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無限桃花の愉快な冒険23 - (2010/05/03 (月) 19:50:05) の最新版との変更点

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どことも知れぬ最果ての世界。外と隔離されたハルトシュラーの館。 桃花と大人桃花、眼鏡桃花の三人がサロンに着いた時には既に人で溢れかえっていた。 寄生襲来時もたくさんの無限桃花が集合していたがこれほどまでは集まっていなかっただろう。 どの桃花も何があったのか推察しているようだ。 「お、三人一緒だったのか」 おしゃべり桃花がにやりと笑う。とりあえずぶん殴っておく。 文句を右耳から左耳に受け流し、隣にいる桃花について説明を求める。 「ん? ああ、会ったことあるでしょ。ほら、寄生の時に探知してた桃花だよ」 大きなフードを被った探知桃花が頭を下げる。体がこじんまりしているように見えるのは フード着きのコートのせいか本当に小さいせいなのかはわからない。 「しかしなんだろうな。こんなこと初めてなんだよね。  もしかして館を改築するからお前ら手伝えとかか?」 「いや、ハルトシュラーの場合は創作すればいいのだからその必要もないわ」 「すぐにわかるだろう」 大人桃花の目線を追う。 そこに魔王は立っていた。館の主にして、無限桃花の最初の創作者。 ハルトシュラーは階下にいる無限桃花の群れを見渡した後、フンと鼻を鳴らした。 「さて、これで全員集まったわけだ。総勢173名の無限桃花たちよ」 いつの間にかハルトシュラーの声以外の音が一切消えていた。 先ほどまでの話し声も布の擦れる音も。まるで世界がハルトシュラーのために音を出すのをやめたようだ。 「この館について疑問に思う人間が出たようだからな。丁度いい機会だし説明してやろう」 ハルトシュラーがこの時、こちらを見た。 確かに微妙な違いがあっても根本的には同じ人間である桃花の軍団から正確に こちらを見たのだ。桃花は思わず目線をそらす。 「最初に言葉が生まれた。すなわち『無限桃花』という名前だ。そして三つの設定を加えた」 ハルトシュラーが指を折りながら数える。 「即ち、『黒い刀を所持』『ポニーテール』『18歳程度の女』の三つだ。これはお前達も知っているだろう」 無限桃花を構成するための大前提。多少の差異はあれどほとんどの無限桃花がここに当てはまる。 同時にこの設定を破ることが出来ればそれは創作者の手から離れた何かになれると眼鏡桃花は言っていた。 「しかしここに私はもう一つ、言うなれば裏設定を付け足した」 初めて無限桃花たちがざわつく。隣の眼鏡桃花も驚いたような表情をしている。 「その設定は最初に出した三つの設定よりも遙かに簡単に越えることが出来る設定だ。  逆にこれほど簡単な設定を乗り越えることが出来ない無限桃花は他の設定を乗り越えることなど  到底出来やしない。その時点のそれらの無限桃花は創作物としても、そして無限桃花としても成長  を望むことは出来ないし、何の魅力も感じやしない。悪く言えば失敗作と言ったところか」 ハルトシュラーが再び階下を見渡す。桃花は嫌な予感がした。 この創作者は自分がもしも失敗作を創ってしまったらその作品はどうするのだ? 「その設定とは『この館に集まる』というものだ。つまりお前達のことなのだよ」 一斉に叫び声が上がる。建物が震えるほどの音が館に響き渡る。 それが悲しみなのか怒りなのかはわからない。 しかしハルトシュラーの声はそれらにかき消されることはない。 決して大きな声ではないのにこの音の嵐の中でも桃花はハルトシュラーの声を聞き逃すことはなかった。 「本来ならば予定にはなかったがこの裏設定に気付きそうな無限桃花がいた。  この裏設定がこの館外にまで知れ渡ったら選別の意味がなくなってしまう。  なので情報が漏れる前に処理することにした。今回集まったもらったのはそのためだ」 集団の中から一人の桃花が空中に躍り出た。刀を振りかざし、声を上げながら飛び掛っていく。 ハルトシュラーの背後から人影が飛び出す。白く鈍い残光が剣の奇跡を描き、宙にいた桃花の体が半分に分かれた。 「私自身が相手するのも面白いかもしれないがどうせなら無限桃花、いや『元』無限桃花が相手をしたほうがいいだろう」 ハルトシュラーに並び立つその人はハルトシュラーよりも幾分か背が高い。 体は白い軽鎧に覆われている。手には持つ白く美しい刀身は赤く濡れていた。 そして桃花とよく似た顔と不釣合いなおかっぱ頭。 それは正しく物語が出てきたような騎士の姿をしていた。 「我が名は異世界の騎士シカ・ソーニャ。私と同じ源流を持つ者たちよ。勝負なり!」 つづく ---- #left(){[[無限桃花の愉快な冒険22]]}#right(){[[無限桃花の愉快な冒険24]]} ---- [[無限桃花の愉快な冒険まとめに戻る>無限桃花の愉快な冒険]]
どことも知れぬ最果ての世界。外と隔離されたハルトシュラーの館。 桃花と大人桃花、眼鏡桃花の三人がサロンに着いた時には既に人で溢れかえっていた。 寄生襲来時もたくさんの無限桃花が集合していたがこれほどまでは集まっていなかっただろう。 どの桃花も何があったのか推察しているようだ。 「お、三人一緒だったのか」 おしゃべり桃花がにやりと笑う。とりあえずぶん殴っておく。 文句を右耳から左耳に受け流し、隣にいる桃花について説明を求める。 「ん? ああ、会ったことあるでしょ。ほら、寄生の時に探知してた桃花だよ」 大きなフードを被った探知桃花が頭を下げる。体がこじんまりしているように見えるのは フード着きのコートのせいか本当に小さいせいなのかはわからない。 「しかしなんだろうな。こんなこと初めてなんだよね。  もしかして館を改築するからお前ら手伝えとかか?」 「いや、ハルトシュラーの場合は創作すればいいのだからその必要もないわ」 「すぐにわかるだろう」 大人桃花の目線を追う。 そこに魔王は立っていた。館の主にして、無限桃花の最初の創作者。 ハルトシュラーは階下にいる無限桃花の群れを見渡した後、フンと鼻を鳴らした。 「さて、これで全員集まったわけだ。総勢173名の無限桃花たちよ」 いつの間にかハルトシュラーの声以外の音が一切消えていた。 先ほどまでの話し声も布の擦れる音も。まるで世界がハルトシュラーのために音を出すのをやめたようだ。 「この館について疑問に思う人間が出たようだからな。丁度いい機会だし説明してやろう」 ハルトシュラーがこの時、こちらを見た。 確かに微妙な違いがあっても根本的には同じ人間である桃花の軍団から正確に こちらを見たのだ。桃花は思わず目線をそらす。 「最初に言葉が生まれた。すなわち『無限桃花』という名前だ。そして三つの設定を加えた」 ハルトシュラーが指を折りながら数える。 「即ち、『黒い刀を所持』『ポニーテール』『18歳程度の女』の三つだ。これはお前達も知っているだろう」 無限桃花を構成するための大前提。多少の差異はあれどほとんどの無限桃花がここに当てはまる。 同時にこの設定を破ることが出来ればそれは創作者の手から離れた何かになれると眼鏡桃花は言っていた。 「しかしここに私はもう一つ、言うなれば裏設定を付け足した」 初めて無限桃花たちがざわつく。隣の眼鏡桃花も驚いたような表情をしている。 「その設定は最初に出した三つの設定よりも遙かに簡単に越えることが出来る設定だ。  逆にこれほど簡単な設定を乗り越えることが出来ない無限桃花は他の設定を乗り越えることなど  到底出来やしない。その時点のそれらの無限桃花は創作物としても、そして無限桃花としても成長  を望むことは出来ないし、何の魅力も感じやしない。悪く言えば失敗作と言ったところか」 ハルトシュラーが再び階下を見渡す。桃花は嫌な予感がした。 この創作者は自分がもしも失敗作を創ってしまったらその作品はどうするのだ? 「その設定とは『この館に集まる』というものだ。つまりお前達のことなのだよ」 一斉に叫び声が上がる。建物が震えるほどの音が館に響き渡る。 それが悲しみなのか怒りなのかはわからない。 しかしハルトシュラーの声はそれらにかき消されることはない。 決して大きな声ではないのにこの音の嵐の中でも桃花はハルトシュラーの声を聞き逃すことはなかった。 「本来ならば予定にはなかったがこの裏設定に気付きそうな無限桃花がいた。  この裏設定がこの館外にまで知れ渡ったら選別の意味がなくなってしまう。  なので情報が漏れる前に処理することにした。今回集まったもらったのはそのためだ」 集団の中から一人の桃花が空中に躍り出た。刀を振りかざし、声を上げながら飛び掛っていく。 ハルトシュラーの背後から人影が飛び出す。白く鈍い残光が剣の奇跡を描き、宙にいた桃花の体が半分に分かれた。 「私自身が相手するのも面白いかもしれないがどうせなら無限桃花、いや『元』無限桃花が相手をしたほうがいいだろう」 ハルトシュラーに並び立つその人はハルトシュラーよりも幾分か背が高い。 体は白い軽鎧に覆われている。手には持つ白く美しい刀身は赤く濡れていた。 そして桃花とよく似た顔と不釣合いなおかっぱ頭。 それは正しく物語が出てきたような騎士の姿をしていた。 「我が名は異世界の騎士シカ・ソーニャ。私と同じ源流を持つ者たちよ。勝負なり!」 つづく ---- #left(){[[無限桃花の愉快な冒険22]]}#right(){[[無限桃花の愉快な冒険24]]} ---- [[無限桃花の愉快な冒険まとめに戻る>無限桃花の愉快な冒険]]

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