――海へいこう ありす
闇が広がっている。その身体を灰に覆われた、玄武岩質の大地が横たわっている。
――夏になったら 誰にも内緒で 海へいくんだ ふたりで
水気はなく、流れもない。柔らかな風が髪を靡かせることはなく、不甲斐ないこの星の微小重力は、毛髪の束をただ狼狽えさせるばかりで。
――太陽が きみを きれいにするたび
日輪の光輝は星系を遍く照らす。死の大地たる此処とて例外ではない。しかし、清浄なる人間は其処には居ない。ただ在るのは、狂奔に身を窶した、死への希求に四肢の生えた邪悪なるもの。
――月は追いかけてきて ぼくをひとりぼっちにする
死ぬことは許されない。君のささやかな願いは絶対の呪いとして、俺/ボクの身体を磔にする。過去の柵がボク/俺を縛り付けて、この暗い灰色の海に引きずり込むのだ。生命の輝きを失った六つの遺骸が、俺に悲しみを、怒りを、嘆きを、感傷を、空虚を、愛を置いていった。置いて行かれたんだ。去ってゆきながら、俺に寄り添うこの矛盾が、深い孤独の檻を形作る。そして自覚するのだ、乾いた海に立つ自分自身を。
それはひとつの夢だった。月と呼ばれるこの星で、生命の存在する辺境の惑星・KK=101の青白い輝きを見続けていた俺たちの、もはや母星に帰ること叶わず、恐るべき戦いの光で、故郷も、楽土も、宇宙の塵と消えた俺たちの、疫病が蔓延り、次々に死へ飲み込まれていった彼らの、最愛のひとを奪われ、ただ独り残された俺の、死への解放と、彼女の最期の言葉に板挟みにされた俺だけの、俺だけの夢だった。
死への欲求の具現が、俺を月の――KK=101の言葉で言うのなら――海へ立たせていた。実際、ここで死ぬことは簡単なことだ。基地内の調理器具で首を一刺しすればいい。悲しくも自活を続ける基地設備のケーブルを引っこ抜いて身体に押し当ててやればいい。何もかも投げ捨てて、一切の装備なく外へ飛び出せばいい。死は恐ろしいほど身近にあった。でも、それを選ぶことはできなかった。その誘惑全てに目をつむって、俺は自然に朽ち果てていくのを待たなければならなかった。
それが至高神たるサージャリムの言葉だったのなら、俺はそんなものの一切を蹴り飛ばして、サージャリムに中指を突き立てながら死を選んだだろうよ。だが、それが愛する君の、木蓮の言葉だったから。
「決して、決して自ら命を絶たないと約束して」
君が居なければ生きていけないとさえ思った。それでも愚直に君の言葉を守り続けた。覆いかぶさる孤独の重さに、心が折れそうになった。頭がおかしくなりそうになった。いや、半ば発狂していた。死はそこにあるのに手は伸ばせず、最後に摂取した秋海棠のワクチンだけがいやに効いて、元凶たる病に罹ることもなく、ただのうのうと生き続ける。それに耐えられない俺の心の弱さの発露がこの夢だ。
やがて、俺の身体はぶくぶくと膨れ上がり、眼孔から無色のゼリーを垂れ流して死ぬのだろう。それがいつもの流れだった。だが、そうはならなかった。そして、それは現れた。
気配を感じて思わず振り向いた。八年ぶりに感じる、生命の躍動の感知だった。
「な――」
息などできず、声も出せない環境であろうに、驚愕の言葉が漏れ出たことに気が付いたのは後の事だった。それは全身を白でまとめあげ、ぶくぶくと凹凸の激しいスーツに身を包んだ、頭部の黒いグラスの目立つ人型の存在。
俺はいつだったかそれを見たことがあった。KK=101の監視データベースの中にあった、KK人類の宇宙渡航服、そしてそれを着用するこいつは――宇宙飛行士。
何もかもがおかしいことだらけだ。俺たちとKK人類とでは身体のサイズがあまりに違いすぎるはずだ。彼らのものさしで俺たちを測れば数センチメートルほどの身長しかない極小の存在。
それだけ彼らKK人類は巨大であるはずなのに、目の前のこいつはなんだ? 俺とほぼ同程度の大きさで、立ち尽くしているこいつは――。
「きみは、夢を見ているね」
宇宙服の声が頭に響いた。テレパス、こいつもサーチェスの力を? しかし、もっと不思議なのはその調べが少女のものであったこと。一瞬間怯んで、俺は口を開いた。
「夢……ああ、そうとも。あんたも俺の夢か? 」
「私はきみの夢の文脈にいる。けれど、私はきみの夢ではない。私はそれに導かれて流れ来た」
宇宙服が俺の手元を指差した。そうしてようやく俺は、俺が何かを持っていることに気が付いた。
「カード……?」
金色の薄く引き伸ばされた、蛇使いの意匠目立つカード。裏面には大仰な枠の真ん中に十ばかりの、線によって繋がれた黒点が打ち込まれていた。これはKK人類が、KKから見える星を様々な事物に見立てて名前をつけたものだったろうか。
「一体全体なんだと言うんだ。これに導かれただの、なんだのと。お前は何者だ! ここはオレの夢なんだぞ! 」
「私は――わたしもあなたと同じ。これはあなたの夢であって、あなたの夢じゃない。そうでしょう? ザイ=テス=シ=オン……いや、小林輪くん」
先程とはいくらか色の変わった宇宙服の声が俺/オレ/ボクを酷く打ち付ける。ああ。ああ――。
そうか。そうだった。オレ……いやボクは紫苑なんかじゃない。小林輪という地球人のひとりで、それでも確かにボクの中には紫苑がいて。
それは地球が抱えるたくさんの憶い出、過去のひとつなんだ。そうしてボクらは過去の溶けた大気に包まれながら、狂おしいほど未来を焦がれてる。
「ああ……。そりゃあそうさ、今のボクは地球人で、地球の縮尺なわけだ。あんたが小さいんじゃない、ボクがでかいってわけですか。そして、これこそボクの夢」
よく見れば、手は小さく、肌も浅黒くなく、伸ばすに任せた黒髪は紫髪のショートヘアに変わっていて、俺は間違いなく八歳のボクだった。
灰色の大地は急速に引き伸ばされ、漆黒の空と、日輪の光輝と溶け合ってゆく。それでも宇宙服の背後にある地球は鮮明なままで、青白い光をたたえながらボクを見つめる。
「今度こそ、本当に目醒めよう。輪――わたしのマスター。月はきみを見送っている」
宇宙服が手を差し出して、ボクは躊躇いがちに、やがては力強く手を伸ばした。
指と指が触れ合う、その瞬間にボクらは一筋の光となって、引き伸ばされた世界と共に、薄暗い月の海を飛び出した。光線は地球を目指す。大気の層をくぐり抜けて、海へ。
――過去と未来のはざまで ぼくはまた きみの夏をみおくる 海へいこうありす
海へ、海へ――
――――
白を基調とした清潔な一室に声が響く。
「輪。身体の具合はどうかな」
「ああ、だいぶ良くなってきたよ。脚も見てよほら、こんなに動かせる」
輪と呼ばれた紫髪の少年は、白い布団に隠れた両足をばたばたと振るってみせた。ここは病室だった。
「それは何よりだ。では」
「ああ。そろそろ移動しなくちゃあいけないね、セイバー」
対するセイバーは白い五分袖のシンプルなワンピースに身を包み、角髪の結った幼女と呼んでも差し支えのない可憐な少女であった。二人はこの冬木という地に喚び出され、万能の願望機という聖杯を求めて戦う――聖杯戦争に参加するマスターと、そのサーヴァントであった。
輪とセイバーは一週間ほど前、あの月の海で邂逅した。それは紛れもない輪の夢の中のことであり、現実のことではなかった。
しかし、目を覚ました輪は、冬木市と呼ばれるらしい地方都市の一角、新都にある聖堂病院二階の一室に入院していて、おまけに傍らにはあの宇宙服の少女が佇んでいたのだから、心底肝を冷やしたものだ、と輪は苦笑する。
それから輪と、宇宙服の少女――セイバーは己の中に刻み込まれた不可解な記憶に気が付いた。聖杯戦争。冬木市。サーヴァント、マスター。魔術師……。そして、星座のカード。あのとき、東京タワーで拾ったこの不可思議なカードが自分をここに引き寄せ、そしてセイバーとの縁を結んだのだろう。
「――その符に心当たりはないが、私はそれに輪との強い繋がりを感じる」
ぼんやりとカードを眺めていた輪にセイバーは言う。セイバー、彼女は聖杯戦争において主たる輪を守護する使い魔、サーヴァントというらしい。
七つのクラスと幾つかの例外クラスに分けられた、彼ら英雄の霊はマスターの魔力をもって現界し、その強大な力で主を勝利に導く。そんな人間離れした彼らに対する三回の絶対なる抑止――
「この、令呪よりもか? 」
「ええ。令呪は私たちの契約の証であり、切り札となるものだが、実際に私を喚び出したのはそのカードのようだ。それに私たちはどこか似ている」
その通りだった。輪は紫苑を内包し、セイバーは――。
「……なるほど」
「だから、令呪が無くともとは言わない。しかし、その証ある限り私はきみの剣となり、流れ行かないための楔となろう」
彼女は幼くとも、守護者であった。輪は彼女の眩しさにどこか気恥ずかしさを感じて、そっとカードをポケットにしまいこんだ。
「そーかい。なんていうかその、さ。ちょっぴり前のボクだったら、その後者の言葉ですら信じられなかったろうに。今は……うん、心強いよ」
その言葉に、セイバーから見透かされたような目線を向けられている気がして、輪は慌てて話題を変えた。
「話が逸れちゃったじゃないか。それで、どうするつもりなんだ? 」
「きみの回復を待つ間、私は霊体化して院内で情報収集を行っていた。そうしたらこれを」
「地図か。この冬木ってえ街の」
「これによれば、ここから西方向に行けば未遠川と呼ばれる河川にぶつかり、そこを境に東側を新都、西側を深山町と呼ぶらしい。まずはこの川の上流を目指そう。上流ならば身を隠す茂みや、森の一つ二つあるだろう」
「いいけど、どうして川なんだ? 」
「言わなかったか? 私は川の守護者でもあるんだ。川沿いの方が力を行使するのに何かと都合がいい。それにここからなら深山町にも、新都にも気を配れるだろう」
しっかりと筋の通った提案が目前の幼女の口から飛び出るという事実に、これがサーヴァントというやつかと輪は実感する。と同時に、その点だけなら自分も然程変わらないなとひとりごちた。
「よし、じゃあそれで行こうか。ところでさ、すいてん……だかなんだっけ。よくわからないけれど、君のことはなんて呼べばいいんだ? 」
「水天皇大神だ。と言っても今きみと話している私自身は蛭子命という。しかし、真名の露見は戦闘に影響を及ぼす。今まで通り、セイバーで構わない」
「分かった。なるほどね、確かに、確かに似ているよボクらは……。――まあ、流れに身を任せてゆこうか」
「フ、それがいい」
セイバーは初めて笑みを見せた。
【クラス】セイバー
【真名】水天皇大神 /蛭子命
【出展】十二世紀・日本 平家物語、愚管抄等 / 日本記紀神話
【性別】女
【属性】中立・善
【パラメーター】
筋力D(C) 耐久A(C) 敏捷D(C) 魔力A 幸運D 宝具EX
※カッコ内はスキル・異形の呪発動前パラメーター
【クラススキル】
対魔力:B
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
共に沈んだ天叢雲剣の逸話から、龍王の娘であるとして、Aランク相当の高い対魔力能を誇っていたが、神呪に抗えなかった蛭子命と同一化されたことにより、Bランクまで低下している。
騎乗:A+
乗り物を乗りこなす能力。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。A+は竜種を除く、あらゆる獣や乗り物を乗りこなすことが出来る。
セイバーは年若での即位、度重なる戦乱のため、馬術を修めることができずにおり未所持のスキルであった。しかし、死後同一化された蛭子命により高ランクで取得した。
神そのものであり、また神が乗る船である、鳥之石楠船神を稚児の身でありながら乗りこなした蛭子命は高ランクの騎乗スキルを持つ。
【保有スキル】
神性:A+
その体に神霊適性を持つかどうか、神性属性があるかないかの判定。天孫の直系であり、厳島神社の祭神・宗像三女神の化生としての面も持つため、高クラスで保持している。
更にセイバーはその死後、水神・子供の守護神として神の一柱に祀り上げられた。その一面と生前の逸話が合致し、蛭子命と同一化。
国産みである諾冉二尊(だくさつにそん)の子、セイバーの皇祖神である天照大神の兄姉との複合は最高クラスでの神性を齎す。
異形の呪:C
不完全性を持って産まれ出たものの運命。筋力、俊敏と言った自身の肉体に関わるパラメーターをランクダウンさせ、自身の耐久力に補正をかける。
蛭子命の抗うことができない呪い。自分に向けた攻撃力ダウンの呪術と防御力アップの変化の複合パッシブスキルであり、現界と同時に発動する。
神霊の記憶から、普段は人の形を保っているが、このスキルによってある程度の形態変化が可能。特に手足の欠損に関しては即座に発現するが、一度崩した身体を元に戻すには全身で三時間、四肢で三〇分ほどかかるうえ、変化した先は液状になる。
液状の肉体は物理的ダメージをカットするが、熱量変化、魔術攻撃には通常通りのダメージ判定がある。なお、液状化した肉体を戻すにはそれなりの魔力を消費する。
魔力放出(水):A
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
攻撃時のブースト、または防御、噴出しての高速移動等、用途は幅広い。
放出される水はセイバーの魔力から精製されるものだが、周囲にある程度の水量があるならば、それ自体に魔力を編み込むことで魔力の消費を抑えることができる。
流転の支配者:C+++
時、言葉、知識、音楽。およそ流れるもの全てを操る神の権能。
宗像三女神の化生・安徳帝が死後、水天皇大神として神の一柱へ祀り上げられた際に得たスキル。
本来はAランクであり、こと水の操作に絶大な力を発揮するが、サーヴァント召喚にあたって大幅にランクダウンしている。
このランクでは、時流の操作や生命という概念への干渉など、大規模な操作は不可能であり、せいぜい人波に呑まれることなく歩き回ったり、通常のそれとは比較にならない早さでの情報の伝播が可能な程度である。
しかし、水や風の操作に於いては高い補正を受けることができる。
無辜の怪物(龍):E-
死の間際の行為や、その結果のために生まれたイメージにより、過去や在り方をねじ曲げられたモノの名。
八岐大蛇、龍王の娘と、龍・蛇の化生としての属性、または女帝としてのイメージを持つ。
本来であれば高ランクのスキルだが今回の召喚が神の側面の強いものであること、また同一化した蛭子命とスキル・異形の呪によってランクが下がっている。
そのため、自身が女性であること以外に変化は無いが、恩恵も無い。この装備(スキル)は外せない。
【宝具】
『形代の剣(つむをかれ/くさをなげ/くもをかけよ/かたしろとなせ)』
ランク:A+ 種別:対人宝具~対軍宝具 レンジ:1~200 最大補足:500人
崇神天皇の代、天之御影命の子孫によって造られた草薙剣の形代/レプリカ。
形代のため草薙剣そのものではないが、本物に等しい神威に満ちている。
真名を開放するごとに形状と性質を変容させる。真名開放に制限はなく、変容には"形代の剣"を通す必要がない。
"都牟刈大刀" (つむがりのたち) 「つむをかれ」
紡錘状の両刃剣で鳥の羽のように左右非対称に反り返っている。
その昔、八岐大蛇を屠った素盞嗚命が尾を切り落とさんとしたときに発見した業物。それは伊弉諾命から齎された神剣、天十握剣の刃を毀れさせたほど。
そのため非常に高い耐久性を持ち、その刃が毀れることはない。また、神霊の中でも荒魂に属する神々(悪神・邪神・荒神)に対して強い特攻を持つ。
"草薙剣" 「くさをなげ」
蛇のように曲がりくねった剣身を持つ、蛇行剣。SNにおいての剣身の伸びた
ルールブレイカーのような形。
記紀神話中、火攻めにあった倭健命はこの神剣をもって周囲の草を刈り掃い、これに迎え火を点けて難を逃れたという。
その逸話から、四面楚歌の状況、複数人との戦闘に対し効果を発揮する。
一人に与えた斬撃を、周囲五〇メートルに存在する"セイバーが敵と認識した"相手に対して、同様に与えることが出来る。しかし、セイバーが姿や気配を知覚、認識できない場合はこの限りではない。
また、倭健命の手から離れ、神剣手ずから草を刈ってみせたという伝説から、ある程度の自立性があり、自動的な防御、手中を離れての打ち合い、飛行が可能。
セイバーの知覚外まで離れた場合には、剣は消滅しセイバーの手中に戻る。後述の第二宝具発動に不可欠。なお、本来付くはずの植物への特攻はマスターの意向を汲んで外している。
"天叢雲剣" 「くもをかけよ」
鍛造された鋼製の直剣。
生前の八岐大蛇の上空には、常に厚い雲がかかっていたという逸話から、使用者の上空に常に乱層雲を作り出す。これは天候・環境に左右されず、真名を開放した時点で自動的に発動し、セイバーが建物内、地下にいる場合でも、その上空に雲を造り出す。
乱層雲はいわゆる雨雲であり、小さな水の粒が集まって構築されている。セイバーはこの雲に微量の魔力による「きっかけ」を与えることにより降水雲とすることが可能。
単に天気を悪くするだけの剣であるが、水神であるセイバーはスキル・魔力放出(水)の「水源」として使うことができる。
"形代の剣" 「かたしろとなせ」
通常時の状態。両刃の簡素な鉄剣で柄は黒い。
天皇の護身用装備で、装備者に対する神性特攻を半減させる。また、受容の剣であり、この形態が最も魔力や神威を乗せる用途に適している。
『坂上宝剣 (そはさんみょうとともにあり)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~500 最大補足:4人
毘沙門の化身と謳われた征夷大将軍・坂上田村麻呂の愛刀、ソハヤの剣。
蝦夷の蕨手刀に対抗するために作らせた、両切刃造りで先のわずかに内反りになった二尺五寸あまりの細身直剣。重ねの厚い剛刀であり、セイバーは両手持ちでないと扱えない。
"形代の剣"並に魔力の乗りが良く、ひとたび剣を投げ放てば相手と勝手に打ち合うという、"草薙剣"に似た形質を持つ。投げ放たれている最中は、田村の武技の力が剣に宿っており、セイバーが魔力放出を以ってして斬るよりも、より正確な太刀筋を見せる。
なお、田村は生前ソハヤを鳥や火焔に変化させられたと言うが、セイバーはできない。
真名開放には条件があり、第一宝具を"草薙剣"として開放していること・それが空中で自立している時のみ可能である。
条件を満たすと、同じく大蛇の尾から見出された草薙剣が、鈴鹿御前の三明の剣が一、顕明連に見立てられ、それに引き寄せられる形で大通連・小通連が顕現する。
通力自在の大通連・小通連、仏力に満ちた顕明連、田村の武技帯びるソハヤが対象を追尾し、相手を四つに切り裂く。
ソハヤ・顕明連(草薙剣)以外はセイバーは制御できず、立烏帽子の剣筋そのままに自動で斬撃を繰り出す。どの斬撃も、かつて大江山の酒天童子に並び称された鬼神・大嶽丸を斬り払った退魔の力が働き、絶大な魔種/鬼種特攻が付与される。
『水を持て、湿潤にして力強き者よ(ハラフワティー・アルドウィー・スーラー)』
ランク:EX 種別:結界宝具 レンジ:0~20+α 最大補足:-
宗像三女神の一柱・市寸島比売命は弁財天(サラスヴァティー/アナーヒター)と同一視され、水や川を司る神として崇められた。その力の一端を再現する宝具。水が留まっている場、もしくは流れている場(水路・河川・湖沼)でのみ宝具展開が可能。
水面及び、水辺・岸辺から二〇メートルほどを川の守護者アナーヒターの庇護に置き、そのもとを"清浄"にする。展開者及び、マスターの毒、病、またはそれに類する状態異常ステータスを快復し、対象サーヴァントのステータスをワンランク上昇させる。
また、結界内はBランク相当の陣地作成スキルで構築された魔術工房として扱われ、龍脈を結界内へ分水させることで魔力回復を早めることができる。展開には多大な魔力を消費し、マスターへの負担が大きいために一日一度が限度。
なお、結界内は水辺までは一般人が立ち入ることが可能だが、人避けの流れと水面に立ちこめる濃霧によって認識はできない。しかし、マスター及びサーヴァントに対する隠匿効果は皆無のため、丸見えである。
【weapon】
【人物背景】
第八一代天皇・安徳天皇。源平の確執深まる治承二年に産まれ、その生涯を戦乱の中に見るひと。
外祖父である平清盛の祈祷により宗像三女神の化生として生を受ける。生後間もなく儲君し、数え三歳には践祚するも、時の太政大臣・清盛によって高倉院政という建前のもと傀儡として即位。
即位後三年の後、源義仲の入京によってやむなく都を捨て、九州を転々とする。相次ぐ源平両軍の激突の中でも、屋島合戦での敗北が契機となり、天皇と平氏一門は海上へ逃亡。
しかし、壇ノ浦で捕捉され平氏軍は決定的な敗北を喫し、一門は滅亡。平氏方総大将・平宗盛に連れられていた安徳天皇も祖母・二位尼に抱えられ入水し、水底の都に散る。
この際に共に沈んだ三種の神器のうち、神剣のみが見つからなかったことから、安徳天皇はかつて神剣を素盞嗚命に奪われた八岐大蛇の化生である、龍王の娘であり龍宮へ神剣を持ち帰ったなどと、数々の伝説が語られることになった。
死後はその夭逝を慰めるべく、久留米水天宮、赤間神宮などで水神・子供の守護神である水天皇大神として祀られる。その際に境遇の似通った蛭子命/恵比寿と習合した。
二柱は意気投合し、お互いを埋め合わせるかのようにその神威を高めていった。此度の聖杯戦争では彼/彼女と共にひとつのサーヴァントとして召喚されている。
心優しき少女であり、また信心深い。皇祖神や仏を敬い、天命にひしと寄り添う。良く言えば受容の心を持った度量の大きい人物だが、悪く言えば状況や人に流されやすく、自分を確立できない人物である。
崩御された歳が歳であるので無理はないのだが、神の一柱として民草に祀られている以上、これで良いものかと悩んでいるようだ。
現在は神格のより高い蛭子命が精神的支柱となっているので、普段よりしゃんと立つことができている。
自身がサラスヴァティーやアナーヒターであったことはうっすらとだが覚えているようで、その記憶がスキルや宝具を形成しているが、力の制約はかなり受けている。
某騎士王ではないが、今回の召喚の際に直感的にとても嫌な気配・予感を感じ取ったようでいつもより神威が少々陰っている。そのため主人格を蛭子命の側面に譲っており、彼女はその内から状況を俯瞰している。
なお、身体は不定形でなくしっかり人型にしてほしいと蛭子命にお願いしており、蛭子命はそれに従い自身を形成している。
一人称は"わたし" 蛭子命のことはヒルコさんと呼ぶ。マスターのことマスター/輪くんと呼ぶ。
安徳天皇/水天皇大神のクラス適正としては、セイバー・バーサーカー・アヴェンジャーが挙げられる。
通常なら応じたとしても安徳天皇として召喚されるのだが、今回は神霊・水天皇大神として召喚されている。更に習合相手の蛭子命の側面も色濃く反映されており、此度の聖杯戦争の異常性を物語る。
蛭子命。伊弉諾命、伊弉冉命が国産みの際に産んだ原初の子。不具の子であったとされ、三年をかけても立つことができなかったので、二柱により鳥之石楠船神に乗せられて、オノゴロ島から流されてしまった。
蛭子命はヒルコと読むが、ここから「日る子」であり、貴い「日の御子」である故に流されたとする伝説もある。実際、子作りの際に伊弉冉命から声を掛けてしまうことさえ無ければ、天照大神に匹敵する神格を得ることができたという。
貴種流離譚に従えば、英雄=蛭子命は流された先で養われ、何れは諾冉二尊へ復讐することとなるだろう。しかし、蛭子命は流された先で勇魚として幸運を齎し、神威を発揮するのみであり、やがては福の神に結び付けられたほど。
当人もこれは与えられた運命であり、何よりこの醜き身体こそ父母との繋がりであるのだと受け入れている。そのためにアヴェンジャー適正は破棄している。
性格は穏やかであり、感情を烈しく表すことは無い。むしろ乏しいほう。マスターの命令には素直に従うが、蛭子命や水天皇大神から見て間違っていることであれば、諭し説得を試みることもある。
座や聖杯からの情報は確かに受け取っているのだが、その出力がやや斜め上方向にされることがある。セイバーが身につけている宇宙服もその一つであり、これは仮に自分や言仁(水天皇大神)が同じ死に目に遭おうとも、二度と死ぬことのないように、と心を込めて魔力で編んだものである。この通り、心優しき神なのである。
水天皇大神のことは言仁(ことひと)と諱で呼び、マスターのことは輪/マスターと呼ぶ。
クラス適性はランサー・ライダー・バーサーカー・アヴェンジャー(破棄)が挙げられる。
何かに怯える水天皇大神であるが、それでもひとつ大きな事を成したいと思っている節があり、そのために聖杯戦争への勝利を目指している。また、子供の守護神であるのだからマスターは命に代えても護るという心持ち。蛭子命もそれは同じ。
【特徴】
二振りの剣を帯剣した、小さな宇宙服に身を包む六~七歳ほどの子供。ヘッドグラスは暗く、外部から表情は窺えない。首部は元来のものより柔軟で頭部を動かして周囲を見渡すことが可能。その中には角髪を結った儚げな少女の顔がある。
宇宙服は魔力で編んであり、鎧としての役割も持つ。背部のバックパック状部分や足から、スキル・魔力放出(水)・流転の支配者を利用した水流を噴出しての高速移動を好む。やめてください……アイア○ンマン……
普段は白い五分袖のワンピースを着用。悪目立ちが過ぎると輪に言われて、他の格好を求められ、束帯、水干と姿を変えた結果、呆れた輪に売店のファッション雑誌を買ってもらい、それを参考にしている。
【聖杯にかける願い】
今は、マスターを勝利させ早く元の世界に帰してやりたい。また、できれば水天皇大神が気にかけている坂上宝剣を田村大明神に返還してやりたい。
【マスター】
小林輪/ザイ=テス=シ=オン(紫苑)@ぼくの地球を守って
【マスターとしての願い】
ありすの居る一九九二年に帰る。/(もしも、かなうのなら)戦争の無い世界を作る(とかつて考えた男がいた)
【weapon】
【能力・技能】
Extrasensory Perception. 要は超能力のことである。しかし、輪のそれは地球上の超能力とは些か異なる。
かつて、ここではないどこかにサージャリムという、黄金の翼を持つ創造神がいた。このサーチェス・パワーとは文字通りサーチェス、サージャリムの力、恵みの発現であり、彼女が創造した星系の十人に一人が持つと言われている。
地球の超能力とは決して混ざりあうことがなく、仮に地球の超能力者とサーチェス能力者が力をぶつけ合っても、お互いに自らの力が跳ね返ることになる。
力の種類はさまざまで、透視やテレパシー、予知能力、念動力、テレポート、変声など多岐に渡る。
輪は念動力・テレポート、変声、バリア、空中浮遊において大きな力を作中で見せている。マスター戦では大いに役立つだろうが、サーヴァントには太陽系外の力と言えど簡単には通用しないだろう。
また前世である紫苑も強大なサーチェス・パワーの使い手で、輪の力は彼に由来する。
意外にも戦闘、能力を使い慣れており、また高い知能から策謀にも長けている。また、シオンはエンジニアリングの天才であり、機械等に強いが地球ではあまり役立たないだろう。
【人物背景】
シア星系の衛生テス出身の戦災孤児、辺境の惑星・地球“KK=101”を監視する月基地出向スタッフの一人であったザイ=テス=シ=オン(紫苑)の生まれ変わり。
主人公・坂口亜梨子(前世は想い人のコウ=ハス=セイ=テ=モク=レン)のお隣に住む小学二年生。漫画とイタズラとガムが好きで少しませたクソガ、都会っ子。
引っ越してきた亜梨子に密かに憧れを抱くが、幼さゆえにイタズラを繰り返し亜梨子を怯えさせてしまう。その後、亜梨子も絡んだベランダからの落下事故に遭い、その際亜梨子による無意識の木蓮の守護を受け、内なる紫苑の記憶が覚醒。異星人・紫苑の知識、サーチェス・パワーを扱う天才少年へ変貌した。
しばらく後に母星が星間戦争により壊滅。帰る場所を失ったスタッフらは地球に降りるべきか否か迷う。紫苑は地球に降りるべきだと主張する強硬派であった。
しかし、その急進性から危険視され、また木蓮とのトラブルもあり軟禁。そうこうとしているうちに基地内で伝染病が発生、次々とスタッフが死んでいく中、医学博士の秋海棠がワクチンを完成させる。
しかし、当時既に病に罹患していた秋海棠は、密かに恨みを抱いていた紫苑に復讐せんと、紫苑に正規のワクチンを打ち、木蓮には栄養剤を注射して、みなの死後も生き残るよう謀った。
紫苑は策の通り、生き残るも、最愛の木蓮に自殺をしてはならないとお願いされており、そこから九年を遺体に取り囲まれて過ごした。彼の最期は半ば発狂したまま、虚ろに何かの機械を作り続けていたという。
前世が戦災孤児であるため、その過酷な記憶をまざまざと見せつけられ苦しむ。やがて、過去へ引きずられることに恐怖し、元凶たる月基地を破壊せんと考える。一方で紫苑は月基地を稼働させ、世界に平和を訪れさせようと考えていた。
それは東京タワーに異星技術の通信装置を取り付け、月基地を稼働。月の通信機に木蓮の力に覚醒めた亜梨子のキナサドと呼ばれる聖歌と、反キナサドたる黒聖歌を地球に放送し、その植物を異常成長させる/植物を休眠状態にさせ活動を停止させるという能力を持って、世界の人間に神の存在を実感させ、争いをやめさせるという壮大で、強引な思惑だった。
二人は一時的に協調し、月基地を稼働/爆破させるために必要なスタッフのキィ・ワード収集に勤しむ。しかし、最終的には稼働/爆破には失敗してしまい、輪は放心状態のまま、最終決戦の地・東京タワーの第二展望台から落下した。
落下し、草原に身を運ばれた瞬間、輪の姿は掻き消えた。その時間軸から参戦。
【方針】
とりあえず身体は癒えた。セイバーの提案に乗り、未遠川上流を目指す。
最終更新:2025年08月01日 03:56