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守護機兵Xガードナー 月奪還作戦(オペレーション・ムーンテイカー)編 第4話

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irisjoker

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 作戦開始まで三時間を切った。
 Xガードナー隊の母艦エホバ・バイシクルは艦隊の一番後方にいた。

「…まだ、踏ん切りが付きませんか?艦長」
 副官の青年グラン・バールは心配そうに声をかける。艦長と呼ばれる少女は複雑な顔で前方の艦隊を見つめていた。
「…シュートも出てっちゃって、ミアちゃんも連れて行かれて…私は」
「元々、このXG隊はシュート・ダリューグ捜索の為に結成された様なモノです。それを正義感の強い貴方が、ルージュ司令に自分が代わりに探す引き替えに部隊志願すると言い出したんじゃないんですか?
シュート捕獲後はガードナー隊としての任務を果たす。そう言う約束でしょう?」
「でも、平和を守る為に頑張って来たのに、これじゃあ…」
「“こちらから戦いを挑むのはガードナー隊の信条に反する”…そう言いたいんですか?」
「だって!…だって」
「だって、なんですか?私達は軍人です。上から命令は絶対、逆らう事は許されない。それとも、今まで遊びで指揮していたんですか?」
 冷たく言い放つグラン。ルーナは何も言い返せない。
「それに、この戦いは地球を守る為の重要な作戦です。やらなければ地球は火星軍に負けてしまいますよ?」
「…けど、それでも」
「大丈夫ですよ」
 ブリッジの前、オペレーター席からサラー・リベルト。
「私は艦長に従います。艦長がそうしたいなら私達はその考えに乗ります」
「サラーさん…」
「まぁ軍の爪弾き者の俺達にとっちゃあ拾ってくれた恩もあるしねぇ」
 操舵手のアレキサン・R・ドミナは笑いながら言った。
「誰彼構わず女性士官をナンパしまくった貴方と一緒にしないで欲しいわ…」
「あれぇ?サラーちゃんだって秘書官だったのに、セクハラした提督ボコボコにしてんじゃない?」
「下劣な上官に従うつもりはありませんから…」
「きっついねぇ…でもそう言う所が俺は好きな、ぐはぁッ!?」
 抉り込むようにアッパーを顎めがけて打つ。軽く二メートルは吹き飛んだ。
「フン…馬鹿はほっといて、艦長が望むままに私達は付いていきます」
「…そ、そうそう。ルーナ艦長は笑っていた方が可愛いよ」
 またアレキサンが余計な事を言ってサラーは止めをさす。
「で、艦長…どうするんです?ご決断を…なさらないなら」
 グランは懐から何かを取り出す素振りをした。
「私はーーー」 作戦開始まで、あと二時間。
 パイロット更衣室にて、サイバとライドが着替え中。
「いよいよだな…なんだか緊張してきたぜ」
 ライドは制服の上着をロッカーに掛けながら緊張して手が震えていた。
「こんな事で毎回緊張していたら身が持たんぞ?」
「あれ?随分と馴れてるんだな」
「…まぁな、場数は踏んでいる」
 少し寂しげにサイバは言う。
「俺はさぁ…元々メカニックとして配属されたはずだったんだけどなぁ。最新鋭の機体をいじれるってんで来たら、まさか自分の専用機だったとは夢にも思わなんだ…はぁ」
 深いため息をつく。ライドにとって嬉しい反面、悲しかった。
「だってメカニックだよ俺?そりゃメカを知るには操縦も、と思ってシュミレータも実機訓練もしたけどさ」
「良いんじゃないか?なかなか居ないぞ、そういう奴」
「…まぁ前に居た所よりは自由にやれてるんだけどなぁ…サイバは何でXG隊に?」
「俺か? …よっ」
 サイバはパイロットスーツに足を通しながら、
「シュートさ」
「…え?」
 ガシャン、とライドの電子ゴーグルが床に落ちた。
「ま、まぁ耽美な顔立ちだとは思ってはいたが…そうか、うん」
「違うぞ、お前は勘違いをしている」
 作戦開始まで、あと二時間。
 取り合えず一発殴る。
「興味があるのは彼奴の家系だ」
「家系ぃ?」
「ダリューグ家は代々軍人の名門中の名門の家系だ。そこの子息だと聞いたから、さぞ強いのかと期待して来てみれば…だ。ハッキリ言って損をしたと思っているし今でも後悔している」
「あのVG隊のリーダーだっけ?ルージュ司令と違って滅茶苦茶おっかなそうだったもんなぁ。あんな怖そうな親父さんだったら俺でも逃げるわ」
「ん?何を言ってるんだ…さっきからオカシな事言うなお前は」
「…は?お前も会話が噛み合ってねーよ!」
 しばらく気まずい雰囲気が続く。黙々と着替えを続けた。
 先に口を開いたのはランド。
「…VG隊と言えば、あのパツキン禿げのオッサンはなんなんだ?」
「エディン・マクレイン少将…この作戦の総指揮者だな」
「いきなり人の艦に入ってきて、勝手に作戦に参加しろなんて横暴だよな?こっちに自由はないのかよ!」
「軍隊である以上、上官の命令に従うのは当たり前だけどな…」
「しかもだ、俺達の3アイドルの一人、ミアちゃんを連れていくなんて何なんだよったく!」
「元々ミアは少将の居た基地の出身だからな」
「あの禿、ミアちゃんに耳打ちしてたぞ、怪しくない?」
 あの日、ミアは何か殺気立っていた。
 それがエディンが来て、ミアに何か耳打ちをした瞬間、

『すぐ戻って来ますから心配しないでください』

 と、笑顔で別れを告げたのだ。

「サイバ、お前ミアちゃんと仲良いんだろ?何か聞いてないのか?」
「…いや」
 長い髪を後ろで結うサイバ。その姿にライドは一瞬だけ、ドキっとしてしまった事を後悔する。
「て言うかお前、よなよなミアの部屋でコソコソ何やってるんだよマジで!?てめぇうらやまし…いや、ロリコンでホモってちょ、おま」
 再び拳で黙らすサイバ。
「ムービーを観ているだけだ。なかなか珍しい物を沢山持ってるからなアイツ。知ってるか?勇者革命ヴァンゼルガー。あれは良い作品だ」
「…い、いや知らねえ興味ない、てか…出撃前に俺が死ぬ」
「俺はアイツと続きを観る約束しているからな。こんな所で死ぬわけにはいかない…」
 ヘルメットを引っ提げサイバは更衣室を出る。
(そうだ、まだ“あの人”とも出会ってない。こんな通過点でくたばってなるものかよ)
 そう思い、格納庫へと走り去った。
「あ、おい!待ってよ!置いていくなぁぁー!」
 CC(コスモセンチュリー)115年。

 ついに、地球統合連合軍(以下、統連軍)による月奪還作戦、
『オペレーション・ムーンテイカー』が発動された。

 作戦を指揮するのは統連軍作戦参謀長、エディン・マクレイン少将。
 さらに、アグリット・ダリューグ中将とルディーオ・シュバルツ・ルージュ大将。

 かつて、第一次月面攻防戦に参加した「Vガードナー隊」の三人。
 この戦いで月を火星軍に占領されてしまい、彼らにとっては、まさに、名誉挽回のチャンス。

 約百隻からなる艦隊が今、月へと進攻する。
 統連軍のほとんど戦力が結集し、戦いは大規模なものと予想された。

 迎え撃つは「火星月面駐留軍」。
 未だ全貌の見えない火星軍に勝利する事は出来るのか?

 そして、「Xガードナー隊」。

 自ら部隊を去り、父の元へ行くシュート。
 エディンによって強制的に仲間から引き離されたミア。
 艦長として、ガードナー隊としての目標を見失うルーナ。
 亡き師の敵討ちに燃えるビーク。
 記憶喪失の男、竜宮 零。

 そして、裏で暗躍する者たちは…。

 様々な思いが交錯する戦場で、はたして何が起きようとするのか?

 今、戦いの火蓋が切って落とされた。

 いざ『開戦』。

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