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無限桃花~影は糾び~ - (2010/05/04 (火) 21:31:45) の1つ前との変更点

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*無限桃花~影は糾び~ 「い‥「なんだと‥‥?!」 「クスクスクス‥‥‥これで驚いてはダメよ。言ったでしょう?闇の天神の力を見せると」  猿鬼に突き刺さった刃から、影が伸びてきた。それは僅かな痛みと共に少しずつ猿鬼の身体を侵食した。 「これは‥‥‥何だ!何をした!」 「クスクスクス‥‥‥言ったでしょう?あなたが欲しいと」 「さぁ、あなたは私の物。受け入れなさい。あなたには神も妖も超えた、私の力を貸してあげるわ」  猿鬼は動けなかった。敵わぬと悟ったのだ。闇の天神。その正体にも心当たりがあった。 「まさかお主は‥‥‥京を焼き仇を殺し‥‥千年たってもまだ怨みは晴れぬのか」 「私の怨みは永遠。この国がある限り。この国に君主と従者がある限り」 「愚かなり。闇に落ちた天神よ」 「愚かなのは世界のほうよ」  猿鬼は影に包まれた。かつて恐れられた鬼神は、妖でも人でもない魔物となった。 「さぁ、あなたの名前は猿参。新たな寄生四天王の一人。空白となった二つの椅子。その一つはあなたの物」  猿参寄生。影糾がかつて練刀へ言った通り、新たな寄生は造られた。そしてそれに与えられた任務は‥‥ 「さぁ、行きなさい猿参。あなたの仕事は一つ、無限の天神を殺す事。まだ人である内に。何も知らない内に‥‥‥無限桃花を殺しなさい」  猿参は頷き、影に包まれた。そして、消えて行った。 「姉さん‥‥‥‥‥」  影糾は言った。悲しげに。  その顔は影糾ではなく、無限彼方へと戻っていた。 「お願い姉さん‥‥‥もう‥‥‥死んで‥‥」  姉の死を望む言葉。だがそれは決して憎しみではなく、姉の為への言葉だった。  一陣の風が吹く。そして声が声が聞こえてくる。 「主よ、新たな寄生は生みだされたか」 「ええ婆盆。今度は練刀のような小物ではなく鬼を引き入れたわ」 「しかし、我らの中で最強の妖であった天狐ですら葬る程の力、猿鬼では手に負えまい」 「大丈夫。無限の天神はまだ眠ってる。悪世巣の時は驚いたけど、まだ完全ではない。まだ人の内に‥‥殺す」  彼方は言った。婆盆も彼方の思いは知っていた。その無縁天狗は、彼方が幼い頃からずっと一緒だったから。 「主よ。霊域から持ち出した古文書、如何様にするつもりか?」 「あれは‥‥燃やして。全部。無限一族の過去はもういらない。秘密を知るのは私だけで十分」 「‥‥‥心得た。ではそのように手下へ伝えよう」  風が集まる。つむじ風は人の形となり、やがて老人の姿をした婆盆の形骸が現れた。 「疲れたでしょう彼方。夜も深い。家へ帰りましょう」 「私、お腹空いた。駅前の吉牛に寄ってく。いいでしょ?」 「こんな深夜にですか?未成年が出歩く時間ではないですよ。昨日食べたカレーの残りもまだ家に‥‥」 「吉牛がいい!」 「やれやれ‥‥‥」  闇の天神と天狗は歩きだす。人ごみの中へ。 その姿はまるで、本物の祖父と孫のように‥‥‥‥‥ ---- #left(){[[無限桃花~千年の怨霊~]]}#right(){[[無限桃花~二羽の烏~]]} ---- [[無限桃花~落つる天~まとめに戻る>無限桃花~落つる天~]]
*無限桃花~影は糾び~ 「い‥嫌ぁ~‥‥助けて‥‥助けて‥‥‥嫌‥‥い‥‥ああああぁぁ‥‥」  闇夜に断末魔が響く。地は赤く染まり、命の名残を吸い込む。  誰かが獲物となった。妖の牙は容赦なく肉を貫き、貪った。獲物となった女性は生きながら餌となって、魔物に抱かれ息絶えた。 「‥‥‥足りぬ。この程度の肉と霊では満腹にはほど遠いわ」  妖は苛ついていた。昔は人間に贄を出させた。その時一番の、最高の肉と霊を持った人間。当時は簡単に手に入った。  だが今は違う。肉はともかく霊の質は著しく悪い。人間はどこまで落ちるのか‥‥。その妖は獲物に哀れみすら抱いていた。 「腹が減った‥‥どこかに居らぬか。誰か‥‥よき霊を持った‥‥」  その妖、猿鬼はさ迷う。餌を求めて。いくら食っても空腹は満たされない。必要な栄養素が一つ、欠乏している。  猿鬼は歩いた。歩き疲れるほど。夜の空はいつも以上に暗く、まるで猿鬼の腹のように全てを飲み込みそうだ。  だが‥‥‥暗い。暗過ぎる。猿鬼は思った。その闇は夜のそれではない。とてつもない何かが、空を覆っているようだった。  風が吹く。その風は猿鬼の鼻に獲物の臭いを運んできた。その獲物は上質な肉と、霊の香りを含む。  喜びを隠せない。久々の馳走だ。どこだ。どこにいる。早く食いたい。その肉を、霊を。  そして見つけた。長い黒髪の少女。なんという素晴らしい馳走だ。我慢出来ない。食おう。食ってしまおう。  猿鬼はその巨体を少女の前に晒し、一息で仕留めようと牙を向いた。だが‥‥‥ 「クスクスクス‥‥‥こんばんわ。猿鬼さん」  その少女は猿鬼を見て恐れるどころか笑っていた。ありえない。この人間は一体‥‥‥ 「貴様‥‥‥何者だ?妖か?それとも妖術を修めし人か」 「いいえ猿鬼さん。どちらでもないわ」 「何用で我の前に現れた。食われる為か?」 「違うわ。食われるのは猿鬼さん。あなたよ」  刹那、影が少女を包む。それは妖である猿鬼すら畏怖する程の闇。 「私は影糾寄生。あなたが欲しい。私と来なさい。猿鬼。神も妖も超えた力、あなたにあげます」  猿鬼は恐怖した。だが、それより怒りが勝った。かつて人々が恐れ、社に奉られるほどの妖である自分を、この少女は食うと言った。  許せん。神として崇められるほどの鬼である自分の恐ろしさ。見せねばならない。 「我が欲しいか。だがそれは奢りだと心得よ。私は猿鬼。人と霊を食う鬼神」 「クスクスクス‥‥‥では私も見せてあげる。闇の天神の力を。そしてあなたは私の物よ。猿鬼さん」 「言わせておけば‥‥‥!」  猿鬼はその豪腕を持って影糾を殴り付ける。列車が激突したような轟音とともに、地面は深々とえぐれ、まるで紙くずのように影糾は吹き飛んだ。だが‥‥‥‥ 「クスクスクス‥‥‥‥」  笑っていた。あの少女の身体は人間だった。耐えられるはずは無いのに。  影糾と名乗った少女はいつの間にか黒い刀身の剣を握っていた。そして、鬼神すらも見えぬ速度で、その刃を突き立てる。  雷の如き一撃。それは人間ではありえない、妖すら及ばぬ物。 「なんだと‥‥?!」 「クスクスクス‥‥‥これで驚いてはダメよ。言ったでしょう?闇の天神の力を見せると」  猿鬼に突き刺さった刃から、影が伸びてきた。それは僅かな痛みと共に少しずつ猿鬼の身体を侵食した。 「これは‥‥‥何だ!何をした!」 「クスクスクス‥‥‥言ったでしょう?あなたが欲しいと」 「さぁ、あなたは私の物。受け入れなさい。あなたには神も妖も超えた、私の力を貸してあげるわ」  猿鬼は動けなかった。敵わぬと悟ったのだ。闇の天神。その正体にも心当たりがあった。 「まさかお主は‥‥‥京を焼き仇を殺し‥‥千年たってもまだ怨みは晴れぬのか」 「私の怨みは永遠。この国がある限り。この国に君主と従者がある限り」 「愚かなり。闇に落ちた天神よ」 「愚かなのは世界のほうよ」  猿鬼は影に包まれた。かつて恐れられた鬼神は、妖でも人でもない魔物となった。 「さぁ、あなたの名前は猿参。新たな寄生四天王の一人。空白となった二つの椅子。その一つはあなたの物」  猿参寄生。影糾がかつて練刀へ言った通り、新たな寄生は造られた。そしてそれに与えられた任務は‥‥ 「さぁ、行きなさい猿参。あなたの仕事は一つ、無限の天神を殺す事。まだ人である内に。何も知らない内に‥‥‥無限桃花を殺しなさい」  猿参は頷き、影に包まれた。そして、消えて行った。 「姉さん‥‥‥‥‥」  影糾は言った。悲しげに。  その顔は影糾ではなく、無限彼方へと戻っていた。 「お願い姉さん‥‥‥もう‥‥‥死んで‥‥」  姉の死を望む言葉。だがそれは決して憎しみではなく、姉の為への言葉だった。  一陣の風が吹く。そして声が声が聞こえてくる。 「主よ、新たな寄生は生みだされたか」 「ええ婆盆。今度は練刀のような小物ではなく鬼を引き入れたわ」 「しかし、我らの中で最強の妖であった天狐ですら葬る程の力、猿鬼では手に負えまい」 「大丈夫。無限の天神はまだ眠ってる。悪世巣の時は驚いたけど、まだ完全ではない。まだ人の内に‥‥殺す」  彼方は言った。婆盆も彼方の思いは知っていた。その無縁天狗は、彼方が幼い頃からずっと一緒だったから。 「主よ。霊域から持ち出した古文書、如何様にするつもりか?」 「あれは‥‥燃やして。全部。無限一族の過去はもういらない。秘密を知るのは私だけで十分」 「‥‥‥心得た。ではそのように手下へ伝えよう」  風が集まる。つむじ風は人の形となり、やがて老人の姿をした婆盆の形骸が現れた。 「疲れたでしょう彼方。夜も深い。家へ帰りましょう」 「私、お腹空いた。駅前の吉牛に寄ってく。いいでしょ?」 「こんな深夜にですか?未成年が出歩く時間ではないですよ。昨日食べたカレーの残りもまだ家に‥‥」 「吉牛がいい!」 「やれやれ‥‥‥」  闇の天神と天狗は歩きだす。人ごみの中へ。 その姿はまるで、本物の祖父と孫のように‥‥‥‥‥ ---- #left(){[[無限桃花~千年の怨霊~]]}#right(){[[無限桃花~二羽の烏~]]} ---- [[無限桃花~落つる天~まとめに戻る>無限桃花~落つる天~]]

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