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蒼髪の守護者 ~招かざる客~

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蒼髪の守護者 ~招かざる客~


169 :蒼髪の守護者 ~招かざる客~:2010/02/09(火) 08:11:24 ID:m0HDN9aZ
「……む」
唐突に空気が変わった。この感じ、また違う世界に迷い込んでしまったのか。
「はあ」
ため息をつきながら、桃花は歩き出した。

そこは建物の中のようだった。ひたすらに長く、薄暗い廊下と、脇には幾つもの部屋が並んでいる。各部屋の扉の上には金色に輝くプレートがあり、部屋の名前がかいてあるようだった。
「オカルト……超能力……占い……サブカル……」
怪しげなデザインのプレートもあれば、
「こっちは映画一般……演劇……宝塚……」
華やかに彩られたプレートもある。
「ここは……なんだ……?」
何の変哲もない空間、しかし桃花は寒気を覚えていた。――ここにいテはいけない

一刻も早くここから出たかったが、出口も分からなかったのでとりあえず前へ進むしかない。
「創作文芸……創作発表……?」
なぜか桃花の足はそこで止まった。なぜ創作発表というプレートの前で足が止まったのか。なぜその部屋に入ろうとしているのか、桃花には分からなかった。ただ、そこに入ることが一番自然な気がしていた。桃花の腕は、ノックもせずに、その扉を、開いた


170 :見る名無しあっての創る名無し:2010/02/09(火) 08:12:08 ID:m0HDN9aZ
その部屋は書斎らしかった。大量の原稿用紙と、下書きされた絵と、部屋の中心にはデスクトップパソコンが置いてある。
そこの椅子に人がいた。女の人のようだ。彼女は来客に気づくと、振り返りながら尋ねた。
「あら、どちら様でしょう?」
整った顔立ち。だが無造作に垂らされた長い髪のせいか、気怠げな雰囲気が漂っている。
「私は、夢元桃花という。迷ってしまったのだが、ここはどこだろうか」
「とう…か……?ど、どうしてここに来れたの?」
目の前の女性は大層驚いたらしく、目を見開いて狼狽していた。桃花が経緯を答えようとすると、その女性は納得したように頷いた。
「ああ、そうか。あなたは、世界を渡っているのでしたね。なるほど、ここへ迷い込んでしまうことも、とても低い確率ですが、ありえないことではありません」
「ここは……一体……」
「ここは……そう、ここは、あなたの来てはならないところです」
Whatで尋ねたのをHowで返される。
「そう、なのか。ああ、元の世界に帰りたいのだが……」
「ええ、私もそのつもりでいます。ここに来る一つ前にいた世界に戻してあげましょう」
「む……元の世界に帰すことは、出来ないのか?」
前の世界に戻せるなら、元の世界にも戻せてもおかしくない。
「……ごめんなさい。あまり干渉は出来ないの。私に出来るのは前の世界に戻すまでです。その後は自分で頑張りなさい」
「そう、か」
結局振り出しに戻るだけか。桃花は少なからず落胆した。
「でも安心してください。いつかきっと、元の世界に帰れるから」
そういって彼女は笑った。彼女にそう言われると、なぜか近い将来、元の世界に戻れる気がしてきた。
「そう、か」


171 :ここまで:2010/02/09(火) 08:13:08 ID:m0HDN9aZ
「それで、どうやって戻すつもりだ?」
「そうですね……じゃあ、こっちに来て、目を瞑ってください」
「こうか?」
「そうです。じゃあ行きますよ」
「ちょっと待った」
「?なんでしょう」
「あなたの名前を聞いていない」
「……私は、クリーシェ。クリーシェです」
「クリーシェ……よし、覚えた」
「そしたら、今度こそ行きますよ?」
「ああ、頼む」
「では、さようなら、桃花。もう会うこともないでしょう」
「あなたがそう言うのなら、もう会えないのだろうな」
「ええ。ですが、私はいつも桃花の無事を祈っています」
「…………」
「では、お元気で――」

「ありがとう、クリーシェ」
そう言って桃花は目を開けた。そこは既にさっきまでいた世界だった。感謝の言葉は、クリーシェに届いたのだろうか。
分からない。分からないが、例えこの世界で発した声であっても、彼女には聞こえている。そんな、気がした。
「ありがとう、クリーシェ」
もう一度口に出し、桃花は歩き始めた。



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