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☆-3-004 - (2010/12/29 (水) 01:08:07) のソース

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* 投下作品まとめスレ3-4〔3-185~   〕

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185 :創る名無しに見る名無し:2010/11/17(水) 12:02:45 ID:5GKARDmp

「明日、文理選択用紙の提出だぜ。お前どっちにすんの?」 
Tは横のせきのRに聞いてみた。Rが文系を選択していることは知っていたが声をかけた。 
「文系にしたけど。」 
透き通ったアルトの声。Tはこのアルトがすきだ。 
Tは音に詳しくない。だからアルトもソプラノも違いがわからない。しかしRの声だけはアルトだとわかった。 
「生物とってるコはほとんど文系よ?考えるだけバカね」 
「馬鹿野郎、将来に関係することなんだぞ」 

「あー」 
無人の体育館に声が響く。 
Tは将来何になりたいのか、考えた。 
小学生3年からTはバスケをはじめた。その頃はNBAの選手になりたかった。というよりなれるだろうと思っていた。 
中学に入ったバスケ部では自分がNBAになれないことを知った。
最終年レギュラーにはなれたが、Tは明らかにその中では1番下手だった。それをT自身も気づいていた。 
高校でもバスケをしている。 
決して強くない部だが、Tは最終年レギュラーになれるかわからないくらいの実力だ。 
そういいつつTにはバスケしかないからいまもこうしてシュートをうつ。やっぱり、Tはバスケがすきなのだ。 
ガン、とリングにあたり外してしまった。 
「お前、文理選択どうすんの?」 
後ろからそう言ったのはKだ。Tと同じクラスで部活も一緒。 
Kは身長もありバスケの技術もトップクラスで2年にまざってレギュラーを張っている。 
また、ひいき目なしにもコイツと1番仲がいいとTは思っている。 
「今イロイロ考えてんだよ。Rのやつ、考えるのが馬鹿とか言いやがった」 
ぱしゅ、今度のシュートは入った。 
「ハハハ。Rちゃんはお前のことお見通しなんだな。ちゃんと考えないと、なんて言ったらお前テキトーに考えるもんな」 
Kはふんふんと頷きながら言った。 
「そんなんじゃねーよ」 
確かにそうだと思ったけど、うんと言うのは悔しかった。 

翌日、先生の乗る電車が遅延したため1時間目は自習だった。 
「何やってんだ?」 
Tはノートを凝視するRに問うた。 
自習の時間Rが勉強しているところをはじめて見たからだ。 
「いや、なんでもないの」 
Rは表紙が虹色のノートをサッと机の中に隠した。 
吸い込まれそうな虹色だった。 
「で、T。あんた文理どっちにしたの?」 
Rは平然を装いTに質問した。 
「あぁ、文系だよ」 
Rはホッとした表情を浮かべた。 
「来年も同じクラスなれるかもね」 
予想外のRの言葉にTはあぁとしか返せなかった。 

放課後のバスケはいつもより楽しかった。進路のことが少し決まりラクになったのかも知れない。 
部活がおわり水道で顔を洗っているとKがTに声をかけた。 
「なぁT、おれRちゃんがすきだ」 
「おれもすきだ」 
Tは反射的にそう返した。 
「悲しいけどさ、Rちゃんも多分、Tのことがすきだ」 
Tは1番信頼しているKの言葉で決心した。 
Rが所属する水泳部が使う室内プールにはまだ明かりがついていたのでTは教室に来いとメールをして着替えた。 

「や、待たせたね」 
Rが髪をタオルでガシガシ拭きながら教室に入ってきた。 
「R、おれ、Rのことがすきなんだ。つきあってくれ」 
Rはエッという表情をしてしばらく黙り込んだ。 
そしてうん、と呟いて机の中からあの虹色ノートをとりだした。 
「T、これをみて。」 
ノートにはTがたどってきた人生がびっしり書いてある。 
しかし、今日の日付で文系を選ぶと書いてある下には何も書いていない。 
「わたし、未来から来たの。あなたの未来をかえるため」 
Tは本気で夢だと思って自らの頬をつねったが嫌な痛みが残るだけだった。 
「T、あなたは死ぬのよ、22歳で。原因は言えないけど。だけどあなたは死んではいけない人だった」 
Tは、死ぬと言われてもさっぱりRの話が理解できないが自分なりに考えてRに聞いた。 
「つまりはおれに死なせないためRが来たのか」 
「そうよ。だけどね、この先が消えているの」 
Rは心配そうな表情で言った。 
「おれさぁ、告白したんだけど」 
Tは続ける。 
「おれが告白したから、未来がかわったんじゃないか?それで未来がかわったからもう帰るとか言わないでくれよ」 
Rは切れ長の目で正面からTを見て言った。 
「わたしは未来が変わろうと変わらまいとこれからもこの世界で生きるわ。死ぬまで。わたしもTがすき。」 
TはRの顔を見ず、正確には見れずありがとうと言った。 

廊下の壁によりかかり虹色ノートをもった背の高い男はフフッと笑った。 
「わりぃなT。Tのことは大好きだ。だけどお前に死んでもらわなきゃおれは生まれないんだ。」 

189 :創る名無しに見る名無し:2010/11/18(木) 21:44:34 ID:VUHQA69y
つまらないかもしませんが 

「忘れたいこと」 
長年の研究の結果、エフ博士はようやく忘れたいことを忘れさせてくれる薬を完成させた。 
「俺が若いときさんざんいじめてきた、エヌ教授、おれを侮辱した同僚のエス、俺を振ったオー、俺を不快にさせた奴の記憶をすべて忘れるのだ。」 
エフ博士はそういって、その薬を飲みました。 
「ほう、これはなんともすがすがしい気分だ。やっと不快な記憶から解放された。こんな薬を一人占めするのはよくない。 
どれ、あいつらにも分けてやろう。」 
エフ博士は友人に電話をかけました。 
「やぁ、きみか。かくかくしかじかの薬を開発したんだが、ためしてみるかね?」 
「なに、そんな薬を…。ぜひ、頂こうか。」 
こんな具合に博士は次々と友人たちに薬を分けてゆきました。 
   1週間後 
「ふむ、退屈だ、なにか面白いことは…。そうだ、久々にあいつらと飲みに出も行くか。」 
エフ博士は電話をかけはじました。 
「やぁ、エフだが。どうだい、久しぶりに飲みにでも行かないか?」 
「どちらさまでしょうか?いま忙しいのですが…。」 
「おい、きみ、冗談はよしたまえ。エフだよ、エフ。」 
「エフ?申し訳ありませんが、エフという名は記憶にありません…。人違いではありませんか?」 
「もういい、なんとふざけたやつだ。大学時代からの友人に対して失礼にもほどがある。」 
怒り心頭のエフ博士は別の友人に電話をかけました。 
「やぁ、きみかね。エフだが、どうだい、今晩一緒に飲もうじゃないか。」 
「エフ?いったい誰?」 
「きみまでそんなことを…。」 
エフ博士ははっと気付きました。 
「まさか、あの薬で…。」 
その後もエフ博士は友人に電話をかけてゆきましたが、誰一人としてエフ博士のことをおぼていないのでした。 
「まさか、友人とばかり思っていたあいつらのわすれたいことが俺自身だったなんて…。こうなったら…。」 

「エヌ教授、聞きましたか、エフ博士のこと…。」 
「ああ、記憶喪失だそうだな。エス君、きみとエフ君とは大学時代から互いに切磋琢磨して研究に取り組んできたから、辛かろう。」 
「エヌ教授こそ大学時代にあれほど熱心にエフ博士を指導してきたのですから。」 
「オーさんもひどくショックを受けてるそうだね。」 
「しかし、エヌ教授、エフ博士と仲良くしていた連中がだれもエフ博士のことをおぼえていないというのですが。」 
「妙な話だが、その程度の間柄だったというこどだろう。」 

191 :創る名無しに見る名無し:2010/11/19(金) 17:33:33 ID:icEZuwXQ
「夏の少女」 

その少年は治療薬のまだ見つかっていない重い病気にかかっていた。

そして調度夏休みになろうとしていた頃、病状が悪化してしまい、郊外の静かな場所にあ
る病院に入院をしていた。

1日のほとんどを、友達とも遊べず病院のベッドで過ごす辛い日々であったが、気分転換
のために午後はよく散歩に出かけることにしていた。
夏の美しい花や木々を見ることで華やかな気分になり、日々の憂鬱な気分も解消されるの
で少年はこの散歩が大好きであった。 

ある午後いつもの散歩に出かけていると、山道で足を踏み外してしまい急な斜面から転落 
してしまった。
どれくらい意識を失っていたのだろうか。気が付くと辺りは既に濃い夕闇 が迫っていた。
何十メートルという斜面を滑り落ちたのにも関わらず、幸運なことに怪我はかすり傷程度
であったらしかった。

ふと少年が気付くと、側にとても綺麗な女の子が居た。
年は同い年か少し年上くらいだろうか。
 
「大丈夫なの? あなたを見つけたからここで気付くのを待っていたのよ」 
「うん、大丈夫。でも早く病院に帰らないといけないよ」 

少女は優しい笑顔で、「心配しないで、私に付いてきて」と言って病院までの道を導いてく
れた。 
別れ際に少年は「また会える?」と聞いてみた。 
彼女は「うん、私もよくここに散歩に来ているのよ」と笑って答えた。 

少年はそれ以来、少女と遊ぶようになった。
少女と出会って以来、以前とは見違えるほど彼は元気になっていった。
それまで友達と遊ぶことも出来ず、厳しい闘病生活を送ってきた少年にとっては生まれて初め
て感じる幸せだった。
医者は信じられないといった様子であったが、症状が改善したのでもう退院してもいいと言った。
しかし彼は少女と離れ離れになるのを寂しく感じ、まだ病院から退院したくない気持ちであった。 


ある夜、少年がベッドの上で寝付けないでいると、窓の外に人影を感じた。
乗り出してよく見てみると、遠くから少女がこちらを見ているようであった。
少年は急いでベッド から飛び降り病院の外に出てみたが、辺りに少女の姿は見つけられなかった。
少年は気になって彼女の名前を読んでみた。

すると遠くで何か手招きをしているような彼女の姿を見つけた。
彼は少女の後を追いかけ、どんどん森の奥に入っていった。しばらく歩くと、また彼女の姿が見え
なくなった。どこに居るのだろうと彼は辺りを見渡してみた。 

すると以前この場所に来たことのあるような記憶が蘇ってきた。
そうだ、あれは彼女と初めて会った日、自分が足を踏み外し転落してしまった場所であったと少年
は気が付いた。
 
目を凝らしてみると、誰か2人の人影が近くに居るようであった。
よく見てみると、一人は彼女であった。

そして側に横たわって動かないもう一人、それはあの転落した時の自分自身の姿であった。

その時急に体が軽くなるような感覚を感じた。

少女が少年を導くようにゆっくりと手を差し出してきた。
彼は幸福と優しい愛に包まれるのを感じながら彼女の導く光の中へと入っていた。

195 :創る名無しに見る名無し :2010/11/22(月) 00:10:09 ID:BHhv7IQE
「幸運な侵略者」
 
地球に巨大なUFOが飛来した!全世界がパニックに陥た。

全人類がUFOに乗っているのは黙示録の悪魔なのか、光輝なる訪問者なのか?
湧き上がる希望や恐怖を胸に抱き固唾を呑んで様子見をしていた …

そしてUFOの扉がゆっくりと開く…奥に人影が写る、全世界がTV中継する中、一人の宇宙人が歩いてくる… 
着ている服(?)こそエキゾチックで奇抜なイカニモな宇宙人だが、外見は普通の人間だった。
 
しばらくして、宇宙人と人類との貿易も活発に行われる様になっていた。
宇宙人の製品はなぜか特段発達している訳ではない、だが不思議な安らぎ感を呼び寄せるらしい。
宇宙人はなぜか皆おっちょこちょいでドジっぽかった。数年後、そしてとうとうその日は訪れた。 

宇宙人『私達は母星に帰らねばなりません《中略》今まで本当にありがとう!さいなら!』 

はじめは不審がっていた連中もこのスピーチを聞き終わる頃には皆、涙を流して感動しその別れを惜しん 
でいる。彼らの残したモノは計り知れない恩恵を人類に与えてくれたのだろう。
製品の使用者達は口々にこう言っている 

『何か暖かくて優しく偉大で器の大きな存在に魂が吸い寄せられるような安らぎを覚える』 

と…そして宇宙人達は決まって雀の涙程の僅かな報酬しか受け取ろうとしなかった。
それでは悪いので何かさせてくれと言うと

『ではこの日の幸運を全ての人類の皆様から感謝を込めていただきます』

等と言うばかりで何も受け取ろうとしなかった、何と無欲な人々だろうと人類は感心するばかりだった。
そんな良き隣人と別れねばならないのだ悲しいに決まっている。全世界が喝采を浴びせながらUFOを見送った。 

数ヶ月後… 

世界中の銃が一斉に暴発を始め各国の危険国境地帯で紛争が再燃!

同時に世界中の電子機器が誤作動を起こし軌道計算を誤った各国の人工衛星が玉突き衝突して、その内の幾つ
かがジャングルに墜落し大規模な森林火災が発生!
耕作地にも燃え広がり大飢饉と原因不明の疫病も大量発生!

同時に大地震と大津波が世界で同時に発生し地盤沈下で道路もメチャクチャに交通事故・二時災害が多発! 

更に世界中でテロリズムが蔓延し紛争が拡大、世界大戦への恐怖からか大恐慌と大暴動が世界を覆う。 

まるで幸運の女神の一族が大挙して地球から夜逃げでもしたかの様な世界…そして、しばらくすると 
学会の権威であるif博士がとあるショッキングな仮説を提唱した。 

if博士『…確率…つまり幸運…信じがたい事にそれらを…何というのか、その…何というか… 
    簡単に言うと「奪い取って」しまうテクノロジーが存在しているのです…きっとそれ 
    はあの宇宙人達に与えられた安らぎ製品が皆さんの幸運をUFOへと吸い上げていたの 
    ではないでしょうか?』 

助手氏『一部で、この説は非常に話題になったのだが、学会講演の前日にif博士は強盗に襲わ 
    れて帰らぬ人となり、犯行直後偶然にif博士宅落ちた雷によって強盗もろとも全焼し、 
    論文も灰燼に帰してしまったのである。 そろそろ私も海外へ逃げなければ…博士 
    の推論が正しければアトランティス地方が水没するのも時間の問題だろう。』
 
199 :創る名無しに見る名無し:2010/11/29(月) 19:51:52 ID:O54gqxFT
過疎っているみたいなのでクオリティ低くても投下 

ダイエット  

ある国では肥満が深刻な問題となっていた。いわゆるメタボリック・シンドロームというやつである。
老若男女問わず不健康な食生活をしており、このままでは有能な人材や労働者がすぐに病で死んでしまうであろうから、この状況の改善は急務であった。 

その国の国王は家臣を集め会議を開くことにした。 

「諸君、今日集まってもらったのは、我が国の国民の健康問題に関してである。なにかいい策はないものだろうか?」 

とはいうものの、個人の健康管理の問題であるため、国が管理するなどということは困難であり誰もいい改善策が浮かばなかった。 

そこに、何者かが国王に謁見を求めてきた。なんでも国民のメタボ体質を改善する装置を開発したという。 

国王は早速その者に会うことに決めた。 

「やぁ、やぁ、これはこれは、国王。私はエフと申す者でしてこのたびは国王が国民のメタボ体質に頭を悩ませていると伺いまして…」 
「前置きは結構だ、さっそくその装置を見せてもらおうか。」 
「もちろんでございます。」

そういってエフと名乗るものはなにやら時計のようなもの取り出した。 

「なんだ?これは。ただの時計じゃないか、こんなものがなんの役に立つというんだ。」 
「いいえ、これはただの時計ではございません。これを身につけていると、自分がいつ本当に空腹を感じているかや腹八分目食べたことが分かるのでございます。」 

「そんなことで、国民の体質が改善できるのかね?」 
「効果は保証しましょう。太っている多くの人間というのは真の空腹感というのがわかっておらず、無意味に際限なく食べているのです。
 この装置によって空腹感や腹八分目が意識されることで食生活は規律あるものとなり、体質を改善できるのです。実際に先進国のA国でも効果をあげているのです。」 

「まぁ、何もしないよりはましかもしれぬ。よし、早速、その装置を普及させよう。」 
「そのことなのですが、国王。私は実はT会社の研究員でして…。本日国王にお会いした理由というのはこの装置の効果を説明するためとこの装置の販売許可をいただくためなのです。」 

「なんだそんなことか、かまわん。さっさと販売開始するがいい。」 
「本当によろしいんですね?」 
「かまわん、なんなら国を挙げてこの装置を宣伝してやろう。」 

その日からというものテレビでは大々的にこの装置のことが報じられ、コマーシャルには国王自ら出演するなど、あっというまにこの装置は普及していった。 
効果は素晴らしいものであった。国民の食生活は改善され、体脂肪率はみるみる減少していった。 

この素晴らしい効果には国王も大喜びであった。しかし、喜んでいる国王のもとに多くの人々が訪ねてきた。 

「国王、あの装置は一体どういうことですか。」

やってきたのは主にジャンクフードやお菓子などを扱う会社のものたちであった。 

「何だ貴様らは、いきなり。無礼だぞ。あの装置は素晴らしい発明品だ、なんの文句があるというんだ。」 
「わたしたちは食品会社の者なのですが、あの装置が普及してからというもの商品の売り上げが激減して参っているのです。」 
「なに?そんなことが…」 
「ええ、このままではわたしたちは会社をたたまねばなりません。」
 
国王は頭を悩ませたが、どうしようもないことは分かっていた。 

「ひとつの会社がおおきなせいかをあげれば自然別の会社は淘汰される運命にあるのだ、すまないが我が国ではお前たちの会社の経営は不可能だろう。
 どこか別の食に困っている貧困国にでも行ってみるのはどうだろう?」 

国王の支援をうけてその食品会社は貧困国に市場をもとめた。
はたして、経営はうまくいった。安価に原料を仕入れ、安く栄養価の高い食品を提供してくれるこの会社は大きな利益を上げた。 

その会社の経営者が嬉々としている他方で、その貧困国の国王は頭を悩ませた。国民の健康が問題となったのである。 

そこに何者かが国王に謁見を求めてきた。 
「わたしはエフというものですが…、~という装置を発明いたしまして…。」 

市場を巡るレースは今も続いている。 

203 : ◆Qb0Tozsreo :2010/12/06(月) 10:00:03 ID:O0uiubpt
 『未来裁判』 

 遠い未来。人工減少に歯止めがかからない人類は、ロボットと共存する社会となっていた。 

 とある裁判所。 

「これは正当防衛じゃないか! 情状酌量の余地があるはずだ」 
「人間を殺したのよ。死刑に決まってるわ」 
「彼の記憶装置からは殺した記憶が消去されていない。十分反省しているとみてよいのではないだろうか」 
「このまま無駄に人間が減っていってはたまったもんじゃない! 見せしめとして死刑にすべきだ」 
 老若男女、人間とロボットの入り交じった裁判員たちは熱い議論を重ねていた。 

 そして……。 

「判決!」 
 法廷内には裁判官の甲高い声が谺した。被告人、弁護人、検察官、傍聴席の遺族、皆が固唾を飲んで裁判官を見つめている。 
 裁判官はひとつ小さな咳払いをしてから、判決文を読み上げた。 
「……被告人に無期充電禁止を処する」 

206 :創る名無しに見る名無し:2010/12/08(水) 08:39:55 ID:qx7u7c5V
『夢』
 
ある若い大学生がいた。彼は自分ではいつか何か大きなことを成し遂げようと思いながらも実際には何か努力するわけでもなく昼は漫然と 
大学に通い、夜は仲間と飲み歩くという生活を繰り返していた。 
しかし、彼ももうじき就職活動を始めねばならない年になっていた。周りの仲間も最近は遊ぶのをやめ、せっせと就活の準備を始めていた。 

「なぁ、今日飲みに行かないか?」と彼が誘っても 
「悪い、もうそんな場合じゃないんだ。お前もそろそろ準備しないとあぶないぞ。」と断られる。 

「はぁ、つまらない奴だ。何が就活だ。毎日、毎日会社に通って、上司に頭をさげる、操り人形の生活のどこがいいんだ。俺は違う。いつか大きなことをして見せる」 
彼はそう思うのだが、もちろん何をするわけでもなかった。 

そんなある日、彼がただふらふらと町を歩いていると一つの張り紙が目にとまった。 

「なになに、あなたの望み通りの夢を見せる枕あります。ご希望の方はエフ事務所までか。」 
彼は胡散臭さを感じながらも面白みを感じ、そのエフ事務所まで訪ねることにした。 

エフ事務所は彼の住む町から少し離れた人どおりのすくない場所にあった。いかにも怪しげで、入る気がうせてしまそうであった。 

「あやしい、気味が悪いなぁ。しかし、ここまできて、尋ねないというのもないものだ。失礼します。」 
彼は恐る恐るエフ事務所の戸をあけた。怪しげな外装とは裏腹に内部は非常に清潔感があり、最新鋭と思われる設備が整えられていた。 

彼がおどいて一言も発せずにいると一人の科学者らしい白衣を着た男が現れた。 

「いらしゃいませ、お客様。私、エフと申すものでございます。今日は、望みの夢を見せてくれる枕をお求めでいらしゃいますね?」 
彼はようやく冷静さを取り戻し「ええ、そうなんですが・・。しかし、これは驚きました。すごい設備ですね。」 
「いえいえ、こんなものはまだ序の口でございます。どうぞこちらへ、枕をご覧に入れましょう。」 

彼が通された場所は真っ白な部屋でそこにもなにやら機械があり、その真ん中にはベッドが一台とその上には何の変哲もない白い枕が置かれていた。 

「さぁ、どうぞ手に持ってこの枕の肌触り、形状をご確認ください。」そういってエフ博士は彼に枕を手渡した。 

彼は手でそれをなでてみたり、顔を当ててみたりしたがどう考えても普通の枕なのであった。 

「あの、これはやはりただの枕なのでは?」 
「誰もが最初はそうおっしゃいます。しかし、断じてこれは普通の枕じゃございません。お試しになられればそれがわかります。」 

エフ博士は彼に横になるよう促しそれで「どのような夢がご希望ですか」と尋ねた。 

半信半疑ながらも彼は「そうだなぁ映画のスターになって、有名になりたいなぁ。」そう答えた。 
「かしこまりました。」 エフ博士はそう言って枕に向かって彼の望んだ夢を吹き込むように言った。 
「これは睡眠薬です 一時間程で目が覚めるでしょう。それではお楽しみください」 


彼はエフ博士が手渡した錠剤を飲み込むとすぐに深い眠りに落ちた。 

夢の中で彼はスターとなり美女とラブシーンを演じ一度彼が通りを歩けば人々は騒ぎ誰もが彼を拍手喝采で迎えちやほやした。 
彼はすっかり有頂天となった。 

「これだ、これこそが俺なんだ。俺はスターなんだ」 彼が叫ぶと不意に辺りは暗くなり 
はっと目が覚めた。 

「どうやら気にいって頂けたようですね。」彼の目の前には先ほどの白い部屋と微笑みを浮かべたエフ博士がいるだけだった。 
「そうかあれは夢か しかしなんといい気分だろう。素晴らしい。ぜひとも買いたい」 

「ありがとうございます。しかしお客様この商品は少々値が張るものでして…お見受けしたところ学生さんでいらっしゃるようですが…」 
彼にとっては痛い事実を突かれてしまった。彼は学生であり当然お金はあまり持 
っておらずしかも就活すらしていないのだった。しかしなんとしてでもこの枕が 
欲しい彼はもはやなりふり構わなかった。「お願いします。分割で払います。どうか売ってください。」 
「そこまでおっしゃるなら…どうでしょう 出世払いというのは?」 
「 それはどういうことでしょう?」 
「ですからお客様がご就職なさってお給料を頂くようになってから代金の方を頂戴するという形を取るということに」 
彼にとってこれは願ってもない提案だった。これでひとまず、枕は手にはいる。 
すぐに就職は決まるだろうしお金はなんとかなるだろう。彼はそう思った。 

家に帰ると彼はすぐに寝支度を整えどんな夢を見ようかあれこれ空想した。 

「どうしようか 夢の中ではなんだってなれるのだからなぁ 政治家 文豪 発明家 英雄 望むがままだ。」 
彼はすぐにこの枕の虜となった。 

しかし彼が唯一気がかりなことはやはりお金だった。 
大丈夫。なんとかなるだろう。すぐに就職は決まるのだ。彼はそう自分に言い聞かせた。 

彼は甘かった。世の中は深刻な不況の中にあり、どの企業も彼のようなものを雇うはずはなかった。 
面接を受けるのがやっとという状況だった。 

「違う、どうしてどこも雇ってくれないんだ。こんなはずはない 違うんだ。」 

厳しい現実に打ちのめされればされる程ますます彼は夢への逃避に陥っていった。 
そうしていつしかこう考えるようになった。夢の中の自分が現実の自分であり現実の自分が夢の中の自分なのだと。 


「残念ですが…」 
「嘘よ、嘘。この子が死んだなんて」 
「いえ、もう亡くなられています。おそらく原因は過剰な睡眠薬の摂取でしょう。」 
「お前、もう認めろ。この子はもう死んだんだ。 
しかし見るがいい、幸せそうな表情をしているじゃないか。」 

「しかし、見事ですな、エフ博士。こんな方法を考えつくとは さぁお礼の方を受けとりください。」 
「いえいえ、それ程でもありませんよ 皆様方も不況でずいぶん苦労なさっているようですね。」 
「そうなんですよ、全く最近の若者ときたらプライドがたかいばかりで雇ってもまぁ使えない。 
そこでこの枕を使って、現実を見ようとしない若者を消すという・・・ 
まぁこれも一つの企業努力ですよ」 

208 :創る名無しに見る名無し:2010/12/09(木) 00:19:02 ID:EoJlVXgV
》207 
色々な点で怖い話ですねー 
便乗で1つ 
 ************************************************ 
『夢』 

「お前誰だ!」 
「俺は俺だ。 お前こそ誰だ!」 
 そこには俺そっくりの男がいた。 
「さてはドッペルゲンガーって奴だな。 
 俺は死ぬのか」 
「ああ、俺もあの傑作を世に出す前に死ぬのか」 
「傑作? お前も何か書いてるのか」 
「死ぬ前に読ませてやるよ」 
 俺そっくりの男が鞄から原稿用紙の束を取り出した。 
「もし俺が書いてるのと同じだったら盗作だ。 
 …何だこれは。 ちっとも面白くないぞ」 
「何だと! お前のも見せてみろ。 
 …これは酷い。 てんでダメだ」 
「こんな物を書くようじゃ死んでも仕方ないな」 
「お前こそ! 
 こうなったら、お前が面白いと思うような傑作を書いてやる」 

「…これは凄い! やれば出来るじゃないか」 
「お前こそ。 よくここまで頑張ったな」 
「早速、出版社に応募しよう」 

 編集者が二つの作品を並べて首を傾げた。 
「おかしいな。 この二人は違う作風だったのに 
 同じように面白くなくなってる。 
 どっちも作家として死んでるな」 
 ************************************************ 
おそまつ…。 

209 :灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM :2010/12/10(金) 03:55:18 ID:yO5h0hMe
》208 
意気投合するころには作風も一緒になってたんですねw 

夢が連続してるので流れに乗ります 
『夢の中での出来事』 

「私は夢の中で原始人を教育しているのです」 
同じバスに乗り合わせた男性と話をしていると、唐突に夢の話が出た。 
「原始人たちと会ったばかりのころは警戒されていたようですが、何度も同じ夢を見る内に私に 
教えを請いに来るようになったんです。火の起こし方や小舟の作り方なんかを教えたときは、飛びつくように真似をし始めたものですよ」 
夢の話といえばそれまでなのだろうが、続きが気になった。 
「原始人たちが学習することを覚えたのですね」 
「ええ、言葉が通じたのが幸いでしたよ。もちろん私が学んでいることしか教えられないので、文化や歴史は我々の先祖が築いたのと同じものを辿っています。 
もっとも夢の中での出来事ですから、私のイメージが彼らにそうさせているのでしょうけどね」 
男性はそのまま話を続けた。 
そこから原始人たちが目覚ましい速度で文明を発展させていったこと。今では原始時代はとうに過ぎ去っていて、長い歴史をもっていること。 
そして昨晩の夢でついに文明的に追いつかれて、教えてやれることが何もなくなったこと。 

「つまり、指導者としての立場にいられなくなったということですか」 
「そうなのです。おそらく今晩の夢からは未来の文化や技術を私が教わり始めることでしょう」 

その晩のこと。昼間に夢の内容を熱く語っていた男性は、枕元にメモ帳を置いてから布団に入った。 
あれほど現実味のある夢だ、もし未来で起こる有意義な発見や発明を教われば起きてすぐ記せるようにと考えてのことだった。 
そして朝まで眠り続け、目が覚めた。 

これはどういうことだろう。しっかり夢をみた気はするのだが、どうにも内容が思い出せない。 
そこで男性は以前、原始人に火の起こし方を教えるときに、ライターを使おうとしたがどこにも見つからなかったことを思い出した。 
夢の中に道具を待っていくことはできないが、持って帰るのはどうやらそれ以上に許されないことのようだ。
 
211 :創る名無しに見る名無し:2010/12/25(土) 00:58:28 ID:LxW98Ygu
「世界一の天才」 

私のファンは私を世界一の天才と呼ぶ…とんでもない!私なんかより 
凄い天才は沢山いらっしゃる!その人達に対して失礼だろう。若い頃 
に見つけた方程式や創った発明品だって殆どが単なる偶然のひらめき 
で得た物なのだ大した事は無い。後、オリンピックで何個か金メダル 
を獲った位で大騒ぎ…まったく、私より優れたアスリートは世界中に 
いっぱいいるのになあ~。皆、私に言わせれば地味なモノばかり…。 
だのに、この地球という星の連中は自分達の無能を差し置きいつも私 
を絶賛しまくる。しまいにゃこの星で最も権威ある文学賞を私が小学 
校の頃に書いた感想文に授けようと言うのだ…まったく、戦争と環境 
破壊しか取柄の無い連中に何を貰っても全然嬉しくないよ…。だめだ 
…こんなゲームつまんないや…。 
僕はため息をつき受賞会場から意識を宇宙の果てにある体に戻した 

そして「地球」を手に取りゴミ箱へと放り投げた。 

212 :創る名無しに見る名無し:2010/12/25(土) 01:36:58 ID:LxW98Ygu
「機嫌」 

僕は船で世界中を旅して回っている…昔、僕が旅に出た頃より 
世界は物凄く様変わりしてしまった。このちっぽけな島でも 
《あの》儀式を行っている。まあ当然だろうな、これをしない 
と世界中どこでも人間の生活は成り立たなくなってしまったの 
だから…機嫌を損ねて沈んでしまった所もあるのだから… 
人類の時代はとうに終わってしまったのだろうか?僕はいつも 
そんな事を考えている。 
皆、深く掘った大穴に肥料やら肉やら水やら料理やらをせっせ 
と詰め込んでいる。その時、『ゴゴゴゴゴゴゴ…』今のはかな 
り大きな地震だった『ひい~』島民は悲鳴を上げて一層真剣に 
作業に励み出す。 

さて、天を見上げ思う… 
…大地に意思が芽生えてもう何年になるのだろうか… 

213 :創る名無しに見る名無し:2010/12/26(日) 16:07:36 ID:vnEPoKgM
ぱんちら 

パンチラが法律で禁止されてから100年後の世界 
多方向展開ホログラム付超ハイテクスカートの 
発明によって人類はパンツを目視できなくなっ 
てしまった!風が吹いても階段の下から覗こう 
とも全力で捲り上げようともホログラムが完全 
ガードするのである!世の男性の不満が爆発寸 
前となったある時。新商品が発明される… 
それは過去類例の無い大ヒット商品となった! 

それはなんとパンツ映像投影ホログラムだったのである! 

214 :創る名無しに見る名無し:2010/12/26(日) 16:56:15 ID:vnEPoKgM
ある日子供が言った事 

「ねえ、お母さん、どうして生き物は生き物を殺して食べるの? 
これって何だかとても残酷な事の様な気がするんだ…」 
お母さんが答えた。 
「うん、そうね、でも本当に食べられたくなかったら、フグみた 
いに猛毒を持てばいいだけの話でしょ?つまり地球の殆どの生き 
物達はね、自分だけ毒で助かるより、辛くても皆で命を分け合っ 
て生きていく道を選んだって事なんじゃないかしら?」 
子供が言った 
「そっか!皆が毒を持ったら誰も何も食べられないものね、助け 
合って生きているって素晴しい事だったんだね!僕、明日から絶 
対にゴハンは残さないよ!」 
お母さんが言った 
「うん、えらい子ねェ坊や、今日はハンバーグ買ってあげる♪」 
子供が言った 
「やったぁー」 
次の日、宇宙人Qが言った 
「ひぃ~とんでもない星だったなあ!」 
宇宙人Mがうなずく 
「ああ何て言ったってこんな弱肉強食な惑星は初めてだよ植物 
まで肉食性の奴等がいるんだよ…」 
宇宙人Fが〆める 
「普通、お互いに毒を持ち合って、お互いの捕食に頼らない進化 
をしていくの宇宙では普通なのに…地球、恐ろしい星だったなあ…」 

215 :創る名無しに見る名無し:2010/12/26(日) 17:34:52 ID:vnEPoKgM
太った恋人 

今から10年前、世界人工知能人権保護宣言によって 
人間に近い知能を持った機械つまりアンドロイド 
達が、人間と同等とまではいかないものの、その 
生存権と自由を保障された。 
だが、今の状況はどうだ?権利主張の自由を与え 
た途端、やれ味覚権だの臭覚権だの喜怒哀楽表現 
権だの…終いにゃあ老化権だ!肥満権だぁ!?… 
ふざけんじゃねえってんだあ! 
色々主張しだして今じゃ殆ど人間と見分けが付か 
ない始末だ。何が人権だ!糞ッ垂れえがあ!!! 
まったく…内の家内も昔はあんなに美人だったの 
に…今じゃあ、TV観ながらピザ食いやがって! 
でぶでぶの巨体をコタツに突っ込んで、やれ薄給 
だの家事手伝えだのと毎日毎日俺の悪口ばっかぶ 
つぶつぶつぶついいやがる様になっちまったんだよ! 

ちくしょお…こんなはずじゃなかったのにい(泣 

217 :創る名無しに見る名無し:2010/12/26(日) 19:57:58 ID:vnEPoKgM
完璧な発明 

S博士は稀代のマッドサイエンティスト。今まで幾つもの天才的 
としか言いようの無いモノを発明してきた。そしてある日…その 
怪しげな光線銃は完成した! 
「ふふふ…これで、これさえあれば全てが完璧になる!」 
博士の発明したモノとは複製光線技術である!無機物だろうが生 
物だろうと全ての物質に対して使用可能である。「ふふふ…」こ 
れはただの複製光線では無いのだ!例えばこの欠けたビスケット。 
これに光線を照射してみる… 
『ピカッビー』 
『ピカッビビビビビビビビ』 
ほーら!この様にもう一個の元通りのまん丸のクローンが出来たぞ! 
ふふ…これ、自分に使ったらどうなるのかな?完璧な私か… 
ふふん…ぜひ会ってみたいものだ! 
『ピカッビー』 
『ピカッビビビビビビビビ』 
「ヤア完璧な私よ!こんにちは、気分はどうだい?」 
「……!…その光線銃を貸せ!はやくしろ!」 
「な、なんだというんだ?」 
「急いで修理しなければ!」 
「な!一体どうしたと言うんだ!故障だと!?」 
「そうだ!ビスケットを見てみろ!」 
「何?…ああっ」 


くそっ!オチが思いつかない…小説家はここでペンを空へと放り投げた。 
小説家は悟ったようにこうぼやいた。 
「所詮不完全な我々には完璧なオチなど想い付く事など不可能なのだ…」 

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