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正義の定義 ~英雄/十二使徒~ 番外編 - (2010/07/11 (日) 13:26:46) のソース
&sizex(3){[[Top>トップページ]] > [[【シェア】みんなで世界を創るスレ【クロス】]] > 異形世界・[[正義の定義 ~英雄/十二使徒~]]} *正義の定義 ~英雄/十二使徒~ 番外編 「郵便でーす」 「焔ー、今手離せないから代わりにでてちょうだーい」 「はーい」 正義の定義~番外編~ 「異形の花屋さん/AnotherWorld」 「郵便です、ハンコ、お願いしますね」 「はいはい」 カンカンと照りつける夏の太陽。外から入る茹だる暑さにチリンと鳴るドアに掛けられた風鈴が 来客を伝える。室内は色とりどりの花に彩られ、香水を純水で薄めたような香りが鼻内を心地よく駆け巡る。 来客は、背中に獣の翼を生やした配達員の少女だった。少女は家の人間に封筒を手渡すと、 「ぁりがとうございましたぁあ~」 と、文頭が聞き取りにくい挨拶を軽く頭を下げつつ言い、忙しない様子で次の配達へと向かっていった。 「お母さん、なんかお父さんから手紙来てたよ」 「あらあら、今度はエジプトからですって」 封筒を受け取った少女、焔は母親の元にそれを持ってくる。どうやら父親からの物のようだ。 封筒の中身は現地の様子をやや誇張気味に書いた父親の直筆の手紙とピラミッド等の造形物が映った 写真数枚。本人の元気な様子が伝わってくるようだ。 「エジプトかぁ、どんなとこかな?」 焔は父から送られてきた写真を眺め、未知の土地に想いを馳せる。 「ミイラ男とかいたりするかもよ!?」 焔の母親が茶化す。今の時代、吸血鬼や狼男が普通にその辺を歩いている訳で、今更ミイラ如きでは 驚きもしないが。 「おーっす!」 またしても来客。今度は顔見知りの人間が来た。 「ん?あ、タケゾー。学校はもう終わったの?」 「おうよ!」 「こんにちわほむっち!ほむっちのお母さん」 「あらあら、タケゾーくんもカナミちゃんも、こんにちわ」 丸坊主のやんちゃそうな少年、タケゾーとその幼馴染カナミであった。二人とも、通気性の良さそうな 半袖の衣服を着ていた。学校帰りなのか、二人ともカバンを背負っている。 「相変わらずこの店は人がいないなぁー!」 「こらタケゾー!失礼でしょ!」 ゴツン。カナミの拳がタケゾーの脳天に落ちる。鈍い音がした頭部をタケゾーは押さえ「なにすんだ!」と カナミに詰め寄る。まぁまぁ、と焔の母親が人数分の麦茶を持って止めに入るまで二人が言い争いをするわけだが。 「ぷっはー!うめー!」 「夏場はこれに限るよねー…」 くだらない喧嘩も、この夏を乗り切る心強い味方を口にすればすっ飛んでしまった。薄い褐色の凄い奴。 温いと微妙な味のそれも、夏場でキンキンに冷えたその飲み物に敵うものはいない。それが麦茶。 夏に無性に飲みたくなる飲み物の代表である。 「あはは、まぁ…この花屋が人こないのはほんとなんだけどね」 騎龍親子が営むこの店はお花屋さん。尤も、客は殆ど来ないのだが… 「…おいおい、どうやって店持たせてんだぁ…」 タケゾーは心底呆れたような顔をして言った。 「大丈夫よ~?企業とかがまとめて買っていったりするし、そもそも固定の顧客さんが居るからまず 食いっぱぐれることはないの」 タケゾーの背後から、焔の母親がニコニコとタケゾーの疑問に答えた。大抵の花屋はそんなもんだろうと 妥当なところである。 店の表のベンチに腰掛ける三人。本日は晴天なり、曇のない一面の青が空という天井を覆い尽くす。 道行く人々を見てみると皆、角があったり獣耳があったり。今となっては人間種以外がこうして街を歩くのも 珍しい事じゃない。 パキパキと、コップの中の氷が溶け音を立てる。溶けて小さくなった氷が、上に乗る氷をささえきれなく なってカランと音を立てて褐色の水溜りに着水する。 「今日さー、体育の授業の時ふと思ったんだけどよ」 「たまに『ブルマ下に履いてるからスカートめくられてもはずかしくないもん!』みたいなのあんじゃん?」 「うん」 「俺にしてみりゃブルマもパンツも変わんない訳よ!だからあれおっかしいとおもうんだよなー!」 タケゾーはアホみたいなことを言い出した。カナミはまた始まったと言わんばかりにタケゾーから距離を置いた。 「そもそもよ、ブルマなんて、紺色のパンツじゃねーか!ブルマだから恥ずかしいくない! っていう自信はどっから来んだよ女子諸君!!」 「いや…そんな事聞かれても…ねぇ、ほむっち」 「た、たしかにそうだ…!!」 「いやいや、何真に受けてんのさほむっち。それを認めたら、体育の時間私達みんな パンツ一丁で授業受けてることになるんだけど」 「え…違うのか?」 「違うわ!お前はどういう目で体育の時間女子のこと見てんだ!」 「…そんなの…年頃の男子にきくなよな」 「キモ!顔赤らめるなキモイ!」 「キモイとか言うんじゃねぇよ!体育の時間パンツ一丁で授業受けてるお前の方がよっぽどキモイわ!」 「だから違うって!」 「え…カナミちゃんパンツ一丁で体育の授業うけt」 「あーもー糠に漬けんぞお前ら!!」 カナミは自分の周りの人間がアホしかいないことに絶望した。 「あ…ちょっと待て。これって、パンツじゃないから恥ずかしくないもんってアレの原理と同じなんじゃね!」 「それだよタケゾー!」 「…二人とも…ホントバカ…」 だがそのバカさ加減があるから、見ていて飽きないのだ。 「夏だなー」 「夏だねー」 「そんな事は言わなくてもわかってるよ二人とも馬鹿みたいに口開けて馬鹿みたいに当たり前のこと言わなくていいから」 「ばかばかうっさいわばーか!ヴぁーか!」 夏になると「夏だねー」って言ってしまうのはなぜだろう?春や秋は桜や紅葉した木の葉を見なければ 季節を実感することなどできないというのに。やっぱり気温か。暑けりゃ夏になるわけだ。そりゃちょっと 待ってくだしいお天道様。外国じゃ冬に水上スキーをできる国もあるわけで、とまぁ何が言いたいかと言うと 日本の四季って素敵よねってことであり。 「つうかもうすぐ夏休みかー!」 「そうだけど?」 タケゾーが思い出したように言う。夏休みといえば子供達にとっては楽しいこといっぱいの大型連休である。 海に山に。祭りに花火に。ぼっちの心を抉るイベント盛り沢山である。 「なーつーやすみはー、やっぱりーみじかいー♪」 「焔まじやめてその歌、まだ夏休み始まってないのに終わった気分になる」 「ポッンキッキで毎日のようにながれてるよ?」 「ポンッキッキだし!」 「いや、二人とも違うから」 「PwwwwwwPwwwww」 「Pちゃんの真似すんな!」 「いっぽんでもwwwwwにんじんwwwwwww」 「ぴwwwぴぴぴぴwwwwwぴーかそもwwwwだヴぃんちもwwwwww」 「コキャ(タケゾーの首を捻る音)」 「あばばばばばばばば」 「…ってぇー…」 首の具合を確認するように首をゴキゴキと鳴らすタケゾー。 「自業自得だし」 「んだとカナミィ…!こっちは危うく天国のおっぱいが見えるところだったんだぞ…」 「ちょっと言ってる意味がわからない」 「天国にいる誰かの脱衣してておっぱいが見えそうだったんだよ…くそ…あとちょっとで…!」 (駄目だこいつ…早く何とかしないと…) カナミは心の底からタケゾーの頭を心配した。幼い頃からどつきすぎたかなぁ…なんて考える カナミであったが、恐らくそれは関係ない。 ………………………… 「あっ、わんちゃん!」 焔は立ち上がり、ある一点を指を指す。そこには暑さに負け、ゴロンと地べたに寝っ転がる雑種犬がいた。 冬は元気に庭駆け回る犬も、夏の暑さの前にはかなわない。照りつける太陽光の前に為す術も無く ただただ身を焦がす。焔は犬は毛に覆われているから自分達の数倍は暑いんだろうなぁと思った。 そしてただ見てるのも可哀想なので麦茶を少し分けてやった。 「わー、よくのむねー!」 「よっぽど喉がかわいてたんだーこのワン公」 「わんわんお!わんわんお!」 「お?元気になった?」 「わんわんお!」 「きゃあ!?」 元気になった犬は焔に飛びつき、馬乗りのような状態になる。その感謝の気持ちをぺろぺろと 舐める事で伝える。 「やん!くすぐったいよぉ~」 (今の声なんかエロい…) 「おい何鼻の下伸ばしてんだカナミ」 いつの間にかカナミの背後にいたタケゾー。驚いたカナミはビクっと肩を震わす。 「別に、鼻の下なんか伸ばしてないし!」 「どうせエロいことでも考えてたんだろ」 「た、タケゾーと一緒にしないでくんない?」 「俺はちゃんと女性器のことしか考えてねぇよ」 「何がちゃんとなんだよおい」 「つーか、この焔と犬…端から見たら獣姦に見えないこともねーよな…獣姦ワッショイ!」 「おまわりさーん」 「くぅーん…」 「なんかいついちゃったね、この犬」 「ただ単に日陰に寄ってきただけだろうけどなー」 三人の座るベンチのとなりで、だらしなく横たわる先程の雑種犬。見ているこっちまで力が抜けて しまいそうなだらけっぷり。癒し系である。脱力系アニマルと言うのは、どうしてこうも愛らしいのか? それは簡単な事。動物とは普段本能的に何に対しても警戒を怠らないものである。特に犬なんてものは 元々狼の血筋な訳であるから尚更である。そんな動物たちが無防備になるそこに何かがあるというか… わかりやすく言うと「ギャップ萌え」である。 「くそこの獣姦未遂め…焔を獣姦するのは俺が先だいうのに…あぁ母乳飲みてー…ウヒヒ…」 タケゾーが何かブツブツ言っていたがカナミは聞かないようにした。 『ネコニャンダンスネーコニャンダンスーネコニャンダンスー♪(デレデデッテレ)』 「あ、カナミちゃん携帯鳴ってるよ」 「あ、ほんとだ」 「今時の小学生は生意気にも携帯なんぞ持ってんのか、全くエロ動画落とすことしかしないクセに」 「うっさいわタケゾー!…えー…スタンディバーイ」 「・・・・」 「・・・・」 「早く出ろよ」 「あたしがボケるとこの仕打なんなの」 「わかるよ!555のデルタの真似だよね?」 「やめて!ネタ解説とか一番きついからやめて!」 「いいから早く出ろよベント」 「言われなくてもわかってるベント」 「…で、何の電話だったんよ?」 「なんか『虹の根元って触れるんですかぁ?』ってだけ言われて切られた」 「…彼は今何をしているのだろうか?」 「知り合い?」 「しらねーよ」 「タケゾーって言葉のキャッチボールする気ないよね」 何をする訳でもなく、暇を持て余す三人。僅かな風も、この暑さでは熱風でしか無い。 地球温暖化だ何だと根拠もなく騒いでいる連中の話をホイホイ信じてしまいそうな暑さだ。 そんな暑さだから、外出する者も殆どいなくなった。誰もいない街中。都心から少し離れたこの街は、 そこまで田舎というわけではない。地方都市程度の栄え具合か。近くに海があって、塩の香りがする 良い街だ。三人ともこの街が好きだった。もし自分達がこの街以外に生まれていたら、 きっと碌な目にあっていないだろうと理由もなくそう思っていた。 ふと、この炎天下の中、一人のがたいの良い男が歩いているのが見える。何やら色々荷物を抱えているようで辛そうだ。 「おーおっちゃん辛そうだなー!どうしたん?オナ禁してんの?」 タケゾーが男に声をかける。あんまりにも辛そうな顔をしていたのでつい声をかけてしまったようで。 「ん?あぁー…ちょっと何か、飲むもんはねぇかな嬢ちゃん達」 「麦茶がありますよ、どうぞ」 焔はコップに麦茶を注ぎ、男の元へと持っていく。男は「ありがてぇ!」とぐびぐび麦茶を一気に飲み干した。 豪快な飲みっぷりだ。顎に飲み零した麦茶の雫が伝う。雫が垂れそうになったところを男は腕で拭い、 焔に感謝の言葉を述べた。 「いやぁ、悪いなぁ嬢ちゃん達。こんな見ず知らずのおっさんに飲み物を恵んでくれるなんざ… 最近の若者も捨てたもんじゃねぇ…」 「いえいえ、こんなものでよければ…お役に立てて嬉しいです」 「へへ…俺はね…割れ鐘ゴンドーっつー名前で噺家をしてるモンなんだがな、 お礼に一つ、小噺でも聞いてみてくれないかい?」 「ほんとーですかぁ!噺家さんだってカナミ!タケゾー!」 「ほぇー」 「聞いてやらんことも無いぜ!」 「おうおう。じゃあ一つ御咄を……語りはあっし、割れ鐘ゴンドーが努めさせていただきやす…」 ………………………………… 「…てなもんで、この話は終りでごぜえやす…」 「わー凄い」(ホントは微妙だなんて言えない) 「なんていうか…あんまり面白く無いですね」 「わー!ほむっち何本当のこと言ってんの!?」 「おまえもおまえも」 「ハッハッハ…正直な嬢ちゃんだなぁ~!」 男、ゴンドーの口からは軽い笑いが出てくる。焔の言葉にショックを受けるかと思いきや、 案外本人も自覚しているようだった。 「まぁ、今んとこはつまんないけどよ?おっちゃんはこれから仲間をた~くさん集めて。一座を開く つもりなんだ。一座が形になった時に俺の話、聞きに来てくれよ。そんときゃたっぷり笑わせてやる。 覚悟しとけよ~?」 ゴンドーは自信に満ちた笑みを浮かべて言った。 「そうだったんですか…あ、そうだ」 焔は店の中へと引っ込んでいく。数分後、店から出てきた焔の手に抱えられていたものは、ピンク色の 花びらが内側に向いて曲がっている花だった。 「嬢ちゃん…これは…?」 「ルピナスの花です。花言葉は『多くの仲間』…沢山のお仲間ができるといいですね?」 「おお…あんがとよ…嬢ちゃん…!」 「ほむっちやる~!」 花を受け取ったゴンドーは、三人に別れを告げた。そして、またこの炎天下の中を進んでいく。 ゴンドーの旅路は明るいものであった。まだ見ぬ仲間に希望が溢れている。ゴンドーの足取りは、 心なしか先程よりも随分軽くなった。 「にしてもさっきのほむっちの粋な計らいには感動したよ」 「ほんとほんと。焔は頼れる姉って感じだよなぁ~」 「何で姉なのかな…?」 「あれ、なんでだろ?」 …………………………… 「いらっしゃませこんにちわー」 「こんにちわ」 花屋に珍しい来客だ。黒く美しい髪…陽の光にあてられずに育ったのかと言うほど白い肌。 そんな美女が店内へと入っていった。 「…今の人、凄いべっぴんさんだったねー」 カナミが珍しいものを見るような目で店内を覗きつつ言う。同性の目から見ても美人…なのだろうか? 「でもあんまりペロペロしたくなるような顔じゃなかったな。キリッ」 「タケゾーはもう黙ってた方がいいよ」 「何者にも俺の自由を止める権利は…ない!」 「法に抵触したら嫌でも止められるだろうけど」 「童貞捨てるまで俺は死ねない…!」 「キモイわーこの人」 「あはは…」 さすがの焔も若干引き気味であった。 「すみません」 ここで店の中から先程の美女が出てきた。 「どうなさいました?」 これでも店の人間である焔は美女に応える。 「あなたこの店の方ですよね?」 「はいそうですよ?」 「花を…選んで欲しいのです」 「へぇ…親族の方に会うんですか…」 「そうです。たくさんいますから、たくさん買わなくてはいけません」 美女の名前はかぐやといった。何でも全国にちらばる親戚に会うため徒歩で旅をしているそうだ。 因みに彼女ではなく彼だった。 「徒歩で…大変ですね…」 「大変です。けど苦ではありません。会いたいですから、皆に」 「…それじゃあ私からもこれを」 焔は山茶花をかぐやに手渡す。 「これは、山茶花ですね」 「困難な旅になるでしょうけど、それに打ち勝ってください!…って願いを込めてみました」 「…ありがとうございます。有り難く、受け取っておきましょう」 かぐやは花を受け取り、花束に加える。そしてそれをレジに持って行き、会計を済ませると 焔に軽く会釈をして、店のドアのノブに手を掛けた。そして去り際に一言、こう言った。 「お互い、色々苦労しましたね。では、さようなら…」 「…?」 焔はその言葉の意味を理解することはできなかった。意味深な言葉だったので…頭の中には強く残ったが…。 「えー!?さっきの人男だったのォー!?」 「うんそうみたいだよ」 タケゾーとカナミは酷く驚いているようであった。 「世の中には不思議があるもんだ!ねぇタケゾー」 「おち○ちんありでも私は一向に構わんッッ!!」 「あ、そうかこいつ何でもイケる口だった」 「俺の自慢の同田貫とおちんチャンバラしてほしかったなぁ…たのしいだろうなぁ…」 「なんだおちんチャンバラって」 「そりゃおまえ、おちんp」 「ああわかったから。もうそれ以上言わなくて良い」 「股間にフォースが集まって俺のライトセイバーはダークサイドに落ちちまった…だと!? う、うそだあぁぁぁぁーーー!!助けてケノービ!」 「 黙 れ !」 常識的に考えてケノービじゃなくてオビワンとよんでやれと思った。 ……………………… 日が落ちる。時刻は6時を過ぎた。気温が下がり、暑さも和らぐ。 赤から青に変わる黄昏の空に哀愁漂う街の情景。そろそろ街灯に明かりが点り、街は夜の姿へと 衣替えすることだろう。 タケゾー達もそれぞれの両親が待つ家へと帰ることにする。帰れば何てこと無いいつも食べてる母親の作った夕飯とロードショーで毎年やるラピュタとか、時かけとかが待っていることだろう。 「じゃあな焔!また明日ー!」 「ほむっちじゃあね~」 帰路へつく二人を見送る焔。街中へ消えていく二人を確認すると、焔は一人、店のベンチに腰掛けた。 「あぁ、なんだか…充実した一日だったなぁ…」 今日やった事といえば、カナミ達とくだらない話をして、ゴンドーに麦茶を差し入れ、そのまま噺を聞いて、 かぐやの花を選んで…って結構色々やっていた。 「…でも…なんだろう…?」 「…この、何か物足りない…何かが足りないような…そんな感覚…」 焔の今はとても充実していた。充実しているはずだった。 にもかかわらず、心にポッカリと空いた大きな穴。焔はこの穴の正体がわからないでいる。 「私は…」 ―誰か大切な人を…忘れている気がする…― 「…?何でこんな事を…?」 この世界とは全く逆の、悲しい世界の事など、この焔は知らない。当然…”彼女”の事も知るわけがない。 「…わからない…わからないけど…」 あるはずのない記憶など、思い出せる訳が無いのである。 「この世界で生きてるからね、私達は。元気にやっているよ?」 私の、大切な…――へ… 「…って、誰に言ってるんだろ…」 焔は店の中へと入っていく。花屋はまだまだ営業中。次の客をただ、静かに待っていた。 潮風が吹く、この街で。 ―…これは、誰かが願った夢の続き。 ―…誰かが望んだ、世界の物語。 次回予告 …さて、来週の正義の定義は…! ―「ただいま戻りました、第二英雄…王鎖珠貴」 ―『私は、この人の事…知ってる気がするな…』― ―「…おまえがななばんめですか…?」― ―「…私に構わないで。邪魔」― ―「ヤツが開発した…通称"フュージョンデバイス"…」― ―「あなたの意思は、私が継ぐって決めたのに…!」― ―「正義って、なんだろうね…?」― ---- 次回・正義の定義 第七話 「12人の英雄」 消されるなシェアワスレ 忘れるなその投下 #right(){&link_up()}