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*創発の館に他の桃花が来ちゃったら④
投稿日:2010/08/27(金) 07:37:28
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「また無茶してるのねあなた」
「そうでもないさ。それなりに楽しんでいる」

 聖魔渦巻く創発の館。
 その一角、一部の者しか入れぬ場所で、二人は話し合っていた。魔王しかその場所は知らない。故に、そこに魔王以外で入れるという事は、そこに招かれたか、或は魔王に匹敵する存在――

「しかし突然現れて、一体何の用だ? クリーシェ?」
「解らない? 一言忠告する為よ」

 H・クリーシェ――創発の女神は蒼い髪を揺らしながら、魔王の横へと並ぶ。
 ハルトシュラーはその姿を素直に美しいと認めた。
 彼女もまた、創作者の思いが一つとなり誕生した極めて巨大な質量を備えた力ある存在だ。あまり表だった事はしないが、それは創作者がそう望んで居るから。
 そして、その美しさの裏に秘められた恐るべき、そして悲しき力。

「わざわざ出向いで忠告とは、お前はそのような存在では無いはずだ。
 私達はそれぞれ全く違う役割がある。そもそも相いれぬ存在。覇権をかけて争いもしたが、それすら実態は創作物。私達の本当の姿では無い」
「百も承知よ。でも、今回の貴女は危険過ぎる。貴女は創作する事自体がその存在。あなたが欲しがったあれは、貴女とは決して相容れない」
「ふむ。あれか……」

 女神の言うあれ。それを聞いた魔王はかけていたソファから立ち上がり、窓の方へと歩いた。女神もそれに付いて行く。
 窓から見えるは、無限の空と、無限の星々。

「クリーシェよ。お前は一体、どれほどの破壊者を消して来た?」
「……。解らないわ。あなただって、どれほどの創作物を残して来たの?」
「解らないな。私達は、あまりに多くの思いが詰め込まれている」
「それを護る為に、私は生まれた。だから、私は何も創れない。だけど、壊す事は出来る……」
「……お前がいなければ今頃どうなっていたかな。破壊者達には一切の言葉など無意味。なれば消し去るしか無い。お前の、全てを無にする力で……」
「皮肉なものね。壊す事が出来る私が女神で、創る事が出来る貴女が魔王だなんて」
「気にする事かクリーシェ? 結果、お前は創作者達を護って居る。この私を含めて……」

 魔王の横に立つ女神は、その言葉を複雑な思いで聞いていた。
 解ってはいる。私は、そのために創られたのだ――
 だが、その思いは女神にとって悲しみ以外の何物でもないのだ。

「……私が消した者達だって、本当は創る力を持っていた。でも彼らはそんな事はしない。
 何故なの? せっかく創る事が出来るのに。せっかく、無限の力を秘めているのに。結果、あの魔物を呼び寄せてしまった……」
「彼らにその気概など無いのだ。それもまた、一つの答。
 私は可能性を求める。だから、その魔物を借りたいのだ」

 女神の口から語られた魔物。それは、魔王すら恐れる創作者達の敵。

「無限桃花達はあらゆる姿を持つ、いわば創作者達一人一人の末端だ。一つに集合した私とは結果こそ違えど、私と同じ力を内包している。
 それらがいかにあの魔物に立ち向かうか、見てみたい」
「恐ろしい人ね。全てが打ち砕かれてもいいの?」
「その為にお前が居る。お前が護り、私が創ろう。それでいい」
「勝手な人ね」
「解っているさ」

 魔王の決意は固い。一度やると言ったら聞かない人物だという事は、女神もよく知っている。
 説得は無駄だろう。いざとなったら、自ら出向いてしまえばいい。その悲しき壊す力で、全て終わらせる事が出来る。そう思った。

「桃花達は驚くでしょうね。まさか、寄生以上の敵が居るなんて」
「だろうな。そもそも桃花達の相手でもない。しかし、それもまた創作の可能性なのだよ」
「……そうね」

 女神はドアへと向かった。そして、最後に魔王の願いを叶えると言い残した。出て行く前、最後に言った言葉は。

「亜螺子は今、桃花の姿をしている――」

 そして、魔王は館の一角ひそれを呼び込む準備を始めた。

「さぁ、創作の時間だ――」


※ ※ ※



「ブォオオオオン! ブブブブブ……」
「はぁ? もういっぺん言ってみやがれこのクソマア!」
「ブブブ? ブォオオオオン! ブブブブブ……」
「きぃいいい!」

 喧嘩である。殴り合いにまでは行かないが、この二人、まさに犬猿の中。
 一人はホッケーマスクの金曜日桃花。そして相対するは、全身ケロイドでハットにボーダーシャツのグロテスクなケロイド桃花。
 横で見ていたその他桃花達には奇っ怪極まりない光景だった。それこそ数年前のVSシリーズをむりやり見させられている。そんな感じだ。

「あの二人……。ていうかあの人大丈夫なの!?」
 と、稲妻桃花。

「うん。なんでも医者桃花にも治せなかったから、あれがデフォな姿かと……」
 そう答えたセーラー桃花。

 ケロイド桃花の皮膚はズタボロ以外の何物でもなく、頬っぺたの筋肉が露出する程の惨状。
 ところがどっこい。それで全然へっちゃらなのだ。

「なぜあんな姿に……」
「あの娘は金曜日のライバルなんだ。顔を合わせたらいつもこんな感じだ」
「そうなんだ。ものすごいコアな何かを感じるわ……」

 ケロイド桃花は手袋に刃物が付いた武器を振り回しながら、金曜日とぎゃーぎゃー言い合っていた。やがて疲れたのか、「今日はこれくらいで勘弁してやる」と言い残し去っていった。それもまたいつも通りだとか。

「ブブブブブ……」
「まぁ……。落ち着いて?」
「大丈夫。いつもの事だ」

 金曜日とケロイドの戦いは今後しばらく続くだろう。
 そして、それはある意味でこの館にとっては平和な証でもあるのだ。それは確証されたかに思えていた。
 たとえまた寄生が現れようとも、今は対寄生に於いてならほぼ無敵の桃花すら居る。
 平和。それこそ、今のこの館を象徴する言葉だった。



※ ※ ※




「ふんふんふん~♪」

 鼻歌が聞こえた。それが誰かは解らない。というより、この館は桃花しか居ないのでもちろん桃花の鼻歌だ。
 その桃花はポニテで刀を持ち十八歳くらいの、言うなれば桃花その物であり、逆に言えばそれ以上何も特徴を持たない無限桃花である。
 便宜上名前をつけるならば、モブ桃花とでも言おうか。とにかく、その桃花は館の中を歩いていた。

「あ~。館の探検も飽きたな。どこ行っても同じ風景ばかりだし。かといってこれで全部じゃないしなぁ」

 この桃花は新参者であった。だから、館の散策に精を出していたが、そろそろ飽きていたのだ。
 この館の全体像を理解しているのはハルトシュラーと眼鏡桃花、そしてロリ桃花他数名という有様。そもそも全体を把握する必要がある桃花自体が少ないのだ。

 そして、彼女はハルトシュラーが仕掛けた恐るべき謀略の最初の犠牲者となる。

「ん? 誰か居るぞ?」

 彼女はそれを見つけた。当然ながらこの館は桃花が集まる場所だと説明は受けている。そして、そこに居たのはやはり桃花。
 しかしながら、その姿はあまりにも。

「うお……。すげぇ綺麗な人……」

 モブ桃花はそう感想を述べた。
 そこに居た桃花は、驚く程黒く輝く長い髪に、真っ黒なブラウスと真っ黒なスカート。そして、女性ですら見とれる程の、完全された彫刻のような、無機質なまでに美しい顔。
 その桃花――黒桃花は、その吸い込まれて何処までも落ちて行きそうな真っ黒な瞳で、モブ桃花を見つめていた。
 モブ桃花は声をかけた。当然だ。この館に居るのは桃花であり、つまりは自分の同胞なのである。
 しかし一応他人である。丁寧にこんにちはと挨拶すると、黒桃花は返答をした。
 その声は見た目同様、驚くほど美しい声。

「……始めまして」
「は……初めまして」
「あなたも桃花なのね?」
「え? もちろん」
「そう」

 黒桃花はそう言った。
 そして、さらにこう言った。

「桃花。ふふ。さよなら。無限桃花。バラバラになれ」

 
 突如である。黒桃花がモブ桃花に触れた。その次の瞬間――

 闇。混沌。認識不可能。
 モブ桃花のあらゆる知覚は一瞬にして奪われた。そして、己の中の全てが壊れて行くのを感じて居た。
 それは、彼女らを構成する設定その物に、凄まじい勢いで無秩序な改編がなされていったのだ。

「??!」

 モブ桃花は何が起きたか理解出来ず、そして、自らが根本から崩壊していくのを感じつつ。
 闇。混沌。認識不可能。無秩序。そして、悪意。
 モブ桃花は、文字通りその姿を無秩序な何かへと変貌させ、さらには消えていった。

「無限桃花。フフ。一匹残らず。壊すだけ」

 黒い桃花。それは、桃花であって、桃花ではなかった。

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