Amantes Amentes

「貴女の願いなんて知りません。私は誠君と一緒に居られればそれで良いんです。

黄昏時の冬木の港に係留されたヨットの上で、桂言葉は己がサーヴァントに言い放った。

生気の感じられない瞳。サーヴァントを確かに見つめながらもその実何も見つめていないと判る瞳。
サーヴァントと向かい合いながら、その意識はその胸に抱いたモノにしか向けられていない。

「だから放っておいてください。私を巻き込まないで下さい。戦いたいなら、どうか、御一人でどうぞ」

生気の感じられない黒瞳は、深淵へと通じる“穴”を思わせる。
然し、今の言葉の目を覗き込む者が居れば、深淵の底で燃えているものに気付くだろう。
燃えているものの名は『怒り』。
折角愛しい誠と二人きりになれたのに、こんな訳のわからない殺し合いに巻き込まれればて、心底からの怒りを抱いているのだ。

「どうしても私を巻き込むというのなら………!」

令呪を用いて自害させる。言葉として宣言せずとも、刹那のうちに世界にその意志は伝わった。

「貴女の仰っていることは心の底から出た正しい言葉………。けれど…私と貴女願いを同じくできる……………」

それまで沈黙していたサーヴァントが陰鬱な口調で口を開く。愛おしげな目線を言葉が抱いた“モノ”に向けながら。
その声を聞いて、言葉は漸く、全く見ようとしていなかった目の前の相手が、自分と同い年の少女だと認識した。
言葉の細い眉が吊り上がる。醜悪な嘘を吐いてまで、自分から誠を奪おうとした女の顔が脳裏に浮かぶ。
改めて相手を見てみれば、褐色の肌に言葉に劣らぬ長い艶やかな黒髪、顔立ちは頭部を覆う薄いヴェールの所為で良く分からない。
年不相応に実った二つの果実が目を惹くが、細くくびれた腰も相まって、脂の乗った尻が一際扇情的だ。
少女が身に纏っているのが七つの薄いヴェールだけという所為もあって、男どころか同性でも我を忘れそうな性的魅力に満ちていた。

「私と貴女が同じ願いを持てる……?そんな訳、無いじゃないですか。私は今、満たされています!
殺し合いをしてまで 願いを叶えようとしている、貴女とは、違うんです!!」

長い髪を振り乱して叫ぶ言葉。声に含まれた意思は“拒絶”。自分と誠との世界に入り込もうとするサーヴァントに対する絶対の拒絶。

「それに…誠君をそんなイヤラシイ眼見る人に、傍にいて欲しくありません!!」

眦を決して言葉は告げる。

「私はもう誰にも煩わされたくないんです!」

同性でも虜にできる、そんな少女を相手にしても全く変わらない言葉の態度。

「すいません………。けれど……貴女は…その方を…深く愛されているのだと思うと……つい…好ましく思えて…………。
安心して下さい…貴女がそこまで慕う方なら……………さそ素晴らしい殿方なのでしょうが……私には他に…想う方がいます」

微笑む少女。ヴェールに遮られて朧にしか見えないが、男女を問わず 、鉄の心を持っていたとしても、心を奪われる。そんな少女を相手にしても言葉の態度は変わらない。

「そうですか……安心しました」

硬かった表情と言葉が多少柔らかくなった。

「皆がそんな風に、他の人の好きな人を獲ろうとしなければ良いのに」

「貴女は……本当に…その方を愛されているのですね…………」

驚きと感嘆を満面に讃えて、己がマスターを賞賛するサーヴァント。

「だからこそ…私と貴女の願いは重なる………」

言葉は柳眉を顰める。多少は気を許せるようになったが、この少女が口にしている事はさっぱり理解できない」
この少女が何を思って殺し合いに望むのか?この少女が抱く願いが自分を殺し合いに望ませるものなのか?

「私の願いは…この方を見ていただければ分かります………」

少女の眼前の空間が歪む。水面を割って現れる様に出現した銀の大皿。全体に施された巧妙精緻な細工はは、この大皿が極めて価値の高い至高の一品と見るもの全てに悟らせるだろう。
何処かの国の王が用いていたと言われても、当然の事と受け入れてしまうほどのものだった。
然し、人が見れば、皿ではなく、皿の上に乗ったモノにしか意識が行かないだろう。
皿の上に乗せられたものは、人の首。鮮血滴る生首が、空ろな眼差しを虚空に向けている。

「この方こそが…私が唯一無二の愛を捧げた方……。この大皿の上にある限り、腐敗することも無く永劫に私達は二人きり……………」

少女の放つ妖艶な気配が更に増す。理性が沸騰しそうな程の気配。

「けれども私を見て微笑むわけでも無く……語り掛ける訳でもなく………………」

言葉には何の影響も見られない。感極まった様に、誠を抱く両腕に力を込めただけ。

「この方に微笑んで貰いたい…………それが私の願い」

「あ…………」

言葉はl衝撃によろめいた。確かにそうだ、誠君とは二人きりになれた。けれどそれだけ、誠君は前の様に笑ってはくれないし、話しかけてもくれない」

「お解りいただけたでしょうか……私と貴女は…願いを同じくする事が…出来るという事が……………」

少女の言葉に、深く静かに頷く。確かにそうだ。自分とこの少女は同じ願いを持っている。
二人きりとは言え、相手は物言わぬ─────どころか視線すら動かぬ身。
幾ら抱きしめ、語りかけても、全ては虚しく響くのみ。
永劫の一人芝居、虚し過ぎるパントマイム、それを終わらせ、想い人と笑い合い、語り合うという願いが。

「確かに私達は同じですね……サロメさん」

「私……真名…名乗りました………?」

「いいえ、けれども、有名ですよ…貴女の素敵な愛のカタチは」

「私と…あの方の結びつきが……多くのひとに知られているなんて………嬉しいです」

サロメは柔らかく微笑んだ。



【クラス】
アサシン

【真名】
サロメ@新約聖書及びオスカー・ワイルドの戯曲。

【ステータス】
筋力:E 耐久:E 敏捷:C+ 魔力:D 幸運:A+ 宝具:EX

【属性】
中立・中庸

【身長・体重】
150cm 44kg

【クラススキル】
気配遮断 E++
サーヴァントとしての気配を薄める
正面から対峙してもアサシンの気配は模糊として掴み辛い。

【保有スキル】
妖女(性):A++
生前のイメージによって、後に過去の在り方を捻じ曲げられた怪物。所有者は能力や姿が変貌してしまう。「無辜の怪物」とは似て非なるスキル。
その姿、立ち居振る舞い、果ては声や視線に至るまで性的な魅了効果を帯びる。
また、Bランクの天性の美の効果を発揮し、身体が傷つかない限り、アサシンがどのような状況にあろうとも肉体的な『美しさ』を維持する。
妖女(性)スキルにより獲得したスキル。
素顔を晒せば消滅する。
精神力もしくは精神耐性系でしか無効化或いは減衰できない。
抵抗できなければ、敵と認識していても、性的な衝動をアサシンに対して抱く。
このランクになれば性別を問わず通じる。
アサシンを意識しない程に誰かを愛しているものには効果が無い。
素顔を晒すと消滅する。


被虐体質:A
集団戦闘において、敵の標的になる確率が増す。
マイナススキルのように思われがちだが、強固な守りを持つサーヴァントがこのスキルを持っていると優れた護衛役として機能する。
若干の防御値プラスも含まれる他、Aランクともなると更なる特殊効果が付き、攻撃側は攻めれば攻めるほど冷静さを欠き、ついにはこのスキルを持つ者の事しか考えられなくなるという。
妖女(性)との複合効果を発揮した場合。攻撃側は思考と精神の状態がCランク以上の『狂化』を発揮した場合と等しくなり、文字通り獣と化す。


死の舞踏(ダンス・マカブル):A
宝具から派生した戦闘技能。
直線の動きは一切なく、円運動のみで構成された優美華麗な死の舞。
己の五体と身体を覆うヴェールを用いて、打撃斬撃投げる絞める極めると自在に攻撃する。
このランクになると、攻撃を受ける側も舞踏の振り付けに従って動いているように見える程。
あくまでも舞踏の技術を戦闘に応用させている為、守勢に回ると脆い。


精神汚染:C
精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しない。






【宝具】

恋愛幻想組曲(ファンタズマゴリー・ロマンシア)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジをはっきりと認識できる距離にいる者全て。 最大補足:姿をはっきりと認識できる距離にいる者全て。

常時発動型宝具。
7枚のヴェールで覆われたアサシンの姿を見た者は、其処に理想の女性の姿を幻視する。
ランク相応の正体隠匿効果と諜報スキルを発揮し、妖女(性スキルの魅了効果を向上させる。
アサシンに対しての衆人のイメージ、“サロメ=美女”というものが宝具となったもの。
人はサロメに己が理想の美女を見る。
この宝具は容貌のみならず、体型も幻惑させる。
素顔を晒すと使用不能になる。


運命の女(ファム・ファタール)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ: をはっきりと認識できる距離にいる者全て。最大補足:姿をはっきりと認識できる距離にいる者全て。

嘗てヘロデ王の前で披露した、七つのヴェールを纏って行う舞踏。
妖艶な舞踏は見る者の理性を蕩けさせ、狂わせる。
そしてアサシンの歓心を買うべく、狂わされた意識がアサシンに最も相応しいものと認識する、血と死をアサシンに捧げるべく殺人を行いだす。
アサシンが誰かの命を望めば、自らの命も顧みずに対象を殺害しようとする。
伝説の再現たる宝具。
“七つのヴェールの踊り”として知られている為に、ヴェールが一つでも欠けると使用不能になる。
アサシンにとってこの宝具はヨカナーンに捧げた愛の証である為に、進んで使う事はない。


死を想え(メメント・モリ)
ランク: A++ 種別: 対人宝具 レンジ:1-3 最大補足:一人

アサシンの舞は、ヨカナーンの首が銀の皿に載る結果を齎した。
この逸話が世に広まり、語り継がれるうちに、サロメが舞うと人の首が落ちるという認識が広まった。
この認識を基にした概念宝具。
アサシンの舞は強力な断頭の概念を帯びている。それはもはや呪いと言って良い。
舞うアサシンに、直接或いは物体を介して触れれば一切の防御や護りを無効化して首が落ちる。
ただし、この宝具の効果は、アサシンが相手に抱く感情に左右される。
何の感情も抱いていなければ、接触のたびに首にダメージが蓄積する、
如何なる防御や耐久でも『首に』対するダメージを減衰しか出来ないといったものに留まる。
真に相手を愛おしいと思った時、アサシンの身体は断頭の呪いとなる。
こな時抱く愛おしさとは愛情ではなく、己の妖女としての呪いを跳ね除ける男への称賛の思いである。
この宝具を発動する為には、素顔を晒さねばならず、上記の二つの宝具とは併用できない。



皿上の愛しき預言者(ヨカナーン)
ランク: EX 種別: 対人宝具 レンジ: ー 最大補足:自分自身

銀の大皿に載った預言者ヨカナーンの首。
この首の効果により、アサシンは罪人や罪に対する攻撃を大幅に削減する。
また、アサシンの幸運を大きく引き上げている。
土地や空間に対する汚染を浄化する機能も持つ。
銀の大皿は、上に載せたものを腐らせない効果を持つ。
現状、誠の首も載っている。

【weapon】
身に纏う七つのヴェール。

【人物背景】
血の繋がらぬ王から好色な視線を向けられる、舞踊を好む王女サロメは、ある日地下牢に幽閉されていた預言者ヨカナーンと出逢い恋に落ちる。
王の怒りを買って獄に入れられた平民を愛するも受け入れてもらえず。
そもそもが王女と平民という身分の差もあり、絶対に叶わぬ恋にサロメの心は衰弱して行くゆく。
ヨカナーンへの想いを忘れようとするかの様に、サロメは舞踊に励む。
ヨカナーンへの想いが深まるのに比して、舞踏費やす時間は伸び、一心不乱に、鬼気迫るものとなっていった。
やがてサロメは比類無き舞い手となったが、ヨカナーンへ想いが通じるは無く、王の視線はますます耐え難いものとなる。
ヨカナーンは投獄されているとはいえ、いつ解放されるか解らない。
ヨカナーンが解放されてしまえば、もう二度とその姿を見ることはできず、王の汚らわしい視線に晒され続ける。
心神が衰弱しきったところへ、王が宴の際に舞い手を競わせ、最も優れた舞い手に望む褒賞を与えるという話を聞く。
その時サロメに悪魔が囁いた。

「想いが届かぬならば、殺して永劫に己の元にある様にすれば良い」

そしてサロメは王の前で“七つのヴェールの舞”を踊り、ヨカナーンの首を手に入れる。
これで永劫ヨカナーンは私のもの。そう思ったサロメだったが、表情もすら変えない生首相手に愛を囁き続ける事に、精神が更に壊れて行く。
その最後は狂死したとも、生首相手の狂態を見た王が殺したとも言われる。


実際には1世紀ごろに実在したとされる女性。
古代パレスチナの領主ヘロデ・アンティパスを義理の父に、その妃ヘロディアを実母にもつ。
新約聖書では王の前で舞を舞って、褒賞として何が欲しいかを訊かれた際に、母であるヘロディアに相談し、ヘロディアに言われた通りにヨカナーンの首を要求したという。
新約聖書では名が記されておらず、唯ヘロディアの娘とだけ称される。
また、ヨカナーンの死を欲したのはヘロディアであり、娘は母に言われるままにヨカナーンの首を要求しただけに過ぎない。

ワイルドの戯曲では、ヨカナーンに恋慕するも拒絶され、ヨカナーンを我がものとする為に、舞踏の褒章としてヨカナーンの首を要求した事になっている。
聖書と異なり、サロメ自身がヨカナーンの首を欲し、主体的に行動してヨカナーンに死をもたらしている。

露出の高い衣服を身に纏い、王の前で扇情的な舞を舞ってら褒賞として預言者ヨカナーンの首を求めたというインパクトの強さから、多くの創作活動の題材となった。

【方針】
聖杯を取る


【聖杯にかける願い】
ヨカナーンに笑いかけて欲しい。

【容姿・特徴】
褐色の肌に黒髪黒瞳、髪の長さは腰まである。
年の頃は十五、六。肉付きは年齢に比して豊か。
身に纏っているのは頭と両手足と胴と背中を覆う7枚の下が薄く透けて見えるヴェール。
容貌そのものは人混みに紛れたら分からなくなる程度。
無口かつ陰鬱で、一人で抱え込んで悩むタイプ。
暗い口調でボソボソと途切れ途切れに話す。


【星座のカード】
魚座


【マスター】
桂言葉@School Days (アニメ版)


【能力・技能】
居合:
居合を嗜んでおり、地へ落ちる水滴を斬る事ができるほど。

感が異様に鋭く、世界が呼び鈴押す前に、世界の来訪に気付いた。

【weapon】
鋸。世界と誠の血に濡れている

【人物背景】
誕生日:一月四日。血液型:A型。身長:156.7cm。スリーサイズ:102-60-84cm。姓と誕生日の由来:桂太郎。
榊野学園1年4組。帰宅部。
おとなしくて引っ込み思案な性格、黒髪ロングの楚々とした佇まい、といった絵に描いたようなお嬢様キャラ。
趣味は読書、映画鑑賞(特にホラーととスプラッターが好き)。
スタイルと清楚でな美貌もあって、異性からからかわれる事が多かったために、軽度の男性恐怖症。
裕福な家庭に育ったお嬢様で、世間ずれしたところがあり、容姿と相まって同性からは嫌われている。
誠と付き合いだしてからはいじめられる様にもなった。
友人だと信じていた世界にこ、恋人だと思っていた誠を奪われ、澤永に押し倒され、精神がギリギリのところに、刹那が目の前で誠とキスをした事で精神が崩壊する。
(小説版では、包丁詰め込んだ鞄を持って刹那を殺しにいこうとしていた
その後自業自得と世界の発言で、誰からも相手にされなくなった誠が唯一自分を思い続けた言葉に縋った事で持ち直すも、直後に誠が世界に殺害され、完全に精神が崩壊。
誠の頭部を切断し、世界を学校の屋上に呼び出して殺害。
誠の頭部を抱いて、黄昏の海へ旅立っていった。



【方針】
聖杯を取る

【聖杯にかける願い】
誠君と以前の様に過ごしたい。

【参戦時期】
TV版終了後。

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最終更新:2017年07月30日 16:18