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冬頃の惨劇Ⅱ(笑)

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 『ロボスレ学園 冬頃の惨劇Ⅱ(笑)』


 食事が一通り済み、片付けも終わった。女だけのお泊り会は、言うならば後半部分に差し掛かり、パジャマを着て布団を教室の中央に敷き詰めて雑魚寝タイム。
 なお、鍋の時には言うまでも無く『闇鍋』を提案した少女が居たが、問答無用で却下されていた。
 え? お風呂の描写はどこにいったんだって?
 キャッキャなシーンがあると言ったな、あれは嘘だ。

 「え~……第一回っ 王様ゲーム! ただしルールは私達ルールということで、女王様ゲーム!」

 ぱむぱむ。
 教室の電灯は落とされ、持ってきた電気式のランプが光を提供している。
 やたらめったらテンションの高いクラウディアが、胸元を大きく開けたパジャマを着て、両手を打ち鳴らす。程よく熱を帯びたしなやかで肉質的な体が服の上からでも感じ取れそうでもあるが、男は居ない。
 各々が楽な格好をして、水分を含んだ髪の毛を手で整えている。割合で言うと可愛い感じのパジャマが多い。パジャマだけに体型がモロに出ているため、健全なる青少年には少々キツイかもしれぬ。
 その中でも一人だけ地味を極めたような灰色のスウェットを着たジュリアは、布団の絨毯のド真ん中に配置された怪しげな箱をじっとりと湿った眼で見つめた。

 「王様ゲームのパクリ?」
 「あら、パクリじゃないわよん。女王さまだもん」
 「ルールは?」
 「じゃんけんしてクジを引いて実行。簡単でしょ?」
 「女王も王様も関係ねー」
 「むー……じゃー単純に紙を引いて、内容に従うルールゲーム」

 王様ゲームとは何か。それは日本で広く普及している一種のパーティーゲームである。ランダムで王様という命令者を選出し、またランダムで命令を受ける人間を選び、その命令を実行させるというもの。
 今回は、箱に命令を入れてじゃんけんで引く方式をとる。こうすれば気の弱い人でも可能なのだ。
 ただ、勝者が命令をする王様ゲームと違って、勝者は命令に従わなくてはならないという一種の罰ゲームなため、じゃんけんで負ける方がよい奇妙なゲームである。

 「………こういうのは宴会でやるべきであって、旧校舎で女だけでやるもんじゃないと思うんだけど。ってかなんで旧校舎?」
 「そりゃ作者の(ry」

 ここまで来て逃げるわけにも行かず。クラウディアは、不満げなジュリアを尻目に面々を見た。暖房が苦しそうに稼働している音が教室内に静かにこだましている。

 「……どうして私がこんなことを」

 と、左で纏めていた髪を肩まで降ろしたPが呟く。水色のシンプルなパジャマを着て、布団の中に体を半分入れた体勢である。やれやれと言わんばかりに溜息をつくと、湿った前髪を指でねじった。

 「私の勘を舐めたことを後悔させてあげますよ」

 などと朗らかに笑うのは、真っ白なパジャマに身を包んだヘーシェン。ピンと立ち上がったウサミミが虚空に揺れ、感情の高まりを表しているよう。白銀の髪がパジャマと溶け合っているようにも見える。
 隣に座るはツインテールを解いたミアと、ティマ。無く子(漢)も黙る幼い魅力。風呂上りということもあって、筆舌しがたい何かが立ち上っているよう。何って、それは教えられないヨッ。
 ミアはフリルの付いたパジャマ。ティマは飾りの少ないネグリジェ。二人仲良く座っているところは人形のような美しさがある。
 ぽかんとした表情のティマがミアに質問するために頭を向けた。



 「………王様ゲーム? ミアちゃん王様ゲームって?」
 「えぇーっ。知らないのぉ? うーんとね、クジとかに命令を書いて、それを引いちゃった人が従うゲーム、かなぁ。今日はちょっとルール違うけど」
 「むむ。ドキドキする」
 「でもなんか違うみたい。負けた人が引くんだって」

 準備は整った。ルール説明も十分。ゲームを用意したのはクラウディアだが、一体全体いつ用意したのかは分からないまま。箱以外は、みんなで書いて入れた。そうしないとクラウディアのえげつない命令が下されるかも分からぬのだ。
 数回に及ぶじゃんけん勝負で、最初にクジを引くのはジュリアになった。なってしまった。

 「……やめたい」
 「ダメダメ♪」
 「うぅ」

 ジュリア、早速離脱したくなってきた。箱に手を突っ込み、適当な一枚の紙を引き抜く。たたまれたソレを手で開き、嫌がる心を無理矢理読むことに移行した。一同が紙を見つめ、ジュリアを待っている。
 そこに書かれたことは――『みんながイイと言うまでオンナノコの口調になること』だった。責任者出て来い。今すぐ出て来い。そう今すぐにだ。

 「なっ……!」

 ナンテコッタイ。
 眼を丸くして紙を見つめるジュリア。背後に回ったヘーシェンが紙を取り上げ、宝物を掲げるようにして上に持ち上げた。

 「みんながイイと言うまでオンナノコの口調ーー! ほら! 早く早く! カワイー☆乙女口調で喋りなさい! フハハハハ」

 ヘーシェンが嬉々として紙をみんなに見せびらかす。ウサミミが暴れまわる。
 ざわざわ……。広がるざわめき。クラウディアが『計算通り』な顔をした。

 「ジュリアがオンナノコ口調……興味深いですね。普段からは想像も出来ない」

 いたって冷静を装うPだが、目は爛々と光っている。獲物を見つけた肉食獣のように身を乗り出し、ヘーシェンの手にある紙を見ている。

 「普段からフツーにオンナノコの喋り方の私達には意味無いよねー」
 「ジュリアさん、ファイトです」

 ミアは兎に角として、ティマだけはなんとかしてくれると眼を向けると、これまた興味津々な顔が二つあるだけだった。ダメだこいつら……。もう寝てしまいたい。
 そこで、ジュリアの脳裏に閃きが。そう、口調だけだ。まだ言葉がやられただけなのだ。次のクジを引かせるのに、大した言葉も要るまい。
 顔を真っ赤にして俯き加減にクジの入った箱を手で叩く。
 するとどっと反応が返ってきた。

 「早く次を……ひっ……引きなさいよ」
 「顔を赤らめて俯き加減になさいよをつけるとは、どこのツンデレですか」
 「あららん、可愛い♪」
 「可愛い~っ。普段からそう話せばいいのにぃ」
 「わぁ凄い破壊力です」
 「……フン、これも中々……。録音しておけば後で使えそうな」



 わいわい がやがや ひゅーひゅー。
 ジュリアは、顔を真っ赤にして布団を見つめたまま拳を突き出し、早くじゃんけんをしようとした。が、普段とのギャップから生まれる破壊力はとんでもなかったため、中々収まらない。

 (そうだ。エリちゃん用の服の作り直して着せるというのも……)

 一人怪しげな企みを考えるのがいるがここは割愛。涎も気にしない。
 盛り上がりで布団はぐちゃぐちゃだ。
 ヘーシェンが紙を布団の置くと、拳を突き出した。

 「行きますよ紳士淑女の皆さん。私のじゃん拳を食らわせてやります」

 じゃーんけーんぽい。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。手を突き出すだけなのに火花が散る。こんなゲームを酒無しで盛り上がれるのはきっと若さのお陰。あと背後の勢いによるもの。
 結果。ミアが引くことになった。手を突っ込んで紙を引き抜き、広げて読み上げる。

 「せくしーほーずを取ることだって」
 「せ?」
 「えっ」
 「えぇ」
 「あら」
 「はい?」

 ミアは紙を布団の上に置くと、おもむろに立ち上がった。そして少し離れた場所まで歩いていく。胸元を強調するように前かがみになって、赤い舌を口の端からちろりと覗かせた。金色の髪がふわりと揺れた。
 だが悲しいかな。ミアの体型は俗に言うロリ体型でしかない。どんなに胸を寄せようとしても、寄せるものが無い。水着を着ていれば話は変わったかもしれないが、今は無い。他のポーズをとればよかったものの、後の祭り。
 痛い沈黙の後、ミアがその場にOTZのポーズで固まった。
 慰めるべく巨乳のクラウディアが側に寄る。ぐっと拳を握って口を開き。

 「ううぅぅぅぅぅ……………神様……胸が欲しいです……」
 「大丈夫よ! 牛乳を飲んで運動して揉んでえr」
 「言わせねーよ!?」
 「………(突っ込みたい。突っ込みたいが、喋りたくないな)」

 がばっ。事の成り行きを見守っていたヘーシェン、枕を引っつかみ、クラウディアに向けて投擲。頭部命中。目標完全に沈黙。アホ毛で顔を隠すように布団に沈む。

 「胸………Pさん。む、胸ってどうすれば大きくなりますか?」
 「へ?」

 楽しそうに争いを見ていたティマは、自身の胸元に両手を置き、服の上から撫でるようにする。ミアと比べても小さい。
 Pは困惑せざるを得なかった。ティマの眼を見て、胸元へと視線を落とす。そして自分の胸を見つめ、困った顔を浮かべて天井を見遣った。蛍光灯が見えるだけだった。Pは脚を組み替えて体育座りにした。部屋の中央にあるランプで顔に影が出来ている。

 「一般にはカルシウムを取ればいいそうですが―――……科学的な裏づけがあるとも思えないですし……すいません。私には分かりません。学者じゃないので」
 「そうですか………難しいです」

 なんだかんだすったもんだでゲーム再開。
 じゃんけんの結果、ティマが引くことになった。手を箱に入れて一枚引き、内容を読み上げる。その間は全員が押し黙るのだから恐ろしい。薄暗い教室に高い声が響く。

 「『じゃんけんで勝ち抜いた二人がディープキス』……………でぃーぷきす……ぇ? ディープキス!? こ、これは、もう一度よまないと……『じゃんけんで勝ち抜いた二人がディープキス』…………大変……大変、だよ」


 ティマは命令の衝撃の大きさに紙を握った手を震わせ、敬語を崩した口調で二回読み上げた。異性同士でも同性同士でもターゲット確認排除開始されかねないブッ飛んだ内容。ティマの頭がわなわなしながら前を向く。女の子座りの体勢が微妙に崩れた。
 ルールから逸脱してる命令? 気にスンナ。
 ヘーシェンが動いた。

 「これ書いたやつは粛清すべきッ!」
 「そうは行かないわ! 私が止めるもの!」

 叫び、ティマの手から紙を奪うと、破り捨てようとした。
 次の瞬間、座ったままのクラウディアの頭で何かが超高速で動く。アホ毛だ。アホ毛が伸びてヘーシェンの体に巻きつくと、たちまちのうちに縛り上げたのだ。一同が驚くよりも早く命令の書かれた紙がクラウディアの手に渡った。正に髪業。
 ヘーシェンは髪の拘束を解こうと踏ん張るも、髪を素手でちぎれるわけも無く。教室に兎が吊るされる。

 「あなたは妖怪ですかコンチキショー! この胸妖怪! HA☆NA☆SE☆」
 「胸妖怪? 失礼ねぇ。私はクラウディア……セクシーお姉さんよ」
 「もうその辺にしておけよ」
 「ダメよジュリア。オンナノコの口調じゃないと」

 クラウディアは、ジュリアの方に顔を向けて人差し指を左右に振った。ジュリアは止むを得ず口調を矯正せざるをえない。悔しそうに顔を赤らめて。

 「ぐ、………も、もうその辺にしておいたらどう? やり過ぎじゃないの?」
 「もう何がなにやら。会話文が連続でイミフですね」
 「Pさんサラッとメタな発言しないで下さい」
 「ディープキスはすべきだと思うよぉー。ぶちゅーっとね」

 がやがや。一時混乱状態。電波が入り混じる。
 議論の結果、『ディープキスはやり過ぎ』との結論を得た。
 なぜかクラウディアが悔しそうな顔をした。
 と、言うことで仕切りなおし。即ちじゃんけんをもう一度する。一同が手を突き出し、誰と無く『最初はグー』でじゃんけんをする。グーチョキパーのバトルフィールド。
 勝者、というよりクジを引く罰(?)を得たのは、ヘーシェンだった。

 「引きます。何々? 『逆立ちをすること』。楽勝ですね、兎は月までいけるんで」

 命令としてはごくごく当たり前で、ヘーシェンほどの運動能力を持ってすれば逆立ちをした後にバック転を決めても問題ないくらいだった。
 それに首を傾げたのは、クラウディアだった。軽く腕を組みぶつぶつと呟く、それを拾われてしまったのが運の尽き。

 「あれれ~おかしいなぁ。こんなことになるはずじゃなかったのになぁ。失敗しちゃったみたい………」

 一瞬おいて、ジュリアの耳が僅かに動いた。

 「……待てよ。おい……まさか……クラウディア、あの箱に細工してたりする?」
 「ジュリちゃん冗談はヨシ子ちゃん♪」

 アハハと軽快な笑いで誤魔化そうとするクラウディア。ジュリアは口調を元に戻し、箱を指差した。ティマが箱を手に取る。

 「ティマ、今すぐ調べてみて」
 「はい。……あぁ、二段構造……所謂セコワザです。私も怒りたくなってきました」



 箱を分解すれば、一人の策士の陰謀が露見せん。
 クラウディアは自分の失策を呪った。そう、実はあの箱には細工がしてあり、建築業者の談合で使うようなセコイ構造になっているのだ。あらかじめ入れておいた紙のみに手が触れるようになっていた……はずだった。何故かそれが壊れてしまったようだ。
 全員の視線がクラウディアに注がれる(ミアだけはそうではなかった)。クラウディアは一歩、二歩、と後退して教室の壁際まで逃げて、ドアを後ろ手で開けようとした。だが、事前に鍵を閉めていたことが災いしてスムーズに開けられなかった。
 ジュリアは握りこぶしならぬくすぐりの手を作ってクラウディアの方に擦り寄る。Pはその後ろから歩み寄る。ヘーシェンは荒ぶる鷹のポーズ。ティマは、くすぐりグッツを両手に握って。
 ミアは一人、くすぐりレンジャーの後ろの方でクラウディアに手を振る。

 「頑張ってぇ~!」

 ヘーシェンを先頭に、距離を詰める。教室の引き戸の鍵は古くて中々開かない。がちゃがちゃという音が虚しく響く。クラウディアの額に汗が流れた。

 「淑女の皆様方――クラウディアを擽り殺すのに賛成しますか――」

 厳かにヘーシェンが言った。

 賛成の言葉が教室を満たす。
 そして――――。





 「みにゃはははははははは!? あはは、まってちょ、うははははッ、ンッ、ぐるじ! 苦し! しむ、しむゥ! 死ぬ!! アッー!!??」



 クラウディアの絶叫(?)が旧校舎に響いたという。



   【おわり☆】

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