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「花」、「稲穂」、「狼」②

21 名前:花・稲穂・狼、その1[sage] 投稿日:2008/09/07(日) 23:47:52 ID:jqpZ0rtV 

 山間の小さな農村。収穫期を迎え、人々はたわわに実った稲穂を忙しそうに刈り取っている。
 そこへ若者が通りかかり、農民の一人に声を掛ける。
「失礼、私は旅の薬売りです。この村の庄屋様のご息女が病だと伺い、診察に参りました」
「ああ、ご苦労なこって、庄屋様のお屋敷ならこの道の先だよ」
 ぶっきらぼうに農夫が答える。
「実は長旅で喉が乾いております、すみませんが水を一杯いただけませんか」
 しょうがないなという風に、農夫は若者を井戸に案内し、水を汲み差し出す。
 若者は容器に顔を近付け、ピチャピチャと音を立てながら舌で水を舐める。
「あんた、まるで犬じゃのう」
 農夫が笑う。若者は、慌てて礼を言い立ち去る。
(いかんいかん、つい癖が出てしまった)
 若者は人間ではない。長い年月を経て、人に化け、人語を解する術を覚えた狼が彼の正体であった。
 美しいと評判の庄屋の娘を食らうため、薬売りに化けてこの村にやって来たのである。

22 名前:花・稲穂・狼、その2[sage] 投稿日:2008/09/07(日) 23:52:37 ID:jqpZ0rtV 

 庄屋の家で、若者は歓迎された。何の病かは知らぬが適当に薬を見繕う。
 庄屋が礼を言う。隣に座る娘は噂に違わぬ美しさ、解語の花とはこのことか。
「お力になれて何よりです。ところでぶしつけな願いなのですが、今宵一晩こちらに泊めて頂けませんか」
 庄屋は快く了承する。若者は、娘の柔肌にその牙を突き立てる瞬間を夢想し、思わず舌なめずりをする。
「ただ、一つお約束を。娘の部屋は離れにありますが、今宵は絶対に近づいてはなりませんぞ」

 先程は下心が見透かされたのかと思いドキリとしたが、若者の欲望は止むはずもない。
 夜が更け家人が寝静まった頃を見計らい、満月の月明かりの下、娘のいる離れへと向かう。
 扉は頑丈で、しっかりと施錠されており、開けるのは一苦労だった。
(流石は庄屋の一人娘、一筋縄ではいかん。しかし外側から鍵を掛けるとは、親の愛とは言え尋常ではないな)
 何とか錠をこじ開け、ゆっくり扉を開く。暗くてよく見えないが、部屋の中央に布団が敷かれているようだ。
(さて、では頂くとしようか)
 ゴクリと喉を鳴らしながら若者が近付く。
 ゆっくりと布団を剥ぎとる……

23 名前:花・稲穂・狼、その3[sage] 投稿日:2008/09/07(日) 23:54:30 ID:jqpZ0rtV 

 その瞬間、黒い影が布団から飛び出し、ものすごい力で若者を組み伏せた。
「なんだこれは」
 突然のことに驚く若者、騒ぎを聞きつけ庄屋がやって来た。
「ああ、何ということだ」
 目の前の光景を見て、庄屋は青ざめる。
「娘の病とはケモノ憑きなのです、満月の晩になると狼の姿になり人を襲うので、こうして厳重に閉じ込めてお
いたのに……」
「何ということだ……」
 若者は急いで変化を解き、狼に戻ろうとするが間に合わない。
 次の瞬間、狼と化した娘の鋭い牙が、若者の首筋にズブリと音を立てて突き刺さった。

-- 了 --

24 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[] 投稿日:2008/09/07(日) 23:56:58 ID:jqpZ0rtV 
以上、乱筆乱文失礼。


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