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&sizex(3){[[Top>トップページ]] > [[星新一っぽいショートショートを作るスレ]]> [[スレ2>星新一っぽいSSスレ 2 投下作品まとめページ]]> スレ2-2〔2-003~089〕} #left(){&link_down()} 3 :555:2009/10/26(月) 22:06:10 ID:xyAJdaeG 調子に乗って、一発目やらせてもらいます -地域格差- 「何も良いことなかったな…」  貧しい故国へ、世界の富が集まる某国の港から帰国の 途に就こうとしていたエヌ氏はつぶやいた。  手にした缶のビールを飲み干すと、口の中にビールと、 それとは異なる苦みが広がった。 「そうでしょうね。私がついてましたから」  背後からの声に、エヌ氏が振り返ると、この国では 貧相な格好の男が、人なつっこい笑顔で立っていた。 「君は誰だい?」 「私は貧乏神です。数年前からすっと一緒でした。 私もあなたの国にご一緒させていただきますよ」  エヌ氏は飛び上がった。冗談じゃない! 「おい!俺にくっつくんじゃない!どっかに行ってしまえ!」 「できません。嫌われるのも貧乏神の仕事なのです」  声だけ残して、貧乏神はエヌ氏の前から消え去った。  貧乏神が憑いているのだ、何をやってもうまくゆくはず がない。  帰国したエヌ氏は、半ばヤケになって事業を興したが、 一向に暮らし向きは悪くならない。  それどころか、そこそこの生活ができる様になった。  ある日、エヌ氏は思い切って貧乏神に語りかけた。 「おい、貧乏神!なんで俺を貧乏にしないんだ!」  すると目の前に、幾分垢抜けた格好になった貧乏神が現れた 「私の力では、あなたをこれ以上貧乏にはできないみたいです。 あの国では十分に貧乏なはずなんですけど…地域格差という やつですかね…」  貧乏神は申し訳なさそうに言った。 5 : ◆Qb0Tozsreo :2009/10/27(火) 13:46:59 ID:eZnfn/w0  ある日エフ氏の研究所に、全身黒装束に身をつつんだ数人の男たちがやってきた。 「博士、やっと見つけましたよ」 「おまえらは誰じゃ?」 「私たちはこういうものです」  男たちのリーダーらしき男は、懐から取り出した手帳をエフ氏に差し出した。 「……ん?」 「時間警察です。あなたは、ご自分のお作りになったタイムマシンで歴史に手を加えていらっしゃらないですか?」 「そんな馬鹿な! ワシはタイムマシンなど作っていないぞ」  エフ氏の困惑した表情を見ても、男は顔色ひとつ変えずにさらに追求した。 「博士、とぼけないでください。私たちはすでに20世紀で、タイムマシンに乗った博士を目撃しているのです」 「そんなの見間違いじゃ! 証拠はあるのか、証拠を出せ」  男は不適な笑みを浮かべて、懐から一枚の写真を取り出した。 「こ、これは!?」  そこに写し出されていたのは、エフ氏が卑猥な恰好をした物体に馬乗りになっている姿だった。 「これが23世紀の最新型タイムマシンです」 新スレ記念カキコ(^^) 6 :「自分の影」:2009/10/29(木) 01:13:31 ID:m65wnHQh ある晩、道を歩いていたエヌ氏は不思議な男に出会った。 ぱっと見ただけでは気がつかないが、街灯の下に立っている男には影がないのだった。 「とうとう見つけたぞ。俺の影を返せ」 「おっしゃる意味がわかりません。人違いではありませんか」 エヌ氏は男を無視して通り過ぎようとしたが、すれ違う瞬間に足が動かなくなった。 振り返ってみると、男がエヌ氏の影を手で押さえこんでいた。 「お前は俺の影だろう。さあ主人のもとに戻って来い」 しばらく見つめているとエヌ氏の足から伸びていた影はぷちんと千切れた。 影は男の足にくっつくと、彼の動きに合わせて形を変えるようになった。 男が走り去ってようやくエヌ氏は口を開くことが出来た。 「これは……いったいどういうことだろう」 エヌ氏は自分の足元を見たが、そこには当然あるべきはずの影がなかった。 「警察に行くべきだろうか。いや、相手にしてもらえるわけがないか」 その日はおとなしく家に帰ったエヌ氏だったが、翌日になっても影は消えたままだった。 「おはようございます。あら、元気がありませんね。どうかなさったんですか」 エヌ氏は会社に着くなりそう声をかけられた。 影がなくとも健康に影響はないはずだ……自分ではそう思っていたのだが、他人から見ると違うらしい。 数人の同僚から同じことを言われ、上司からも具合が悪いのかと尋ねられた。 エヌ氏は曖昧に笑って誤魔化すしかなかった。 「影なんてなくてもいいと思っていたが、落ち着かない気分だな」 一人きりになれる休憩時間。エヌ氏は煙草を吸いながら考えにふけった。 あの男は何者だったのか。 あいつが本当の持ち主だというのなら、どうして男の影は自分に付いていたのか。 そうだ、自分に付いていた本来の影はどこに行ってしまったのだろう……。 考えてもわけがわからず、頭がおかしくなりそうだった。 気分が悪くなってきたエヌ氏は会社を早退して病院に行くことにした。 職場の全員から様子がおかしいと言われていたため、上司からはすんなり許可が降りた。 病院でいくつかの検査を受けた後、エヌ氏は思い切って医者に話してみることにした。 「先生、影を失くすなんて事はありえますか。更にはどこかで踏みつけた影を自分の影にしてしまうなんて」 医者は眉をひそめた。 当然だろうなとエヌ氏は思った。 影を失くしたなんていう話を自分が聞いたら、その相手を馬鹿にするに違いない。 「そんな症例は聞いたことがありません。ですが……」 医者は検査の結果のひとつをエヌ氏に見せながら言った。 「あなたのレントゲン写真です。ほら、ここに影があるでしょう」 「そうか。僕の影はそんな所にいたのか」 その後、エヌ氏は入院したものの無事に職場に復帰することができた。 「今回の検査で気がつかなければ、手遅れになって死んでいただろうと医者は言っていたよ。まさに奇跡さ」 エヌ氏は知人達に笑いながらそう語った。 誰も気がつくものはいなかったがそんな彼らを遠くから見つめ、悔しそうに呟く者がいた。 「他人の影を奪い続けて四百年。不安を煽って自殺をさせてきた俺だが、まさか人助けをしてしまうとは」 すっかり自信を失くした死神は、それきり人前に姿を見せることをしなくなった。 10 :555:2009/11/01(日) 08:18:17 ID:j7arik5T 「部長。この機能は実装できません。時間が足らないんです」  真っ青な顔で、彼…エンジニア氏は部長に報告した。 「それはまずい。実装には、どのくらいの時間が必要なんだ?」 「あと3ヶ月はかかるのではないかと…」  3ヶ月の遅れは致命的だ。下手をすると、裁判沙汰になる。 「わかった。私が応急措置をしよう。君は全力で開発にあたってくれ」 「しかし、そう簡単には…」 「心配ない!」  部長は自信たっぷりの表情で答えた。  彼の心配をよそに、システムは無事稼働。部長が応急処置を施した 部分のクレームは、全くあがってこなかった。  3ヶ月後、不具合対応にかこつけて、無事機能は実装された。  彼は、部長がどのような処置をしたのか知りたくなり、部長の対処した 部分を実行させてみた。  すると、警告が次々に画面に現れた。 「本当に使用するんですか?」 「周囲への影響を考えていますか?」 「後悔することになるかも知れませよ?」 「やらない方が良いと思うんですけど?」 12 : ◆Qb0Tozsreo :2009/11/03(火) 08:58:14 ID:gYMdx2h0  高名な科学者であるエム氏のもとには、毎日ひっきりなしに訪問者がやってくる。 「さて、今日はどんな用件かね?」 「……父さん、やっと見つけましたよ!」  目の前に現れた青年の思いもよらない発言に、さすがのエム氏も困惑した表情を見せた。 「何を言っておる? ワタシは、この55年間独身を貫いてきたのだ。息子などおるわけがないではないか」 「亡くなった母が言っていたのです。ボクの父親はエム氏、あたなだと!」 「君のお母さんの名は、何というのだ」 「ケイ美といいます」  エム氏には身に覚えがあった。今でこそ我が国を代表する科学の権威ではあるけれども、若気の至りとでもいえばよいのだろう、エム氏にも遊び呆けていた時期があるからだ。 「……しかし、ワタシが君の父親だという証拠などないではないか。第一、ワタシの息子が君のようなイケメンのはずない」 「ああ、なんてことを! 死んだ母さんが哀しみます。アナタの遺伝子を後世に残すべく、ボクを産んでくれたのに……」  エム氏が額に皺を寄せ考え込んでいると、ドアが少しだけ開いて息を切らせた秘書が顔を出した。 「失礼します! 先生、たいへんです!!」 「何事だ?」 「外を見て下さい!」  カーテンの隙間から外を覗いてみると、そこには有り得ないくらいの人数の男女が行列をつくっている。 「……ん?」 「どういたしましょう。あの方たち全員が、先生のお子さんだとおっしゃっておられるのですが」 16 :創る名無しに見る名無し:2009/11/03(火) 14:30:31 ID:K2MdbPR1 「暴風計画」 とある惑星・・・ ここにはあろうことか本物の宇宙人というものがいた。 しかし友好的な宇宙人ではない。彼らは地球を憎んでいるのだ。 彼らの星はごみくずや隕石のかけらが落ちてくるとても住みにくい星だった。 だが・・・地球という大変住みやすい星があった。それで怒るということもあるのだが・・・ 彼らにとってさらに許せないことがあった。環境問題である。 ただでさえ住みやすい星なのに、人間たちは星への恩を全く考えていない。こんな星はなくなったほうがいい・・・ そう考えたのだ。そして、彼らは一つの計画を明日、実行することになった。 「やはり、これが最も的確かと思われます」 「なるほど。空から凄まじい風を送り、人間や建物を全て吹きとばしてしまおうというわけですね」 「全てが無くなってしまい人間たちは混乱するだろうな」 「よし、早速準備にとりかかるぞ」 彼らの行動は早かった。 まずは風を吹かせるために地球と同じ成分を含んだ空気を大量に装置に入れた。 そして扇風機のような羽をいくつも取り付け、一斉に動かせるようにする。 万が一人間たちが攻撃してきた時のためにも、マシンガンや催涙弾など、あらゆる武器を設置した。 さらには、地球につくとあたりに地雷もばらまけるようにした。 「準備は万全です」 「なんと素晴らしい装置だろう。これなら人間共を蹴散らせるに違いない」 「さあ、地球人の悲しむ表情が目に浮かびますよ・・・」 かくして翌日・・・ ついに彼らは宇宙へと進出した。 隕石をくぐりぬけ、彼らの宇宙船は少しずつ地球へと近づいていく。 そしてついに・・・彼らは地球の上空へと辿り着いた。 「着陸準備をせよ!」 高度を下げ、彼らは人目につかない所へと着地した。 装置も姿を現し、全てが整った。 「地雷はでたな?さあ、スイッチを入れてくれ」 「司令官、待ってください」 「なんだ?早くしないか」 「いえ、あれを見てください・・・とても可哀想な子供たちが」 彼らが着陸した辺りには村があった。 そこの子供たち、いや大人もなにもない、家しかない所で生活をしている。 まるで、故郷の自分たちのように・・・ 「地球にはこんな人間もいたのか。この状態のまま星を無くしてしまおうなんてできない」 「撤退しましょう・・・我々が間違っていたようです」 宇宙船は地球に害を及ぼすことなく去っていった。 彼らが着陸したのは、アフリカの貧しい村だった。 彼らは人目につかない場所を探しているうちに、木々が茂る密林を選んだのだった。 もし彼らが日本やアメリカに着陸していたら、もし彼らがもっと地球に詳しかったら、 もしも彼らの星が裕福だったならば・・・ この出来事は地球人の誰にも見られていない。 しかし、誰にも見られていないからこそ、人間に恐怖心を与えずに済んだ。 これこそ、まさに奇跡といえるべきであろう。 19 :創る名無しに見る名無し:2009/11/07(土) 00:59:49 ID:LfjRHJHr 「助手君。また発明が完成したぞ」 「なんですか、教授。また『電気の入っていない電池』とかのメタ発明ですか?」 「そんなんじゃない。今回のは『どんな扉でも開く鍵』だ。センサーがキーのシリンダーを自動で計測して、どんな鍵でも開けてしまう。」 「へー、すごい。博士もたまには役に立つものを作るんですね。」 「これは売れるぞ。やっと私も大金持ちだ。」 そして5年後。 「博士・・・残念です。せっかく金持ちになるはずが、破産してしまうとは・・・」 「ううむ。まさか、あの鍵が普及しすぎて、世の中から鍵が無くなり、 世界中の鍵業者から、告訴されるとは思ってもみなかったわい・・・」 21 :創る名無しに見る名無し:2009/11/08(日) 18:31:38 ID:CK6rlio1 流行の果て  世間では、短編小説が流行っていた。人々は、中編小説や長編小説には目もくれず、 誰もが短編小説を求め、テレビや新聞は、毎日のようにその流行を取り上げた。 それまで短編小説を書いていた作家はもちろん、長編を専門にしていた作家まで、 流行に後れまいと、こぞって短編を書き始めた。 最早、短編以外の小説を、書く人も読む人もいなくなっていた。  小説家のエヌ氏も例外ではなかった。元々は長編作家だったが、世間の流行には逆らえず、 短編を書き始めたのだ。初めは、慣れない短編を書くのに苦心していたが、頭をひねるうちに、 段々とアイデアが浮かび、自然と筆が進みだした。 こうして書き上げられた、エヌ氏の最初の短編集は、流行に乗じて瞬く間に売れていった。 その後もエヌ氏は、いくつか短編集を出し、そのどれもが好評を博した。 他の作家たちも負けじと、次々に短編集を発表した。世間の流行は、ますます加速していった。  ところが、しばらく経つと、その流行はおかしな方向に向かい始めた。 世間の求めるものが、「面白さ」から「短さ」へと変わっていった。つまり、人々はより「面白い短編」ではなく、 より「短い短編」を求め始めたのだ。忙しくても気軽に、短時間で読めてしまう内容を、求めだしたというわけだ。 もちろん、「短さ」の中にも、ある程度の「面白さ」が必要であるのは、言うまでもなかった。  こうした流行の変化に、小説家たちも追随しないわけにはいかなくなった。 彼らは、「面白く」かつ「短い」短編を書かなければならなくなった。 しかし、「面白く」かつ「短い」話を考え出すのは、容易なことではない。 中には、流行の変化についていけなくなり、小説家をやめる者まで現れた。  一旦おかしな方向に向かい始めた流れは、止まることを知らなかった。 流行の初期では、一編10ページ前後のものが主流だったが、8ページ、5ページ、3ページと、 その数は徐々に減っていき、ついには、1ページを割る短編まで書かれるようになった。 ここまで来ると、内容などは関係なくなり、短ければ売れるという状態だった。  そんな中でも、エヌ氏は着実に短編を書き続けていた。世間の需要に合わせて、 5ページで終わる短編集、続いて3ページで終わる短編集を発表した。 「短さ」という縛りがあるにもかかわらず、ここでもエヌ氏の短編は、世間から高い評価を得た。  そんなある日のこと、エヌ氏の愛読者でもある、友人が訪ねてきた。 「この前のあなたの新しい短編、読みましたよ。相変わらず、面白いですね」 「そう言っていただけると、こちらとしても、書き甲斐があります」 「今度また、新しい短編をお書きになるとか」 「ええ、その予定です。世間は短い短編を求めてますから、今度は今までの短編より、ずっと短くなると思います」  エヌ氏は、自信ありげに答えた。 「おお、それは大変楽しみです」 「そして、実は今度の短編集を最後に、筆を置こうかと思っているんです」 「それはまた、突然ですね。面白い短編をいくつも書いてきたあなたが、どうして、筆を置くことを決意したんです?」  友人は、残念そうな顔で聞いた。 「正直なところ、流行を追いかけるのに疲れてしまいました。それに、最後にして一番出来のよいものが書けそうなんです」  エヌ氏の答えに、友人は納得しながら頷いた。 「それなら、仕方ありませんね。あなたの最後の短編、心待ちにしています」  こうして、エヌ氏の最後の短編集が発表された。それは、たった1行の話が一編だけ収められているという、 今までの常識を覆すものだった。これを知った他の作家たちは、「これ以上短い短編は書けない」と、半ば諦めたようにつぶやいた。 そして、このエヌ氏の小説が、流行に終止符を打つものとなった。  その1行には、こう書かれていた。 「こうして、世間が『短さ』を求めた結果、人々は0行で終わる真っ白な小説しか読まなくなったのでした」 27 : ◆Qb0Tozsreo :2009/11/11(水) 09:51:26 ID:z+iVdBew 「うむ。やっと完成したぞ」 「博士、これは?」  助手は首を傾げながら、博士が手にしている四角い物体を覗きこんだ。 「これは嘘発見器だよ」 「それなら、すでに発明されているのでは?」  たしかに嘘発見器ならば、博士ほどの人が長い期間をかけて発見するようなものではない。それならば、何か特別な機能が備え付けられているに違いないと助手は思った。 「では、試しに君を実験台にしてみよう」 「わかりました」  博士は四角い物体から数本のコードを引き出して、助手の頭部にくくり付けた。 「これからワタシが質問をするから、すべて『いいえ』で答えてくれ」 「はい」 「では、始めるぞ。君は、ワタシの娘と深い仲のようだな」 「いいえ」  すると、四角い物体からブー! と鈍い音が洩れた。 「君は、ワタシの財産を手に入れるために助手となり、娘に近づいた」 「いいえ」  ブー! 「君は、カネのためならなんでもする。ワタシを亡きものにすることさえも」 「いいえ」  ブー! 「君は……」 「ちょっと待ってください! これでは、まるでボクが博士を陥れようとしているみたいではないですか」 「違うのかね?」  すると、暫くじっと唇を噛んでいた助手だったが、耐えられなくなったのか頭部のコードを無造作に剥ぎ取った。 「畜生!」  そう言うと、助手は足早に研究所を去って行った。 「やれやれ、これで七人目か……。なかなかまともな助手には巡り会えんな」 29 :創る名無しに見る名無し:2009/11/12(木) 07:22:40 ID:C/n4HVxZ 「肩パン」 夜のバス停でバスを待っていたら知らない子どもがいきなり「肩パンやろうぜ」と声をかけてきた 気持ちが悪いので僕は断ったら、その子どもは狂ったように泣き喚きながら「肩パンやろうよ~」と言ってくる どうしてもそんな知らない人と肩パンなんかする気になれなかった僕は断り続け、心の中でひたすら早くバスが到着する事を祈った だが、その子どもは顔をくしゃくしゃにして僕の方を見てバス停のベンチや柱に八つ当たりをしている しょうがないので、一回だけ肩パンをやってやろうとしたら、暗がりから木刀をもったヤンキーがぞろぞろとやってきた。どうやらこの子どもは、ヤンキーのうちの誰かの弟らしかった するとそこでバスがやってきた。僕は死に物狂いで飛び乗った。バスの後ろを見るとヤンキー達と子どもが狂ったように追い掛けてきた あの時バスが来なかったら僕は一体どうなっていたんだろう ~完~ 42 : ◆Qb0Tozsreo :2009/11/18(水) 11:15:57 ID:CNrS2LJs 「やあ、エムさんお久しぶりです」 「これはアールさん、いつの間に来られたのですか?」  エム氏が振り返ると、そこにはさっきまで誰もいなかったはずの場所に口元に笑みを浮かべたアール氏が立っていた。 「実はタイムマシンで昨日からやってきました」 「タイムマシン? ついに完成したのですね!」  アール氏がタイムマシンを発明していたことは小耳にはさんでいたけれど、いざ完成したとなると同じ科学者としてエム氏も黙っていられなかった。 「ということは、昨日完成したタイムマシンの試運転に、わざわざワタシの研究所に報告に来られたと? しかし、なぜ今日なのですか」 「実はこのタイムマシンは二十四時間後にしか時間を移動することができないのです」  これにはエム氏も苦笑いをせざるを得なかった。一日後にしか行けないタイムマシンなど、あまり意味がないのではないかと思ったからだ。 「いや、ワタシたちは似た者同士ですね」 「それはどういう意味ですか?」 「実はワタシの発明したタイムマシンは、三日後にしか行けませんから」 43 :創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 11:20:05 ID:7U3xAwGo                バシャール・ユウジ様 拝啓   時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。 さて、今年も総会ならびにホームカミングデーのご案内を 送付させていただきます。年々参加者が増え、昨年は特別 講義や懇親会、抽選会等満員の大盛況で、☆☆も大賑わい でした。本年度の催しにつきましても、多くの同窓生の方々 より貴重な提案やご要望を頂き、企画させていただきました。 当日は懐かしい思い出話に花を咲かせ、タイムスリップして、 楽しい一日をお過ごし下さい。  皆様、何かとご多忙とは存じますが、☆☆、☆☆☆、それ ぞれお誘いあわせの上、ご参加いただけますようこころから お待ち申し上げます。                        敬具                                         地球同窓会一同                       会長山田 太朗   44 :よくあるけど載せるよ:2009/11/18(水) 11:57:00 ID:7U3xAwGo 男が楽しそうにマンホールの蓋の上を飛んでいた。 「23!23!23!23!」 違う男がやってきて、「楽しそうだな。おれにもやらしてくれ」 と元居た男を押しのけ、マンホールの蓋の上を飛び始めた。 するとパカっと蓋が開き、男は落ちていった。 元居た男は「24!24!24!」と楽しそうにまた飛び始めた。  s少年はその日の美術の授業の課題をついに理解できなかった。 「ハイ、今日は空想上の絵を描いてください。」 ということであった。みな最初は戸惑ったが皆、少し経つとめいめい 描き始めたようだった。しかし、s少年だけは一向に両手で顎をおおい ながら、描くことができない。  教師はついに、s少年に尋ねてみた。 「君はなぜ描かないんだね。」 「だってね。先生僕は幽霊を描こうとおもってるのですが、 幽霊は足がないでしょ。」 「頭から描いていいやら、足から描いていいやらわからないんです。」 じっとしていたs少年を案じた美術教師は、それ以上何も言わなかった。 46 :創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 15:50:22 ID:xF5AxLfQ 星新一っぽくないかもしれんが 男は何事も中途半端にしかやらなかった。 仕事も中途半端で止めたり、恋人とのデートも途中で帰り、 料理をつくろうものなら鍋を焦げ付かせてしまう。 そんなある日、男が会社に出勤すると、男の机が無くなっていた。 男はクビになった。 ショックのあまり、というかいつものように今夜予定していた恋人とのデートを 途中で帰ってしまった。 次の日、テレビを見ると、なんと恋人が行方不明になっていた。 男は気が付いた。 「俺が中途半端にしてしまったから、消えてしまったんだ。 もう中途半端になんかしない。戻ってきてくれー」 その時、男の後ろの押入れから無くなったものが出てきた。 しかし出てきたのは恋人だけではなかった。 仕事の山、食べ物、家電やタバコの吸殻、 男の気が付いていないところで物はどんどん無くなっていたのだ。 男が後ろを振り向く間もなく物は男の上に落ちてきた。 そして男の人生は中途半端なものとなり、 男はなくなった。 47 :創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 19:17:58 ID:pZBbIH2E たぶん、飲んで書いてあったのを勢いでコピペしたんだろうね。。 土曜か日曜の朝に落語やってるから、みるといいかも知れないよ。 49 :創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 22:07:50 ID:7U3xAwGo やっぱり 男は、家を出るとだけ告げ、フラフラと家を出てある田舎にたどり着いた。 渓流などある山手の田舎だった。空気が一変した。澄んだ空気を楽しみ ながらも、日が暮れて、宿をとるべく、看板のついた家を探した。そうして ひなびた旅館に入ると、玄関脇にハエたたきが掛けてあった。 「年季の入ったハエたたきですね。都会ではもうこういうものはお目に かかれません。」 「いやぁ失礼しました。ここいらハエが多いモンでしてね。さあさ、部屋へ 案内しますだべ。」  部屋に入ってみると窓から流れがみえて、ここちいい。掛け軸なんかも かけてあって悪くない。布団は糊のきいた、心地よさそうなものだ。  しかし、無粋にも部屋にもハエたたきがおいてあって、瓶がおいてある。瓶には ハエがたくさんつまっている。ゆずって、ハエたたきはいいだろう。 でもこのハエの詰まった瓶はなんなんだ。 翌日、主に聞いてみた。「ああ、ここは渓流釣りのお客さんがほとんどだべ。 釣りに使うんだべ。」   51 :創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 22:31:26 ID:7U3xAwGo 荒れた街から男はでていくことをきめた。 この町では本心がウソで、ウソが本心。 「この辺では職もねぇからよ。さっさとおさらばしたほうが身のため さ。」「途中でかえってくるんじゃないよ」 「これいらないから、もっていきな」 男はとうとう心にもないことを言った。「みんなありがとう」 夕暮れ時、ロバを叩いてまさに出発せんとする時であった。 となりの凡が走り出てきて叫んだ。「こんにちは!」「こんにちは!」 54 :創る名無しに見る名無し:2009/11/19(木) 05:22:46 ID:o9Uu/w1U 即席で造ったので、アラは見逃してください。 『下手なプレイヤー』 俺は今自殺を考えている。 振り返ってみると俺の人生不幸の連続だった。 もしかするとこれは仕組まれたゲームなんじゃないか? …とすら思ったことがある。 しかし、そのたび己を騙し現実に戻る。 こうして今も死を目前にして生きている…。 それでも不思議なことに“死”なんてモノは漠然とした遠い存在だ。 でもこれでオシマイダ… 「ありがとう俺。」 キュイーーン パチッ… 「ちょっと!!お母さんコンセント抜けたじゃん…ゲームする時は掃除機掛けるの止めてって言ってるのに。まぁいいやこのゲームつまらなかったし新しいの買ってー」 59 :創る名無しに見る名無し:2009/11/20(金) 18:55:27 ID:qnmoePm1 『日本の中央』 第四次世界大戦から150年も平和がつづいた西暦3000年。 かつて廃墟と化した日本列島は、緑の楽園に変わっていた。 ある日、東北地方のとある山の麓で、「日本中央」と書かれた石碑が発見された。 人々は騒然として、これは征夷大将軍・坂上田村麻呂の伝説にある石碑のことでは ないか、と話し合った。 伝説によれば、坂上田村麻呂は、蝦夷の征伐において、訪れた東北地方の大きな石の 表面に、矢じりで「日本中央」と彫ったとされている。 いわく、「みちのくの奥に壺のいしぶみあり。日本の果てといへり」 この石碑のことは、西行や和泉式部など多くの歌人が詠ったが、どこにあるかは不明 だったのである。 石碑は保存館に安置され、多くの人たちの観覧に供された。 少年が一人、その石に別の文字を見つけて、帰宅後、古老にその意味を質問した。 古老は答えた。 「おお、千年ほど昔は、コロセウムに馬を何頭も集めて競走させたのじゃ。国民は その競走を見て、娯楽としていたようじゃ。たしか、運営していたのは日本中央競馬会……」 少年が見付けた文字は「競」と「馬」という字だった。 69 : ◆PDh25fV0cw :2009/11/28(土) 20:54:22 ID:HgLf+Mnu 『楽な機械』 私の勤める売り場にお客さんがやって来る。ほとんど人など来ないのだが、珍しい。お客は、中年の男性だ。 「これはどうやって使うのかね?」 傲慢な口調に、ちょとむっとしたが丁寧に答える。 「これは、全自動食事機でございます。箱にセットされていますボタンを押しますと、体に無痛針から、栄養剤が注入されます。もちろん、栄養バランスもバッチリです」 「確かに便利そうだが、食事は自分で食べたいものだ。注射一本で終わってしまっては、味気ない」 「それなら、これはどうでしょうか」 店の奥から、ヘルメットのついた新しい箱をだす。 「これを使えば、和洋中の素晴らしい料理の数々を、食べた気分になれます。使い方も簡単、ボタンを押すだけです」 「確かに素晴らしい機械だ。しかし、壊れたときはどうするのだ。複雑な機械だろう」 「ご安心下さい。10年以上の保険とこちら、全自動修理器もお付けします」 私はまた、奥から箱を持ってくる。 「たしかに素晴らしい機械の数々だ。しかし、これは買えないな」 「どうしてでしょうか。値段も勉強しますよ」 「そうではない。これらの機械を、家に置く場所がないのだ。ただでさえ今も、家は機械で溢れている。これ以上増やすなら、家を買わなくてはいけない」 そう言って、お客さんは帰ってしまう。まったく、家が一杯になるぐらい機械を買うなら、なぜ機械にならないのか。 誰もいなくなった店内で、私は日課の関節のオイル交換に戻った。 74 :創る名無しに見る名無し:2009/12/02(水) 19:03:53 ID:wgk3zpue 『雨の日』 先生が教室で児童たちに雨で遠足が延期になったことを伝えた。 「折り畳み傘と合羽準備してるからこれぐらいなら行けるよー」 「雨ぐらい平気なのに」 児童たちはなんで雨になったんだよと皆不満そうだった。 それから400年後・・・ ニュースキャスターがニュースを告げる。 今日あった出来事を淡々と述べた後明日の天気について説明をはじめた。 「明日は全国的に晴れとなるでしょう。ただしところにより強烈な突風が吹くので注意してください」 それだけで明日の天気についての説明をキャスターは終わらせる。 わずかこれだけしか情報を伝えなかったがこれでも台本通りなのだ。 それを見ていた人たちもそうか、と納得する。 しかし納得した上でがっかりした男が友人に話しかける。 「明日は海に行きたかったのに風が強いんじゃやめだな」 せっかく海の近くに引っ越したのにこれでは浜辺に砂ぼこりが吹き荒れるかもしれない。 彼はわかっているふりをしていたが友人にはどこかまだ彼が海に行くのではという疑念があった。 そこで釘をさしておくことにした。 「砂ぼこりだけじゃないよ。明日は雲のない晴れだっていってたからもし海に行くと強烈な日光で皮膚が日焼けしちゃうのわかってる?」 もちろん男も明日海に行けないことは分かっていた。 オゾン層がなくなったこの時代、太陽が昇っているうちに建物の外へ行く際は宇宙服のような長袖長ズボンを着て出かけるのが当たり前なのだ。 「そうか・・・。じゃあ代りに次の雨の日にはどこか遠くへ行くことにするか。ピクニックとか一緒に行こうぜ」 「僕は遊園地とかがいい」 「そんなのは彼女でも作って二人で行けよ」 男がちゃかすと友人が笑い、男も笑う。 太陽を厚い雲で覆う雨が降りしきる日を心待ちにしながら彼らは計画を話し合うのだった。 76 :創る名無しに見る名無し:2009/12/03(木) 11:09:17 ID:f1oLXZo0  ある夏の日。 「いやあ、今日は暑いな……」 「何言ってんだよ! これくらいへっちゃらさ」 「そういえば、こないだ爺さんが言ってたけど、昔は三十度ぐらいで熱中症になってたらしいぜ」 「マジかよ? 昔の人って身体弱かったんだな……」  二人の傍にある温度計の針は五十度を差していた。 78 :創る名無しに見る名無し:2009/12/03(木) 14:54:25 ID:VSW045Rz 『対策』 二酸化炭素の増加により南極の氷が本格的に解け始めていた。 解けた水分はそのまま海面を上昇させ陸上と海中に生息するあらゆる生物に影響をあたえた。 各国の首脳たちは気象科学者を集めた異常気象対策チームを結成させその対策をまとめさせることにした。 そして議長に選出された気象科学者から話を始める。 「今回私たちが対策を練るのはご存知のように南極の氷の溶解による海面の上昇問題です。  なんとかして二酸化炭素の発生を抑える方法を探っていきましょう」 一同の視線はスクリーンに映された巨大な世界地図に注がれている。 そこに映る世界地図は現代のものとは幾分異なる形をしており海に沈んだ陸地が違いとなっているのだ。  早くなんとかしなければ、集まった気象科学者たちは対策を急いだ。 「・・・では二酸化炭素を吸収する素材を世界中で大量に生産しそれを上空からまく案を  海面上昇問題の対策案とし、各国の首脳に進言することに致します」 議長が会議を閉会させチームに対策をたてるよう命じた各国の首脳たちを通してその案は実行に移された。 対策案は予想された通りの成果をもたらし南極の氷の溶解は見事止まった。 だが各国の首脳たちはまた新たな問題に悩まされることとなる。 素材を散布してから世界中の木が枯れて減少を始めたのだ。 そこでまた首脳たちは対策チームを結成させた。 「今回私たちが対策を練るのはご存知のように森林の減少による砂漠化問題です。  なんとかして私たち昆虫学者で毛虫の異常増加を抑える方法を探っていきましょう」 80 : ◆PDh25fV0cw :2009/12/03(木) 16:37:49 ID:+0tFlNH+ 普通の流れになってよかったよかった。 『宇宙の森』 ある宇宙ステーションをN博士が視察していた。世界的にも有名なN博士だが、お供も連れず一人でステーション内を視察していた。 最新型のこのステーションには、リアルな森が設置されている。地球出身のN博士にしても、久しぶりの木々の緑だったので楽しみにしていた。 公園に着いたN博士は、早速森の中に入り森林浴を楽しむことにした。普段はそっけない人口太陽も、木々の中から見ると本物の太陽に見える。しばらくして、久々の森との出会いの興奮も冷めてきた頃、少し変なことに気がついた。 「おや、N博士ですね。さがしましたよ」 後ろから、このステーションの管理人の男がやってくる。 「少しでも早く見たくてね、一人できてしまいました」 「さすが、好奇心が旺盛なお方だ」 管理人としばし談笑した後、N博士は疑問に感じたことを聞いてみることにした。 「そういえば、この森には虫が居ませんね。それに、人以外の動物も見えない」 「それは簡単なことです。虫は、病気の原因になりますし、嫌いな方も多い。他の動物も、ペットや人に危害を加えるかもしれませんから居ません」 「しかし、それでは枯葉や花の受粉はどうするのだ」 「枯葉は等間隔に設置された回収口から回収して、食料に変換します。花は機械が受粉させます。それに、花畑の地区以外は花を咲かせないように遺伝子操作をしています。花粉症の原因にもなりますからね」 N博士はその徹底的な管理を知り、愕然とする。このステーションは、他の開拓惑星への順応訓練のために建設されたものだ。こんな人口の森では訓練にならない。 「訓練にならないと思いになりましたか?」 「そうだ、これでは訓練にならない」 「大丈夫ですよ。未開の惑星も、この森と同じにすればいいだけです。我々にはその技術がありますから」 83 :創る名無しに見る名無し:2009/12/05(土) 14:19:02 ID:UXozhhwV ちょっと環境とは関係ない作品を書いてみました。(僕は》16と同一人物です) 『また明日』 ある街に一人の青年が居た。 なかなかの美青年で、成績もいい。しかし、運動の方はというとまるきし駄目だった。 一方、彼の友人もなかなかスタイルがいい。 しかし彼は成績がいまいちで、そのかわり体力の方はかなり勝っていた。 そして彼らは今日も対決をしているのだ。 「はあ……やっぱり君には勝てないよ」 「そうかい。でも君の賢さといったらとてもいい」 「君の体力さえあったら、ぼくは完璧なのにな」 「僕も、君の頭のよささえあったら……」 そうやって二人は毎日会話しあう。 そして夕方、「また明日」の一言で両者の家に帰っていく。 それが休日の日課ともいうべきものだった。 ある日のことだった。 「なあ、面白い店ができたらしい」 「なに。どうせゲームセンターみたいな店だろう」 「違うんだよ。僕らの夢を叶えられる、夢のような場所さ」 「それって、お互いの体や能力を入れ替えられるとか……」 「まさしく、その通りさ」 「なんだって。そんな所が本当にあったとは」 「早速今日の放課後、行ってみないか」 「もちろんだ。行って損なことはないだろう」 そして放課後、二人は店の前に来ていた。 「ここか。いよいよだな」 「ああ。きっと大変な思いをするだろうが、夢を少しでも叶えられるなら問題なしだ」 最初はそう考えていた二人だった。だが、いざ店の中に入ってみると、予想とは大分違った。 「なんだいこれは。ただのカプセルじゃないか」 そこには店員らしき者は全く居ず、かわりにカプセルのようなものが二つ、置いてあるだけだった。 「まさか、こんな安っぽい機械でね」 「とにかく、物は試しだ。やってみよう」 「説明が書いてあるな。どうやら二人同時にカプセルの中でそこの赤色のボタンを押せばいいらしい」 「そうか。じゃあ入って、せーのでいくぞ」 「わかった」 「せーの……」 二人がボタンを押した瞬間、激しいショックがはしった。 ……………… 「うーん……あっ」 気が付くと30分ほどたっていた。 「おい、起きろ」 「あっ。これでお互いの能力が入れ替わったのか」 「じゃあ早速、君が出来るバック宙をやってみるよ」 「今の君にならできるだろうな」 しかし成功どころか、背中を床にぶつけてしまし、鈍い音が辺りに響いた。 「っ」 「どういうことだ。なぜ入れ替わっていない」 「もしかしたら……ここは能力は入れ替えられないんじゃないのかい」 「じゃあ、性格だけか。でも何も替わっていない」 「それはそうだろう。僕らは同じ性格。似たもの同士だからこそこう仲良くなれたんだ」 「……そうだな」 二人は残念そうだったが、悔いは一つも無い。理由は分かるだろう。 「お互い、今の自分で居ようぜ。また明日」 「ああ、また明日」 二人はそれぞれの家へ、ありのままの自分で帰っていった。 89 :創る名無しに見る名無し:2009/12/07(月) 19:07:14 ID:o5fuPDHk 『味』 あるところに博士ととても食いしん坊な助手がいた。 助手は悪食で野菜など食材を料理も何もせずそのままバリバリ食べるのだった。 しかしそんな彼も魚や豚肉などは調理してからでないと食当たりすることがあるのを知っているのでそのまま食べたりはしない。 彼はそのまま食べられたらてっとり早いのに、と時々思うのだった。 そんなある日博士は助手が何かの装置を作っているのを見つけた。 「それは何を作っているのだ」 「これは全自動調理機です。この装置を口に付ければ食材を入れるだけで料理にしてくれるように設計してます。  この装置のすごいのは口に入った食材と使用者の嗜好を兼ね合わせて最良の味付けにしてくれるんですよ。」 それを聞いた博士は顔をしかめおこごとを始めた。 「おまえは食べるのが好きなのもいいがいつも楽をするための機械を作ろうとしてばっかりだ。  いいか、そもそもこの間の口をあけただけで食べ物を口に入れてくれる全自動食事機もだな・・・・・・」 博士は助手を口が酸っぱくなるぐらい注意した。 #right(){&link_up()}
&sizex(3){[[Top>トップページ]] > [[星新一っぽいショートショートを作るスレ]]> [[投下作品まとめページ 1>星新一っぽいSSスレ 2 投下作品まとめページ]]>スレ2-1〔2-003~089〕} * 投下作品まとめスレ2-1〔2-003~089〕 #left(){&link_down(ページ最下層へ)} 3 :555:2009/10/26(月) 22:06:10 ID:xyAJdaeG 調子に乗って、一発目やらせてもらいます -地域格差- 「何も良いことなかったな…」  貧しい故国へ、世界の富が集まる某国の港から帰国の 途に就こうとしていたエヌ氏はつぶやいた。  手にした缶のビールを飲み干すと、口の中にビールと、 それとは異なる苦みが広がった。 「そうでしょうね。私がついてましたから」  背後からの声に、エヌ氏が振り返ると、この国では 貧相な格好の男が、人なつっこい笑顔で立っていた。 「君は誰だい?」 「私は貧乏神です。数年前からすっと一緒でした。 私もあなたの国にご一緒させていただきますよ」  エヌ氏は飛び上がった。冗談じゃない! 「おい!俺にくっつくんじゃない!どっかに行ってしまえ!」 「できません。嫌われるのも貧乏神の仕事なのです」  声だけ残して、貧乏神はエヌ氏の前から消え去った。  貧乏神が憑いているのだ、何をやってもうまくゆくはず がない。  帰国したエヌ氏は、半ばヤケになって事業を興したが、 一向に暮らし向きは悪くならない。  それどころか、そこそこの生活ができる様になった。  ある日、エヌ氏は思い切って貧乏神に語りかけた。 「おい、貧乏神!なんで俺を貧乏にしないんだ!」  すると目の前に、幾分垢抜けた格好になった貧乏神が現れた 「私の力では、あなたをこれ以上貧乏にはできないみたいです。 あの国では十分に貧乏なはずなんですけど…地域格差という やつですかね…」  貧乏神は申し訳なさそうに言った。 5 : ◆Qb0Tozsreo :2009/10/27(火) 13:46:59 ID:eZnfn/w0  ある日エフ氏の研究所に、全身黒装束に身をつつんだ数人の男たちがやってきた。 「博士、やっと見つけましたよ」 「おまえらは誰じゃ?」 「私たちはこういうものです」  男たちのリーダーらしき男は、懐から取り出した手帳をエフ氏に差し出した。 「……ん?」 「時間警察です。あなたは、ご自分のお作りになったタイムマシンで歴史に手を加えていらっしゃらないですか?」 「そんな馬鹿な! ワシはタイムマシンなど作っていないぞ」  エフ氏の困惑した表情を見ても、男は顔色ひとつ変えずにさらに追求した。 「博士、とぼけないでください。私たちはすでに20世紀で、タイムマシンに乗った博士を目撃しているのです」 「そんなの見間違いじゃ! 証拠はあるのか、証拠を出せ」  男は不適な笑みを浮かべて、懐から一枚の写真を取り出した。 「こ、これは!?」  そこに写し出されていたのは、エフ氏が卑猥な恰好をした物体に馬乗りになっている姿だった。 「これが23世紀の最新型タイムマシンです」 新スレ記念カキコ(^^) 6 :「自分の影」:2009/10/29(木) 01:13:31 ID:m65wnHQh ある晩、道を歩いていたエヌ氏は不思議な男に出会った。 ぱっと見ただけでは気がつかないが、街灯の下に立っている男には影がないのだった。 「とうとう見つけたぞ。俺の影を返せ」 「おっしゃる意味がわかりません。人違いではありませんか」 エヌ氏は男を無視して通り過ぎようとしたが、すれ違う瞬間に足が動かなくなった。 振り返ってみると、男がエヌ氏の影を手で押さえこんでいた。 「お前は俺の影だろう。さあ主人のもとに戻って来い」 しばらく見つめているとエヌ氏の足から伸びていた影はぷちんと千切れた。 影は男の足にくっつくと、彼の動きに合わせて形を変えるようになった。 男が走り去ってようやくエヌ氏は口を開くことが出来た。 「これは……いったいどういうことだろう」 エヌ氏は自分の足元を見たが、そこには当然あるべきはずの影がなかった。 「警察に行くべきだろうか。いや、相手にしてもらえるわけがないか」 その日はおとなしく家に帰ったエヌ氏だったが、翌日になっても影は消えたままだった。 「おはようございます。あら、元気がありませんね。どうかなさったんですか」 エヌ氏は会社に着くなりそう声をかけられた。 影がなくとも健康に影響はないはずだ……自分ではそう思っていたのだが、他人から見ると違うらしい。 数人の同僚から同じことを言われ、上司からも具合が悪いのかと尋ねられた。 エヌ氏は曖昧に笑って誤魔化すしかなかった。 「影なんてなくてもいいと思っていたが、落ち着かない気分だな」 一人きりになれる休憩時間。エヌ氏は煙草を吸いながら考えにふけった。 あの男は何者だったのか。 あいつが本当の持ち主だというのなら、どうして男の影は自分に付いていたのか。 そうだ、自分に付いていた本来の影はどこに行ってしまったのだろう……。 考えてもわけがわからず、頭がおかしくなりそうだった。 気分が悪くなってきたエヌ氏は会社を早退して病院に行くことにした。 職場の全員から様子がおかしいと言われていたため、上司からはすんなり許可が降りた。 病院でいくつかの検査を受けた後、エヌ氏は思い切って医者に話してみることにした。 「先生、影を失くすなんて事はありえますか。更にはどこかで踏みつけた影を自分の影にしてしまうなんて」 医者は眉をひそめた。 当然だろうなとエヌ氏は思った。 影を失くしたなんていう話を自分が聞いたら、その相手を馬鹿にするに違いない。 「そんな症例は聞いたことがありません。ですが……」 医者は検査の結果のひとつをエヌ氏に見せながら言った。 「あなたのレントゲン写真です。ほら、ここに影があるでしょう」 「そうか。僕の影はそんな所にいたのか」 その後、エヌ氏は入院したものの無事に職場に復帰することができた。 「今回の検査で気がつかなければ、手遅れになって死んでいただろうと医者は言っていたよ。まさに奇跡さ」 エヌ氏は知人達に笑いながらそう語った。 誰も気がつくものはいなかったがそんな彼らを遠くから見つめ、悔しそうに呟く者がいた。 「他人の影を奪い続けて四百年。不安を煽って自殺をさせてきた俺だが、まさか人助けをしてしまうとは」 すっかり自信を失くした死神は、それきり人前に姿を見せることをしなくなった。 10 :555:2009/11/01(日) 08:18:17 ID:j7arik5T 「部長。この機能は実装できません。時間が足らないんです」  真っ青な顔で、彼…エンジニア氏は部長に報告した。 「それはまずい。実装には、どのくらいの時間が必要なんだ?」 「あと3ヶ月はかかるのではないかと…」  3ヶ月の遅れは致命的だ。下手をすると、裁判沙汰になる。 「わかった。私が応急措置をしよう。君は全力で開発にあたってくれ」 「しかし、そう簡単には…」 「心配ない!」  部長は自信たっぷりの表情で答えた。  彼の心配をよそに、システムは無事稼働。部長が応急処置を施した 部分のクレームは、全くあがってこなかった。  3ヶ月後、不具合対応にかこつけて、無事機能は実装された。  彼は、部長がどのような処置をしたのか知りたくなり、部長の対処した 部分を実行させてみた。  すると、警告が次々に画面に現れた。 「本当に使用するんですか?」 「周囲への影響を考えていますか?」 「後悔することになるかも知れませよ?」 「やらない方が良いと思うんですけど?」 12 : ◆Qb0Tozsreo :2009/11/03(火) 08:58:14 ID:gYMdx2h0  高名な科学者であるエム氏のもとには、毎日ひっきりなしに訪問者がやってくる。 「さて、今日はどんな用件かね?」 「……父さん、やっと見つけましたよ!」  目の前に現れた青年の思いもよらない発言に、さすがのエム氏も困惑した表情を見せた。 「何を言っておる? ワタシは、この55年間独身を貫いてきたのだ。息子などおるわけがないではないか」 「亡くなった母が言っていたのです。ボクの父親はエム氏、あたなだと!」 「君のお母さんの名は、何というのだ」 「ケイ美といいます」  エム氏には身に覚えがあった。今でこそ我が国を代表する科学の権威ではあるけれども、若気の至りとでもいえばよいのだろう、エム氏にも遊び呆けていた時期があるからだ。 「……しかし、ワタシが君の父親だという証拠などないではないか。第一、ワタシの息子が君のようなイケメンのはずない」 「ああ、なんてことを! 死んだ母さんが哀しみます。アナタの遺伝子を後世に残すべく、ボクを産んでくれたのに……」  エム氏が額に皺を寄せ考え込んでいると、ドアが少しだけ開いて息を切らせた秘書が顔を出した。 「失礼します! 先生、たいへんです!!」 「何事だ?」 「外を見て下さい!」  カーテンの隙間から外を覗いてみると、そこには有り得ないくらいの人数の男女が行列をつくっている。 「……ん?」 「どういたしましょう。あの方たち全員が、先生のお子さんだとおっしゃっておられるのですが」 16 :創る名無しに見る名無し:2009/11/03(火) 14:30:31 ID:K2MdbPR1 「暴風計画」 とある惑星・・・ ここにはあろうことか本物の宇宙人というものがいた。 しかし友好的な宇宙人ではない。彼らは地球を憎んでいるのだ。 彼らの星はごみくずや隕石のかけらが落ちてくるとても住みにくい星だった。 だが・・・地球という大変住みやすい星があった。それで怒るということもあるのだが・・・ 彼らにとってさらに許せないことがあった。環境問題である。 ただでさえ住みやすい星なのに、人間たちは星への恩を全く考えていない。こんな星はなくなったほうがいい・・・ そう考えたのだ。そして、彼らは一つの計画を明日、実行することになった。 「やはり、これが最も的確かと思われます」 「なるほど。空から凄まじい風を送り、人間や建物を全て吹きとばしてしまおうというわけですね」 「全てが無くなってしまい人間たちは混乱するだろうな」 「よし、早速準備にとりかかるぞ」 彼らの行動は早かった。 まずは風を吹かせるために地球と同じ成分を含んだ空気を大量に装置に入れた。 そして扇風機のような羽をいくつも取り付け、一斉に動かせるようにする。 万が一人間たちが攻撃してきた時のためにも、マシンガンや催涙弾など、あらゆる武器を設置した。 さらには、地球につくとあたりに地雷もばらまけるようにした。 「準備は万全です」 「なんと素晴らしい装置だろう。これなら人間共を蹴散らせるに違いない」 「さあ、地球人の悲しむ表情が目に浮かびますよ・・・」 かくして翌日・・・ ついに彼らは宇宙へと進出した。 隕石をくぐりぬけ、彼らの宇宙船は少しずつ地球へと近づいていく。 そしてついに・・・彼らは地球の上空へと辿り着いた。 「着陸準備をせよ!」 高度を下げ、彼らは人目につかない所へと着地した。 装置も姿を現し、全てが整った。 「地雷はでたな?さあ、スイッチを入れてくれ」 「司令官、待ってください」 「なんだ?早くしないか」 「いえ、あれを見てください・・・とても可哀想な子供たちが」 彼らが着陸した辺りには村があった。 そこの子供たち、いや大人もなにもない、家しかない所で生活をしている。 まるで、故郷の自分たちのように・・・ 「地球にはこんな人間もいたのか。この状態のまま星を無くしてしまおうなんてできない」 「撤退しましょう・・・我々が間違っていたようです」 宇宙船は地球に害を及ぼすことなく去っていった。 彼らが着陸したのは、アフリカの貧しい村だった。 彼らは人目につかない場所を探しているうちに、木々が茂る密林を選んだのだった。 もし彼らが日本やアメリカに着陸していたら、もし彼らがもっと地球に詳しかったら、 もしも彼らの星が裕福だったならば・・・ この出来事は地球人の誰にも見られていない。 しかし、誰にも見られていないからこそ、人間に恐怖心を与えずに済んだ。 これこそ、まさに奇跡といえるべきであろう。 19 :創る名無しに見る名無し:2009/11/07(土) 00:59:49 ID:LfjRHJHr 「助手君。また発明が完成したぞ」 「なんですか、教授。また『電気の入っていない電池』とかのメタ発明ですか?」 「そんなんじゃない。今回のは『どんな扉でも開く鍵』だ。センサーがキーのシリンダーを自動で計測して、どんな鍵でも開けてしまう。」 「へー、すごい。博士もたまには役に立つものを作るんですね。」 「これは売れるぞ。やっと私も大金持ちだ。」 そして5年後。 「博士・・・残念です。せっかく金持ちになるはずが、破産してしまうとは・・・」 「ううむ。まさか、あの鍵が普及しすぎて、世の中から鍵が無くなり、 世界中の鍵業者から、告訴されるとは思ってもみなかったわい・・・」 21 :創る名無しに見る名無し:2009/11/08(日) 18:31:38 ID:CK6rlio1 流行の果て  世間では、短編小説が流行っていた。人々は、中編小説や長編小説には目もくれず、 誰もが短編小説を求め、テレビや新聞は、毎日のようにその流行を取り上げた。 それまで短編小説を書いていた作家はもちろん、長編を専門にしていた作家まで、 流行に後れまいと、こぞって短編を書き始めた。 最早、短編以外の小説を、書く人も読む人もいなくなっていた。  小説家のエヌ氏も例外ではなかった。元々は長編作家だったが、世間の流行には逆らえず、 短編を書き始めたのだ。初めは、慣れない短編を書くのに苦心していたが、頭をひねるうちに、 段々とアイデアが浮かび、自然と筆が進みだした。 こうして書き上げられた、エヌ氏の最初の短編集は、流行に乗じて瞬く間に売れていった。 その後もエヌ氏は、いくつか短編集を出し、そのどれもが好評を博した。 他の作家たちも負けじと、次々に短編集を発表した。世間の流行は、ますます加速していった。  ところが、しばらく経つと、その流行はおかしな方向に向かい始めた。 世間の求めるものが、「面白さ」から「短さ」へと変わっていった。つまり、人々はより「面白い短編」ではなく、 より「短い短編」を求め始めたのだ。忙しくても気軽に、短時間で読めてしまう内容を、求めだしたというわけだ。 もちろん、「短さ」の中にも、ある程度の「面白さ」が必要であるのは、言うまでもなかった。  こうした流行の変化に、小説家たちも追随しないわけにはいかなくなった。 彼らは、「面白く」かつ「短い」短編を書かなければならなくなった。 しかし、「面白く」かつ「短い」話を考え出すのは、容易なことではない。 中には、流行の変化についていけなくなり、小説家をやめる者まで現れた。  一旦おかしな方向に向かい始めた流れは、止まることを知らなかった。 流行の初期では、一編10ページ前後のものが主流だったが、8ページ、5ページ、3ページと、 その数は徐々に減っていき、ついには、1ページを割る短編まで書かれるようになった。 ここまで来ると、内容などは関係なくなり、短ければ売れるという状態だった。  そんな中でも、エヌ氏は着実に短編を書き続けていた。世間の需要に合わせて、 5ページで終わる短編集、続いて3ページで終わる短編集を発表した。 「短さ」という縛りがあるにもかかわらず、ここでもエヌ氏の短編は、世間から高い評価を得た。  そんなある日のこと、エヌ氏の愛読者でもある、友人が訪ねてきた。 「この前のあなたの新しい短編、読みましたよ。相変わらず、面白いですね」 「そう言っていただけると、こちらとしても、書き甲斐があります」 「今度また、新しい短編をお書きになるとか」 「ええ、その予定です。世間は短い短編を求めてますから、今度は今までの短編より、ずっと短くなると思います」  エヌ氏は、自信ありげに答えた。 「おお、それは大変楽しみです」 「そして、実は今度の短編集を最後に、筆を置こうかと思っているんです」 「それはまた、突然ですね。面白い短編をいくつも書いてきたあなたが、どうして、筆を置くことを決意したんです?」  友人は、残念そうな顔で聞いた。 「正直なところ、流行を追いかけるのに疲れてしまいました。それに、最後にして一番出来のよいものが書けそうなんです」  エヌ氏の答えに、友人は納得しながら頷いた。 「それなら、仕方ありませんね。あなたの最後の短編、心待ちにしています」  こうして、エヌ氏の最後の短編集が発表された。それは、たった1行の話が一編だけ収められているという、 今までの常識を覆すものだった。これを知った他の作家たちは、「これ以上短い短編は書けない」と、半ば諦めたようにつぶやいた。 そして、このエヌ氏の小説が、流行に終止符を打つものとなった。  その1行には、こう書かれていた。 「こうして、世間が『短さ』を求めた結果、人々は0行で終わる真っ白な小説しか読まなくなったのでした」 27 : ◆Qb0Tozsreo :2009/11/11(水) 09:51:26 ID:z+iVdBew 「うむ。やっと完成したぞ」 「博士、これは?」  助手は首を傾げながら、博士が手にしている四角い物体を覗きこんだ。 「これは嘘発見器だよ」 「それなら、すでに発明されているのでは?」  たしかに嘘発見器ならば、博士ほどの人が長い期間をかけて発見するようなものではない。それならば、何か特別な機能が備え付けられているに違いないと助手は思った。 「では、試しに君を実験台にしてみよう」 「わかりました」  博士は四角い物体から数本のコードを引き出して、助手の頭部にくくり付けた。 「これからワタシが質問をするから、すべて『いいえ』で答えてくれ」 「はい」 「では、始めるぞ。君は、ワタシの娘と深い仲のようだな」 「いいえ」  すると、四角い物体からブー! と鈍い音が洩れた。 「君は、ワタシの財産を手に入れるために助手となり、娘に近づいた」 「いいえ」  ブー! 「君は、カネのためならなんでもする。ワタシを亡きものにすることさえも」 「いいえ」  ブー! 「君は……」 「ちょっと待ってください! これでは、まるでボクが博士を陥れようとしているみたいではないですか」 「違うのかね?」  すると、暫くじっと唇を噛んでいた助手だったが、耐えられなくなったのか頭部のコードを無造作に剥ぎ取った。 「畜生!」  そう言うと、助手は足早に研究所を去って行った。 「やれやれ、これで七人目か……。なかなかまともな助手には巡り会えんな」 29 :創る名無しに見る名無し:2009/11/12(木) 07:22:40 ID:C/n4HVxZ 「肩パン」 夜のバス停でバスを待っていたら知らない子どもがいきなり「肩パンやろうぜ」と声をかけてきた 気持ちが悪いので僕は断ったら、その子どもは狂ったように泣き喚きながら「肩パンやろうよ~」と言ってくる どうしてもそんな知らない人と肩パンなんかする気になれなかった僕は断り続け、心の中でひたすら早くバスが到着する事を祈った だが、その子どもは顔をくしゃくしゃにして僕の方を見てバス停のベンチや柱に八つ当たりをしている しょうがないので、一回だけ肩パンをやってやろうとしたら、暗がりから木刀をもったヤンキーがぞろぞろとやってきた。どうやらこの子どもは、ヤンキーのうちの誰かの弟らしかった するとそこでバスがやってきた。僕は死に物狂いで飛び乗った。バスの後ろを見るとヤンキー達と子どもが狂ったように追い掛けてきた あの時バスが来なかったら僕は一体どうなっていたんだろう ~完~ 42 : ◆Qb0Tozsreo :2009/11/18(水) 11:15:57 ID:CNrS2LJs 「やあ、エムさんお久しぶりです」 「これはアールさん、いつの間に来られたのですか?」  エム氏が振り返ると、そこにはさっきまで誰もいなかったはずの場所に口元に笑みを浮かべたアール氏が立っていた。 「実はタイムマシンで昨日からやってきました」 「タイムマシン? ついに完成したのですね!」  アール氏がタイムマシンを発明していたことは小耳にはさんでいたけれど、いざ完成したとなると同じ科学者としてエム氏も黙っていられなかった。 「ということは、昨日完成したタイムマシンの試運転に、わざわざワタシの研究所に報告に来られたと? しかし、なぜ今日なのですか」 「実はこのタイムマシンは二十四時間後にしか時間を移動することができないのです」  これにはエム氏も苦笑いをせざるを得なかった。一日後にしか行けないタイムマシンなど、あまり意味がないのではないかと思ったからだ。 「いや、ワタシたちは似た者同士ですね」 「それはどういう意味ですか?」 「実はワタシの発明したタイムマシンは、三日後にしか行けませんから」 43 :創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 11:20:05 ID:7U3xAwGo                バシャール・ユウジ様 拝啓   時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。 さて、今年も総会ならびにホームカミングデーのご案内を 送付させていただきます。年々参加者が増え、昨年は特別 講義や懇親会、抽選会等満員の大盛況で、☆☆も大賑わい でした。本年度の催しにつきましても、多くの同窓生の方々 より貴重な提案やご要望を頂き、企画させていただきました。 当日は懐かしい思い出話に花を咲かせ、タイムスリップして、 楽しい一日をお過ごし下さい。  皆様、何かとご多忙とは存じますが、☆☆、☆☆☆、それ ぞれお誘いあわせの上、ご参加いただけますようこころから お待ち申し上げます。                        敬具                                         地球同窓会一同                       会長山田 太朗   44 :よくあるけど載せるよ:2009/11/18(水) 11:57:00 ID:7U3xAwGo 男が楽しそうにマンホールの蓋の上を飛んでいた。 「23!23!23!23!」 違う男がやってきて、「楽しそうだな。おれにもやらしてくれ」 と元居た男を押しのけ、マンホールの蓋の上を飛び始めた。 するとパカっと蓋が開き、男は落ちていった。 元居た男は「24!24!24!」と楽しそうにまた飛び始めた。  s少年はその日の美術の授業の課題をついに理解できなかった。 「ハイ、今日は空想上の絵を描いてください。」 ということであった。みな最初は戸惑ったが皆、少し経つとめいめい 描き始めたようだった。しかし、s少年だけは一向に両手で顎をおおい ながら、描くことができない。  教師はついに、s少年に尋ねてみた。 「君はなぜ描かないんだね。」 「だってね。先生僕は幽霊を描こうとおもってるのですが、 幽霊は足がないでしょ。」 「頭から描いていいやら、足から描いていいやらわからないんです。」 じっとしていたs少年を案じた美術教師は、それ以上何も言わなかった。 46 :創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 15:50:22 ID:xF5AxLfQ 星新一っぽくないかもしれんが 男は何事も中途半端にしかやらなかった。 仕事も中途半端で止めたり、恋人とのデートも途中で帰り、 料理をつくろうものなら鍋を焦げ付かせてしまう。 そんなある日、男が会社に出勤すると、男の机が無くなっていた。 男はクビになった。 ショックのあまり、というかいつものように今夜予定していた恋人とのデートを 途中で帰ってしまった。 次の日、テレビを見ると、なんと恋人が行方不明になっていた。 男は気が付いた。 「俺が中途半端にしてしまったから、消えてしまったんだ。 もう中途半端になんかしない。戻ってきてくれー」 その時、男の後ろの押入れから無くなったものが出てきた。 しかし出てきたのは恋人だけではなかった。 仕事の山、食べ物、家電やタバコの吸殻、 男の気が付いていないところで物はどんどん無くなっていたのだ。 男が後ろを振り向く間もなく物は男の上に落ちてきた。 そして男の人生は中途半端なものとなり、 男はなくなった。 49 :創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 22:07:50 ID:7U3xAwGo やっぱり 男は、家を出るとだけ告げ、フラフラと家を出てある田舎にたどり着いた。 渓流などある山手の田舎だった。空気が一変した。澄んだ空気を楽しみ ながらも、日が暮れて、宿をとるべく、看板のついた家を探した。そうして ひなびた旅館に入ると、玄関脇にハエたたきが掛けてあった。 「年季の入ったハエたたきですね。都会ではもうこういうものはお目に かかれません。」 「いやぁ失礼しました。ここいらハエが多いモンでしてね。さあさ、部屋へ 案内しますだべ。」  部屋に入ってみると窓から流れがみえて、ここちいい。掛け軸なんかも かけてあって悪くない。布団は糊のきいた、心地よさそうなものだ。  しかし、無粋にも部屋にもハエたたきがおいてあって、瓶がおいてある。瓶には ハエがたくさんつまっている。ゆずって、ハエたたきはいいだろう。 でもこのハエの詰まった瓶はなんなんだ。 翌日、主に聞いてみた。「ああ、ここは渓流釣りのお客さんがほとんどだべ。 釣りに使うんだべ。」   51 :創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 22:31:26 ID:7U3xAwGo 荒れた街から男はでていくことをきめた。 この町では本心がウソで、ウソが本心。 「この辺では職もねぇからよ。さっさとおさらばしたほうが身のため さ。」「途中でかえってくるんじゃないよ」 「これいらないから、もっていきな」 男はとうとう心にもないことを言った。「みんなありがとう」 夕暮れ時、ロバを叩いてまさに出発せんとする時であった。 となりの凡が走り出てきて叫んだ。「こんにちは!」「こんにちは!」 54 :創る名無しに見る名無し:2009/11/19(木) 05:22:46 ID:o9Uu/w1U 即席で造ったので、アラは見逃してください。 『下手なプレイヤー』 俺は今自殺を考えている。 振り返ってみると俺の人生不幸の連続だった。 もしかするとこれは仕組まれたゲームなんじゃないか? …とすら思ったことがある。 しかし、そのたび己を騙し現実に戻る。 こうして今も死を目前にして生きている…。 それでも不思議なことに“死”なんてモノは漠然とした遠い存在だ。 でもこれでオシマイダ… 「ありがとう俺。」 キュイーーン パチッ… 「ちょっと!!お母さんコンセント抜けたじゃん…ゲームする時は掃除機掛けるの止めてって言ってるのに。まぁいいやこのゲームつまらなかったし新しいの買ってー」 59 :創る名無しに見る名無し:2009/11/20(金) 18:55:27 ID:qnmoePm1 『日本の中央』 第四次世界大戦から150年も平和がつづいた西暦3000年。 かつて廃墟と化した日本列島は、緑の楽園に変わっていた。 ある日、東北地方のとある山の麓で、「日本中央」と書かれた石碑が発見された。 人々は騒然として、これは征夷大将軍・坂上田村麻呂の伝説にある石碑のことでは ないか、と話し合った。 伝説によれば、坂上田村麻呂は、蝦夷の征伐において、訪れた東北地方の大きな石の 表面に、矢じりで「日本中央」と彫ったとされている。 いわく、「みちのくの奥に壺のいしぶみあり。日本の果てといへり」 この石碑のことは、西行や和泉式部など多くの歌人が詠ったが、どこにあるかは不明 だったのである。 石碑は保存館に安置され、多くの人たちの観覧に供された。 少年が一人、その石に別の文字を見つけて、帰宅後、古老にその意味を質問した。 古老は答えた。 「おお、千年ほど昔は、コロセウムに馬を何頭も集めて競走させたのじゃ。国民は その競走を見て、娯楽としていたようじゃ。たしか、運営していたのは日本中央競馬会……」 少年が見付けた文字は「競」と「馬」という字だった。 69 : ◆PDh25fV0cw :2009/11/28(土) 20:54:22 ID:HgLf+Mnu 『楽な機械』 私の勤める売り場にお客さんがやって来る。ほとんど人など来ないのだが、珍しい。お客は、中年の男性だ。 「これはどうやって使うのかね?」 傲慢な口調に、ちょとむっとしたが丁寧に答える。 「これは、全自動食事機でございます。箱にセットされていますボタンを押しますと、体に無痛針から、栄養剤が注入されます。もちろん、栄養バランスもバッチリです」 「確かに便利そうだが、食事は自分で食べたいものだ。注射一本で終わってしまっては、味気ない」 「それなら、これはどうでしょうか」 店の奥から、ヘルメットのついた新しい箱をだす。 「これを使えば、和洋中の素晴らしい料理の数々を、食べた気分になれます。使い方も簡単、ボタンを押すだけです」 「確かに素晴らしい機械だ。しかし、壊れたときはどうするのだ。複雑な機械だろう」 「ご安心下さい。10年以上の保険とこちら、全自動修理器もお付けします」 私はまた、奥から箱を持ってくる。 「たしかに素晴らしい機械の数々だ。しかし、これは買えないな」 「どうしてでしょうか。値段も勉強しますよ」 「そうではない。これらの機械を、家に置く場所がないのだ。ただでさえ今も、家は機械で溢れている。これ以上増やすなら、家を買わなくてはいけない」 そう言って、お客さんは帰ってしまう。まったく、家が一杯になるぐらい機械を買うなら、なぜ機械にならないのか。 誰もいなくなった店内で、私は日課の関節のオイル交換に戻った。 74 :創る名無しに見る名無し:2009/12/02(水) 19:03:53 ID:wgk3zpue 『雨の日』 先生が教室で児童たちに雨で遠足が延期になったことを伝えた。 「折り畳み傘と合羽準備してるからこれぐらいなら行けるよー」 「雨ぐらい平気なのに」 児童たちはなんで雨になったんだよと皆不満そうだった。 それから400年後・・・ ニュースキャスターがニュースを告げる。 今日あった出来事を淡々と述べた後明日の天気について説明をはじめた。 「明日は全国的に晴れとなるでしょう。ただしところにより強烈な突風が吹くので注意してください」 それだけで明日の天気についての説明をキャスターは終わらせる。 わずかこれだけしか情報を伝えなかったがこれでも台本通りなのだ。 それを見ていた人たちもそうか、と納得する。 しかし納得した上でがっかりした男が友人に話しかける。 「明日は海に行きたかったのに風が強いんじゃやめだな」 せっかく海の近くに引っ越したのにこれでは浜辺に砂ぼこりが吹き荒れるかもしれない。 彼はわかっているふりをしていたが友人にはどこかまだ彼が海に行くのではという疑念があった。 そこで釘をさしておくことにした。 「砂ぼこりだけじゃないよ。明日は雲のない晴れだっていってたからもし海に行くと強烈な日光で皮膚が日焼けしちゃうのわかってる?」 もちろん男も明日海に行けないことは分かっていた。 オゾン層がなくなったこの時代、太陽が昇っているうちに建物の外へ行く際は宇宙服のような長袖長ズボンを着て出かけるのが当たり前なのだ。 「そうか・・・。じゃあ代りに次の雨の日にはどこか遠くへ行くことにするか。ピクニックとか一緒に行こうぜ」 「僕は遊園地とかがいい」 「そんなのは彼女でも作って二人で行けよ」 男がちゃかすと友人が笑い、男も笑う。 太陽を厚い雲で覆う雨が降りしきる日を心待ちにしながら彼らは計画を話し合うのだった。 76 :創る名無しに見る名無し:2009/12/03(木) 11:09:17 ID:f1oLXZo0  ある夏の日。 「いやあ、今日は暑いな……」 「何言ってんだよ! これくらいへっちゃらさ」 「そういえば、こないだ爺さんが言ってたけど、昔は三十度ぐらいで熱中症になってたらしいぜ」 「マジかよ? 昔の人って身体弱かったんだな……」  二人の傍にある温度計の針は五十度を差していた。 78 :創る名無しに見る名無し:2009/12/03(木) 14:54:25 ID:VSW045Rz 『対策』 二酸化炭素の増加により南極の氷が本格的に解け始めていた。 解けた水分はそのまま海面を上昇させ陸上と海中に生息するあらゆる生物に影響をあたえた。 各国の首脳たちは気象科学者を集めた異常気象対策チームを結成させその対策をまとめさせることにした。 そして議長に選出された気象科学者から話を始める。 「今回私たちが対策を練るのはご存知のように南極の氷の溶解による海面の上昇問題です。  なんとかして二酸化炭素の発生を抑える方法を探っていきましょう」 一同の視線はスクリーンに映された巨大な世界地図に注がれている。 そこに映る世界地図は現代のものとは幾分異なる形をしており海に沈んだ陸地が違いとなっているのだ。  早くなんとかしなければ、集まった気象科学者たちは対策を急いだ。 「・・・では二酸化炭素を吸収する素材を世界中で大量に生産しそれを上空からまく案を  海面上昇問題の対策案とし、各国の首脳に進言することに致します」 議長が会議を閉会させチームに対策をたてるよう命じた各国の首脳たちを通してその案は実行に移された。 対策案は予想された通りの成果をもたらし南極の氷の溶解は見事止まった。 だが各国の首脳たちはまた新たな問題に悩まされることとなる。 素材を散布してから世界中の木が枯れて減少を始めたのだ。 そこでまた首脳たちは対策チームを結成させた。 「今回私たちが対策を練るのはご存知のように森林の減少による砂漠化問題です。  なんとかして私たち昆虫学者で毛虫の異常増加を抑える方法を探っていきましょう」 80 : ◆PDh25fV0cw :2009/12/03(木) 16:37:49 ID:+0tFlNH+ 普通の流れになってよかったよかった。 『宇宙の森』 ある宇宙ステーションをN博士が視察していた。世界的にも有名なN博士だが、お供も連れず一人でステーション内を視察していた。 最新型のこのステーションには、リアルな森が設置されている。地球出身のN博士にしても、久しぶりの木々の緑だったので楽しみにしていた。 公園に着いたN博士は、早速森の中に入り森林浴を楽しむことにした。普段はそっけない人口太陽も、木々の中から見ると本物の太陽に見える。しばらくして、久々の森との出会いの興奮も冷めてきた頃、少し変なことに気がついた。 「おや、N博士ですね。さがしましたよ」 後ろから、このステーションの管理人の男がやってくる。 「少しでも早く見たくてね、一人できてしまいました」 「さすが、好奇心が旺盛なお方だ」 管理人としばし談笑した後、N博士は疑問に感じたことを聞いてみることにした。 「そういえば、この森には虫が居ませんね。それに、人以外の動物も見えない」 「それは簡単なことです。虫は、病気の原因になりますし、嫌いな方も多い。他の動物も、ペットや人に危害を加えるかもしれませんから居ません」 「しかし、それでは枯葉や花の受粉はどうするのだ」 「枯葉は等間隔に設置された回収口から回収して、食料に変換します。花は機械が受粉させます。それに、花畑の地区以外は花を咲かせないように遺伝子操作をしています。花粉症の原因にもなりますからね」 N博士はその徹底的な管理を知り、愕然とする。このステーションは、他の開拓惑星への順応訓練のために建設されたものだ。こんな人口の森では訓練にならない。 「訓練にならないと思いになりましたか?」 「そうだ、これでは訓練にならない」 「大丈夫ですよ。未開の惑星も、この森と同じにすればいいだけです。我々にはその技術がありますから」 83 :創る名無しに見る名無し:2009/12/05(土) 14:19:02 ID:UXozhhwV ちょっと環境とは関係ない作品を書いてみました。(僕は》16と同一人物です) 『また明日』 ある街に一人の青年が居た。 なかなかの美青年で、成績もいい。しかし、運動の方はというとまるきし駄目だった。 一方、彼の友人もなかなかスタイルがいい。 しかし彼は成績がいまいちで、そのかわり体力の方はかなり勝っていた。 そして彼らは今日も対決をしているのだ。 「はあ……やっぱり君には勝てないよ」 「そうかい。でも君の賢さといったらとてもいい」 「君の体力さえあったら、ぼくは完璧なのにな」 「僕も、君の頭のよささえあったら……」 そうやって二人は毎日会話しあう。 そして夕方、「また明日」の一言で両者の家に帰っていく。 それが休日の日課ともいうべきものだった。 ある日のことだった。 「なあ、面白い店ができたらしい」 「なに。どうせゲームセンターみたいな店だろう」 「違うんだよ。僕らの夢を叶えられる、夢のような場所さ」 「それって、お互いの体や能力を入れ替えられるとか……」 「まさしく、その通りさ」 「なんだって。そんな所が本当にあったとは」 「早速今日の放課後、行ってみないか」 「もちろんだ。行って損なことはないだろう」 そして放課後、二人は店の前に来ていた。 「ここか。いよいよだな」 「ああ。きっと大変な思いをするだろうが、夢を少しでも叶えられるなら問題なしだ」 最初はそう考えていた二人だった。だが、いざ店の中に入ってみると、予想とは大分違った。 「なんだいこれは。ただのカプセルじゃないか」 そこには店員らしき者は全く居ず、かわりにカプセルのようなものが二つ、置いてあるだけだった。 「まさか、こんな安っぽい機械でね」 「とにかく、物は試しだ。やってみよう」 「説明が書いてあるな。どうやら二人同時にカプセルの中でそこの赤色のボタンを押せばいいらしい」 「そうか。じゃあ入って、せーのでいくぞ」 「わかった」 「せーの……」 二人がボタンを押した瞬間、激しいショックがはしった。 ……………… 「うーん……あっ」 気が付くと30分ほどたっていた。 「おい、起きろ」 「あっ。これでお互いの能力が入れ替わったのか」 「じゃあ早速、君が出来るバック宙をやってみるよ」 「今の君にならできるだろうな」 しかし成功どころか、背中を床にぶつけてしまし、鈍い音が辺りに響いた。 「っ」 「どういうことだ。なぜ入れ替わっていない」 「もしかしたら……ここは能力は入れ替えられないんじゃないのかい」 「じゃあ、性格だけか。でも何も替わっていない」 「それはそうだろう。僕らは同じ性格。似たもの同士だからこそこう仲良くなれたんだ」 「……そうだな」 二人は残念そうだったが、悔いは一つも無い。理由は分かるだろう。 「お互い、今の自分で居ようぜ。また明日」 「ああ、また明日」 二人はそれぞれの家へ、ありのままの自分で帰っていった。 89 :創る名無しに見る名無し:2009/12/07(月) 19:07:14 ID:o5fuPDHk 『味』 あるところに博士ととても食いしん坊な助手がいた。 助手は悪食で野菜など食材を料理も何もせずそのままバリバリ食べるのだった。 しかしそんな彼も魚や豚肉などは調理してからでないと食当たりすることがあるのを知っているのでそのまま食べたりはしない。 彼はそのまま食べられたらてっとり早いのに、と時々思うのだった。 そんなある日博士は助手が何かの装置を作っているのを見つけた。 「それは何を作っているのだ」 「これは全自動調理機です。この装置を口に付ければ食材を入れるだけで料理にしてくれるように設計してます。  この装置のすごいのは口に入った食材と使用者の嗜好を兼ね合わせて最良の味付けにしてくれるんですよ。」 それを聞いた博士は顔をしかめおこごとを始めた。 「おまえは食べるのが好きなのもいいがいつも楽をするための機械を作ろうとしてばっかりだ。  いいか、そもそもこの間の口をあけただけで食べ物を口に入れてくれる全自動食事機もだな・・・・・・」 博士は助手を口が酸っぱくなるぐらい注意した。 #right(){&link_up(ページ最上部へ)} ----

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