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*すすめ!ハルトシュラーズ 第5話
238 名前:すすめ!ハルトシュラーズ 第5話[sage] 投稿日:2010/02/14(日) 16:16:02 ID:H57fH7yb
「ボール! フォア!」
審判のコールと同時に、桃花はバットを足下に置き一塁へと向かう。
(ちっ、できれば私のところで決めたかったが……。だからといってあんなボール球を打ちにいくわけにもいかないしな。
仕方ない。次のバッターに任せよう)
渋い表情を浮かべつつ、ベース上で立ち止まる桃花。
次はピッチャーの打順だが、ここで監督は代打を送る。
『ハルトシュラーズ、選手の交代をお知らせします。バッター、門矢に代わりまして……』
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『蒼星石』 ソ ´ ̄ リi::::::::!;;,!;:;;:/
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名前をコールされた蒼星石の表情は固い。
彼女のポジションはキャッチャーだ。双子の姉である翠星石と、リトルリーグ時代からずっとバッテリーを組んできた。
だがハルトシュラーズのキャッチャーは、元メジャーリーガーのトトロがいる。
足こそ遅いが、打撃も守備も超一流。彼がいる以上、蒼星石に出場の機会はめったに回ってこない。
だから、これはチャンスなのだ。蒼星石は打撃も悪くない。
結果さえ残せば、また使ってもらえる。例え代打要員だとしても、まったく試合に出られないよりは遙かにましだ。
蒼星石は燃えていた。だがその闘志は、体に余分な力みをもたらしていた。
第三者からでも、それがわかるほどに。
「わっ!」
打席に向かおうとする蒼星石の顔面すれすれに、ロージンパックが飛んでくる。
蒼星石は、反射的に飛んできた方向へ顔を向けた。
そこには、筋骨隆々の巨漢が立っていた。
「スミスコーチ!」
ジョン・スミスヘッドコーチ。蒼星石は、その男の名を呼ぶ
239 名前:すすめ!ハルトシュラーズ 第5話[sage] 投稿日:2010/02/14(日) 16:16:53 ID:H57fH7yb
「いったいどういうつもりですか! こんなことして……」
「いや何、お前がずいぶん力んでたように見えたからな。少しリラックスさせてやろうと思って」
「僕が……力んでた?」
「ああ。気合いが入るのはおおいにけっこう。だが、無駄な力は入れるな。
力が余分に入れば、体の動きが鈍くなる。ほどほどってものを忘れるな」
「……はい!」
伝えられた言葉は、シンプルなもの。だがそれは、蒼星石の心に深く染みこんでいく。
改めて打席に向かう彼女の顔には、先程までの力みはすっかり見られなくなっていた。
(力を余分に入れず……。ほどほどに……)
打席に立ってからも、蒼星石はスミスの言葉を心の中で繰り返す。
そして初球。インハイへのストレートを、彼女は右方向へ流し打った。
打球はファーストの頭を越え、ライトの前に落ちる。
その間に、よし子とアジョ中が生還。得点は2対3となり、ハルトシュラーズが逆転した。
(やった……。やった……!)
表面上は平静を装いつつ、蒼星石はその胸の内で喜びの感情を爆発させた。
◇ ◇ ◇
9回裏、ドリームスの攻撃。得点は蒼星石のタイムリー以降両チーム共に変化なく、2対3。
マウンドには、ハルトシュラーズの守護神が向かう。
『ハルトシュラーズ、ピッチャーの交替をお知らせします。
やる小笠原に代わりまして、霧崎。背番号、833』
刃物のように鋭い目つきを深くかぶった帽子で隠し、長い髪の少女がダイヤモンドの中央に立つ。
彼女こそが、霧崎鋏美。ハルトシュラーズ不動のストッパーだ。
「さて……。今宵も、魅せますか」
誰に言うでもなく呟くと、鋏美は口元にうっすらと笑みを浮かべた。
ボールのスピードでは、女性がいくら鍛えようと男性に勝つのは難しい。
だから鋏美は、野球人生の中で早々に球速をアップさせることを放棄した。
その代わりに、彼女は変化球を磨いた。
ただ黙々と、おのれの武器を作り上げるために。
そして、刃のごとき変化を見せるシュートが完成した。
一流打者ですら捉えることが困難なそのシュートは、鋏美にプロ一年目からストッパーという重要なポジションを与えるにいたる。
そして今宵も、鋏美のシュートは冴え渡っていた。
「ストライク、バッターアウト! ゲームセット!!」
ドリームスの強力クリーンナップを、完全シャットアウト。
「鋼の女神」は、今日もその実力を見せつけた。
「……斬り捨て御免」
勝利の喜びもさほど表に出さず、クールに呟く鋏美を観て桃花は思う。
「この人と私って、微妙にキャラかぶってるんじゃないだろうか」と。
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*すすめ!ハルトシュラーズ 第5話
238 名前:すすめ!ハルトシュラーズ 第5話[sage] 投稿日:2010/02/14(日) 16:16:02 ID:H57fH7yb
「ボール! フォア!」
審判のコールと同時に、桃花はバットを足下に置き一塁へと向かう。
(ちっ、できれば私のところで決めたかったが……。だからといってあんなボール球を打ちにいくわけにもいかないしな。
仕方ない。次のバッターに任せよう)
渋い表情を浮かべつつ、ベース上で立ち止まる桃花。
次はピッチャーの打順だが、ここで監督は代打を送る。
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足こそ遅いが、打撃も守備も超一流。彼がいる以上、蒼星石に出場の機会はめったに回ってこない。
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蒼星石は燃えていた。だがその闘志は、体に余分な力みをもたらしていた。
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そこには、筋骨隆々の巨漢が立っていた。
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ジョン・スミスヘッドコーチ。蒼星石は、その男の名を呼ぶ
239 名前:すすめ!ハルトシュラーズ 第5話[sage] 投稿日:2010/02/14(日) 16:16:53 ID:H57fH7yb
「いったいどういうつもりですか! こんなことして……」
「いや何、お前がずいぶん力んでたように見えたからな。少しリラックスさせてやろうと思って」
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打席に立ってからも、蒼星石はスミスの言葉を心の中で繰り返す。
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その間に、よし子とアジョ中が生還。得点は2対3となり、ハルトシュラーズが逆転した。
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「さて……。今宵も、魅せますか」
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ボールのスピードでは、女性がいくら鍛えようと男性に勝つのは難しい。
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一流打者ですら捉えることが困難なそのシュートは、鋏美にプロ一年目からストッパーという重要なポジションを与えるにいたる。
そして今宵も、鋏美のシュートは冴え渡っていた。
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