磐越西線(の郡山~会津若松間)をミニ新幹線化しよう、という構想を検討してみましょう。
1.線路配線計画
図1に磐越西線の現状の線路配線、図2に会津新幹線を実現した場合の線路配線案を示します。図2の青線がAC20kV BTき電の標準軌であり、ミニ新幹線が走行する線路となります。
1-1 郡山駅
この
妄想プロジェクトでは、山形新幹線を大いに参考にしたいところです。山形新幹線が東北新幹線から分岐する福島駅では、上り「やまびこ」が「つばさ」を併結する際に2回下り線を平面交差するという点が運行管理上問題視され、現在、上りホームの11番線で上り列車の併結をできるようにする改良工事が進行中です(福島上りアプローチ線、2027年3月使用開始見込み
資料は例えばこちらのPDFを参照されたく)。
であれば、会津新幹線の郡山駅も(改良後の)福島駅と同じ構造にすればいいじゃん、という話になるのですが、郡山は磐越西線の分岐箇所が駅に近すぎ、上り列車が東北新幹線の高架下をくぐった後、スロープを登って新幹線駅に進入する配線を造るには距離が足らないのです。分岐線→東北新幹線上り13番線到着 というわたり線を造るにしても同様(略図ではできそうに見えますが、GoogleMap等を見ればすぐ判ります)。となると、磐越西線の郡山富田付近で分岐して東北新幹線の東側に大きく廻り込むような「新線」を造るしかありませんが、山形新幹線に対しても輸送量がはるかに小さいであろう会津新幹線にそんな巨費を投ずるわけにはいきません。
…といったことを念頭に置いて会津新幹線の線路配線を考えますと、必然的に図2のようになります。つまり、改良前の福島駅と同じ様相となり、東北新幹線のダイヤ上のガンが福島駅から郡山駅に移るだけの話で、これは大変都合が悪い。しかし、よーく考えてみると、郡山駅ではもともと11番線で折り返す「なすの」5往復が上り線へ逆線出発しているわけで、こちらはさして問題になっていません(解消できるならそうすべきでしょうけど)。つまり、会津新幹線の列車(ここでは仮に「あいづ」と呼びましょう)と分割・併合するのは、郡山駅で折り返す「なすの」に限定すれば良い。さすれば、少なくとも、東北新幹線の上り列車が11番線に到着するために下り線を支障する事態は避けられます。
ただし…この運転方法では、上りの「あいづ」が郡山に到着するときには、必ず素のフル規格10両編成が待っているようにしなければなりません。これまで、東北新幹線では「こまち」・「つばさ」と併結する上り列車の編成さえ気を付けていればよかったのですが、「あいづ」に関しては、郡山に向かう下り列車の編成についても留意が必要です。ダイヤ乱れで車両運用が狂い、郡山行「なすの」に(本来は連結していない)ミニ新幹線を併結した編成を充当することになった場合、折り返しの上り列車が郡山で「あいづ」編成を併結するダイヤになっているのであれば、現に連結しているミニ編成をどこで切り落とすか…? が新たな検討事項になります。
そうしますと、↑の線路配線案では、設備が足りないかもしれません。車両運用が狂ったときのつじつま合わせに備えて、ミニ新幹線用の留置線を郡山駅のすぐ北側に設けるとか、郡山保守基地を改造して、フル規格編成用の留置線を設ける(山陽新幹線の新岩国や新下関で同じようなことをやっている)とか…。
また、郡山駅には、小規模ながら、標準軌ローカル電車用の検修施設も設ける必要があります。これについては後述します。
1-2 磐越西線区間
磐越西線は設計が古い時代の設備なので、各交換駅には安全側線が設けられており、これが設備数をいたずらに増やしています。速度制限が発生するY字分岐器も多数あります。そこで、標準軌への改軌に際しては線形を見直して、ATS-P化により過走余裕距離を確保して安全側線を廃止し、さらにいわゆる一線スルー化を行って乗り心地の向上と所要時間の短縮を図ります。なお、新幹線直通線区であり、ダイヤ乱れに対する回復力を確保するため、交換駅は現状と同数設けます。運行管理は、言うまでも無く上り列車優先とします。
1-3 会津若松駅
会津若松駅は、1・2番線を標準軌の会津新幹線用ホームとし、狭軌の3・4・5番線を磐越西線・只見線・会津鉄道が使用します。標準軌・狭軌の線路が交差するところは有りませんが、構内踏切があるため連動装置は分離しないほうがよろしいかと思います。2026年3月現在、磐越西線はすでに会津若松~喜多方間の架線を撤去しており、標準軌側のみが交流電化になるので、同駅構内で狭軌のままとなる線路は全て架線を撤去します。これは相当大きなスリム化となるでしょう。
なお、現在の磐越西線用ローカル電車の運用を見ると、同駅には2連4本が滞泊するようになっており、会津新幹線用のミニ新幹線編成も1本は滞泊するでしょうから、留置線は5本必要。しかし、現状の配線案ではホーム2、留置線3で、保守作業のための空線扱いができなくなります。対策としては、臨駅の広田駅にあった側線を留置線に改修することですが、雪国で拠点を分散すると除雪の手間が大変なので…やはり会津若松駅の配線をいじって、もう少し標準軌の編成の収容数を増やす必要がありそうです(想定ダイヤを組んでローカル電車の必要数を精査すれば回避できるかもしれません)。
ところで、郡山~会津若松間を標準軌化すると、郡山総合車両センター(会津若松派出)所属の只見線用の気動車の処遇が問題になりますが…磐越西線の気動車は全て新津の所属なので、その運用を変更して、只見線も全て新津の車両で運転する、という形にするしかないでしょう。
2.車両について
2-1 ミニ新幹線車両
「つばさ」と共通運用のE8系またはその後継車とします。山形新幹線開業当初は、山形県等が設立した「山形ジェイアール直行特急保有」というペーパーカンパニーが400系電車を保有してJR東日本にリースするというスキームがありまして、山形新幹線が採算に乗ると、ただ煩雑なだけとなって後に解消されています。会津新幹線については、その事業資金の出所は「福島県を始めとする自治体と、それら自治体に補助金を支給する国」となるでしょうが、それは地上設備に対してであり、車両はやはりJR東日本が建造し運用する、というスキームにするでしょう。所属基地は山形新幹線車両センターとなりますが、新幹線電車は2日に1回は必ず検査しなければならない(仕業検査。所属箇所でやる必要は無いが)ので、車両運用をうまく組まないと、会津新幹線線内にミニ新幹線用の検修施設を設ける必要が出てきます。それは絶対に避けたいところです。
2-2 標準軌在来線用車両
山形線用と同仕様のE723系を2両8本用意します。現状、磐越西線でのE721系は2連6運用あり、それに東北本線の間合で磐越西線列車の増結車となる1運用を加えて計7本。検査・入場予備として1本加えて8本です。ただし、これは会津新幹線をカットオーバーした後でも同じ本数必要かどうかは精査していないので、多分もっと減らせるでしょう(逆に、会津新幹線による沿線の発展で増える可能性もある)。
ところで、「会津新幹線」においては、これらの車両の検修体制をどうするか? という問題が発生します。
山形線の標準軌ローカル電車は山形新幹線車両センター所属であり、そこで検査・修繕ができますが、会津新幹線区間内には電車基地が無く、ローカル用電車は標準軌線の中に閉じ込められてしまいます。そこで、郡山駅の在来線ホームの起点方にある留置線を標準軌に改修し、そのうち1線を検車庫とします。あと少し標準軌の線路を南に延ばせば郡山総合車両センターがあるのに…! しかし、この線路は東北本線と平面交差してしまい、大規模な配線変更工事がプロジェクトのコスパを極めて悪くするので、ここは諦めるしかありません。台車や空調装置などの重要部品の検査は、ほんのちょっとの距離をトラックで輸送して総車セで行う、何とも不合理な体制とするしかないでしょう(山形線のローカル用車両と同じ)。肯定的な要素としては、大きな車両基地が至近にあるので要員確保が比較的容易な点が挙げられます。
山形新幹線庄内延伸のケースでは、陸羽西線区間のローカルの輸送量が極めて小さいためその役割を「つばさ」に押し付けることができるのに対し、会津新幹線では磐越西線のローカル輸送量がそこそこあることから、そういう解決策も採れません。困ったもんだ。
3.ダイヤをどのように考えるか
図3 東北新幹線「なすの」と磐越西線のダイヤ(2026年2月時点)
3-1 「あいづ」の停車駅
本稿を作成している2026年2月時点における東北新幹線「なすの」と磐越西線(郡山~会津若松間)のダイヤを図3に示します。
現在の磐越西線のダイヤは、大雑把に言えば2時間ヘッドに普通1・快速1本。快速の途中停車駅は郡山富田・喜久田・磐梯熱海・猪苗代・磐梯町が基本で、朝の下り1本と夜の上り1本のみ、川桁~会津若松の各駅に停車する「区間快速」的なものになっています。郡山富田・喜久田停車は郡山市内利用の需要に、前述の区間快速は会津若松近辺の地域輸送に対応したものですね。
ちなみに、1993年まで走っていた上野~会津若松間の特急「あいづ」の停車駅は上野・大宮・宇都宮・西那須野・黒磯・白河・須賀川・郡山・磐梯熱海・猪苗代・会津若松でした。これらのことを考慮すると、会津新幹線「あいづ」のミニ新幹線区間の停車駅は郡山・磐梯熱海・猪苗代・磐梯町・会津若松が妥当でしょう。
しかし…このダイヤ、よく見ると郡山での磐越西線到着→「なすの」発車の時間差は1分しか無く、乗り換えは到底不可能。接続関係を何にも考えていないんだな~(やまびこを重視しているんでしょうけど)。
3-2 東北新幹線のダイヤ
ところで、会津新幹線のダイヤをどのように組むか、というと、このダイヤをベースに、現在の快速と郡山発着の「なすの」がいい感じにつながるように磐越西線側のスジをずらして、快速を「あいづ」化する、というものになるでしょう。ただし、本当に設定したい列車は朝時間帯・日中・夕方・夜間にそれぞれ1往復ずつというところで、現在の郡山発着の「なすの」が日中中心で必ずしも「あいづ」を設定したい時間帯ではないことを考慮しますと、「あいづ」運転のために相当数の「なすの」を郡山まで延長するか新規に設定することになります。ただし「なすの」では速達性が弱い(那須塩原と新白河に現状以上の需要があるとも思えない)ので、郡山発着の「やまびこ」を設定して「あいづ」と併結することも考えられます。
なお、「あいづ」設定の際によーく考えねばならないのが、『上り「なすの+あいづ」で東京に到着した列車は、所定ダイヤでは絶対に下り「やまびこ+つばさ」で折り返してはならない』(逆もまた然り)という点です。ダイヤ乱れのリスクの大きいミニ新幹線で、同じ仕業の中に別のミニ新幹線路線に乗り入れる行路を組むと車両運用がグチャグチャになり、論外の外の靴の裏です。ダイヤ乱れの際の緊急避難措置としては致し方無いでしょうがね。
さらに、「なすの」には「こまち」用E6系(後継車はE11系)を併結した列車もあり、それを「あいづ」に充当するのは避けたいところです。その前行路・後行路も「こまち」編成併結で整合させねばならず、旅客案内も煩雑になるなど、あまりメリットは無いでしょう。
3-3 磐越西線内の考察
現状が「快速」である列車を特急「あいづ」に格上げすると地域内利用の乗客の不利益になる、という点が問題となります。これは
山形新幹線庄内延伸のケースと同様に、「あいづ」の編成のうち2両程度を磐梯熱海~会津若松間では自由席として格安の特定特急料金を設定し、通学定期利用者に対しては特急料金を免除する、といった対策が考えられます(郡山~会津若松としないのは、郡山まで新幹線で来た乗客が郡山で自由席に乗り換えて特定特急料金で会津若松まで乗車する、というセコい技を防止するため)。このため、郡山~磐梯熱海間には普通列車を増発しなければなりません。
4.電気設備
4-1 電力設備
磐越西線 郡山~会津若松間はBTき電区間であり、変電ポストは東北本線用の郡山SS(SS=変電所)・上戸SS・扇島SP(SP=き電区分所)・会津若松SSがあります(SSP:補助き電区分所は省略します)。電力設備の容量としては、かつて485系9両編成の特急「あいづ」や電気機関車牽引の旅客・貨物列車が走っていたことを考慮すれば、ミニ新幹線7両編成を走行させることはできそうです。架線は、交流電化区間では標準的な、可動ブラケット支持のシンプル架線(ちょう架線=St90 1.0t、トロリ線=GT-Sn110 1.0t)であり、130km/h運転が十分可能な設備のため、変更の必要はありません。
ただし、現在の磐越西線は、昔ほど設備容量を必要としていないことも事実であり、JR東日本としては設備をスリム化していきたいところでしょう。例えばBT(吸上変圧器)の容量ダウンとか、変電ポストの間引きが考えられます、これを阻止しておかなければ大きな手戻りになりそうです。
4-2 信号・通信設備
↑の配線図のとおり、標準軌化に伴って安全側線の廃止や一線スルー化を行いますので、各駅の連動変更が必要になります。
閉塞方式は自動閉塞式、信号保安装置は現状ATS-Snで、JR東日本ミニ新幹線区間標準のATS-P化も行います(安全側線を廃止するには過走余裕距離の確保が必要なので、それをATS-Pで担保する)。
列車無線は、地上設備の改修は無用で、ミニ新幹線車両に磐越西線対応の車上無線機を搭載します。このあたりは特段の問題は生じないでしょう。
5.施工方法
5-1.工区割り
会津新幹線プロジェクトでは郡山~会津若松間の改軌工事が施工量の多くを占めます。同区間は全線単線であり、山形新幹線の福島~山形間の改軌工事のように複線区間の単線化といった手法は採れません。また、
山形新幹線庄内延伸の陸羽西線のように、ローカル需要が極小で全線を長期間運休できるという環境でもありません。よって、工事区間をいくつかに分けて、順番に改軌工事を進め、バス代行輸送の区間を極力短くする配慮が必要です。ただ、極めて皮肉なことに、同区間は磐越道が片側2車線で並行していて、郡山~会津若松間の都市間需要は高速バスの増便で対応できますから、代行バスは沿線のローカル需要を拾えれば充分です。
今回の検討では、工区を↓のように4区間に分け、第一工区から順番に標準軌化を進めていきます。これは、標準軌のローカル用車両の基地が郡山にあり、標準軌区間が最初に出現した時点で車両の検修体制を整えておかねばならないからです。工区の分界点は、
- 輸送上の拠点として、係員を常駐させることができる駅舎を備えている
- 交換駅であり、標準軌電車と狭軌気動車の乗り換えができる
- 代行バスを発着させる駅前広場を備えている
といった要件を満たす駅としています。
第1工区:郡山~磐梯熱海 15.4km
郡山市の市内需要を担っている区間で、普通・快速合わせて1時間に1本の運転頻度を確保してあるため、バス代行輸送はそれなりの規模になります。よって、この区間は、運休前に施工機械や材料等を念入りに準備して、運休期間に入ったら突貫で改軌工事を施工して短期間で使用開始します(山形新幹線の関根~米沢間がそのような施工方法を採った)。プロジェクト開始からいきなり難しい区間を施工する構図となるのは致し方ありません。
第2工区:磐梯熱海~猪苗代 21.3km
上記の要件から、最も長い工区となります。峠越え区間が含まれ、資材の搬入や施工部隊の入退場等の面でも難しく、工期を長く確保して対処するしかないでしょう。
第3工区:猪苗代~磐梯町 14.5km
磐梯町駅は翁島~広田間のぐねぐね区間の中間であり、道路は真っすぐなので多分代行バスにした方が所要時間が短くなるでしょう。渋滞に巻き込まれるリスクも少なく、代行バスの運転には最も有利な区間になるでしょう。線路の周囲は高原状になっていて山中ほどにはアクセス困難ではないので比較的施工は容易かと思われます。
第4工区:磐梯町~会津若松間 13.4km
最も短い工区ですが、線路に対して道路ルートがさして有利にならず、会津若松市内の道路混雑もあって、代行バスの運転はそれなりに苦労が伴います。
5-2.施工手順
↓以下のような手順で施工します。
- 郡山駅構内起点方の電留線を配線変更のうえ標準軌化し、検修庫を新設する
- 郡山駅の狭軌在来線設備をスリム化。ただし磐越西線の運転に必要な設備は維持する
- 磐越西線ローカル用の電車を全て郡山側に収容した直後に第1工区を短期間運休し、突貫で標準軌化。第2~4工区は会津若松のDCで運転(ECの検修ができなくなるため)
- 第1工区を標準軌で運転再開(郡山アプローチ線との接続点には予め分岐器を挿入) 第2工区を運休、第3・4工区はDC運転
- 第2工区を標準軌化し使用開始。これで郡山~猪苗代間は標準軌で運転。
- 第3工区を運休し標準軌化工事を開始。第4工区はDCで運転。郡山駅のアプローチ線新設後、ミニ新幹線の試運転も実施
- 第3工区を標準軌化し使用開始。これで郡山~磐梯町間を標準軌で運転可能になった
- 第4工区を運休し標準軌化工事を開始。DCで運転する区間は無くなる
- 会津若松駅の狭軌在来線設備をスリム化(配線整理、電車線設備撤去等)
- 第4工区を標準軌で使用開始し、全線でミニ新幹線を運転開始。
今回の案では、郡山方から改軌工事を進めていきますので、郡山駅の新在直通用設備を使用開始した後は、会津若松までの改軌を待たずに試運転を始めることで工期を短縮できるのが一大特徴となっています。
最終更新:2026年04月10日 15:38