氷魔 零
10
真夜中の校舎の暗い屋上で、氷魔零は目を閉じると、低く呪文を唱えた。その足元の地面が
徐々に光を帯び始め、やがて直径2メートルほどの青白い魔方陣が浮かび上がる。零はその
まま両手を前方に突き出し、掌を広げると、いきなり中空から何かを掴み出すような動きで、胸
の方へぐんと引き付けた。瞬間、その手元に燐光を放つ鞘入りの剣が現れる。
零は目を開けると顔を上向きにし、上空を睨んだ。そこには一匹の巨大な悪魔が蝙蝠のような
翼を広げ、真紅の炎を全身に帯びさせつつ中空に浮遊している。それは星空に浮かぶ一個の
恒星のようだった。
「さあ、降りて来い、化け物。それとも僕が怖いのか?」
零が冷ややかに言うと、悪魔は鋭い歯の並んだ大口を開けて哄笑した。
「下等な人間風情が片腹痛いわ。すぐに灰にしてくれる!」
そう言うと、その一つ目を一杯に見開いた。瞬間、耳をつんざくような炸裂音が響き渡り、目玉
の中央から巨大な火の玉が発射される。氷魔零が間一髪で横に飛んで避けると、火の玉はコン
クリートの床に当たって爆発した。零は転がりながら体勢を起こし、素早く立ち上がると、手にして
いた剣を鞘走らせた。その刀身は奇妙な浮き彫りの文様が施され、全体が冷たく鈍い光を帯び
ている。悪魔は歯をむき出して笑うと、
「よく避けた。少しは歯ごたえがあって楽しいぞ。しかしいつまで逃げられるかな」
零は腰を低く落とすと、剣を正眼に構えた。悪魔はそれに向かって再び目を見開き、火弾の
二発目を放つ。零は今度はその場を動かず、剣を思い切り振り上げると、裂帛の叫びと共に振り
下ろした。火の玉は撃剣に触れると、一瞬にして四散して、跡形もなく消滅した。
「何だと?」悪魔は唸った。「そんな馬鹿な。俺の火炎を一撃で!」
片手に剣を引っさげて立つ零の周囲に、白い冷気が靄となって取り巻いている。少年の双眸
に青い鬼火のような光が宿っていた。
徐々に光を帯び始め、やがて直径2メートルほどの青白い魔方陣が浮かび上がる。零はその
まま両手を前方に突き出し、掌を広げると、いきなり中空から何かを掴み出すような動きで、胸
の方へぐんと引き付けた。瞬間、その手元に燐光を放つ鞘入りの剣が現れる。
零は目を開けると顔を上向きにし、上空を睨んだ。そこには一匹の巨大な悪魔が蝙蝠のような
翼を広げ、真紅の炎を全身に帯びさせつつ中空に浮遊している。それは星空に浮かぶ一個の
恒星のようだった。
「さあ、降りて来い、化け物。それとも僕が怖いのか?」
零が冷ややかに言うと、悪魔は鋭い歯の並んだ大口を開けて哄笑した。
「下等な人間風情が片腹痛いわ。すぐに灰にしてくれる!」
そう言うと、その一つ目を一杯に見開いた。瞬間、耳をつんざくような炸裂音が響き渡り、目玉
の中央から巨大な火の玉が発射される。氷魔零が間一髪で横に飛んで避けると、火の玉はコン
クリートの床に当たって爆発した。零は転がりながら体勢を起こし、素早く立ち上がると、手にして
いた剣を鞘走らせた。その刀身は奇妙な浮き彫りの文様が施され、全体が冷たく鈍い光を帯び
ている。悪魔は歯をむき出して笑うと、
「よく避けた。少しは歯ごたえがあって楽しいぞ。しかしいつまで逃げられるかな」
零は腰を低く落とすと、剣を正眼に構えた。悪魔はそれに向かって再び目を見開き、火弾の
二発目を放つ。零は今度はその場を動かず、剣を思い切り振り上げると、裂帛の叫びと共に振り
下ろした。火の玉は撃剣に触れると、一瞬にして四散して、跡形もなく消滅した。
「何だと?」悪魔は唸った。「そんな馬鹿な。俺の火炎を一撃で!」
片手に剣を引っさげて立つ零の周囲に、白い冷気が靄となって取り巻いている。少年の双眸
に青い鬼火のような光が宿っていた。
「分かったか、炎の悪魔。僕の剣は氷の属性だ。お前の攻撃はすべて中和される」
中空で憎悪に顔を歪める悪魔に、零は挑発するように笑みを浮かべた。
「さあ、早く降りて来い。互いに魔力が通じない以上、肉と肉で撃ち合うしかない。それとも人間
風情を恐れるお前なのか?」
「ほざくな!」
悪魔は吼えると、空中で回転して頭を下に向け、猛スピードで垂直降下して来た。零は相手
にタイミングを合わせるよう地面を蹴り、ジャンプしながら叫んだ。
「氷刃斬!」
刹那、二つの影が交錯し、すぐに離れる。悲鳴の声を上げたのは悪魔の方だった。コンクリ
ートの床に激突した悪魔は呻き声を上げながら、ゆっくり起き上がる。背中に生えている蝙蝠
の翼の片方が、根元から鋭い切断面で斬り取られている。荒い息遣いで振り向くと、十メートル
ほど先に居る少年の影を睨んだ。零はまったくの無傷で平然と立っている。
「これでもう飛べないな」零は鋭く言い放つ。「決着をつけてやる。魔剣アブソリュートはお前の
死を欲している」
「小僧!」
炎の悪魔は牙を剥き出して咆哮した。氷魔零は魔剣の柄を強く握り締めると、気迫の叫びを
上げながら、獲物へと突進した。
中空で憎悪に顔を歪める悪魔に、零は挑発するように笑みを浮かべた。
「さあ、早く降りて来い。互いに魔力が通じない以上、肉と肉で撃ち合うしかない。それとも人間
風情を恐れるお前なのか?」
「ほざくな!」
悪魔は吼えると、空中で回転して頭を下に向け、猛スピードで垂直降下して来た。零は相手
にタイミングを合わせるよう地面を蹴り、ジャンプしながら叫んだ。
「氷刃斬!」
刹那、二つの影が交錯し、すぐに離れる。悲鳴の声を上げたのは悪魔の方だった。コンクリ
ートの床に激突した悪魔は呻き声を上げながら、ゆっくり起き上がる。背中に生えている蝙蝠
の翼の片方が、根元から鋭い切断面で斬り取られている。荒い息遣いで振り向くと、十メートル
ほど先に居る少年の影を睨んだ。零はまったくの無傷で平然と立っている。
「これでもう飛べないな」零は鋭く言い放つ。「決着をつけてやる。魔剣アブソリュートはお前の
死を欲している」
「小僧!」
炎の悪魔は牙を剥き出して咆哮した。氷魔零は魔剣の柄を強く握り締めると、気迫の叫びを
上げながら、獲物へと突進した。
24
"ホープ"を一本咥えた男は、空箱を握りつぶしながらライターを取り出すこともなく
先端に火をともした。
先端に火をともした。
「表社会用の"速水"でも"水野"でもなく、すでに滅びた"氷魔"を名乗って生活するとはねえ。
自信があるのか、それとも忌み名の意義すらわからない未熟者なのかな……?」
「――学校は禁煙です」
零は一睨みで炎を凍らせる。
男がくゆらせていた紫煙は見る間に空へ溶け、男との間に緊迫した空気だけが残った。
自信があるのか、それとも忌み名の意義すらわからない未熟者なのかな……?」
「――学校は禁煙です」
零は一睨みで炎を凍らせる。
男がくゆらせていた紫煙は見る間に空へ溶け、男との間に緊迫した空気だけが残った。
「自己紹介は――必要ないみたいだねえ。ならば本題と行こうか。
君の力を必要としているところがあるだけれど――」
「僕にはないです。失礼します」
名残惜しく煙草を手にしたままの男に、零は背を向ける。
君の力を必要としているところがあるだけれど――」
「僕にはないです。失礼します」
名残惜しく煙草を手にしたままの男に、零は背を向ける。
「――というのもだねえ、我々五行の民がかつて封じた、ああ……なんだって?」
「これから勉強があるのです。来週が期末試験なので」
慌てて男が肩にかけた手を無造作に振り払う。「痛ぅっ!」右手を抑えて男が退いた。
「煙草を持った手で、人に触らないで下さい」
冷たく言い放つ零。男の右手は其処だけ氷に付け込んだかのようで、表面に霜すら浮いている。
「我々全員の未来にかかわることなんだけど、ねえ?」
「僕はあなたたちではありませんから」
「話ぐらいは――」
「――聞く耳ありません」
零はにべもなく背を向ける。後を追おうとした男の足元が、音を立てて凍りつく。
「これから勉強があるのです。来週が期末試験なので」
慌てて男が肩にかけた手を無造作に振り払う。「痛ぅっ!」右手を抑えて男が退いた。
「煙草を持った手で、人に触らないで下さい」
冷たく言い放つ零。男の右手は其処だけ氷に付け込んだかのようで、表面に霜すら浮いている。
「我々全員の未来にかかわることなんだけど、ねえ?」
「僕はあなたたちではありませんから」
「話ぐらいは――」
「――聞く耳ありません」
零はにべもなく背を向ける。後を追おうとした男の足元が、音を立てて凍りつく。
「それじゃあ、私についてくるつもりは無いかあ? ……そうかあ」
男は諦め顔で右腕をつまんだ"ホープ"ごと振ると、瞬きほどの間だけ炎に包まれた
右手には痣一つなく、煙草は残骸すらも残らなかった。
「だったら……頼むよ?」
と、全身の雰囲気が一変した。
「"焔群"(ほむら)」
六歩の距離を置いてなお、男を中心にして噴き出す凝縮した火気を零は感じる。
男は諦め顔で右腕をつまんだ"ホープ"ごと振ると、瞬きほどの間だけ炎に包まれた
右手には痣一つなく、煙草は残骸すらも残らなかった。
「だったら……頼むよ?」
と、全身の雰囲気が一変した。
「"焔群"(ほむら)」
六歩の距離を置いてなお、男を中心にして噴き出す凝縮した火気を零は感じる。
「これが私の"領地"だ。たとえ術戦は初めてでも、氷魔を名乗る君ならば
込められた感情が分かるはずだろう」
「つまり――手加減させるな、という事ですか?」
零は確かに、"焔群"にたゆとう侮りに満ちた愉悦を読み取ったのだ。
男から徐々に広がる"焔群"の余波に、零の体はじっとりと汗に濡れる。
込められた感情が分かるはずだろう」
「つまり――手加減させるな、という事ですか?」
零は確かに、"焔群"にたゆとう侮りに満ちた愉悦を読み取ったのだ。
男から徐々に広がる"焔群"の余波に、零の体はじっとりと汗に濡れる。
「仕方無いです――"霜織"(しもおり)」
呟きを洩らして宙を撫でると、掌から立ち上る冷気が八月の空に雪を降らせた。
「君の"領地"か……抵抗してもいいのかい?」
「抵抗しなければ足を焼いてでも連れ去る癖に――生かして連れてこい、
としか言われていないんでしょう?」
「さあ、それはどうだろう?」
水気と金気のミックスされた領地――"霜織"は油断なくその範囲を広げて"焔群"に触れ、
その境でせめぎ合うこともなく、あっさりとその領地を奪われた。
呟きを洩らして宙を撫でると、掌から立ち上る冷気が八月の空に雪を降らせた。
「君の"領地"か……抵抗してもいいのかい?」
「抵抗しなければ足を焼いてでも連れ去る癖に――生かして連れてこい、
としか言われていないんでしょう?」
「さあ、それはどうだろう?」
水気と金気のミックスされた領地――"霜織"は油断なくその範囲を広げて"焔群"に触れ、
その境でせめぎ合うこともなく、あっさりとその領地を奪われた。
「一応は使えるようだが、術者としてはまだ未熟だねえ――」
零のこめかみを冷たい汗が流れる。細いあごから落ちた水滴が"霜織"の冷気に凍てつき、
学生服の襟もとで砕けた。
「我々術者にとっては力の行使など末節の出来事に過ぎず――」
男の語る間も零の"霜織"は"焔群"に囲まれてゆく。
「術を発現しうる"領地"の奪い合いこそが本質だ。一応先に言うけれど降参しないかい?」
そしてついに"霜織"を覆い尽くした"焔群"の余波――輻射熱に、肌が焼かれ始めた。
零のこめかみを冷たい汗が流れる。細いあごから落ちた水滴が"霜織"の冷気に凍てつき、
学生服の襟もとで砕けた。
「我々術者にとっては力の行使など末節の出来事に過ぎず――」
男の語る間も零の"霜織"は"焔群"に囲まれてゆく。
「術を発現しうる"領地"の奪い合いこそが本質だ。一応先に言うけれど降参しないかい?」
そしてついに"霜織"を覆い尽くした"焔群"の余波――輻射熱に、肌が焼かれ始めた。
「言ったでしょう、僕はあなたたちじゃないです」
体内に満ちた冷気により体を焦がされる事はないが、それでも長期戦は出来ない。
なにより術の技量力量は、明らかに男が上回っていた。
体内に満ちた冷気により体を焦がされる事はないが、それでも長期戦は出来ない。
なにより術の技量力量は、明らかに男が上回っていた。
「そして僕は――」
「――っ!?」
断言する零。眼前に水気が結晶し、視界が純白に包まれる――"霧雲"。
「目くらましかい――"焔群"!」
男が叫び、力の行使される気配が生ずる。
業ッ!
背の皮が削がれる意識的なイメージとともに、零の背後を火柱が焼き尽くした。
「――っ!?」
断言する零。眼前に水気が結晶し、視界が純白に包まれる――"霧雲"。
「目くらましかい――"焔群"!」
男が叫び、力の行使される気配が生ずる。
業ッ!
背の皮が削がれる意識的なイメージとともに、零の背後を火柱が焼き尽くした。
「僕は術者じゃない!」
"霧雲"を逃げるための布石と判断して力を振るった男に対し、零は前進する事で
炎を掻い潜ったのだ。"霧雲"を割いて現れた零の姿に、男の顔が驚愕に歪む。
"霧雲"を逃げるための布石と判断して力を振るった男に対し、零は前進する事で
炎を掻い潜ったのだ。"霧雲"を割いて現れた零の姿に、男の顔が驚愕に歪む。
驚きは男だけのものでも無い。
"霧雲"を抜けた零が見たのは、宙に浮く無数の『槍』であったのだ。
一本一本が身長を超える程の凝縮した火気を掌握し投射する、本物の術者による
力の行使――まさに"焔群"。
"霧雲"を抜けた零が見たのは、宙に浮く無数の『槍』であったのだ。
一本一本が身長を超える程の凝縮した火気を掌握し投射する、本物の術者による
力の行使――まさに"焔群"。
――恐れるな、僕の方が速い!
己が速力を信じて駆ける零が、強くイメージするのは身を流れる血潮だ。
拍動する心臓から疾駆する全身へ向け、脈動する血管を抜けて。
拳の中で凍てつき形成す――己の片名(カタナ)を求めて叫ぶ。
「"絶零"(アブソリュート)!」
左手から掴みだした魔剣を、下がりつつある男の心臓めがけて突き出した。
「ぬ――!」
疾勢を乗せた突きは、"焔群"の第二波に入りつつあった集中を少なからず
乱したのだろう、剣指で繰られる炎槍は方向を千々に散らして、その殆どが
零から外れる。
己が速力を信じて駆ける零が、強くイメージするのは身を流れる血潮だ。
拍動する心臓から疾駆する全身へ向け、脈動する血管を抜けて。
拳の中で凍てつき形成す――己の片名(カタナ)を求めて叫ぶ。
「"絶零"(アブソリュート)!」
左手から掴みだした魔剣を、下がりつつある男の心臓めがけて突き出した。
「ぬ――!」
疾勢を乗せた突きは、"焔群"の第二波に入りつつあった集中を少なからず
乱したのだろう、剣指で繰られる炎槍は方向を千々に散らして、その殆どが
零から外れる。
"霜織"で近づく炎槍をあるいは逸らし、あるいは凍結させ、
零自身は渾身の斬撃を袈裟がけに放った。
「"牢炎"――!」
男の周囲に乱舞していた火気が号令一下、零との間に集い、魔剣の一撃を妨げる。
――仔細、問題ない!
圧縮した水気による魔剣"アブソリュート"は零の信頼通り、
火気の檻を飴細工よろしく切り裂き男に迫り、そして――
零自身は渾身の斬撃を袈裟がけに放った。
「"牢炎"――!」
男の周囲に乱舞していた火気が号令一下、零との間に集い、魔剣の一撃を妨げる。
――仔細、問題ない!
圧縮した水気による魔剣"アブソリュート"は零の信頼通り、
火気の檻を飴細工よろしく切り裂き男に迫り、そして――
「貰った!」
きんっ
と、甲高い金属音を立てて宙空で静止した。
きんっ
と、甲高い金属音を立てて宙空で静止した。
「貰われないよお?」
「え……?」
「確かに――術者じゃあなくて剣士として考えるならその速さ、十分に中堅以上かなあ。
少なくとも、僕より速いねえ」
全力を挙げた氷刃を事もなげに受け太刀した、それが男の声だった。
「え……?」
「確かに――術者じゃあなくて剣士として考えるならその速さ、十分に中堅以上かなあ。
少なくとも、僕より速いねえ」
全力を挙げた氷刃を事もなげに受け太刀した、それが男の声だった。
「でも残念――術者としてはあまりに未熟、以前に世間知らずだねえ」
呆れたような男の声を、零は聞く。
それは零にとって、余りに異質な光景だった。
なぜなら、内から出づる零自身の金気によって補強した氷刃"アブソリュート"が、
『金属をも溶かす火気の中』で『金属の短剣』によって止められていたからだ。
呆れたような男の声を、零は聞く。
それは零にとって、余りに異質な光景だった。
なぜなら、内から出づる零自身の金気によって補強した氷刃"アブソリュート"が、
『金属をも溶かす火気の中』で『金属の短剣』によって止められていたからだ。
「なんてったって、"焔群"を知らない。だから私がコレを持っている事も知らない」
それはしかし、異常な光景という訳では無かった。
「術師の"領地"の名前は一つだけ、"焔群"を使うのは私しかいない」
術者の火気に当てられて形を無くさない金属、正確には短刀。
「だから"焔群"を知っていれば、それはつまり私を知っている事になる」
そんなものを零は一つだけ知っている――否、一つしか知らない。
それはしかし、異常な光景という訳では無かった。
「術師の"領地"の名前は一つだけ、"焔群"を使うのは私しかいない」
術者の火気に当てられて形を無くさない金属、正確には短刀。
「だから"焔群"を知っていれば、それはつまり私を知っている事になる」
そんなものを零は一つだけ知っている――否、一つしか知らない。
「あ……それ、は」
「思い出してもちょっと遅いねえ。初撃で私を倒せなかった、それがミスだよ」
男が零の周りから"焔群"を引く。より近く、より狭く、より強く、より密に。
溶鉱炉の中を思わせた"焔群"は既に、太陽を眼前に据えられたような熱量を
零に感じさせていた。
その、炎熱よりも閃光というのが相応しい眩しさの中で必死に目をあける零は、
白光に包まれる短刀を見る――今や脇差程の長さにまで再生した、その一刀を見る。
「思い出してもちょっと遅いねえ。初撃で私を倒せなかった、それがミスだよ」
男が零の周りから"焔群"を引く。より近く、より狭く、より強く、より密に。
溶鉱炉の中を思わせた"焔群"は既に、太陽を眼前に据えられたような熱量を
零に感じさせていた。
その、炎熱よりも閃光というのが相応しい眩しさの中で必死に目をあける零は、
白光に包まれる短刀を見る――今や脇差程の長さにまで再生した、その一刀を見る。
男の手元で、"焔群"の光がはじけた。
手に残ったのは鍔の無い、優美で攻撃的な曲線を描く鋼の塊。
氷魔のような傍流にも属さない術者でさえ、それは寝物語に聞くものだ。
手に残ったのは鍔の無い、優美で攻撃的な曲線を描く鋼の塊。
氷魔のような傍流にも属さない術者でさえ、それは寝物語に聞くものだ。
火中にありて形を無くさず、剛炎の力を借りては幾度でも再生する一刀。
「"鳳"(おおとり)――」
零が名を呼び、男が首肯した。それによって零は男の正体を悟る。
宝刀"鳳"、術師の手による極大の火炎によってのみ全盛の姿を取り戻すその刀は、
五行の民にありて火行を統べ、受け継ぐ一族の宗主にのみ渡されるものだったからだ。
「"鳳"(おおとり)――」
零が名を呼び、男が首肯した。それによって零は男の正体を悟る。
宝刀"鳳"、術師の手による極大の火炎によってのみ全盛の姿を取り戻すその刀は、
五行の民にありて火行を統べ、受け継ぐ一族の宗主にのみ渡されるものだったからだ。
「ちょっと今から本気を出す気にもなれないけど、それでも氷魔君……死ぬなよお?」
変わらず掴みどころのなく茫洋としたままで、男は告げる。
白刃が太陽の煌めきを反射し、零の顔に輝線を刻んだ。
変わらず掴みどころのなく茫洋としたままで、男は告げる。
白刃が太陽の煌めきを反射し、零の顔に輝線を刻んだ。
34
「ほらよ」
華煉は板戸を開けると、ぶっきらぼうにそう言った。零は「ああ」と一言だけ言うと、中へと入っていった。
六畳程度の土間の部屋だった。大昔の日本風、といった質素な作りで、それこそ時代劇で見るような家だ。
奥にはちゃんと畳の部屋があるのだが、それにしても若い女が一人で住んでいるとは、到底考えられない。
「純血の直系だろ?えらい寂れた所に住んでるんだな」
零は振り返り、まだ入り口の所に立っている華煉に言った。
「別に不便はねーよ」
華煉の物言いはいちいちぶっきらぼうだ、と零は思う。
が、自分自身、突き放した様な物言いを指摘されることも多々あったため、それを棚に上げて
彼女にそう言うようなことはしない。まぁ華煉なら、別に言ったところで何か嫌に思うようなこともなさそうだが。
「危ない事も…まぁ他の奴らからしたら、あったっつってもいいのかの知んねーけど」
何が言いたいのかは、五行の力を持つ者同士、零は直ぐに理解できた。
「まぁ、華煉襲ったら殺されそうだ」
「そりゃ零もでしょーが」
華煉は男っぽい笑顔を浮かべ、家の中へと入ると、後ろ手に板戸を閉め奥へと進んでいく。
「茶ぐらいだすよ」
「ああ」
そういえば、と零は思う。
(友達いないし、こうやって人の家に上がるのって初めてかもな…)
華煉は板戸を開けると、ぶっきらぼうにそう言った。零は「ああ」と一言だけ言うと、中へと入っていった。
六畳程度の土間の部屋だった。大昔の日本風、といった質素な作りで、それこそ時代劇で見るような家だ。
奥にはちゃんと畳の部屋があるのだが、それにしても若い女が一人で住んでいるとは、到底考えられない。
「純血の直系だろ?えらい寂れた所に住んでるんだな」
零は振り返り、まだ入り口の所に立っている華煉に言った。
「別に不便はねーよ」
華煉の物言いはいちいちぶっきらぼうだ、と零は思う。
が、自分自身、突き放した様な物言いを指摘されることも多々あったため、それを棚に上げて
彼女にそう言うようなことはしない。まぁ華煉なら、別に言ったところで何か嫌に思うようなこともなさそうだが。
「危ない事も…まぁ他の奴らからしたら、あったっつってもいいのかの知んねーけど」
何が言いたいのかは、五行の力を持つ者同士、零は直ぐに理解できた。
「まぁ、華煉襲ったら殺されそうだ」
「そりゃ零もでしょーが」
華煉は男っぽい笑顔を浮かべ、家の中へと入ると、後ろ手に板戸を閉め奥へと進んでいく。
「茶ぐらいだすよ」
「ああ」
そういえば、と零は思う。
(友達いないし、こうやって人の家に上がるのって初めてかもな…)
二人は火のついてない囲炉裏を挟んで、向かいあって座っている。二人共足はだらしなく崩していた。
「で、妹さんの居場所まだわかんねーの?」
「ああ」
「おっさんは何か言ってたか?」
華煉の叔父の事だ。以前手合わせた時の事を、零は思い出した。
「…まぁ、な」
零は俯いた。その様子に、華煉は溜め息を一つ吐く。
「で、妹さんの居場所まだわかんねーの?」
「ああ」
「おっさんは何か言ってたか?」
華煉の叔父の事だ。以前手合わせた時の事を、零は思い出した。
「…まぁ、な」
零は俯いた。その様子に、華煉は溜め息を一つ吐く。
「奴は誰でも子供扱いするんだよ、いちいち気にしてたらたまったもんじゃない」
「奴って…」
上げた零の顔は、呆れたようだった。
「叔父だろ?そんな風に言っていいのか?」
「あんなのは奴で結構」
華煉は顔を顰めて目を横に向ける。彼女も彼にいいようにあしらわれているのだろう。
「…なぁ、聞いていいか?」
零には気になっていた事が一つあった。
「"鳳"って、華煉のモノなんじゃないのか?」
そのことか、と華煉は思う。叔父は純血の直系ではない。彼は華煉の母親の腹違いの弟なのだが
彼の母親は一般人。五行の者ですらない。そのため本来は、鳳の正統な後継者は華煉であるはずだ。
「…私にゃまだ早いんだってさ」
「早い?」
「お前はまだ弱いって言われた。つーか弱すぎふざけんなって…」
華煉は叔父にまだ勝てなかった。年の功か、本来の潜在能力は華煉の方が遥かに上、であるのに
焔群を使いこなせるのは叔父だけだった。やはり領域を使いこなすには、かなりの鍛錬が必要なのだろう。
零にしても、霜織を一応は使えるものの、完全に使いこなしているとは到底言えない。
華煉の叔父の前に膝をつく結果となるのも、無理はないだろう。
「弱いって…宝器持ってなかったら、領域はそんなたいして使えないだろ?
たしか領域って、宝器あってこそ使いこなせるようになるもんなはず。鍛えようがないんじゃないのか?」
「…素の状態で俺を倒せってさ」
華煉ははき捨てるように言った。苦虫を噛んだような顔で。
「はぁ?相手は宝器ありだろ?無理だろ、それは」
零がそう言うのも仕方がない。彼の力は、手合わせした零自身もよく知っている。
「…くっそー!あのおっさんマジでムカつく!ウッゼぇ!」
「あ、あの人の話はやめようか…?」
零は華煉の頭上に湯気が見えるような気がした
「奴って…」
上げた零の顔は、呆れたようだった。
「叔父だろ?そんな風に言っていいのか?」
「あんなのは奴で結構」
華煉は顔を顰めて目を横に向ける。彼女も彼にいいようにあしらわれているのだろう。
「…なぁ、聞いていいか?」
零には気になっていた事が一つあった。
「"鳳"って、華煉のモノなんじゃないのか?」
そのことか、と華煉は思う。叔父は純血の直系ではない。彼は華煉の母親の腹違いの弟なのだが
彼の母親は一般人。五行の者ですらない。そのため本来は、鳳の正統な後継者は華煉であるはずだ。
「…私にゃまだ早いんだってさ」
「早い?」
「お前はまだ弱いって言われた。つーか弱すぎふざけんなって…」
華煉は叔父にまだ勝てなかった。年の功か、本来の潜在能力は華煉の方が遥かに上、であるのに
焔群を使いこなせるのは叔父だけだった。やはり領域を使いこなすには、かなりの鍛錬が必要なのだろう。
零にしても、霜織を一応は使えるものの、完全に使いこなしているとは到底言えない。
華煉の叔父の前に膝をつく結果となるのも、無理はないだろう。
「弱いって…宝器持ってなかったら、領域はそんなたいして使えないだろ?
たしか領域って、宝器あってこそ使いこなせるようになるもんなはず。鍛えようがないんじゃないのか?」
「…素の状態で俺を倒せってさ」
華煉ははき捨てるように言った。苦虫を噛んだような顔で。
「はぁ?相手は宝器ありだろ?無理だろ、それは」
零がそう言うのも仕方がない。彼の力は、手合わせした零自身もよく知っている。
「…くっそー!あのおっさんマジでムカつく!ウッゼぇ!」
「あ、あの人の話はやめようか…?」
零は華煉の頭上に湯気が見えるような気がした
71
「華煉――」
「駄目に決まってんでしょ! ほれ――」
零が手に取った特上鳥モモ肉のパックを神速で奪い取り、
華煉は特売の豚バラ肉を突き出した。
「駄目に決まってんでしょ! ほれ――」
零が手に取った特上鳥モモ肉のパックを神速で奪い取り、
華煉は特売の豚バラ肉を突き出した。
「……僕は一日に鶏肉を二百グラムは食べないと寝つきが悪いんだよ」
「だったら一生寝るんじゃねえ。アタシが豚と言ったら豚、今日は生姜焼きを食べるんだ!」
「……僕のアパートを全焼させた癖に――」
「ぐぅっ――!」
明らかに痛いところを突かれた様子で、華煉はぶるぶると震えだした。
「だったら一生寝るんじゃねえ。アタシが豚と言ったら豚、今日は生姜焼きを食べるんだ!」
「……僕のアパートを全焼させた癖に――」
「ぐぅっ――!」
明らかに痛いところを突かれた様子で、華煉はぶるぶると震えだした。
「アレは――丸腰の旦那が……」
華煉が丸腰と言っているのは、グレモリーの戦闘魔獣、マルコシアスの事である。
「マルちゃんは華煉の火を避けただけだ。もう一度言うぞ、僕のアパートを"全焼"させた癖に」
「うう……」
零がマルちゃんと読んでいるのも、鬼人型と魔獣形を行き来するマルコシアスのことである。
華煉が丸腰と言っているのは、グレモリーの戦闘魔獣、マルコシアスの事である。
「マルちゃんは華煉の火を避けただけだ。もう一度言うぞ、僕のアパートを"全焼"させた癖に」
「うう……」
零がマルちゃんと読んでいるのも、鬼人型と魔獣形を行き来するマルコシアスのことである。
「兎も角、僕は華煉のせいで住所不定に身を落としたわけだ」
「だ……だからウチで食う寝るの世話はしてるだろーが!」
「そう、そして僕は今日、チキン南蛮をとても食べたい。ちなみに僕が料理できる」
「何――!」
華煉の釣り目に、不利な表情が見えた。
――もうひと押しか?
タルタルソースも僕が作る。零がそう告げるより、華煉の立ち直りの方が早かった。
「だ……だからウチで食う寝るの世話はしてるだろーが!」
「そう、そして僕は今日、チキン南蛮をとても食べたい。ちなみに僕が料理できる」
「何――!」
華煉の釣り目に、不利な表情が見えた。
――もうひと押しか?
タルタルソースも僕が作る。零がそう告げるより、華煉の立ち直りの方が早かった。
「い……今"火乃国"の財布を握ってんのはアタシだ!」
「ちっ、強権発動か……」
「アタシが豚と言ったら豚、モヤシの炒め物で三食耐えると言ったらそうする。
家庭菜園とニワトリで自給自足し、灯りも風呂も自分の術で賄うと言ったらそうするんだ、
文句あるか!?」
「……無い」
口から火を噴きそうな勢いの華煉にそう言われれば、従うしかない。
――『また』丸焼けは嫌だし。
「ちっ、強権発動か……」
「アタシが豚と言ったら豚、モヤシの炒め物で三食耐えると言ったらそうする。
家庭菜園とニワトリで自給自足し、灯りも風呂も自分の術で賄うと言ったらそうするんだ、
文句あるか!?」
「……無い」
口から火を噴きそうな勢いの華煉にそう言われれば、従うしかない。
――『また』丸焼けは嫌だし。
「けど華煉、もしかして……貧乏人?」
「ぐっ――!」
「…………貧乏人、か。火の一族も今や貧乏人なのか」
そうか……とため息交じりに追い詰めてやると、華煉の長い髪が怒髪と化して天を突き始めた。
「アンタ――灰になりたいの!?」
怒りに固まらんばかりの華煉から、焼けつくような熱気が発せられた時だ。
「ぐっ――!」
「…………貧乏人、か。火の一族も今や貧乏人なのか」
そうか……とため息交じりに追い詰めてやると、華煉の長い髪が怒髪と化して天を突き始めた。
「アンタ――灰になりたいの!?」
怒りに固まらんばかりの華煉から、焼けつくような熱気が発せられた時だ。
「暑い! 今日は暑いのう」
砂糖より甘そうな幼女の声が、華煉と零の足元から聞こえた。
砂糖より甘そうな幼女の声が、華煉と零の足元から聞こえた。
「ほう……今日は豚シャブか。よいのう、よいのう。妾の家も今日はチゲ鍋にするつもりなのじゃ」
「何――!?」
「あ、やばい――!」
二人して驚愕に身を固めるが、その理由は異なる。零が驚いたのは幼女が気配も感じさせずに、
いつの間にか足元にいたからで、華煉が固まったのはその正体を知る故だ。
「何――!?」
「あ、やばい――!」
二人して驚愕に身を固めるが、その理由は異なる。零が驚いたのは幼女が気配も感じさせずに、
いつの間にか足元にいたからで、華煉が固まったのはその正体を知る故だ。
「暑い日に鍋というのもまた良い――だがしかし、そのバラ肉はいささかしゃぶしゃぶに向かぬな、
ほれ、投げ売り特売のパックなどにせずこの肉にするがよい」
「……高い」
「あ……あ……」
幼女が差し出したのは、零の出したモモ肉よりも更に三割は高いパックだ。
なぜか唖然としている華煉の手から、魔法のように豚バラ肉と交換する。
ほれ、投げ売り特売のパックなどにせずこの肉にするがよい」
「……高い」
「あ……あ……」
幼女が差し出したのは、零の出したモモ肉よりも更に三割は高いパックだ。
なぜか唖然としている華煉の手から、魔法のように豚バラ肉と交換する。
「暑くて食欲が出ぬのなら冷しゃぶにするがよいぞ、どうしてもと言うならばじゃがのう」
「あの……違うんだけど、君?」
「ほれ、そして豚しゃぶに必須の青物じゃ」
零のセリフを無視して、幼女は材料を放り込んでいくが、既に予算オーバーも甚だしい。
「あの……違うんだけど、君?」
「ほれ、そして豚しゃぶに必須の青物じゃ」
零のセリフを無視して、幼女は材料を放り込んでいくが、既に予算オーバーも甚だしい。
「あの、僕達はだね――今日は」「よいよい、妾が材料を吟味して進ぜよう!」
幼女の声に、零は――
「いやあの、話が見えないんだけど」「これ、若い者が遠慮するでない」
――なぜか、抵抗する勇気が削がれていく。
「ち……チキン南蛮を食べるはず――」「大丈夫! 妾に任せておれ!」
幼女の声に、零は――
「いやあの、話が見えないんだけど」「これ、若い者が遠慮するでない」
――なぜか、抵抗する勇気が削がれていく。
「ち……チキン南蛮を食べるはず――」「大丈夫! 妾に任せておれ!」
――十分後。
「チゲ鍋 モツ鍋 おでんに すきやきー♪」
「どうして、どうして僕は両手いっぱいに豚しゃぶの材料を持っているんだろう?」
気づけば、四日分の食費がビニール袋の中身に化けていた。
「どうして、どうして僕は両手いっぱいに豚しゃぶの材料を持っているんだろう?」
気づけば、四日分の食費がビニール袋の中身に化けていた。
「おだしをとって シャキシャキお野菜ー♪」
「ま、まさか都市伝説だとばかり思っていたけど、あれが本物の"鍋奉行"!?」
抱えきれないほどの食材によって、首をかしげるのも一苦労だ。
「ま、まさか都市伝説だとばかり思っていたけど、あれが本物の"鍋奉行"!?」
抱えきれないほどの食材によって、首をかしげるのも一苦労だ。
「お肉は煮過ぎちゃ 固くなるー♪」
「鍋と見れば口を出さずにはいられないおばあさんだと聞いていたけど、
まさか幼女だったなんて――」
抗うことなんてできようはずもない。
伝説として有無を言わさない迫力に、身震いを起こす零であった。
「鍋と見れば口を出さずにはいられないおばあさんだと聞いていたけど、
まさか幼女だったなんて――」
抗うことなんてできようはずもない。
伝説として有無を言わさない迫力に、身震いを起こす零であった。
「チゲ鍋 モツ鍋 おでんに すきやきー♪」
「あ……華煉が『お鍋のマーチ』一番をリピートしてる」
苦労して斜め三十度の手刀を華煉の脳天に叩き込むと、壊れたレコードよろしく
調子っぱずれの歌を繰り返していた頭ががくんと停止しする。
「あ……華煉が『お鍋のマーチ』一番をリピートしてる」
苦労して斜め三十度の手刀を華煉の脳天に叩き込むと、壊れたレコードよろしく
調子っぱずれの歌を繰り返していた頭ががくんと停止しする。
「は……っ! 思わずお鍋のマーチに中毒症状を起こしてたぜ!
それから今、アタシをどついたのは何処のどいつだ!」
あたりを見回す華煉。当然そこには零しかいない。
「ものすごく速い、風の悪魔だったよ。追い払ったけどあっという間に去って行った」
「何、そうだったのか。今度見かけたら真っ白な灰にしてやる」
頭をさすりながら、華煉はまだ見ぬ悪魔に闘志を燃やす。
零は心の中で、そのうち出てくるかもしれない風の悪魔とやらの冥福を祈った。
それから今、アタシをどついたのは何処のどいつだ!」
あたりを見回す華煉。当然そこには零しかいない。
「ものすごく速い、風の悪魔だったよ。追い払ったけどあっという間に去って行った」
「何、そうだったのか。今度見かけたら真っ白な灰にしてやる」
頭をさすりながら、華煉はまだ見ぬ悪魔に闘志を燃やす。
零は心の中で、そのうち出てくるかもしれない風の悪魔とやらの冥福を祈った。
「それから華煉、マルちゃんが居なくなってる。お店の前につないでたのに」
「――何っ!?」
誇り高く、伝説的な実力を誇る戦闘魔獣マルコシアス。
ペット禁止のスーパーであるために彼がつながれていた柱は、確かにもぬけの空だった。
「――何っ!?」
誇り高く、伝説的な実力を誇る戦闘魔獣マルコシアス。
ペット禁止のスーパーであるために彼がつながれていた柱は、確かにもぬけの空だった。