終わったのだ。  伏せ、の体勢で動きを止める犬たち。  誰に命令されたわけでもない。誰からも命令されない、だからこそ。  その体勢で待機していた。新たな王の戴冠を。    視線は、王国を滅ぼした外敵である(PC名)に注がれていた。  敗者の行末を決めるのは勝者の義務である。  そして、勝者に身を委ねるのは敗者の権利である。    彼らはその権利を行使していた。今度はこちらが義務を果たす番である。  この国を、この犬たちをどうするのか。  新たな年へと時代が生まれ変わった今、答えを出さなければならない。 イベントマップ『101匹の戌吠岬』をクリア! クリアボーナス (PC名)はステータスボーナスを△△得た 戌の王国 101匹大侵攻  『戌吠岬』の東に位置する漁村カモメムラ。  漁に行っていた男たちが戻ったところで、村人の数は100人に満たない。    魚以外には特に産業のない、掛け値無しに小さな村である。  ぶおーーーーーーーー    汽笛の音を別れの言葉代わりに、今日も漁船が男たちを乗せて港を出て行く。  残った村人がみんなで港に集まり、船を見送る姿がいつもの光景だった。    その、いつもの早朝の景色に一つ変化があった。  そこには村人だけでなく、彼らを上回る数の犬が漁港を埋め尽くしていた。 『わおーーーーん』  汽笛に対して、一匹の犬が鳴き返す。  その土佐犬の遠吠えに呼応するかのように、他の犬たちも空に向かって吼えていた。    汽笛と遠吠えに包まれて、カモメムラは新しい朝を迎えていた。  『ミサキわんおーわん王国』の面々は全て、この村に移住してきていた。    この村では若い男たちは一日の大半を留守にし、年に数回は長期の漁に出る。  その間、村は無防備になる。今回彼ら自身に狙われたのも、そのタイミングだった。    そこで、彼ら犬たちをその間の番犬として雇用することになったのだった。  犬たちも失ったものはある。それは名前だった。  かつてつけられた名前。呼ばれていた名前。それらを失い、新たな名前を得た。    村人につけられたその名前でこれからを生きていくことになる。  ちなみに、名前はポチが最も多く、十四匹が同じポチである。    誰が呼んだか、で聞き分ける必要があり、難易度は高かった。 「ロッキー、そろそろ帰ろうかいの」  漁港の桟橋近くで見送っていた老人が、隣で賢く座っている土佐犬の頭を撫でる。    王も名を奪われ、ロッキーへと生まれ変わっていた。  飼い主が村長のロンさんというのが、元王としての尊厳を保てはしたか。  村の犬たちを束ねる立場、というのは変わりなかった。  複数の漁船が海の向こうに消えていく。  その後姿をのんびりと見送って、村人はそれぞれに家へと帰り始めていた。  村の守り神となった、自身の飼い犬を連れて。    ただし、多くの犬は漁港を住処としており、このまま残って港を守る。  人の数に比べて犬の数が多すぎ、そしてその差はこれから広がる一方だった。  ちなみにこの村が、人よりも犬の数のほうが多い『イヌの村』として名を馳せ。  観光地として多くの人が集まってくるのは、まだ先の話である。 ミッション『戌の王国 101匹大侵攻』をクリア! クリアボーナス (PC名)は魂塵を△△Ash得た (PC名)はSPを1得た (PC名)は『白犬鏡餅』を手に入れた -フェイズ5 -フェイズ6 -当日夜(休息処理後に表示) 戌の王国 101匹大侵攻 今回のイベントは終了しました 現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました イベント挑戦ボーナス (PC名)はコスチューム『いぬ』が修得可能になった ---- &aname(#20180221) *檻の中の祭典 -発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後) イベントスタート 『時限ミッション:檻の中の祭典』を発見しました 今回のイベントミッションの開放期間は2/21(水)~3/10(土)までです 檻の中の祭典    冬のスポーツの祭典。  街にある巨大競技場アポロンスタジアムにてそれは行われる。  4年に1度の大会は盛り上がりを見せ、僅かな勝者と多くの敗者を生み出した。  流れる涙は様々な色に輝きながら、大会を彩っていく。  競技である以上勝敗は必ずつくが、真の意味での敗者はそこには存在していなかった。    この祭典は今も続いているが、その裏で、別の祭典も行われようとしていた。  光あるところには必ず闇がある。  という決まり文句があるのは、やはりそれが真実だからだろう。    アポロンスタジアムからは遠く離れた街の果て。  高い外壁の向こうに造られた刑務所『ハデス監獄』にて、それは始まろうとしていた。  そこは特別な監獄だった。  通常収容される犯罪者たちとは違う。彼らは犯罪者ではない。    彼らは様々な理由で『アポロンスタジアム』から追放されたものたち。  大会ルール違反者たちである。  恋人にライバルを襲撃させたものから、双子トリックでの入れ替わり。  マラソン途中で車移動、自転車にモーター装着、靴に車輪、スキー板にジェット。  さらには乱入した客までも。あと、普通にドーピングも。    様々なものたちがスタジアムを追われ、大会期間中はここにぶち込まれている。  そんな彼らによる闇のスポーツ大会、それこそがもう一つの祭典だった。  『ハデス監獄』で行われるそれは、ただのスポーツ大会ではない。  囚われの身となったものたちが、『アポロンスタジアム』への復帰をかけて戦うのだ。    ここで勝者となれば無罪放免。光の祭典へと再び挑戦できる。  今度こそ、スポーツマンシップに則って、正々堂々と。  だがそれは簡単ではない。なにせ一度は罪を犯した身であるのだ。  まさに命をかけた禊が必要になってくる。    スポーツマンとしての、禊の『脱獄』。  この試合に勝つことこそが、罪滅ぼしとなるのである。  無論、監獄である以上は脱獄は簡単には許さない。  断固たる決意と意志で門を閉ざし、誰一人として『アポロンスタジアム』に足を踏み入れさせるつもりはない。  刑期満了、その時が来るまで。    それを阻止する看守役として、腕に覚えのある人の追加参加を募っている。  幾つもの障害を乗り越えた先にある自由、それを手にするための脱獄レース。    もう一つの闇の祭典、『檻ンピック』の開幕である。 『マップ:ハデス監獄』を発見しました -フェイズ1(食事およびマップ移動処理後) ハデス監獄  遠くで歓声が響く。    それは音だけだったが、そこに熱を感じることができた。  気温としてはむしろ寒いぐらいだったが、火傷しそうなぐらいに耳が熱かった。  また誰か、新たな勝者が誕生したのか。  あるいはビッグプレーが炸裂したか。奇跡のような番狂わせがあったのかもしれない。    だが、何が起こったのか、ここでは知ることはできなかった。  高く分厚い壁で隔てられた世界の此方側からは、そこを仰ぎ見ることすらできない。    光の世界へ行くには、まず闇から抜け出さねばならなかった。  『ハデス監獄』と呼ばれる、アスリートたちの収容所。    収容者を中に放り込んでから造られた壁は、切れ目なく一周綺麗につながっている。  それは有刺鉄線を何重にもがんじがらめに組み上げた、トゲだらけの鉄の壁だった。    指をかけて登ることはできる。その手がズタボロになる覚悟は必要だったが。  だがその覚悟があったとしても、その方法はやはり取るべきではないだろう。  その証拠が、有刺鉄線の壁の直ぐ側に落ちている黒い塊である。    それはある収容者が愛用していた元・空気人形。  試しに、と全身に地図のような入れ墨を入れた男が投げた、その末路だった。  空を舞う人形。有刺鉄線に引っかかる人形。  有刺鉄線に流れる電流にしびれる人形。爆発する人形。  黒焦げになり落ちる人形。横たわる人形。泣き崩れる男。    電流爆破有刺鉄線、それが彼らの前に立ちふさがっていた。  それを越えて脱獄することは無理に思えた。  だが、一度は闇に染まってもなお、彼らは奇跡を起こすアスリートだったのだ。    体育館の屋根をスキー板で滑り降り、そのままジャンプ。  同じ場所をボードでトリプルコーク壁超え。  ハンマーやら砲丸やら色々投げて破壊。  色々我慢しながらフリークライミング。  アスリートたちがそれぞれの技を活かし、壁を破っていく。    目的地は一つ。その視線ははるか遠くにあった。  だがそこには、壁を破ってもなお、満を持して看守たちが立ち塞がっていた。 -フェイズ2(なし、探索可能) 『壁』を超えて  光ある場所へ。  『アポロンスタジアム』を目指す脱獄レースが始まった。  そう。ようやく始まったのだ。  あの高く攻撃的で嗜虐的な壁。あれがスタートラインである。    いまだ脱獄レースの参加資格を得たに過ぎない。  本当のレースは『アポロンスタジアム』までの道中、その全てだった。  壁を越えた、その先の沿道には大勢の観客が詰めかけていた。    光の祭典が行われるスタジアムではなく、ここに来ている曲がった人々である。  それは判官贔屓というよりも、野次馬根性に近いだろう。    厳正なるルールの中で行われるものよりも、ルール無用のこちらを選んだのだ。  最初の選手が壁を超えた瞬間、集まった観客たちから爆発的な歓声が上がった。  その音量はスタジアムのそれにも負けていなかったろう。    それはレーススタートの号砲でもあった。  数々の障害、そして雇われ看守たちを乗り越えての『脱獄』レース。  それがついに始まったのだ。 -フェイズ3 『壁』の向こうへ  トップ選手に続いて、第2、第3の選手が次々と壁を超えてくる。  ある選手が壁の一部を破壊したことで、それはさらに加速していった。    その穴を通り抜け、あるいはさらに大きく広げながら。  雪崩のように多くの選手達が飛び出していく。  最初の選手が得たアドバンテージ。  それはそれほど多くあるわけではない。    だが、多くの観客の歓声を一人独占して全身に浴びた。  それはアドバンテージとは言えなかったが、名誉ではあった。    中から外が全く見えない状態から、真っ先に飛び出したのだ。  その勇気は讃えられるべきであると、その場に集まった全員が声を上げていた。  しかし勇気はときに蛮勇となる。  あるいはその歓声が、アドレナリンを創り出し狂わせたのか。  トップの座はあっけなく失ってしまった。    沿道からいきなり飛び出してきた看守によるストックのフルスイング。  それをギリギリで躱した、その瞬間に膝を後ろからすくう小さな衝撃。  膝が落ちて尻餅をつく。その尻の下に潜り込むようにして、死角から飛び込んできたのは一台のスキーリフトだった。  トップ選手をさらって、スキーリフトがハデス監獄へと去っていく。    失格になったわけではなく、リスタートとなったわけだが。  復帰しても、ここからの大逆転は難しいだろう。どこまで盛り返せるか。  そこからは自身との勝負といったところだろう。  トップが消えた。  だがまだこの脱獄レースは始まったばかりである。    無事に『アポロンスタジアム』にたどり着けるものはいるのか。  競技復帰を果たせるものはいるのか。見どころはまだ、この先である。 (PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント) 戦闘予告 闇堕アスリートに遭遇した! -フェイズ4 ハデス監獄  これはあらゆる人々が参加する競技である。  沿道に集まった人々。  観客である彼ら自身が考えた障害が、『ハデス監獄』から『アポロンスタジアム』までのコース上に設置されている。    それらは競技者を足止めするためのものである。  だが、完全に止めてしまうためではない。乗り越える、それを前提としたものだった。  この日のために考えられた障害たち。  それらは単純なものから、趣向を凝らしたものまで様々だった。    跳び箱や平均台、網くぐりなど障害物競走でおなじみのもの。  ハニートラップや下町のアイデアおじさんの考えたアイデア障害。  ピタゴラ的な回りくどい大型装置は、その幾つかは不発で終わったようである。  ただ見るだけではない。声援を送るだけではない。  自身も参加している、ということがその楽しさを倍増させていた。    だが、競技者にとってそれは楽しめる状況ではない。  もちろん、声援の大きさは力になる。より速くより高くより強く、そのための糧となる。    だがそれでも障害は障害でしかなく、それが難しいものであればあるほど。  ゴールを困難なものにすることは間違いなかった。  そしてまた障害物が一つ炸裂し、トップが入れ替わった。    白い粉の中に埋もれた飴玉を探すトラップ。  トップを快走していた選手はその粉を見た瞬間、叫びながらコースを外れて何処かへと走り去っていった。    何かトラウマ的なものが白い粉にあったのか。  逃げた背中を看守が追っていく。どうやら彼はそのままリタイヤのようだった。  代わって、薄い板の下に小さな刃が二本並んだ、簡易なソリに乗った男が先頭に出る。  板の上に仰向けに寝転んでおり、体に対して全てが小さくギアは殆ど見えなかった。    地面の上に寝そべったように見える男が、そのままの姿勢ですごい勢いで滑っていく。  多くの障害物を地面すれすれでスルーできるソリが、飴玉探しを越えてもここまで順位を上げることができた要因だった。  このまま彼がゴールテープを切れるのか。  それとも後を追う、雪中バタフライ男やスノーモービル、イエティなどが並ぶのか。    決着の地『アポロンスタジアム』はもう目の前。  脱獄完遂まで、あと一歩のところまで来ていた。。 イベントマップ『ハデス監獄』をクリア! クリアボーナス (PC名)はステータスボーナスを△△得た 檻の中の祭典  『アポロンスタジアム』に選手が入ってくる。  全ての障害物を乗り越えて、あらゆる困難に打ち勝って。    スタジアム内のグラウンドへと続く、最後の扉は開かれている。  最初からずっと、彼らのために開かれていた。  スタジアムでは、すでに最後の競技が終わり閉会式を待っていた。    満員のスタンドと、空っぽのグラウンド。  日も落ちかけた夕暮れ時のスタジアムに影がさし、終わりを演出していく。    その中に、光のないグラウンドについに姿を見せた。  脱獄レース『檻ンピック』の勝者である。  静まり返ったスタンド。  登場した選手の足音が響いて聞こえるほどの静寂に包まれていた。    それは観客たちが作り上げた世界である。  そしてそれを破るのもまた、彼らだった。  無人のトラックを走る。  ゴールテープもないゴールラインの上を通り抜けた瞬間、世界が割れた。    鋭利な凶器のように突き刺さる音がグラウンドに落ちて、勝者を讃える。  大歓声。大賛辞。それは等しく勝者に与えられる賞品の一つだった。  スタジアムの照明に火がつき、勝者の姿を照らし出す。  勝利の味を噛み締めているのか、まだ受け入れられず味も何も感じられないのか。  その心の中は分からないが、ゴールラインの上で立ち止まり、白い息を吐きながらゆっくりと満員のスタンドを見回していた。  少しばかり遅れて、後続がスタジアムに入ってきてゴールラインを越えていく。    勝利はたった一人のものだが、得られるものはそれだけではない。  未だ続く歓声は、けして勝者だけに向けられたものではなかった。    脱獄を果たした彼らへの激励はいつまでも続いていた。  ついに、『アポロンスタジアム』の門が閉じられる。  脱獄レースは終わり、すべての競技は終わり、閉会式が始まった。    脱獄者はすでにスタジアムにはいない。彼らには閉会式の参加資格はない。  無事『アポロンスタジアム』にたどり着いた彼らが向かうのは、次の大会である。    今度こそ、クリーンに。より速く、より高く、より強くなるために。  そして、たどり着けなかったものはまた『ハデス監獄』へと逆送致となった。  彼らもまた、次へと向かう。    四年後の脱獄レース、『アバシリンピック』に向けて。  すでに準備は始まっているのだ。 クリアボーナス (PC名)は魂塵を△△Ash得た (PC名)はSPを1得た (PC名)は『金メダルレプリカ』を手に入れた 特別ボーナス (PC名)は魂片:『檻ンピックメダル』を手に入れた -フェイズ5 -フェイズ6 -当日夜(休息処理後に表示) 檻の中の祭典 今回のイベントは終了しました 現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました ---- &aname(20180411) *復活祭 よみがえる巨人 -発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後) イベントスタート 『時限ミッション:復活祭 よみがえる巨人』を発見しました 今回のイベントミッションの開放期間は4/11(水)~4/28(土)までです 復活祭 よみがえる巨人  エオストレ島。南洋に浮かぶこの島は長らく無人の島だった。  そこに新たな入植者が現れ、町を作り社会を作り。そして現在に至る。    彼ら入植者が訪れた時、島には人ないし何らかの文明種族の姿はなかった。  代わりに出迎えたものは、それらが遺したものか、島中に建てられた石像だった。  島の石像は全て、人を模して造られていた。  だがその大きさは巨大なものであり、製作者からしても手に余ったのか。  頭部だけしかない石像が、どしんと地面に立てて置かれていた。    頭だけの頭像だが、その高さは大きいものでは5メートルを超える。  それらが島中に、そのいたるところに存在していた。  ある夜、島に雷が落ちた。    それは何もない丘の地面を打ち、そこにあった小さな石ころを砕く。  その石ころは、小さな小さな、誰も気づかないほどに小さな頭像だった。    その破壊と同時、島にあったいくつかの石像が目を覚ました。  比喩ではなく事象として、石の目蓋が開き、その眼が世界へ再び向けられたのだ。    目覚め、体を起こす。そう。それら頭像には体があった。  地面の上に立つ石の頭像。その下には続きがあったのだ。    誰も気づかなかったのは、間抜けな話だとしか言いようがない。  言いようがないが事実である。  それらは巨大な頭像ではなく、首から下が地面に埋まった超巨大な全身像だった。  目覚めた石の巨人が跋扈する島と成り果てたエオストレ島。  すでに壊滅状態になった村もあるという。  だが、まだ蘇ったのは一部のみであり、多くの頭像は地面に埋まったままだった。    全てのものが動き出した時、この程度では済まないことは明白である。  島は滅ぶ。少なくともそれは断言できた。  彼ら石像の行動パターンは二つである。    彼らにとっての異物、島外から持ち込まれたものを破壊すること。  そして未だ眠ったままの頭像を順に起こしていくこと。    石像たちの足は、この島一番の街である『メディウム』へと向かっていた。  最も大きく人も多いメディウムに奴らを近づける訳にはいかない。  そして何より、この街には巨大モニュメント『ハンチング石頭像』が存在するのだ。    この『ハンチング石頭像』は、島最大の頭像である。  もしもこれが復活すれば島の終わりは避けられないだろう。  石像たちの街への侵攻、そして『ハンチング石頭像』の復活阻止。  これは島の存亡をかけた、最終防衛戦である。 『マップ:エオストレ島『メディウム』』を発見しました -フェイズ1(食事およびマップ移動処理後) エオストレ島『メディウム』  『エオストレ島』というのは、そもそも有名な観光地である。  入植者たちの手により有名になった、というのが正しいが。  島へは定期船で渡ることができる。  物資の輸送がそれの主たる役目であるが、人も同様に多く運んでいた。    観光客専用の新たな巨大船の就航も近いという話だったが。  それも今回の騒ぎでどうなったのか。  想像するしかないが、いい結果を生む気配はあまりなさそうだった。  島のいたるところに建てられた石像たち。  いつ、誰が、何のために建てたのか分かってはいない。    遺されたその姿で、夢想する他ない。  口はもちろん、その眼差しは何も語らないが。  何かを語るように海を見つめる、海岸線に並んだ5つの帽子をかぶった石像。  入植者たちが初めて見た姿はそれだったという。    海の外から見た巨石の頭像。その姿には素直に恐れを抱いたらしい。  それはこの島に住む、何者かの存在を示すものであるからだった。    だが結局の所、島への上陸も島内の探索も誰にも邪魔されることはなく。  島中に他の頭像を発見しただけで、それを作ったであろう人々はどこにもいなかった。  島のいたるところで見つかった石像はそのまま残された。  畏怖、とまでは行かないがそれなりにアンタッチャブルな存在として。    いくつかの町や村ができた今もなお、巨石の頭像はそのままの姿であり続けた。  いつまでもそのままであり続けると、誰もが信じながら。  ある夜の落雷。  その小さな一撃が島を揺るがすときまで。 -フェイズ2(なし、探索可能) 『エオストレ島』上陸  まだ動いていた定期船で島に訪れた時、港は人で溢れていた。    巨人見物に殺到した人々、では当然ない。  島からの脱出を望み、船を待つ人々である。  (PC名)が乗ってきた船にその中のごく一部だけを乗せて。  行きよりもぐっと船体を海に沈ませながら、汽笛も鳴らさず港を出ていく。    目覚めた石像の巨人たちは基本的に島の外から内に向かっている。  つまりその最外に位置する港などは全く被害はなく、混乱も少ない。  殺到した人々の間で二次被害などが出ていないことが幸いだった。  港町から、その彼らとは全く別方向に向かう。  (PC名)の向かう先は石像の巨人たちと同じ、島の中心である。    形としては、追いかけっこになる。  どちらが先に、中心の街『メディウム』にたどり着くか。  『ハンチング石頭像』を巡るレースに、すでに大きく出遅れていた。 -フェイズ3 『ハンチング石頭像』防衛戦  メディウム到着レースはほぼ同着といってよかった。  こちらはスタートから大きく遅れていたわけだが。  あちらはあちらで、目的地にまっすぐ向かっていたわけではない。    その道中で他の石像を起こしながらの、寄り道の多い旅だったのだ。  そして結果、追いついた。街を目前にして、である。  石像の巨人との初対面。  聞いていた話と少し違う。というのが、はじめの印象だった。    動かない頭像としての状態のものは、ここまででいくつか目にしている。  それについては問題ない。問題は首から下の半身だった。  巨大な頭に比べ、体はかなり小さかった。  頭部と同じぐらいかそれ以下しかなく、おおむね0.8頭身ほどである。    バランスの悪いおもちゃのようで、それでも頭部だけで充分巨大ではあるのだが。  素直な気持ちとしては、恐怖よりも奇妙さが勝っていた。  『メディウム』には島内最大の『ハンチング石頭像』以外にもいくつか頭像がある。  そのうちの一つに、一体の石像が向かっていた。    顔を寄せ、額と額を合わせる。  その儀式から、(PC名)は思わず目をそらせていた。  彫りの深い石像同士が額を寄せて見つめ合う。それはなかなかの気持ち悪さだった。  それが目覚めの合図だった。  眠っていた頭像の目蓋が開く。そして超至近距離でお互いの目があって。  そそくさと、気まずそうに動ける方の石像が離れていった。    そしてすぐに、目覚めた石像も動き始める。  もぞもぞと体を揺らしながら、地面の下から半身を這い出してきた。    その体は、やはり小さく全体のバランスは崩壊していた。  更に数を増やして、石像たちが迫りくる。  その先には、『ハンチング石頭像』が街の広場に鎮座していた。    ビルか、と思うほどの大きさの頭像。  これの復活を阻止できるかどうか。それがこの戦いの勝敗を握っていた。 (PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント) 戦闘予告 復活の石巨人に遭遇した! -フェイズ4 目覚まし石像  街に、少なくとも見える範囲には住人の姿はない。  そのほとんどは石像たちが街についた時点で、港かすでに島外へと避難していた。  石像たちは、とにかくでかく重たい。  それがあらゆる問題を引き起こしていた。    歩くだけで物を壊す。倒れても壊す。吹っ飛んでも壊す。  石像としてじっとその場で立っている、それ以外のことをすれば全てがあらゆる破壊につながってしまっていた。  破壊された建物と破壊した石像と。  それぞれの破片が、どちらのものか分からない程度に混ざり合い散乱している。    島内の同じ石材から造られているのだろう。  ここまで細かくなってしまえば、それらの区別は不可能だった。  その破片を更に細かく踏み潰しながら、新たな石像たちが次々と現れる。    島中で目覚めた石像、その全ての目的地がここなのだ。  ある意味手っ取り早くはあるのだが、ジリ貧感というものは増してきていた。    そして単純にその物量が、こちらの処理能力を越えようとしていた。  その時、(PC名)を覆うように街に巨大な影が差す。    天候の悪化が原因ではない。  それはわざわざ空を見なくとも、その影の形を見れば明らかだった。    角のある、直線のある、四角い雲など存在しない。  それは街の西側の丘にずらりと並んで立つ、5体の石像が作り出す影だった。  それに気を取られた、つもりはないのだが。防衛線を一体の石像が抜けた。  その手が、額が『ハンチング石頭像』についに届く。    最悪の災厄が目を覚ます。その瞬間。  ラインを抜けた石像の頭頂部に、別の石像が逆さになって突き刺さっていた。 エオストレ島『メディウム』  巨大な頭を支え、バランスをとるので精一杯な小さな体。  その短い手足をバタバタと動かしながら、石像は『ハンチング石頭像』へ走っていた。  仲間の殆どは砕かれた。  だがその犠牲のおかげで、自身は届いたのだ。  ついに、あの王のもとに。あの神のもとに。    後はこの額をこすり合わせれば完遂する。復活の時は来たのだ!  だが、その頭上に迫る黒い影。  あと数歩、巨大石頭像の閉じた眼の前で、その身は粉々に砕け散っていた。    破壊したのは、丘にいた5体の石像のうちの1つ。  いきなり真上に飛び上がり、弧を描く砲弾の軌道そのままに頭から突っ込んでいた。  自らを砲弾と化して、同じ石像仲間を破壊した丘の石像。  逆さになったまま、舞い上がった土煙の中で地面に突き刺さっていた。    丘に残った4体も含めた5体全て、一つの特徴として石の帽子をかぶっている。  頭から突っ込んだ石像のものは逆さで分かりにくいが、おそらくシルクハットで。  他は、ベレー帽、サンバイザー、テンガロンハット、NYキャップをかぶっていた。  5体の帽子の石像は、他のものとは別の存在感を放っている。  それらと似た、だが格の違う雰囲気を持っているのが『ハンチング石頭像』だった。    それらに特別な何かがあるのか。あるいは特別な帽子なのか。  どちらにせよ。もはや他の帽子なし石像に出番はなかった。  逆さに突き刺さっていたシルクハットの石像が、謎の力でぴょーんと空中に跳ね上がる。  と同時、丘の上の4体の帽子の石像も空に飛び上がっていた。    5つの影が空中で交差する。  がしーんがしーんと、なぜか石像から金属音が響いて。  5体の帽子の石像は、上下に積み重なるようにしてくっついていた。  体はどこかに収まったのか、巨大な頭部のみが縦に5つ重なった石像。  その姿はまるでトーテムポールのようだった。    空中で合体した石のトーテムポールは、きらりと10の瞳を光らせて。  一番上のサンバイザーの頭頂部を矛先に、真っ直ぐに下に向かって落ちてきていた。    その向かう先は、(PC名)ではなく。『ハンチング石頭像』だった。  巨大石頭像の後頭部にテーテムポールが突き刺さる。  感覚としては、そんな感じだった。    ただし実際には突き刺さったわけではない。  傷一つつけることなく、だが思い切り頭を後ろからどんと押し出して。  巨大石頭像はそのまま、かばうための腕もなく顔から地面に倒れていった。  途中でティータイムでも挟めそうなほどのスローモーションで倒れる巨大石頭像。  そして地面に突っ伏す、その姿はちょうど。    『ハンチング石頭像』が地面に額を合わせる、という形になっていた。 イベントマップ『』をクリア! クリアボーナス (PC名)はステータスボーナスを△△得た 復活祭 よみがえる巨人  がやがやがやと、港に人の喧騒がこだまする。  ただしそれは殺気立ったものではなく、祭りのような浮かれた空気だった。  結局島から脱出できなかったものも含めて。  船で戻ってきた島民と観光客で港はいっぱいだった。    脱出の時は船がある限りどんどんと出ていったわけだが。  今回に関しては島内のそれぞれの集落になかなか散っては行かず。    結果、港の人口密度は異常な状態になっていた。  こうなれば、人というのは逞しく。  すでにその人々を対象にした商売が始まっていた。    それはもともとこの島や港の名物なのか、多くの人が売り歩いている。  マケマケという名前の水鳥の卵で、縦にすれば20センチほどになる大きなものだった。    頭頂部が割られてそこにストローが2本刺さっており、飲み物のようである。  『エオストレ・エッグ』という名で売られており、それなりに人気のようだった。  『ハンチング石頭像』の額が地面に触れた瞬間、島が揺れた。  それだけの衝撃を生む重量はたしかにあったが、それだけではないだろう。    巨大石頭像の頭突き、その一撃で全ての石像はそれまでの行動をやめていた。  その場で地面の下に半身を埋め、巨大な頭部だけを外に出して。  石の目蓋をしっかりと閉じ、以前の島の姿と同じ状態に戻っていた。    あの帽子をかぶった5体の石像を除いて。  『ハンチング石頭像』の後頭部をぶん殴って、その衝撃があるいは重すぎたのか。  そのまま空中分解して、5体それぞれバラバラに地面に落下していった。    そして島への頭突きで他の石像たちが再び眠りにつく中。  5体の帽子の石像たちだけは、ゆっくりと歩いてその場を立ち去っていった。  彼らが元いた場所、島の海岸線に向かって。  港から、それが見える。  帽子をかぶった石像が5体、横に並んで海を眺めていた。    地面に突っ伏して眠り続ける王に背を向けて。外界を見つめ。  旅立っていった島の王がこの海の向こうから戻るまで、石の王は眠り続けるのだ。    王の帰還、復活の日はまだまだである。 ミッション『復活祭 よみがえる巨人』をクリア! クリアボーナス (PC名)は魂塵を△△Ash得た (PC名)はSPを1得た (PC名)は『クリアボーナス食料』を手に入れた (PC名)は魂片:『クリアボーナス魂片』を手に入れた -フェイズ5 -フェイズ6 -当日夜(休息処理後に表示) 復活祭 よみがえる巨人 今回のイベントは終了しました 現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました イベント挑戦ボーナス (PC名)はコスチューム『たまご』が修得可能になった ---- &aname(180530) *雨中のあじさい祭り -発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後) イベントスタート 『時限ミッション:雨中のあじさい祭り』を発見しました 今回のイベントミッションの開放期間は5/30(水)~6/16(土)までです 雨中のあじさい祭り  昼間でも薄暗く、空は雲に覆われている。    雷の心配はなさそうだったが、雨はざあざあと一日中降り続け。  村と花畑とを、水浸しにしてしまっていた。  村の名前を知らないものからも、『あじさいの里』などと言った呼ばれ方をするほど、その村のアジサイは有名だった。    マドルブラ村。  知らないものに言っておくと、それがこの村の名前である。    村長の名はラモニッツ・マドルブラ、妻の名はラシン、愛人はシモーラとリオ。  三人の女の仲は極めて悪く、それぞれが作るアジサイの美しさを毎年争っている。  そういった醜い女たちの醜い争いは別として。  雨の中、村を埋め尽くすように咲く花々を見ようと、村外から多くの人が訪れていた。    このマドルブラ村で最大にして唯一の観光資源である。  例年通りの激しさで降る雨と、例年を上回る美しさで咲き誇るアジサイが出迎える。    生きるすべとして、この村では田んぼではなくこれを選んだのだった。  アジサイ畑に姿を見せるのは、鑑賞に来た人々だけではなかった。  花を見に来たと言うよりも、雨に呼ばれたと言ったほうが良いだろう。    アジサイの葉の上にちょこんと乗っかった小さな生き物たち。  カタツムリ、ナメクジ、カエル。  他にもいるが、主にその三種類の姿が多かった。  それもまた、この季節を彩る風物詩の一つと言っていいだろう。    初めは、今年は多いな、というぐらいの印象だった。  その印象が少しずつ変わっていく。そしてある時を境に、それは劇的に変わった。    気づいたその時にはすでに、奪われていた。  どこから来たのか、あるいは全てここで生まれたのか。  村の大半を占めるアジサイ畑に、多くの小動物が群れをなしていた。    それだけならば、それだけで済む話である。  放置するなり駆除するなり、どちらにせよ村人が選べばいい。  好きな方を、好きなように選び、好きなように実行すれば良いのである。  だが、簡単な話をややこしくする要素がある。  それは単純に、彼らは強く、そして凶暴だった。  大量発生した梅雨の申し子たち。  雨が彼らを呼んだのか、彼らが雨を呼んだのか。    アジサイ畑を支配下においた彼らは、雨の力を借りてさらに土地を拡げ、さらなる領土を手にせんとしていた。  この村にはアジサイ畑しかない。  それを奪われたということは、すべてを奪われたに等しい。    だがそれだけでは足らず、本当に全てを奪いに来ている。  奪われそうなものを守る。奪われたものを取り戻す。すでに戦いは始まっていた。 -フェイズ1(食事およびマップ移動処理後) 『あじさいの里』マドルブラ  やまない雨はない、などと言うが。  それがいつかも分からず、いつかやむだろうという言葉は何の慰めにもならない。    今降っている。降り続いている。しばらくはやみそうにない。  それがはっきりしていれば、気分が陰鬱になるには充分だった。  マドルブラ村を埋め尽くすアジサイ畑、その立ち姿は圧巻だった。    見渡す限りに咲くその広大さ、そして鮮やかな色彩の数々。  雨に濡れた花は艶やかに、見るものの目と心を容易に奪っていく。    暗くジメジメした空気を吹き飛ばす、そういう美しさがあった。  だがそれには対価が必要だった。    彼らは美しさを手にした、その結果。  その美しさに魅入られた者たちに奪われ蹂躙され、結果自分を失うことになった。  アジサイ畑には小さなものたちがあふれていた。  カタツムリ、ナメクジ、カエル。  そのようなものたちが、アジサイの葉の上や足元から次々と顔を出す。    その数が、尋常ではなかった。  水はけのいい土地だが、それでも吐き出しきれずに雨水が溜まっていく。  アジサイ畑の土手がそれをなんとか受け止めてはいたが、現れた小さいものたちがあっけなく崩してしまっていた。    流れ出す土と水。  サーフィンのように、それらに乗って小さな生き物たちが飛び出していく。  彼らはそれぞれに、くわえたり背中に乗せたりして、あるものを運んでいた。  小さな葉っぱが数枚だけついたアジサイの枝を、彼らは外に持ち出していた。 -フェイズ2(なし、探索可能) 雨中からの侵略者  決壊した土手から、村中へと広がっていく土と水。  そこには多くの生き物たちが混じっていた。  ピョンピョンと、アジサイの枝をくわえたカエルが跳ねている。  そしてアジサイ畑の外の地面に、その枝を突き刺した。    土に根を張り、水を吸い上げる。  枝だったそれが新たな苗となり、アジサイ畑の領土を拡げていた。  それと同じことを、全ての生き物たちが行っている。    だが、よくよく見ると彼らは協力しているわけではなく。  2つの勢力に分かれて競いながら、ときに争いながらアジサイの枝を刺していた。    そしてそこに、新たなものが加わる。  第三勢力は空からやってきた。  黒い羽を広げ、6本の足でしっかりとアジサイの枝を抱え。    そしてケツをびかびかと光らせながら、彼らはやってきた。 -フェイズ3 アジサイ村の雨中戦争  地上で争う、カエルを中心とした勢力とナメクジとカタツムリの連合勢力。  そこに空から現れた第三勢力であるホタルが参戦して。    3つの勢力による、アジサイの領土争いは激化していた。  彼らがそれぞれに植えているアジサイの枝の苗。  それらは赤、青、紫と3色のアジサイから切り取ったものを使っていた。    カエルたちは青いアジサイから。  ナメクジとカタツムリたちは赤いアジサイから。  ホタルたちは紫のアジサイから。    好みなのか何なのか、決まった色の品種だけを植えているようだった。  村人の悲鳴が上がる。  流れ出した泥水が家に侵入し、同時にホタルの群れが雪崩込んでいた。    立派な家ではない。だがそれでも、木造のそれなりの家である。  それがあっさりと崩れ去る。  ホタルたちにとって、領土拡大に邪魔なものは全て排除対象だった。  無理矢理に平地にされ、泥の中に沈んだ場所にアジサイの枝が植えられる。  近い将来、そこでは紫の花を咲かせるだろう。    家主だった村人が、少し離れたところからそれを悲しそうに見つめていた。  自身の家の上に、弔いのように植えられた花を。  泥水とアジサイが、全てを埋め尽くさんと広がっていく。  その尖兵である、梅雨に選ばれた戦士たち。    彼らの足を止めなければ、悲しみの雨は広がっていくばかりだった。   (PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント) 戦闘予告 雨中生物に遭遇した! -フェイズ4 -フェイズ5 -フェイズ6 『あじさいの里』マドルブラ  雨が続く限り、水が引くことはない。    空を見上げても、相変わらず分厚い雲が一面を覆い尽くしており。  いつか止むであろう雨も、それでもしばらくはこのまま続きそうだった。  水浸しの村は、そのほとんどすべてがアジサイに覆われてしまっている。  流れ出した水で潰された家々は、今や泥の下でどれも見る影もなかった。    村人たちの避難はなんとか間に合い、彼らはみな寄り合い所に集まっている。  それが幸いだったと言えるかどうか、それは彼ら自身が決めることであり。    こちらが勝手に、不幸中の幸いだ、などと断言していい話ではなかった。  村人の家々や、いくつかあった松や柿の木はなぎ倒されている。  もともと何もなかった村が、いよいよ本当に何もなくなって。  視界を遮るものもなく、端から端まで綺麗にすべて見渡せるようになってしまった。    アジサイ畑以外に残ったのは、高台にある寄り合い所と村長の屋敷ぐらいだった。  今言ったそのどちらにも、家の外に人の姿があった。    寄り合い所には多くの村人が身を寄せ合い、悲しい顔で村を見下ろしている。  それぞれに視線の先が違うのは、自分の家があった辺りに向いているのか。  アジサイの花ではなく、皆が新たに刺し増やされた枝の苗を見ているようだった。    そして村長の屋敷の側には、3人の女性の姿があった。 「これは完全にあたしの勝ちね」  黒髪の一番若い女性がにやにやとしながら、その言葉が他の二人によく聞こえるようにボリュームを上げて。    二人は顔を歪めながら、苦虫を噛み潰している。  先に口を開いたのは、ややふくよかな年長の女性の方だった。 「この小娘は何言ってるのかしら。空飛ぶのは反則よ、反則」  その言葉に、最後の栗色の長い髪の女性が続く。   「そ、そうですよ。ずるいですよ。そ、空を飛ぶのはダメですよ」  1対2の構図になっている。それが、誰が優勢であるかをはっきりさせていた。 「はぁぁ? 思いつかないそっちが馬鹿なだけじゃない?」  それは本人も分かっている。  だからこそのこの強気であり、余裕の表情を見せ続けていた。    それは彼女、村長ラモニッツ・マドルブラの愛人2号こと。  リオ・サンドラゴラの勝利宣言だった。 イベントマップ『『あじさいの里』マドルブラ』をクリア! クリアボーナス (PC名)はステータスボーナスを△△得た 雨中のあじさい祭り  遠くで三人の女声による喧騒が続いている。    それを聞き流しながら。  寄り合い所の庭から、眼下に広がる一面のアジサイの花を眺め見ていた。  雨に濡れた小さな花々は健気に上を向いている。  晴れ間を探しているのか、こうなっても雨を楽しんでいるのか。    いまだキャンキャンと喚いている方向に耳を向けるより、その花々に目を向けた方がよっぽど有意義な時間だった。 「大変だったね、お客さん」  そんな(PC名)に声を掛ける。 「みんなの避難を手伝ってくれたって。感謝するよ」  それは他の村人よりも少しだけ身なりの良い、白髪の老人だった。   「本当は、綺麗なアジサイ畑を見てほしかったけど」 「もうちょっと早く来ていればね。今年は三色とも綺麗に並んでいたんだよ」  ニコリと、柔和な笑みを見せる。  彼の小さな傷だらけの手や黒くなった爪を見れば、普段あのアジサイとどう接しているかすぐに分かった。 「妻たちが、競争みたいなことを始めてね」 「あまりに仲が悪いから、勝負はアジサイでつけろって言ったせいなんだけど」  困ったように苦笑しながら、老人は視線を横に向ける。  そちらにはあの喧騒があった。(PC名)は顔を向けなかったが。   「初めは美しさを競っていたのが、いつの間にか面積勝負になって」 「とうとう、こんなことにね」  こんなこと、と言いながら眺めるアジサイ畑は村を覆い尽くしており。  『あじさいの里』と呼ばれた村は、野生のアジサイが群生する湿地帯のようだった。 「今年はムシとかカエルまで使いだして」 「いよいよ人外魔境になってきたし、そろそろ止めさせないとね」  ラモニッツ・マドルブラ。この村の村長であり、彼女らの夫である。  大きな決意を持って、彼はそう宣言していた。    だが、今もなお彼の介在しない中で、三人の喧嘩は続いていた。 「来年あれが咲いて、吠え面かかないことね」  本妻である年長の女性が、勝利を噛みしめる黒髪の女性に向かって。   「あれが本当に、あなたの紫のアジサイが咲くとは限らないんだから」  負け惜しみでしかなかったが、やたらと自信ありげに胸を張っていた。 「その時はあんたを畑に埋めて、もっかい花の色かえてやるわよ」  愛人2号は勝者の余裕に満ち溢れ、その感情を口元にしっかりと出しながら。  本妻の感情を全力で逆なでする笑みを浮かべていた。   「あ、あの、それはズルだと思います」 「死体を埋めて変わった分は、ノ、ノーカンだと思います」  ルールは厳密に。愛人1号は細かいところが気になる性格だった。 「一人ひとりは、悪い娘じゃないんだけどねえ」  流れてくる声を一緒に聞きながら、老人がそんな言い訳をしてくる。  夫として彼女らをかばったのか、あるいは自身のプライドをかばったのか。   「もうわしの取り合いでもなくなってるし。どう止めたものだか」  ともあれ、その思いも言葉も、少し離れた屋敷の庭先までは届かなかった。 「化けて出て、あんたのアジサイ全部むしり取ってやるから」 「化けて出れないぐらい深くに埋めてやるわよ」 「う、埋めるのも、化けるのも好きにしていいから。わ、わたしのはやめて」 「うるさいわよ。全部むしるわよ、全部」 「そうよ。あんたも一緒に埋めてやるわよ」 「関係ないでしょ、わ、わたしは。ふ、二人で勝手にやってなさいよ」  収まらない、愚にもつかないやり取りに。 「相性が良くないのかな。まあ、相性がいい妻と愛人なんて、いないけどね」  という結論に落ちついていた。  ざあざあと。事象も関係も何も水に流すことなく雨が降る。  カエルもカタツムリもナメクジもホタルも、仕事を終えて帰路についた。    (PC名)も帰路につく。そんな時間だった。 ミッション『雨中のあじさい祭り』をクリア! クリアボーナス (PC名)は魂塵を△△Ash得た (PC名)はSPを1得た (PC名)は『劇薬紫陽花草』を手に入れた 特別ボーナス (PC名)は魂片:『紫陽花の枝苗』を手に入れた -当日夜(休息処理後に表示) 雨中のあじさい祭り 今回のイベントは終了しました 現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました ---- &aname(20180721) *海開きと陸橋の島 -発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後) イベントスタート 『時限ミッション:海開きと陸橋の島』を発見しました 今回のイベントミッションの開放期間は7/18(水)~8/4(土)までです 海開きと陸橋の島  ズンガズンガと爆音が響くビーチ。  誰かが持ち込んだ巨大スピーカーから、騒音と紙一重のギリギリ音楽と言える何かが垂れ流されている。    その音は砂浜の端から端まで、余すところなく轟き渡っていた。  そしてビーチは人で溢れかえっている。    爆音にあわせて縦ノリと横ノリを繰り返す男たち。  首から下を砂に埋めて女体の砂像を作る学生。  日焼けをしすぎて黒糖のふ菓子みたいになっているマッチョ。  マジビーチバレーをしている水着姿の少女たち。  とにかくその場所は活気に満ち、多くの若者を中心とした人々が集まっていた。    そこに現れたのは、あまりに場違いな格好をした男だった。  ほとんどが裸に近い格好をしている中で、肌の多くを隠した分厚い服を着込み。    血管が透けて見えるほど青白い顔で、海に向かってまっすぐに歩いていた。  はっきり言って違和感しかないその男だが、注目を集めることはなかった。  みな自分に夢中であり、他者、特に興味対象外の存在については目にも入らない。    男は誰に邪魔されることなくビーチを横切り、波打ち際に立っていた。  つま先に波が触れる。その視線の先には、小さな島が見えていた。  ズンガズンガと爆音が響く。  それを優にかき消す、更に大きな轟音が海側から返ってきた。    男の存在は無視したビーチの人々も、流石にそれは無視できなかったようで。  皆の顔が海を向く。もちろん、その瞬間も海で泳いでいた人たちも。    彼らが目撃したのは、海がまっぷたつに割れる光景だった。  両開きの引き戸のように、海底を晒した海が左右に割れて押し広げられていく。  そこには砂浜からまっすぐ、地続きの道ができていた。    その道のすぐ目の前の砂浜にいた男の姿は人々の目に触れることなく消えていた。  海が開いてできた道は、ビーチからその先に浮かぶ島まで続いていた。    何を思ってか、あるいは何も考えていないのか。  あらわになった海底の道を歩いて、ビーチにいた多くのものが島へと渡っていった。  バーベキューセットやら音楽機材やらキャンプ用品やらをかついで。    そして、誰一人戻らなかった。  長いバカンスを楽しんでいる可能性もあったが。  様子を見に行ったライフセーバーたちも戻らないのは、やはり何かが起こっているのだ。    海開きによってできた道。  その道の先、『神憑島』と昔から呼ばれている島で、何かが。  時間がたった今も、海は割れたまま島まで歩いていくことができる。  島で何が起こっているのか、そして島に渡った人々は無事なのか。    誰か様子を見に行ってはくれないだろうか。 -フェイズ1(食事およびマップ移動処理後) 海開きの神憑島  人のいなくなったビーチに、虚しく爆音だけが響いている。  それはそのまま放置されたのか、管理者のいないまま垂れ流されていた。  音楽だけではない。    海の家やビーチマットやパラソルなどはそのままの形で残されており。  ビーチバレーのボールは風に流されたのか、波打ち際を行ったり来たり漂っていた。    皆すぐに帰ってくるつもりだったのだろう。  だが、叶わなかったのだ。誰一人、島からは戻らなかった。  ビーチから、その向こうに見える島まで。  話にあったとおり、文字通り真っ二つに海が割れている。    かつて海底だった場所を道にして、まっすぐに沖へと続いていた。  目的地である島まで、それほど長い距離があるわけではない。  不測の事態が何も起こらなければ、妨害や海の変化がなければ。  苦もなく、時間もかけず渡り切ることはできそうだった。 -フェイズ2(なし、探索可能) 『海開き』の海底歩道  海の先にある小さな島。  単純な直線距離で言えば、ビーチの端から端までぐらいしかない。  だが、海流の関係で船で近づくのは難しく、泳いで渡るなどはありえない。  その道程の険しさから、無人島であるのはもちろん上陸することもなかった。    目の前に見えてはいるが、誰も立ち入ったことがない。  そういう特別な場所として、『神の島』、『神憑き島』などと呼ばれていた。  それでも島はビーチから普通に見える位置にあり、時に目標とされた。  あそこまで泳いで勝負しようぜ、などと言って。    しかしながら、先も言ったようにたどり着くことはできない。  途中で力尽きてライフセーバーのお世話になる。  というのが、このビーチで毎年見られる風物詩の一つでもあった。  その島、『神憑き島』に歩いて渡れるとなり、ビーチの人々は我先にと飛び出した。  この『海開き』の現象についてはひとまずおいておいて、である。    海を開いてできた道の幅は10メートルほど。  両岸はいきなり海が途切れて、巨大な滝のようにそこから真っ逆さまに落ちている。    隅を歩けば海の滝によってびしょ濡れになるが、真ん中であれば問題なさそうである。  こちら側は砂浜であるため、水深は浅い。  島までの半分ほどを過ぎたあたりが最も深く、それでも5メートルほどだった。    海底の道を歩けば、その水深がそのまま左右両岸の滝の壁の高さにあたる。  滝から落ちた水がそのままこちらの足元に溜まっていくわけではないが。    頭の上から襲いかかってくる圧倒的な水量は、足をすくませるには充分だった。  海が開いてできた道。  いつまでこの状態が続くかは分からない。    この地続きの道が途切れてしまえば、また島は激しい海流に閉ざされてしまう。  タイムリミットはある。だが、そのリミットがどれぐらいあるかは不明だった。  急がなければならない。  それは何より、自身もまた島に閉じ込められることになるからである。 (PT名)は『神憑島』に移動しました -フェイズ3 神憑き島の神祭り  無事、何事も起こることなく渡り切ることができた。    ビーチは灼熱の太陽の下でかなりの高温だったが、海底は流石に涼しい。  両岸の滝から落ちてくる海水が、この底の気温を大幅に下げてくれていた。  島へと上陸を果たすと、残念ながら熱量はもとの灼熱に戻っていた。  熱い息を吐きながら、短い砂浜を進む。    その先には島を埋め尽くすように、マングローブ林が広がっていた。  だがそれは、島を取り囲んではいたが、埋め尽くしてはいない    木々の間を抜けて少し歩くと、中は大きく開けており。  マングローブ林に囲まれた島の中央部をまるごと切り取ったそこには、舞台があった。  舞台の上には男が一人。  真夏の太陽に一人勝負を挑んでいるような青白い顔をして、手には大きめのマイクを持ち舞台の真ん中に立っていた。    その舞台を取り囲むように、若者たちが大勢集まっている。  彼らがおそらく、ビーチにいたものたちだろう。  熱のこもったその目は壇上の男のみを映し、何やら声援を送っていた。  その空間は、狂気としか言いようがない、異常な熱気に包まれていた。    男が舞台で踊りながら歌い、客は客で同じぐらいの声量で声を上げている。  とにかく叫んだり暴れたり、おとなしく歌を聞いているものは皆無と言ってよかった。    舞台上の男もそれはそれで問題ないのか、陶酔した様子で歌い続けていた。  これがなんであれ、彼らがただ楽しんでいるだけなら問題はない。  この島の特性上、とっとと解散したほうがいいのは間違いないが。    とはいえ、彼らが姿を消して帰ってこないのは、1時間や2時間の話ではない。  1日2日の話でもないのだ。  その間ずっとここでこうして騒いでいるとすれば、それはやはり異常だった。 「スーパーハイパーフェスマスター、『G・O・D』のゴッドフェスへ………」 「よおおおぉぉぉぉぉこそおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」  舞台上でマイク片手に歌う男、『G・O・D』が吠える。  客たちもそれに応えるように、奇声としか表現しようのない声を発していた。  その盛り上がりを背に、こちらの目の前には男たちが集まってきていた。  他の客たちとは雰囲気が違う。  熱狂とは真逆の、冷徹な顔つきでこちらを睨みつけていた。   「続いての曲はこの夏の新曲、いや神曲だ! 『海が開けば股開く』……聞いてくれ!」  男の合図で新曲が始まる中。  (PC名)を異物と判断した彼らは、こちらを排除しようと動き出してた。 (PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント) 戦闘予告 『G・O・D』グルーピーに遭遇した! -フェイズ4 -フェイズ5 -フェイズ6 海開きの神憑島  スーパーハイパーフェスマスター『G・O・D』。  男はそう名乗った。だから、それはそのまま受け入れることにした。    彼はスーパーでハイパーなフェスのマスター、なのである。  そこに異論や疑問を挟み込む余地はなかった。  『G・O・D』。読み方はそのまま区切ってジーオーディー。  集まったファンからは、ゴッディやゴーディと声をかけられている。  彼らの間では、それが当たり前の愛称のようだった。    対して彼からは、ファンたちのことをチャイルドと呼んでいるようである。  正しくは必ず複数形で、チャイルドたち、と。  そのチャイルドたちは、それぞれの行動で2種類に大別することができた。    ステージに向かってタオルを振ったりピョンピョン跳ねたりしながら、声援を上げ続けているもの。  『G・O・D』を含めたそれらに背を向け、こちらを排除しようとしているもの。    どちらがより熱心なファンなのか。  それについては、どちらがどうとも言えなかった。 「いよいよ最後の曲だ。ここまで一緒に走ってくれて、サンキューチャイルドたち」  なお、『G・O・D』本人については、こちらのことは目の端にさえも入ってない。    その彼の一言に、ざわざわと動揺が広がっていく。  こちらに対峙していたはずのファンたちも、振り返ってステージを注視していた。 「この曲が終わる時、海も閉じる」 「俺と一緒にこの島に残ってくれるやつは、このまま聞いててくれ」  聞き逃がせない一言が、ステージ上の男の口から漏れる。    ファンたちに広がる動揺は、最後の曲になったことに対してか。  それとも海が閉じることに対してか。  いよいよ『最後の曲』、その前奏が始まると、反応にも変化が出始めていた。    集まっていた若者たちの目から熱が失われ、狂気から正気へと戻っていく。  毒か薬がいきなり抜けたかのように、すっと順に素になっていった。  だが、すべてのファンがそうなっていくわけではない。  幾人かはそのまま、最後の騒ぎに興じている。    (PC名)たちを異物として排除しようとしていたものたちは全て。  もうこちらには興味はないと背を向け、『G・O・D』に狂気じみた声援を送っていた。 「誘導しまーす! ゆっくり3列になってついてきて下さーい」  そこに、ステージを取り囲むファンたちの最後列の更に後ろから声が飛んでくる。    声の主は、競泳水着、ゴーグル、赤黄の変な帽子。  それら三種の神器をしっかりと着こなした、屈強なライフセーバーたちだった。 イベントマップ『海開きの神憑島』をクリア! クリアボーナス (PC名)はステータスボーナスを△△得た 海開きと陸橋の島 「来年の海開きまで、ここで一緒に過ごそうぜチャイルドのみんな!」  ステージ上から、間奏中に『G・O・D』が大きく吠える。  最後の曲、『目覚めよと呼ぶ俺の声が聞こえるかい?』。  前奏やら間奏やらがやたら長く、なかなか終わりそうになかった。    人数が人数であるので島からの脱出には時間がかかる。  今は、その無駄な長さがありがたかった。  左右に海を押し開き、作られた道。  その道は、男の言葉通り閉じ始めていた。    海が途切れて滝となって落ちていた水が、そのまま道を埋めて水かさを増していく。  (PC名)たちが島を出た時、すでにその水は足首のあたりまで来ていた。  ライフセーバーたちの先導で、島に集まっていた若者たちは移動を始めていた。  祭りが終わったあとの疲れからか、みな素直に従っている。    先導する彼らも、同様に熱狂の中で騒いでいたはずだが。  それらは全てなかったことに、本当に全て忘れて本来の目的に立ち返っていた。    島へ行って帰ってこない若者たちを連れ戻す、という仕事である。  水の浮いた道を若者たちが歩き、ぱしゃぱしゃと水が跳ねる。    僅かな疲労感を浮かべた表情だが、そこには焦燥感も悲壮感もない。  この左右の海の滝がいきなり崩れれば、まさに海の藻屑と消えるというのに。    そんなことは起こらないという自信。あるいは想像力のなさ。  それらは過ちのもとでもあるが、彼らの武器でもある。  過ちを犯しても取り返しがつくというのもまた、若さゆえの特権だった。  海の道、その底にも彼の音楽は届いてきている。  歌っている男、そしてそれとつながっているグルーピーたちは島に残った。    ライフセーバーの中には全員を連れ帰ることを主張するものもいたが。  現実的にそれは叶わない、というのは話し合うまでもなかった。  まずは、素直に応じるものを島から脱出させる。それが最優先だった。  最後の一人、そしてシンガリを務めたライフセーバーがビーチへと戻ってくる。  その頃には道はかなりの部分で海に沈んでおり。  ビーチ近くの波打ち際においては、もう完全に元通りの状態になっていた。    つまり、もう島には戻れない。  島からは戻ってこれない。ということだった。  沈む夕日。  赤く染まる水平線の中に浮かぶ『神憑島』は、激しく大きな波に囲まれていた。    もう音楽は聞こえない。たとえあそこで鳴っていたとしても、もう届く距離ではなかった。  ビーチには、ビーチの音が流れている。  それはどこかあの島で聞いた曲と似ているような気もする、そんな騒音だった。  日が沈む中、ビーチに戻ってきた若者たちはバーベキューの準備を始めていた。  どこにそんな体力があるのか、単純に頭が悪いのか。    サマーナイトパーティが始まろうとしていた。 ミッション『海開きと陸橋の島』をクリア! クリアボーナス (PC名)は魂塵を△△Ash得た (PC名)はSPを1得た (PC名)は『『G・O・D』ラーメン』を手に入れた 特別ボーナス (PC名)は魂片:『ゴッドネックギター』を手に入れた -当日夜(休息処理後に表示) 海開きと陸橋の島 今回のイベントは終了しました 現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました イベント挑戦ボーナス (PC名)は水着の生成が可能になりました ただし、アビリティ『防具生成』を取得している必要があります ---- &aname(20180905) *敬え『老人漁船団』 -発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後) イベントスタート 『時限ミッション:敬え『老人漁船団』』を発見しました 今回のイベントミッションの開放期間は9/5(水)~9/22(土)までです 敬え『老人漁船団』  大型魚の漁を専門とする彼らは、海賊とも揶揄されるほどの荒々しさで。  彼らが通った後には、ワカメ一本残らないという伝説さえ当たり前に囁かれていた。  だがそれも今は昔。  漁船団に高齢化の波が押し寄せ、最年少のティモでさえ白髪が目立つ歳だった。    漁獲漁は年々落ち、大型魚の捕獲も難しくなり。 『全員が揃って漁に出られるのも、今年が最後かもなあ』  というお決まりのセリフを、毎年のように誰かが吐くようになっていた。  そしてついに。  冗談だったはずのそのセリフが、いよいよ現実のものになろうとしていた。  ジャック・アーカンソーは今日も漁船団を引き連れ漁に出る。    『老人漁船団』、そんな不名誉な名で呼ばれようが生活がある。意地もある。  『引退』の二文字を頭にちらつかせながら、無理やり頭を振ってふるい落とし。    小型のカジキの群れが泳ぐ海域へと船を進めていた。  最初に悲鳴を上げたのは、漁船団の最年少ティモの船だった。  跳ね上げるようないきなりの衝撃と浸水。    見ればすぐに分かった。船底に穴を開け、誇らしげに天を衝く一本の槍。  それは狙っていたカジキたちが鼻先に持つ、彼ら唯一にして最大の武器だった。  槍が抜けて船底の穴がそのまま顕になると、一気に浸水は進んでいく。  救助を求めティモが頭を上げて周囲を見渡すと、異変はこの船だけではなかった。    襲撃を受けた漁船団はパニックの中、二手に分かれた。  事前に話し合っていたわけでも、その場で話せたわけでもない。  長年の経験と互いの信頼が、集団としてのその素早い決断を行わさせていた。  攻撃されなかった、あるいは傷の浅かった船はすぐさま港に引き返し。  帰港を不可能と判断した船は、互いに助け合いながら近くの無人島に船をつけた。    言葉にすることなく再開を誓い、『老人漁船団』は4分の1の船員を失った。  港へと戻った漁船団の中には、漁団長であるジャックの姿もあった。  彼はすぐに助けに行こうと準備を始めたが、団員の何人かがそれを止めた。    島へと助けに行くには、あの『海域』を越える必要がある。  だが、船も人も時代遅れな今の彼ら『老人漁船団』にそれは難しい。自殺行為だった。  仲間を助けるため、同船してくれるものはいないだろうか。  時代遅れのボロ船だが、いくつもの死線を越えてきたベテランという考え方もある。    そういう方向で、なんとか助けてほしい。 注意事項  イベント選択時、救助に向かうために同船する『漁船』を選択できます。    『漁船』の種類によって、ダメージ上昇などの戦闘補助効果が得られます。  戦闘はパーティ単位で行いますが、『漁船』にはそれぞれ個別で乗船します。 『銛撃漁船ポセイドン』  戦闘中、常に与ダメージが15%上昇します。 『甲鉄漁船ノーデンス』  戦闘中、常に受ダメージが15%減少します。 『高速漁船カナロア』  戦闘中、常に待機ゲージ減少速度が15%上昇します。 『投網漁船ネプトゥヌス』  戦闘中、常にガードブレイク率とエレメンタルブレイク率が15%上昇します。 『屋形漁船ワタツミ』  毎行動時、HPが最大値の1~3%分回復します 追記  未登録未選択の場合、いずれかの『漁船』にランダムで搭乗します。    なお、搭乗『漁船』は、後半フェイズの登録時に変更することができます。 注意事項2  今回より、イベント難易度の上位を1つ追加しました。    インフェルノ(Inferno)級になります。  この難易度では、敵レベルがこちらの平均レベル+10になります。  レベル以外にも、いくつか補正や能力追加があります。ご注意ください。 『マップ:危険海域ディープブルー』を発見しました -フェイズ1(食事およびマップ移動処理後) 危険海域ディープブルー 「いかりを上げろぉ!」  大漁師ジャック・アーカンソーの大号令が漁港に響き渡る。    それに呼応する、海の男たちの声。  老いてなお野太い、たっぷりと力強さの残った声だった。  『老人漁船団』が隊列を組み、一斉に漁港を出ていく。  その姿にはもちろん勇猛さもあったが、どこか悲壮感のようなものも垣間見えた。    生々しい傷痕の残る漁船も多く、それらを突貫工事で修復している。  あと何度の航海に耐えられるか。ともすれば今回が最後となる漁船もありそうだった。    だがそんなことは言わずとも、彼ら自身が知っていた。  船も、漁船団も、あらゆるものの限界が近いということを。  漁港に見送りはいない。  紙テープを投げる人も、旗を振る人も、ハンカチを涙で濡らす人も。    これは特別なことではない、日常の一コマとして。  彼らの漁師人生を賭した決戦は始まったのだ。 -フェイズ2(なし、探索可能) (PC名)は『(漁船名)』に乗り込みました 『老人漁船団』最後の航海  二十隻ほどの漁船で作られた船団が大海原を進んでいく。    『ポセイドン』と名付けられた、漁団長ジャックの乗る旗艦を先頭に。  三角形を作るように漁船を並べ、『魚鱗』の陣形を組んでいた。  その海域までの船旅は実にスムーズだった。    出港時、上がりに上がっていたテンションも落ち着いてしまうほどに。  風も後押ししてくれているようで、帆船ではないがまさに順風満帆である。    徐々に削がれていく気をなんとか保ちながら、助けを待つ仲間の元へと。  だがその穏やかな旅は、唐突に座礁した。  多くの生き物が集まる最高の漁場でもある、海域ディープブルー。  その領域に入ったことを知らせたのは、見張りの船員ではなく。  最初のときと同じ、いきなりの攻撃だった。    襲撃を受けたのは漁船団の左翼後方。  その一番槍はやはり、巨大カジキの一撃だった。  予測された襲撃とは言え、それは死角である海の底からやってくる。  魚群探知機と漁師の勘の感度を最大にしても、その一撃を致命的なものでなくするのが精一杯だった。    エンジンを狙った矛先を、舵を切って船の横っ腹で受ける。  海上に頭を出して船に突き刺さった巨大魚を引きずりながら、舳先を前に戻した。  隣に並んで走る船に向かって親指を立て、合図を送る。  俺はまだやれる。この船はまだ行ける。  その想いは漁船団全体へと伝わっていった。  それは元々、彼ら全員が共通して持っていた想いだったからである。   『俺たちはまだ終わっていない』  こんなところで終わりはしないと、老人たちは胸中で叫んでいた。 -フェイズ3 『老人漁船団』最後の聖戦  漁船団が進む右手に、島の頭が見えてきた。  すぐにその島に頭から突っ込んでいるいくつかの座礁船も目に入る。    そして。海岸線、砂浜に掲げられた巨大な白旗。  その周囲には、今は豆粒ほどにしか見えないが、多くの船員たちが飛んだり跳ねたりしながらこちらに向かって大きく手を振っていた。  それを目にした漁船団の団員たちの士気は、目に見えて上がっていた。    だがそれは、海の下にいる彼らも同様であり。  自分たちの海域に入ってきたものに対する敵愾心は、最高潮に膨れ上がっていた。 「俺たちゃ漁師だ!」  救出作戦が始まる、その瞬間。  漁船ポセイドンの船首に立つジャックが、背後に従える『老人漁船団』に声を上げた。   「竿を持て! 銛を構えろ! 網を投げろ!」 「コイツラ全部捕まえて、アイツラ全員助けて、そんで家へ帰るぞぉ!」  漁団長のその熱い檄に、団員たちの心が燃える。  助けて逃げることしか考えていなかった頭が、漁師のそれに切り替わっていった。 『待ってろよ、かあちゃん!』  一斉に、それぞれが別の顔を思い浮かべながら声を揃えて応え。  戦いが始まった。 (PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント) 戦闘予告 剣魚海賊団に遭遇した! -フェイズ4 -フェイズ5 -フェイズ6 危険海域ディープブルー  トビウオのように海面から飛び出した巨大ザメが、大顎を開けて漁船に襲いかかる。    大胆で大雑把なその攻撃に、狙われた漁船は舵を大きく切りながら銛を撃ち込んだ。  空中では自由に動けない、その土手っ腹に深々と突き刺さる。    食らいつこうと大きく開けていた口から、苦悶の叫びが響き渡った。  叫びながら身を捩るも、空中に飛び出した勢いは削がれない。  腹に空いた穴から血を撒き散らしながら、巨大ザメはそのまま甲板へと突撃した。    単純な質量と加速度に、バキバキと木製の船が悲鳴をあげて壊れる。  甲板の上に落ちた巨大ザメが大暴れして海に戻るまでの間に、あらかた船の上にあったものは使い物にならなくなっていた。  被害を受けているのはその船だけではない。    船と同じぐらいのサイズのダイオウイカに抱きつかれ。  消防車の放水レベルでタコスミを食らって黒船に変えられ。  どこかの剣の丘のように甲板にはカジキが刺さり。  フジツボがびっちり張り付き、カニの泡まみれになり、ヌタウナギにぬったぬたにされ。    それでも船は沈まず、漁船団の足が止まることもなく。  『魚鱗』の陣形を作ったまま、『老人漁船団』は漁を続けていた。 「ロンデ、グレイ、ウェノス! 行けっかぁ!?」  大漁師ジャック・アーカンソーは振り返らず、後方へと声を掛ける。    後ろの船の状態は知らない。その言葉もまた、行けるかどうかの確認ではなかった。  命令でもない。願望でもない。それはただの、いつもの合図だった。 『おうよ!』  彼らもまたいつものように応えて、中央後方から三隻の漁船が陣形を割って飛び出す。    危険海域の中で漁船団全員で作った、仲間たちが待つ無人島へと続く航路だった。  エンジンに火をつけて漁船が走る。  鋭い刃のような胸ビレを広げたトビウオが飛びかかってくるが、船からは遠く届かない。    次々と力尽きて海へと落ちていく、彼らを尻目に。  三隻の漁船は一直線に、頭から島へと突っ込んでいった。 イベントマップ『危険海域ディープブルー』をクリア! クリアボーナス (PC名)はステータスボーナスを△△得た 敬え『老人漁船団』  無人島に逃げ込んだ彼らは、その一部始終を見ていた。  船にあったシーツを破いて作った白旗を浜辺に刺し、助けを待ちながら。  座礁した船の修理は、一部だが終わっていた。  複数の船から無事な部品を持ち合い、一隻はなんとか動けるようになっていた。    全員でこの船に乗り込み、あの海域を無理矢理にでも突っ切る。  その準備と覚悟はしていた。    どうせもう、戻ったところで漁師としては終わっているのだから、と。  明日助けが来なければ。  そんな話をしたわけではなかったが、なんとなくそんな雰囲気ができていた。    そこに、彼らは姿を見せた。再開の誓いを守って。  しかもそれだけではない。  逃げてかわして命からがらではなく、銛を撃ち、竿を振り、網を投げ。  彼らは漁師として、獲物たちとしっかりと戦っていたのだ。    それを見ていた、島にいる男たちの消えかけていた魂に火がつく。  そんなぬくもりを胸の奥に感じていた。  三隻の漁船が島に近づいてくるのにあわせ、彼らは慌てて修理した船に走った。  砂地の浅瀬に乗り上げた船を全員で押して沖に出し、順に飛び乗っていく。    それを見た島に近づいてくる漁船から、一人の漁師が海に飛び込んだ。  彼は丸めたロープを肩に担ぎ、その一方の先は自身の漁船に縛り付けてあった。  沖で止まった漁船が回頭していく中、ロープを持った漁師が泳いでくる。  そして船の中に投げ込んだロープを、船上にいた男が船に硬く結んだ。    泳いできた漁師を船に引き上げる。その頃には、沖の漁船が再び動き出していた。  脱出した男たちを乗せたこの船をロープで引きずりながら、前へと進み始めていた。  一隻の漁船に牽引され、その両脇を二隻が守る。  そのまま漁船団に合流し、みんなして危険海域を離れた。    近くの漁船まで、叫べば声は届くが誰も声を発さない。  もちろん疲れもあるだろう。だが、それだけではない。  多くの獲物を船に乗せて海域を離れる、そんな自分たちに彼らは酔っていた。  ボロボロの、次の出港も難しそうな漁船で帰りながら。  漁港に戻った彼らを待っていたのは、全身黒ずくめの集団だった。    ずぶ濡れのまま、ウェットスーツ姿の老婆たちが漁港を歩いている。  背中に巨大な魚をいくつも背負い、両手には貝などで一杯の籠をぶら下げて。    くわえたタバコの煙を燻らせながら、彼女らは港にある小屋に入っていった。 「さすがだぜ、かあちゃん……」  船から降りた老漁師の誰かがつぶやく。    燃え上がっていた魂の炎が、ゆっくりと通常の温度に戻っていくようだった。 ミッション『敬え『老人漁船団』』をクリア! クリアボーナス (PC名)は魂塵を△△Ash得た (PC名)はSPを1得た (PC名)は『アンリミテッドカジキ』を手に入れた -当日夜(休息処理後に表示) 敬え『老人漁船団』 今回のイベントは終了しました 現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました イベント挑戦ボーナス (PC名)はコスチューム『漁師』が修得可能になった ---- &aname(20181024) *奪われた『神』を取り戻せ -発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後) 『時限ミッション:奪われた『神』を取り戻せ』を発見しました 今回のイベントミッションの開放期間は10/24(水)~11/10(土)までです 奪われた『神』を取り戻せ  その二つの村にはそれぞれ名前はあるが、さほど有名ではない。    知られているのは二つの村が持つ『神無村』、『神在村』という異称であり。  そして、この村が持つ少し変わった風習だった。  峠を一つ挟んで隣り合った村。    『神無村』と呼ばれるスグラダ村は小さな村で、人よりも牛のほうが数が多い。  ぶもーぶもーと牛が鳴く。  端から端まで堆肥の匂いに包まれたのどかな村である。    『神在村』と呼ばれるガラジシャ村は小さな村で、人よりも犬のほうが数が多い。  番犬猟犬闘犬ペット。昔はそれぞれに役割があったらしいが。  今では、その全てが高齢化の進んだ村のジジババの介助犬である。  この『神無村』と呼ばれるスグラダ村は、実は5年前は『神在村』であり。  その頃、『神在村』であるガラジシャ村は『神無村』と呼ばれていた。    二つの村はそれら異称を5年毎に交代させていたのだ。ある儀式によって。  それは『神』の移動である。  『神』のある村は『神在村』となり、ない村は『神無村』となる。  現在は『神』はガラジシャ村にあるため、そちらが『神在村』というわけである。    その5年毎の『神』の移動が今年であり、すでに行われたはずだった。  だが、それぞれの村の異称は未だ変わってはいない。  『神』の移動は、それが宿る御神体の移動によって行われる。  5年間ガラジシャ村に祀られていた御神体とは、巨大カボチャだった。    これを村で採れた新しいカボチャと交換して、スグラダ村へと運ばれる。  そしてその御神体が祀られることで、スグラダ村は『神在村』となるのだ。    なる、はずだったのだ。  ガラジシャ村を出発した御神体は、スグラダ村に到着することはなかった。  その途中で奪われたのだ。    何者が、何を目的として。  それを考えるより早く、『神』の宿る御神体カボチャを村人たちは追いかけた。  そして、村と村の間にある峠、その近くにあった洞窟に彼らを追い詰めたのだった。  おそらくそれ以外に選択肢はなく、彼らは洞窟に籠城した。    天然要塞のような形状のその洞窟の守りは分厚く、村人たちでは手が出せない。  兵糧攻めをすればいずれ落とせるだろうが、それは許されなかった。    その場合、真っ先に犠牲となるのは御神体カボチャだからである。  いつ彼らが御神体に手を付けるか分からない。  洞窟へと奇襲をかけ、誰か御神体カボチャを取り戻してはくれないだろうか。 『マップ:神渡しのケレステレ山』を発見しました -フェイズ1(食事およびマップ移動処理後) 神渡しのケレステレ山  御神体カボチャを奪われたスグラダ村。  その雰囲気は、まさにお通夜だった。  すでにそのことを村人全員が知っているらしく。  村全体が陰鬱に、暗く沈み込んでいる。    体育座りで顔を下に向けてうなだれているものや。  呆然と遠くを眺める、タバコが乾いた唇の間に引っかかってるだけの男。  体を上下に揺らしながら抱いたウサギのぬいぐるみをよしよしとなだめる老婆。    そういったものたちが、村を歩いているとそこら中で目に入った。  御神体を奪われた。神を奪われた。  その成れの果てがこれであるというのなら、なんとしてでも取り戻さねばならない。    そう強く思わせる、そんな惨状だった。  村からはすでに、御神体を取り返すための隊が青年団を中心に組まれ。  盗賊たちが籠城する洞窟に向かったという。    だが、彼らはその全員が農夫であり、戦力としては期待できない。  もしそのまま突入でもすれば、相手にもよるだろうが大きな被害は免れないだろう。  なんとしてでも取り戻さなければならない。  そして同時に、それを急がなくてもいけなかった。 -フェイズ2(なし、探索可能) 御神体の洞窟  スグラダ村とガラジシャ村の間には、けして高くはない標高の山が横たわる。  手に入れの行き届いた、いわゆる里山というやつである。    獣道からわずかに整備された峠道を登って、スグラダ村からガラジシャ村へと向かう。  それは村人たちが御神体を運んだ、まさにそのルートだった。  その途中で襲われ、御神体であるカボチャを奪われた。  襲われた『お神輿隊』は村への伝達に一人が走り、無事だった残り全員が盗賊を追う。  その彼らを追い詰めたのが、峠から外れた位置にあり今目の前にある洞窟だった。    入口付近の岩には苔が生え、長らく誰の出入りもなかったのが分かる。  その苔が多くの数、多くの種類の足跡によってあちこち踏み荒らされていた。 「お前たちは完全に包囲されている!」 「さっさと諦めて、おとなしく御神体を解放しろ!」  雑誌を丸めて作ったメガホンで、洞窟から十メートルほど離れた所にいる男が叫ぶ。  彼はスグラダ村の青年団で作られた奪還部隊のリーダーである。    そして、御神体である巨大カボチャを作った男でもあった。  5年ごとに行われる、『神』の宿る御神体の移動。  その御神体となるカボチャは、『神無村』となる5年間でとれた最大のものが使われる。  今回選ばれた御神体は、2年前に彼の畑でとれたものだった。  彼の誇りは奪われた。  それを今、取り戻そうとしていた。 -フェイズ3 野菜をかぶるものども  奪還部隊の先頭に立つ男、マクドネル・ヨースキン。  長い柄の先に四叉の歯が伸びるピッチフォークを両手で構え、その目は憎しみと怒りにメラメラと燃えていた。 「この辺じゃ見ねえ顔だ。ありゃ、よその山から来たんじゃねえか」  マクドネルの背後から、小さな声で青年団の仲間が話しかけている。    現在洞窟を包囲している彼らだけでなく、多くのものが動き回っており。 「あの洞窟は20メートルほど入って行き止まり。抜け穴はなしだ」  物理的なものだけでなく、様々な意味おいて包囲網は狭まってきていた。 「今ならまだ間に合うぞ! 話し合おうじゃないか!」  雑誌のメガホンを使った大声で、洞窟に向かって投げかける。  反応はない。突入の判断を下すべく、マクドネルがすっと右腕を上げた。    この腕を下ろせば、奪還部隊の全ての人員が一斉に動き出す。  せめて御神体の安全を確かめてからと思ったが、これ以上時間を無駄にはできない。    覚悟を決めた、その瞬間、洞窟の入口に動きがあった。 「マック!」  木の上から洞窟を監視していた男から、鋭い声が降りてくる。  まさに腕を振り下ろそうとしていたマクドネルの動きが、そこでピタリと止まった。    しばらくして、彼の目にもそれらが見えるようになる。  洞窟の奥から、ぞろぞろと彼らが出てこようとしていた。  それは獣たちだった。  山に住む様々な種類の獣たちが群れを作り、カボチャを盗んで洞窟に籠城していた。    だがその種類については、はっきりとは分からない。  なぜならば、彼らはそれぞれに顔を隠していたからである。    ウリ科の野菜をヘルメットのように、すっぽりかぶって頭部を覆っていた。  中身をくり抜き、目の部分だけに二つ穴を開けてこちらを睨みつけている。    目的は頭を守るためか顔を隠すためか。  後者であれば、隠さなくても同種族の顔の区別など全くつかないのだが。  まあ、彼らには彼らの理屈なり論理があるのだろう。  その中で一頭だけ、顔を晒したままの獣がいた。  洞窟から出てきた群れの、一番奥にいるツキノワグマである。    洞窟の入口近くからは出てこず、そこでは暗くて顔はよく見えないが。  胸の三日月マークだけは、はっきりと見えていた。  もし、それがウリ科の何かをかぶるとすれば、かなりの大きさが必要になるだろう。  それに見合ったものを、そのツキノワグマは脇に抱えていた。    巨大な、味はともかく立派にだけは育ったカボチャがそこにあった。 『奥のヤツが御神体を抱えてるぞ!』  青年団の誰かがそう叫んだ。    その一言に、一気に場の温度と緊張感が上がる。  大好物のエサを見つけた野生の獣がごとく。  マクドネルが腕を振り下ろすまでもなく、青年団は動き出していた。 (PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント) 戦闘予告 ウリ頭の山賊団に遭遇した! -フェイズ4 カボチャ大作戦  青年団の男の一撃で、獣がかぶっていたスイカが割れる。    白いウサギの顔が顕になり、その全身が真っ赤に染まったが。  それは頭がかち割られた結果ではなく、まだ身の部分が少しだけ残っていたスイカの汁を浴びたせいだった。  同じような理由で黄色くなったり緑色になったりしながら。  動物たちが次々と面を割られていく。    担架に乗せられ戦闘を離脱していく村人たちとその数は同じぐらいか。  消耗戦となれば、頭数の勝負となる。それは明らかに、こちら側が負けていた。 「持ってきたぞ、マック!」  それが果たして逆転の一手となりうるか。    戦いの場にはいなかった男が外から駆けつけ、マクドネルに声を掛ける。  今来たばかりだからか、その顔は半分はすでに勝ったような表情をしていた。 「ガラジシャの方にも言って回してもらった、ありったけのカボチャだ」 「配置は完了してる。いつでも行けるぞ」  男が実際に持っていたのは、小さめのカボチャ一つ。  それをマクドネル向かって突き出すと、彼はそれを力強く受け取り。   「ああ。ヤツラに目にもの見せてやろうぜ」  不敵に笑い合いながら、空いている方の手で2人はがっしり握手をしていた。 「こいつを投げたらスタートだ。躊躇しないで、一気にいけよ」  別れ際、右手に持ったミニカボチャをお手玉のように真上に投げては。  その感触を確かめるようにそのまま受け止める、を繰り返している。    言われた男は返事せずに腕を上げたポーズだけを返し、山の中に姿を消した。  ぐるっと回り込んで、獣たちが籠城していた洞窟の頭上へと移動する。  洞窟の前で行われている攻防に、背後からの奇襲を仕掛けるつもりのようだった。 神渡しのケレステレ山  片手に収まるサイズだが、中身がしっかり詰まった重そうなカボチャ。    手の中で転がして、指への引っ掛かりを探す。  しっくりくる場所を見つけ、このカボチャを持ってきた男が準備についた頃を見計らい。    マグドネルは、カボチャを持つ腕を大きく振りかぶった。 「食らいやがれ!」  叫び声とともに、敵陣へとカボチャが投げ入れられる。  それは風を裂いて一直線に戦場を貫き、奥にいるツキノワグマへと向かっていた。    頭を狙って投げられたそれを、クマはいとも簡単に口でキャッチした。  硬い表皮に牙をつきたて、それを投げたマクドネルの頭を見ながら噛み砕く。    それが攻撃だと思ったのだろう。余裕の態度を崩すことはなかった。  だがそれは、さきほど示し合わせたとおり、奇襲開始の合図だった。    まずは音が。どどどどど、という慌ただしい足音のような地鳴りが響き始めていた。  そしてそれが山の上から降りてくる。    近づく足音、それは一瞬だった。  木々の隙間をぬって。大木にぶつかって砕けるものもいくつか見えたが。  大量のカボチャが斜面を転がり、最後にジャンプして洞窟前の戦場に降り注いだ。    戦場には今、人の姿はなかった。  直前に村人たちは退き、そこにはウリ科の野菜をかぶった獣たちしかいなかった。    その頭上にカボチャが降ってくる。  それは武器として、エサとして。彼らを混乱の中へと叩き落としていた。 「とーつげーーーーき!!!」  未だ遅れて転がってきたカボチャが降り注ぐ、その中へとマグドネルの声が飛んだ。   『おおおおおおおお!!』  村人たちは手にそれぞれ、刺したり叩いたりできる強そうな農具を持って。  再び戦場へと突っ込んでいった。  彼らの目に映るカボチャは唯一つ。  奥のツキノワグマの持つ『御神体』カボチャだけである。    だが、獣たちの目に映るカボチャは違う。  大きさや形に差はあったが、所詮全て、どれもカボチャはカボチャだった。 イベントマップ『神渡しのケレステレ山』をクリア! クリアボーナス (PC名)はステータスボーナスを△△得た 奪われた『神』を取り戻せ  こうなれば、それはもう邪魔でしかなかった。  頭のメロンをあっさり脱いで、地面に落ちて割れたカボチャに食らいつく。    そこには毒も何も仕込んでおらず、それはただただ美味かった。  一匹がそうしてしまえば、それを見た他の動物達も我慢はできなかった。  食べ物を求めてこの山に皆で来たのだ。  しかし、最初に盗んだあのカボチャは、いかにも美味しくなさそうだった。  バカみたいにでかくて軽くて匂いもなく。    だが目の前にあるこれは美味そうで甘そうで、そして実際に美味くて甘かった。  その味を知れば、もはや止まるものではなかった。  カボチャに食らいつく動物たち、その脇を村人たちが抜けていく。  御神体カボチャを持つツキノワグマまで、邪魔するものは誰もいなかった。    だが、カボチャが降り注いだ混乱は、さらなる混沌へと。  様相を複雑にしながら、事態は進行、あるいは後退していた。    御神体へとその手が届く、まさにその瞬間。  ツキノワグマの胸にある白い『三日月マーク』が、怪しく笑う口のように見えた。 『敵襲ーーーーー!』  木の上に配置していた見張りの誰かが叫ぶ。  全く想定外の、外からの新たな敵の襲来だった。 「新手!? 増援だと!?」  うんざりするような悲鳴をマクドネルが叫ぶ。  敵は両側面から、挟み撃ちをするようになだれ込んできた。    姿を見せたのは新たな獣たち。  とはいえウリ科の野菜はかぶっておらず、彼らにとってはごくありふれた、この山に元々住んでいる獣たちだった。  彼らの狙いもまた、辺り一帯にぶちまけられたカボチャだった。    火事場泥棒とでも言うべきか。  嵐のようにそれらはやってきて、嵐のように食い荒らして去っていった。    カボチャも、脱ぎ捨てたウリ科の皮も残らない。  動物たちもどれがどれだか分からない状況で、あっという間に消えていた。  あのツキノワグマの姿もすでになかった。    味はともかく立派にだけは育った巨大カボチャは誰にも食われることなく。  洞窟の前に、ぽつんと転がしてあった。    それをマクドネルは真顔でゆっくりと拾い上げ、御神体奪還作戦は完了したのだった。  この後。    骨壷のように大事に胸の前で抱え、御神体は無事スグラダ村へと運ばれた。  社へと移され、その戸が閉まり。  ようやく、スグラダ村は5年ぶりに『神在村』となったのだった。  カボチャの味を覚え、数も増えてしまった里山の獣たちをどうするか。  その会議は更に後日、両村で後夜祭を兼ねて行われることに決まった。 ミッション『奪われた『神』を取り戻せ』をクリア! クリアボーナス (PC名)は魂塵を△△Ash得た (PC名)はSPを1得た (PC名)は『古南瓜の古漬け』を手に入れた 特別ボーナス (PC名)は魂片:『ウリ科のかぶりもの』を手に入れた -フェイズ5 -フェイズ6 -当日夜(休息処理後に表示) 奪われた『神』を取り戻せ イベントは終了しました 現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました ---- &aname(20181212) *『レッドデビルズ』捕獲作戦 -発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後) イベントスタート 『時限ミッション:『レッドデビルズ』捕獲作戦』を発見しました 今回のイベントミッションの開放期間は12/12(水)~12/29(土)までです 『レッドデビルズ』捕獲作戦  年の瀬、ぐっと気温が落ち込み雪もちらつく冬。  赤服のひげおじさんたちがプレゼントを配り歩く、そんな季節である。  彼らがが所属する、『世を忍ぶ仮の姿』組織連合会。他にも。    足が妙に長いお金持ちのおじさん。  馬に乗って暴れるのが趣味の殿様。  それぞれに仮装をして悪を倒すトラウマ持ちの英雄。  覆面をかぶってリングで戦う伊達男。    様々な理由、様々な姿でそれぞれの戦いを続ける者たちも名を連ねていた。  そこには、赤服のヒゲおじさんたちの大切な相棒も所属している。  プレゼントを積んだソリを引き、雪の中を一晩中走り続けるトナカイたちである。    組織に所属するトナカイたちは、普段は牧場で暮らしている。  働くのは一年に一回のみだが、その一回が激務であり。  強靭な足腰と心肺機能、そして鬼メンタルを要求される。  彼らトナカイは精鋭である。だが、完璧ではない。  より強く、より速く。まだまだ改良点は多かった。    改良は、群れに対する新たな血の導入によって行われる。  最後に行われた血の導入からはすでに十年近く経過しており、そろそろ次の改良を、という組織内の声は強くなっていた。  そこに現れたのが、彼らだった。    アマルテアの森で見つかったトナカイの群れ。  このあたりで最も群れの規模が大きく、いずれも若く血気盛んであるという。    すでに森の地位では上位に肉薄し、トップに立つ日も近いと言われている。  そんな彼らは、『レッドデビルズ』、などと物騒な名前で呼ばれていた。  『レッドデビルズ』のトナカイたちは、ベニサンゴのような赤い角を生やしていた。    その赤い輝きは、まるで王冠をかぶっているようにも見え。  いずれ訪れるであろう森の王としての立場を、すでに主張しているかのようだった。  彼ら『レッドデビルズ』を捕らえ、乗りこなし、その血を取り込めば。  『世を忍ぶ仮の姿』組織連合会のトナカイたちの力を、何倍にもしてくれることだろう。    プレゼントを運ぶ量が倍、運ぶスピードも倍、休憩時間は半分。  物流革命の始まりである。  『レッドデビルズ』の群れの中には、トナカイ以外も混ざっているという噂もある。  自らの意思によるものか、泣く泣く軍門に降ったのか。  どちらにせよ、森全体が支配されこのような状態になる日は近い。    アマルテアの森の力の均衡を保つ、という大義名分も引っさげて。  クリスマス前のトナカイハンティングに繰り出してみないか。 『マップ:アマルテアの森』を発見しました -フェイズ1(食事およびマップ移動処理後) アマルテアの森  アマルテアの森、そこは比較的平和な森だったと言っていい。    何をもって平和と言うのか、という問題はあるが。  森を利用する者にとって不都合なことはなかった、という意味である。  『レッドデビルズ』が森に現れたのは、およそ半年ほど前だという。  正確に言えば、群れを作ったのがということになるが。    赤いツノのトナカイの姿は以前から目撃されていた。  ベニサンゴのような美しいツノに美術的価値が見出され、狙われることも多く。  生息数は減り、残ったものの住処も森の奥へ奥へと追いやられていった。  そんな彼らが群れを作った。  それがわずか半年前。そのたかが半年後の今。    彼らは森の勢力図を塗り替えるほどの一大勢力となり、若さあふれる力で彼らの世界を変えようとしていた。  アマルテアの森に足を踏みれたあたりから、空には雪がちらつき始めていた。    背の高い木々が葉で屋根を作っているが、その隙間からちらほら漏れ落ちる。  その雪は水気が多く、おそらく積もるということはなさそうだったが。    舞い落ちる姿を目にする、(PC名)の胸には少しづつ積もっていくようだった。 -フェイズ2(なし、探索可能) レッドデビルズの影  近くに川があるのか、水の流れる音が聞こえてくる。    森の穏やかさや寒さのせいもあり、その音を聞いていると少し眠くもなってくる。  だが、それに身を預ければ戻っては来れないだろう、という予測は容易にできた。  いずれにせよ、その眠気はすぐに消し飛んだ。  川から流れる音に紛れるようにして、その気配はすぐ近くに潜んでいたのだ。    潜んでいた、というつもりは当の本人たちにはなかったかもしれない。  ただそちらの察知が遅れただけのことで、それをこちらのせいにするとは心外だ。  とでも言いたげな顔で、彼らはいきなりの遭遇となったこちらを睨めつけていた。  赤いツノを冠したトナカイたちの群れ。  彼らは逃げることもせず、慌てて向かってくることもせず。    ただ黙って、そこに立っていた。  彼らのそのツノは、見事と言う他なかった。『森の珊瑚』と称されるのも頷ける。  群れの中にはツノのある別の生き物も混じっていたが、ものが違っていた。    悪魔の風格漂う、鮮やかな真紅のツノ。  根本から何本にも枝分かれしながら少しずつ細くなり、それが大きく広がっている。  ピンと立った小さな耳の横にそれぞれ一本ずつ、冠のように乗っかっていた。  ツノにばかり目を奪われていたが、体毛も同様に赤みを帯びている。  ただしそれは鮮やかな赤とは言い難い、汚れたような赤黒いものであり。    『レッドデビルズ』という名は、その体色の方こそ似合っていた。 -フェイズ3 赤い悪魔と白い雪  ついに姿を見せた『レッドデビルズ』。    この群れに、明確なリーダーのようなものは存在しない。  守るべき弱者は存在しない。  そういったものを失い続けた結果できあがった、強者だけの戦う集団だった。  距離を保ったまま、遭遇から暫くの間にらみ合う。    だが、いつまでもこうしているわけにもいかないだろう。  と、判断したのはこちらよりも向こうのほうが早かった。  彼らはこちらを睨みつけたまま、ゆっくりと動き出した。  ただし、身を守るためにひとかたまりに集まったりはしない。  迎え撃つため、むしろ互いに距離を取り戦いの準備をしていた。    それは自信か過信か、あるいは怒りか。  目に宿る炎の色を見てみても、その感情を読み取ることはできなかった。  『世を忍ぶ仮の姿』の組織から派遣されたハンターたちは周囲に網を敷いている。    『レッドデビルズ』の群れをそのまま無傷で捕らえることは難しい。  逃げ出したものを、それぞれで各個撃破という作戦だった。    そのためには、当たり前だが逃げ出させる必要がある。  今のところ、『レッドデビルズ』にそうなる様子はまるでなかった。  空から降り注ぐ、雪の量はどんどん増えてきている。  気温も同様に下がってきていた。    様々な意味において、長居はしたくない。  この森にいる多くのものが、彼ら『レッドデビルズ』も含め早期決着を望んでいた。 (PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント) 戦闘予告 レッドデビルズに遭遇した! -フェイズ4 アマルテアの森  降り続ける、雪の質が少しずつ変わっていく。    水分が多く、素早く落ちてはすぐに溶けていく状態だったものが。  一粒一粒が大きくなり、風にふわふわと舞いながらそっと地面に落ちてそのまま残るようになっていた。  薄っすらと、森全体が白く染まっていく。  それでも、深く積もるまでにはまだまだ時間はかかるだろう。    そしてそれは、さらなる気温の低下を伴っている。  いよいよアマルテアの森に、本格的な冬が近づいていた。  赤いツノを生やしたトナカイたちの群れ、『レッドデビルズ』が瓦解する。    群れの綻び、混乱は広がっていく。  だがその混沌の渦の中には、赤ツノのトナカイたちはいなかった。    壊れた群れの中では、弱い順に慌てふためき逃げ出していく。  それはつまり、トナカイたちの群れに紛れた、それ以外のものたちだった。 『来たぞ!』  周囲を取り囲んでいたハンターたちの掛け声が森に響く。  彼らは未だ、逃げ出したものがトナカイたちではないことに気づいていなかった。    『世を忍ぶ仮の姿』組織連合会に依頼され、集まったハンターたちである。  プロではあったが、それは通常のトナカイが相手の話であり。  体が大きく力は強いが臆病で戦いよりも逃げることを優先する、そういう生き物がターゲットの場合だった。  ツノのある獣たちが散り散りになって逃げ、木々の隙間を抜けてくる。  余裕のないハンターたちは、来たもの全てに網を投げていった。    中心地点であるここからは見えないが、それ自体は成功しているようである。  ガサゴソと暴れる音や、時折歓声も聞こえてきていた。  その機を見逃さなかった。あるいは、元々それを狙っていたのか。    赤ツノのトナカイたちはここに来て、ようやく動き出した。  バラバラだった距離を詰めて一塊となり、一斉にこちらに尻を向ける。    一つの意志で一丸となり、(PC名)のいる逆向きに走り出した。  混沌としている捕獲の網、その一点をつく。  それを予想できていたハンターは、残念ながらいなかった。  先に逃げ出した、トナカイ以外のものたちが捕らえられていく中。  その包囲網を楽に突破して、赤ツノのトナカイたちは森の奥に消えていった。    唯一の戦利品とでもいえるのか。  全てが終わった後、それがどの個体のものかも分からない。  たった一本だけ、アカサンゴのような立派な角が折れてその場に残っていた。 イベントマップ『アマルテアの森』をクリア! クリアボーナス (PC名)はステータスボーナスを△△得た 『レッドデビルズ』捕獲作戦  真白な雪に閉ざされたアマルテアの森。  トナカイ以外のメンバーを残し、『レッドデビルズ』はその中に消えた。    あの日以来、赤いツノを持つトナカイたちの噂話は聞かなくなっていた。  雪と寒さのせいで、そもそも森に立ち入るものが減ったというのもあるが。  群れが完全に解散してしまったのか、森の奥の奥に引っ込んだのか。    アマルテアの森の支配体制はもとの形に戻り。  『世を忍ぶ仮の姿』は飼育しているトナカイの群れの改良はできず、目論んでいた物流革命は棚上げとなった。  それでもクリスマスはやってくる。    そもそもの話だが、群れの改良は今年は間に合わない。  今年を含め、しばらくは捕らえたトナカイたちを訓練して使う目算だったのだ。    だがそれもできなかった。  短期、中期、長期。すべての計画は狂いに狂ってしまっていた。  ともあれ、解決すべきは直近のクリスマスである。  赤いツノのトナカイたちは逃したが、他の『レッドデビルズ』は手に入れた。    今年のクリスマス。その暫定措置として。  捕らえた彼らと元のトナカイたちとの混成チームで、今回は運ぶこととなった。  赤服のシロヒゲおじさんが乗るソリが出発する。  後ろの荷台にプレゼントをたっぷり入れた袋を乗せて、雪上を滑り各地へと。    プレゼントを待つ人々がいる。一日とて遅れるわけにはいかないのだ。  多少のアクシデントは乗り越えて、使命を果たさなければならなかった。  シロヒゲのおじさんが、ソリを引く生き物につけたハーネスのロープを何度か引っ張る。  止まれ、の合図ではない。進め、の合図である。    ソリを引く二頭の動物。  一頭はトナカイであり、一応進もうとはしながら隣の相棒をちらちらと盗み見ている。    見られているもう一頭は家の前、何をされようがスタート地点から微動だにしなかった。  大きなツノを額から一本、そして同じぐらいの長さの牙を二本生やしている。  そして手足は短く体も大きすぎる。そいつは陸に上がったセイウチだった。    寒さはものともしないだろうし、メンタルも見た限り鋼のようである。  だが、お世辞にも運搬業に向いているとは言えなかった。  手綱を引こうが緩めようが、我関せずと。  手足を立てることなくだらりと伸ばし、巨大な体を横たわらせていた。    『世を忍ぶ仮の姿』組織連合会からあてがわれたトナカイ(仮)である。  泣こうが喚こうが、風邪をひこうがこじらせようが。  今年はこのトナカイ(仮)で行くしかなかった。  トナカイと、トナカイ(仮)と、ソリと、赤服のおじさんと。  家の前で微動だにしないまま、近づくタイムリミットを一人だけが感じながら。    自分たち以外のなにかに、全てを解決するプレゼントを願うしかなかった。 ミッション『『レッドデビルズ』捕獲作戦』をクリア! クリアボーナス (PC名)は魂塵を△△Ash得た (PC名)はSPを1得た (PC名)は『トナの赤身ニク』を手に入れた 特別ボーナス (PC名)は魂片:『レッドデビルズホーン』を手に入れた -フェイズ5 -フェイズ6 -当日夜(休息処理後に表示) 『レッドデビルズ』捕獲作戦 イベントは終了しました 現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました ----

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