「この宇宙で、一番大きいものは何だと思う。『
デュフォー』よ」
冬木の深山町に存在する、月の家賃三万円、板張りの床と白い壁紙と言うチープな洋装が家賃の額に相応しい安アパート。
その一室で、男は問うて来た。飾り気も何も無い、朱色の袈裟と、黒色の法衣を着こなす、剃髪の男だった。浮かべる不敵な微笑みが、大人物としての風格を、
銀とも白とも取れる髪の色をした青年、デュフォーに感じ取らせてくる。ただ者ではない。どんな人間を見てもそれ程まで動じないデュフォーが、そんな事を考える程には、目の前の男は、カリスマとも取れる不思議なオーラを醸し出していた。
「色々、オレには考えられる。一番大きいを指すものが『物質』で良いのなら、それは星になるだろう。逆に、大きいを指すものが『空間』であるのなら、それは宇宙だ」
デュフォーと名乗る、白い髪が特徴的な、表情の筋肉が凍結して動かせないと言われても納得するであろう程の無表情で、
淡々と、目の前の僧侶の問答に答えた。それはまるで、直前まで暗記していた英文をスラスラと口にして見せるかのような、流れるが如き見事な返答であった。
「お前らしい答えだな」
笑みを綻ばせ、目の前の男は口にした。その言葉が、デュフォーには気に入らなかったらしい。唇を曲げながら、言葉を発した。
「その言い方だと、オレの答えは間違ったものだ、と言っているのと同じだぞ」
「いや。お前は間違っちゃいないさ。俺も、真面目に答えろと言われれば、お前と同じ答えを言っていただろうさ」
「では、お前の考えていた、真面目じゃない答えは何だ。キャスター」
デュフォーの強い語気を受け、目の前の僧侶は、苦笑いを浮かべた。
目の前の男はプライドが高いらしい事を、此処までのやり取りで汲み取ったからだ。自分に解らない事があると、少しムキになる。
青年とも言うべき年齢の男の子とは思えぬ程、老成しきった雰囲気をデュフォーは出してはいるが、意外と子供らしい所があるじゃないか。そんな事を、この禿頭の男性は思っていた。
「この宇宙で一番大きなものとはな、『言葉』さ」
「言葉、だと?」
僧侶の言った事が、信じられないらしい。
その瞳に鋭い眼光を宿らせながら、男を睨むデュフォーの姿からは、次なる説明を要求する、と言うオーラで満ち溢れていた。
「信じられんか? デュフォー」
「ああ」
「だがそれでも、言葉が一番この世で大きいものなのだ。何故なら、どのような大きさのものも、言葉でそれを名づける事によって、『名と言う器』に収める事が出来るからな」
「成程な。お前の言う通り、星や宇宙ですら、言葉で説明出来てしまう。だが、言葉で名付けられぬ程大きなものが、あるのではないのか?」
「なら、それがあるとして、それが何であるのか俺に説明出来るか? デュフォー」
「……いいや。不可能だな。それをお前に言葉で説明した途端に、それは、言葉より小さいものになるからだ」
「だから、俺は言葉がこの世で一番大きいものだと言ったのさ」
不敵な笑みを崩さず、僧侶は言った。それが、デュフォーには面白くないようで。
「なら、この世で一番小さい物とは、なんだと考えている?」
だから、先程僧侶が言った事の反対を、逆に問うてみた。
「それも言葉だろうな」
「何故だ?」
「どんな小さいものも、言葉でそれを名付ける事で、それを人に説明する事が出来るからさ」
「言葉で名付けても、その言葉のメッシュからすり抜けてしまう程小さいものがあるとは思わないのか?」
「なら、それがあるとして、それが何であるのか俺に説明出来るか? デュフォー」
「出来んな。それをオレが言語化させた途端に、それは、言葉よりも大きくなるからだ」
「だから、言葉はこの世で一番小さいものなのさ」
腕を組み、フム、と言ってからデュフォーは、カーテンを開けきった窓の傍に佇む僧侶を睨めつける。
彼は、今もなお、なにが面白いのかわからないような微笑みを浮かべ、デュフォーの事を眺めていた。
底が知れない。デュフォーはそう思う。自身と同じ能力を持った高嶺清麿についても、そんなイメージを抱いた事はある。
だが、目の前に佇む禿頭の男の場合は、別格。老成し、完成されきった立ち居振る舞い。常に浮かべている薄い微笑み。
相対した者の内奥すら眺められると嘯いても、それが事実だと信じてしまうであろう、透明な光を宿したその瞳。
どれもこれもが、魔界の王の玉座に選ばれた、ガッシュ・ベルのパートナーだった男には持ちえなかったもの。
いい意味で熱く、直截的だった清麿と、目の前のキャスターは、正反対な人物である。
しかもこの上、禿頭のキャスターは、自分と『同じ能力』すら持っていると言う。
頭の良さでは兎も角として、能力の使い方や、その解釈の仕方に関して、目の前の男は、まるで、デュフォーとは違う使い方をしているようであった。
その事が、デュフォーには、堪らなく不気味な風にも映るし、例えようもない程の大物にも映るのである。
「……キャスター」
「なんだ?」
「オレと同じ様な能力を、持っていると言ったな」
「お前の場合は、頭に浮かび上がるのだろうが、俺の場合は、視界に言葉として浮かび上がると言う違いこそあれど……まぁ、似たような力ではあろうよ」
「キャスター。お前程の頭の持ち主だったなら。オレと同じ能力を持っていたのなら。お前は、お前の生まれた時代、王にでも、神にでもなれたのではないのか?」
微笑みを浮かべて、デュフォーを眺め続けるキャスター。自分の主となった青年の紡ぐ、尊い言葉を男は聞き続ける。
「キャスター。お前は、オレと同じ力(アンサートーカー)を持ちながら、雲の上にも天の上にも立たないで、何故、『弘法大師空海』としての道を選んだ? お前の名は知っている。傑物であるともな。そして、実際に言葉を交わして見て思った、やはり、お前は傑物何だと。だが、お前程の男が、オレと同じ力を持ちながら……、その人生で学んだ事は、相手を煙に巻く問いかけ……禅問答に過ぎなかったのか?」
「勿論、それだけじゃなかったさ」
デュフォーの、長い言葉が終わった後、キャスター――弘法大師、つまり、この国に於いて『空海』と言う名で、古くから、そして、広く親しまれている大僧正は、落ち着いた声音で言葉を発した。
「退屈だったな。やる事なす事、これから行おうとする事に対して、何をすれば、何を用意すれば、最良の結果になるのか。勝手に教えてくれるわけだが、これが実に、面白くないのよ。自分で考えた訳じゃないのに、その通りにやれば、思い通りの結果が常に待ち受けている。そこには、俺の実力何てこれっぽっちも関係ない。この千里眼さえなくなってしまえば、俺は、この世で一番必要のなくなる人間になるのではと、本気で思った事もあるよ」
それについては、実を言うとデュフォーも、嘗てはそう思っていた。
これから行おうとする事、これから学ぼうとしている事柄。それについての最適解が、勝手に頭の中に浮かび上がる能力。
それこそが、彼の言う所のアンサートーカーであった。それを高めさせる為に、昔は色々な勉強を叩き込まれて来たが、それにしたって、
学ぼうとする段階で答えが勝手に表示されてしまう為、ちっとも面白くない。例えるなら、一千万ページもある計算ドリルを、解答用紙を片手にもったまま解き続けると言う行為にそれは等しい。そこに、面白さを感じ取るなど、不可能な事だろう。それと同じような事を、空海は遥か昔に体験していた。その事に、幾許かのシンパシーを、デュフォーは感じてしまっていた。
「だからな、俺は思ったのさ。俺の千里眼でも、絶対に答えの表示されない……つまり、達成不可能な事柄に、挑戦してみようとな」
「それが……」
「そう、『密』であったと言う事さ」
密。つまりは、『密教』である。この国においては、飛鳥時代の昔から密教は輸入されはしたが、体系だった教えではなく、
雑密と言う、他の仏教宗派の一部として伝えられたに過ぎない物だった。この国に初めて、体系だった純粋なる密教、つまりは純密と呼ばれる物を、
最初にこの国に伝えたのは誰ならん、空海であった。一般的には、普通の人間には理解されない程難解な教義を掲げる事が多い、神秘学。
仏教においてはその神秘学的なカラーが一番強いのはこの密教であるが、この密教というものは、およそこの地上に存在する神秘学のカテゴリーに入る学問の中で、
最も理解が困難な一派であった。これを空海が理解出来た理由が、アンサートーカーに限りなく近い能力を持って居たから、と言われれば、成程確かに理解は出来る一方で、これが歴史の真実だと言うのならば、余りにも、夢がなさ過ぎる話であった。
「だが、キャスター。お前は密を理解したのだろう。何処が、達成不可能な事柄なのだ?」
「理解しただけさ」
空海の笑みが、少し崩れた。大胆不敵そうな笑みから、皮肉気な微笑みに。
「俺が本当に目指したものはな、デュフォーよ。密教の理解などではないのだ。『この星の全ての人間の生を、豊かにしてやりたかった』と言う事なのよ。密教とは、その為の道具に過ぎない。密教は、本質ではないのだ」
「……出来ると、思っているのか? キャスター」
「出来ると、思っていたのさ。今も、思っているぞ」
「そんな事、出来る筈がない」
「かも知れないな。だが、逆に問おうか、デュフォーよ。お前の頭に、『全ての人を幸せにする方法』とやらが、浮かび上がるか?」
空海に言われ、その事をデュフォーは、顎に手を当て夢想する。
――全くと言って良い程、アンサートーカーが発動されない。単純な計算問題から、数多の化学式についての問題、果ては初めて見た言葉の意味すら理解出来る、
己のアンサートーカーが、その方法論の一つもデュフォーに示してくれないのである。そう、その答えは解り切っていた。
『人によって、幸福と感じるものの尺度が、余りにも違い過ぎるから』に他ならない。
「恐らく思い浮かばないだろう。だが、それは恥ずべき事でも何でもない。それが当たり前なのだ。個人を幸福にする事すら、俺にとっては難事なのに、これが世界中の全ての人間となると、かの釈迦とて不可能な事であろうよ。だが、不可能と解って居ながら、俺はそれを求めたのさ」
「千里眼の呪縛から、逃れたかったからか?」
「初めの内は、そうも思っていた。だが、続ける内に、俺も本気になった。俺の考えた、俺なりのやり方で、世界の人間の生活を豊かにする。初めて俺が、世界から求められていると言う実感を得たよ。唐に渡ったのも、密を学ぼうとしたのも、方法を学ぶ為だけに過ぎない。それ自体が目的ではなかったのだ」
「……何故、密で世界が救えると思った?」
デュフォーには、それが解らなかった。世界中の人間を幸せにする。言う事は簡単だ。
だが、実際には先程も述べた通り、人は人によって、何を求めるのかと言う事が千差万別であり、それを一時に全て満たす事など、どだい不可能な事なのだ。
密教とは、厳しい修行を行うものもあろうが、結局を言ってしまえば、内観、心についての教えである。確かに、それを以て満たされる人間もいるだろう。
だが、密教では、空腹の子供は救えない。死を確約された病人の病を治す事は出来ない。死と、別れの苦しみを癒す事は出来ない。何故、空海は密教で、人を豊かに出来ると思ったのだろうか。
「デュフォー、お前も解っているだろうが、人が幸せになれないのはな、人によって幸福を感じる事柄が違うからなのだ」
「ああ、オレもそう思う」
「密教はな、天の理を解りやすく教えられる道具だったからさ」
「天の……理?」
解っていた事だが、密教について踏み込むとどうしても、神秘学的な話にならざるを得ない。
デュフォーには理解出来ない事柄ではないが、抽象的で哲学的なカラーが余りにも強い話である為、余り好きではなかった。
「そう構えるな、解りやすく説明してやる」、と、苦笑いを浮かべて空海は言葉を続ける。
「なあ、デュフォー。俺とお前は、違う人間だな」
「当然だ」
デュフォーが言った。
「お前が学生で、俺が沙門だからと言う訳でもない。人種の違いだからでもなければ、金持ちでも貧乏人だからとも違う」
「ああ」
「だがな」
其処で、空海は指差した。窓越しから見えるベランダ、その数m先に生えている、ある一軒家の桜の木。
春はもう過ぎ、緑の若葉を咲かせているそれに、デュフォーと空海は目線を送った。
「あの桜からの距離は、皆同じなのだ」
「……何? キャスター、話がややこしくなってるぞ」
「なら、あの雲だ」
今度は空海は、上を指差した。
デュフォーの住んでいるアパートの天井ではない。窓越しに広がる、青空だった。
空には一かけら二かけらの小さい千切れ雲が、食べかけのメレンゲのように浮かんでいる。
「あそこを流れる雲が見えるか?」
「ああ、見える」
「あの雲からの距離は、俺達は元より、此処に住む誰も皆同じだ。金を持っているからあの雲に近く、貧乏であるからあの雲から遠い。頭が良いから悪いから、雲が遠い・近いと言う事はないだろう?」
「ああ」
「皆、同じ人間だ」
「今更語る事じゃないだろう」
「だが、倭人と波斯(ペルシア)人が違うといえば違う。金持と貧乏人とも違うといえば、違うだろうが?」
「そうだな」
「何故、なのだろうな?」
「オレに振るな。お前が答えるものだろう」
「違うと言えば違う。同じと言えば同じ。それにはな、理由がある」
「それは?」
「それはな、倭人だとか波斯人だとか、沙門だとか儒者だとか、金持とか貧乏人だとかいうのはな、『人の理』が造った分け方だからさ」
「人の、理?」
「沙門や儒者、倭人や波斯人、金持と貧乏人が同じと言うのは、天の理だからだ」
「それは、解る」
「そこでだ、デュフォーよ」
微笑みを浮かべる空海。
「倭人である俺と、洋人である俺とお前が同じなように、其処らの樹木も、やがて咲くであろうあの桜の花も、犬や猫も、蛇や魚も、俺やお前と同じものなのだ」
「む――それは」
「そう。皆、同じ生命なのだ。天の理からすればな」
舌に油が塗られているかのように、男の話は、止まらなかった。
「俺達と、花や犬、樹や蛇や魚が同じ様に、それらと、この建物が建てられた地面、其処らに転がる石や空に浮かぶあの雲。あらゆるものが、同じものなのさ。天の理の内ではな」
――。
「その宇宙の原理が、俺にもお前にも、あの桜にも雲にも、お前のお隣さんにも、此処に住む家にも、あのテレビとか言うものにも、魚や野菜を煮る匂いにも満ちている。あらゆるものが、そう言った宇宙の原理に貫かれている」
「それはつまり――曼荼羅か」
「その通り。それをな、俺は面白いと思った。これこそが、世界を満ち足りたものにする方法だとも思った」
空を見上げながら、空海は、説法を続ける。
「全てのものは、天から見れば皆同じ。全てが等しく『もの』であり、全てが等しく『命』である。そうと心の何処かで理解すれば。頭の何処かに留めておけば、きっと、世界は少しづつ良くなると、俺は思ったんだ」
「だが、現実には、そうも行かなかったのだろう。そうなってしまった理由が、お前には解るか?」
「知っているよ」
デュフォーの所に空海が向き直る。鉄面皮さながらのデュフォーと、微笑みのマスクを被ったままと言われても納得する程、
顔がアルカイック・スマイルから動かない空海の目線とが、絡み合った。
「人の理もまた、天の理に負けぬ、一つの宇宙であったからさ」
「人の理と言うのも、あるのか」
「なあ、デュフォー。数……つまりは、一枚だとか二個だとか三粒とか、そう言った数で表現出来るものは、誰の目にも見て明らかだろう?」
「ああ」
「堅いとか、柔かいもそう思うだろう?」
「ああ」
「同様に、熱いとか冷たいとか、更に、正しく使用される大きいとか小さいも、明らかなものだ」
「そうだな」
「例えば、ある二つの石を比べた場合、どちらの石が堅いか柔かいか、どちらの石の方が大きいか小さいか。その答は、その答を出す者が人であろうが獣だろうが虫だろうが、同じものだ。これが、天の理と言うものだ。誰から見ても、同じものだからな」
「理解はした」
「ところがこれが、どちらの花が美しいか醜いか、どちらの宝石の方が綺麗か、林檎や蜜柑のどちらが好きか嫌いか、となると、途端に人の理になる。『あらゆるものは等しく同じもの』であると言う天の理の中には、『美醜や好き嫌い』の概念が存在しない。どちらの花が赤いとか白いとか、花びらの数が四枚とか五枚とかいうのは、天の理の内であるが、これが花の美しさとなるとややこしくなる。赤の花が美しいという者もいれば、白い花が美しいと言う者もいよう。それが虫や獣、花の美や醜について答えを出させれば、その答は人とは全く違うものになるか、或いは美醜と言う問や答、もしくは、そんな言葉自体が彼らには存在しない事もあるだろう」
ふぅ、と空海は一息ついた。
「この人の理と言うものが、人を苦しめ、そして時に人を豊かにする、『天の理に匹敵する一つの宇宙である』、と言う事が曲者だった」
「どう言う意味だ?」
「天の理と人の理、どちらの方が上か下か。そんな区別はないのだ。どちらも等しく、一つの『理』だ。人はな、天の理だけでは生きられない。人が生きる以上、人の社会・人の言葉・人との繋がりが必要になり、そしてそう言った人の営みとは、天の理が万物を貫くように、人の理にも貫かれている。避けられないのだ。人の理からは、人である以上な」
「だが全てはお前の言った通り、一つの命であり、『もの』であり、この宇宙には好き嫌いや美醜の概念が存在しないのだろう?」
「存在はしない。だが、人がそう言ったものをどうしようもなく認識しがちな生き物なのは事実だ。だが、美醜にも好き嫌いにも、善もなく悪もない。存在する事自体は、罪ではないのだ。だが人は、これらを軸に動く。これらを軸に、善行を成すし、悪も成す。人の理とはな、人の生き方を豊かにもするし、或いは貧窶にも陥らせてしまう、危うい天秤なのだ。人の理とはな、デュフォー。人の産み出した最も偉大な発明の一つにして、最も危険な魔羅(あくま)の一つなのだ」
考えるデュフォー。
美しい事、醜い事。それ自体は、宇宙には存在しないのかも知れない。だが、これ単体は罪ではない。
罪なのは、これらを判断基準にして、悪辣な差別を行うもの、迫害を行う者なのだろう。それは同様に、好き嫌いにも言えるだろう。
人の理、確かに難しいかも知れない。美しいものや好きなものを愛でたり、丁重に扱う者は、この世には数多いだろう。
一方で、醜いもの、嫌いなものを敢えて克服しようと、血の滲む努力を行う者も確かにいるであろう。美醜、好き嫌い。
結局は、それと付き合う人間次第である。だからこそ、空海は人の理と言うものを天秤と言い、天の理に等しいものだと説明したのだろう。
「人である以上、人の理からは逃れ得ぬ。だからこそ、俺は、天の理を、宇宙の話を説いた密に、救いがあると信じた。俺もお前も、お前の隣に住む男も女も、お前が通う大学の生徒達も、皆が全く違う境遇から生まれた違う人間だ。美味い物を喰えば幸福だと感じる者もいよう。描いた絵や、執筆した物語、己の書いた書を褒められる事が幸福だと思う者もいよう。男と交わり、女を貪る事に生を感じる者だっているだろう。幸福の尺度も、それぞれ違う。だが、天の理から見れば、趣味趣向こそ違う人間かも知れないが、皆が同じ命なのだ。人だけじゃない。虫も、魚も、蛇も、獣も、地面も、空も、雲も、樹木も草木も花々も。皆が、同じ命だ。それを、頭の片隅にでも、皆に覚えておいて貰いたかったから。それが、世界を良くする方法だと思っていたから、俺は密を学んだ」
長く語った空海の目を真っ直ぐ見て、デュフォーは口を開く。
「仮に……それを人が理解し、憶えていたとして、その人物は、どうなる」
それが、デュフォーには知りたかった。密を知っていれば、人はどうなるのか。
それは、彼のアンサートーカーも教えてくれない、知識を憶えると言う事は、憶えると言う行為に過ぎない。それは、問題ではない。それ自体で完結してしまっているからだ。
「少しだけ、人に優しくなるかも知れなくなる、かな」
「……何?」
空海の、想像だに出来なかった言葉を受け、デュフォーは、唖然とする。
「デュフォーよ。お前も解っているだろう。密は確かに、仏陀が釈迦であった時代に、彼が産み出した解毒と癒しの術法が元となっているし、俺も同じ事は出来る。だがな、所詮はそれだけなのだ。密を極めたからと言って、その人物に残るのは、その人物だけが優れた法術や法力を奮えると言う結果だけだ。その人物が、人の為に動かねば、何の為の密なのだ?」
更に、空海は続けた。
「この世の全ての術、左道も右道も、黒魔術や白魔術も、邪法や聖法も、それ自体は単なる知識に過ぎない。知識では、人を救えぬ。人を殺せぬ。それを活用する人に掛かっているのだ。俺の求めた密ですらも、この桎梏から逃れる事は出来ない」
すぅ、と言う呼吸の音が聞こえて来た。空海の口からであった。
「密の術法を憶える必要はない。ただ、天の理を、一かけらでも、多くの人々に知っていて欲しい。それが、この世界を豊かにする方法であると、俺は信じていた」
「ゆっくりとした話だな」
「デュフォー。如何なる仏法も、人の世界を突然豊かにさせる事は出来ないのだ。これは、景教や?佩教にしても、同じ事。もしも、ある日突然世界を良くする術のある法が存在するのならば、直ちにその道が世界の主流となっているのだからな」
それは、そうだな、と、デュフォーも思った。
「俺は勿論、釈迦ですら、幸福の感じ方が違う人間達を一時に満たさせてやる事は出来ない。だが、幸福の感じ方の選択肢を……苦諦との付き合い方を、示してやる事は出来る。その選択肢を増やす手段が、俺は密だと思った。俺はそうだな……あれになりたかったのさ」
言って空海は、今度は空ではなく、明白に、デュフォーの住む部屋。その天井に設置された、シーリングライトを指差した。
今は真昼の為、電気代の節約がてら、電気は消されている。この時期の昼は、電気などつける必要もなく、窓から差し込む光だけで十分過ぎる程明るいものがあった。
「……灯りか」
「そう。今を生きる事には意味があり、愛は素晴らしく、希望には尊さがある。そうと教えられるものに、俺はなりたかったのさ」
目線を、空海の指差したシーリングライトから、彼の背後に存在する窓、其処から差し込む光に、デュフォーは目線を移した。
陽の光を見て、デュフォーは思い出した。ある時立ち寄った、アフリカの貧しい農村。其処でのやり取りを。どれだけ歳を取ろうとも、忘れる事のないあのやり取りを。
――生きてくれ!! あんたは生きなきゃならん!! 死んではならん!!――
――あんたはあの子に、我ら村の者達に、愛を与えた――
――私はまだまだお礼を言いたい。何度でも……何度でも!!――
――見ろ……お前は、あれだ!!――
そう言って、村の男が自分に対して指差した、夜明けの太陽の輝きは、デュフォーにとっては、アンサートーカーで表記される太陽の知識以上に、
ずっとずっと、眩しかった。ただの自然現象と断ずるよりも、その太陽の光はずっとずっと、暖かかった。愛とは、何処までも素晴らしく尊いものだと初めて知った。
強く、正しく。この世界を生きてみようと、あの時誓った。
「……空海ともあろうものが、この程度の光で満足するのか?」
「ほう?」
デュフォーの挑発的な言葉に、空海は、眉を顰めるでもなく、何時もの笑みを浮かべ、面白そうに彼の事を眺め出した。
「オレは……アレになるぞ」
デュフォーはそう言って窓際……空海の傍まで近づくや、窓から空の方を指差す。
白髪の青年の人差し指の先では、遥か一億五千万km先で燃え上がる、あの太陽が燃え上がっていた。「ほう」、空海が息を吐く。
「太陽……毘盧遮那仏(マハー・ヴィローシャナ)の化身か。フッ、大きく出たな」
「無理だと言うのか?」
「馬鹿な。全ての人間は、その後待ち受ける応報を覚悟しているのなら、何を目指しても良いのだ。密の主尊である、大日如来とて、例外じゃない」
「出来ると思うか?」
「お前なら出来るさ、デュフォー。お前が太陽を目指すと言っても、俺は笑わんよ」
太陽を指差す右手を、己の服の懐に持って行き、其処にしまい込んだ、十二星座の刻印されたカードをデュフォーは取り出す。
イギリスの貧民街で、タチの悪い肺炎に掛かるも、病院に行く金がなく、死を待つだけになってしまったストリートチルドレンを救い、
その少年が恩義を感じて自分にこのカードを渡した事が、この日本の冬木に招かれてしまった原因だった。
救った事については、勿論デュフォーは後悔していない。だが、此処で行われる聖杯戦争については、全く良いイメージを抱いていない。
最後の一人になるまでの、バトルロイヤル。その催しの渦中に、つい数か月前デュフォーは身を置いており、辛い別離も彼は体験した。
戦い合いや殺し合いの果てに残るのは、心に残された深い爪痕。別離の哀しみ。そして、虚ろな廃墟と、戦った者どうしに残る怒りと憎悪だけ。
魔界の王様を決める戦いを終えたすぐ後で、人同士の殺し合いを行えなど、今のデュフォーが呑み込む筈がない。
グッと、握り拳を作り、空海の方に向き直るデュフォー。彼の顔から、微笑みが消えていた。口は堅く引き絞られ、一文字を刻んだ顔つきで、空海は、デュフォーの事を見ていた。
「キャスター」
「ああ」
「聖杯戦争を止めれば……オレは、太陽に近付けるだろうか」
「太陽になれるかどうかは解らない。だが……」
「だが?」
「――光には、なれるさ」
「そうか……そうか」
数秒程の沈黙が、安アパートの一室を支配した。
「聖杯戦争を、止めるぞ。空海」
「止めるか」
「止める」
「止めよう」
「俺も、止めたいと思っていた」
「行こう」
「行こう」
空を見上げながら、両名は口にした。
聖杯戦争を止めた先に、何が待ち受けているのか。デュフォーの脳内にも、空海の千里眼にも。その答えは表示されない。
だが、だからと言ってそれに惑う二人ではない。彼らは信じているからだ。聖杯戦争を止める事は、アンサートーカーでも千里眼に頼るまでもなく、正しい事柄だと。
【クラス】キャスター
【真名】空海
【出典】日本(西暦774年~西暦835年?)
【性別】男性
【身長・体重】172cm、60kg
【属性】中立・善
【ステータス】筋力:E 耐久:C 敏捷:D 魔力:A+ 幸運:EX 宝具:EX
【クラス別スキル】
陣地作成:A+
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる『工房』を上回る『神殿』を形成する事が可能。
またキャスターが干渉した土地は、陣地を形成すると言うプロセスを踏まずとも、確率でキャスターの陣地であると判定される事がある。
キャスターは土木学に非常に優れ、建築にも造詣が深かったとされる。
道具作成:A+
魔力を帯びた器具を作成できる。このランクになると材料さえ工面すれば、宝具の作成すらも可能とする。
またキャスターが干渉した物品は、確率でE-Dランク相当の宝具と判定される事がある。
【固有スキル】
千里眼:EX
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。 キャスターの千里眼は遠方の視認や動体視力の向上もなく、透視も未来視も過去視も出来ない。
代わりにキャスターは、『視認・認識した事象や問題の完全なる最適解』を視る事が出来る。この能力はキャスター自身の意思でオンオフを切り替えられない。
仏の加護:A+
大日如来や四天王、明王に菩薩、釈迦如来など、仏教由来の神格達からの加護。
ランク相当の対魔力をキャスターに約束するだけでなく、窮地に置かれる前に優先的に幸運を呼び寄せ、更にキャスターの僧侶としての能力をバックアップする。
法力:A+
後述の宝具の効果による発露の一端。加えて、『仏の加護・神々の加護』によって補正が掛かっている。
類似スキルに『法術』があるが、キャスターは術を介さずとも力を行使し、あらゆる奇跡を発現させる。
特に水・樹木を筆頭とした自然物への干渉を得意とし、判定次第ではそれらを駆使した相手の魔術や宝具の支配権すら奪う事が出来る。
神々の加護:B
丹生明神・高野明神・清瀧権現など、日本由来の神格・神霊からの加護。キャスターの行動は神々によって障害が取り除かれ、成功が保証される。
キャスターは仏の道を選んだ為ランクがダウンしているが、それでもなお高いランクを誇る。
菩提樹の悟り:A
求道の果ての悟りの境地。いかなる環境・状況にも左右されない不動の精神。
人の在り方を理解するにまで至ったその見識は、第六感を不確定な予感ではなく、確たるものとして認識することができる。五感に対する妨害を無効化し、精神干渉をシャットアウトする。
【宝具】
『飛行三鈷杵(ひぎょうさんこしょ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~1000 最大補足:1
キャスターが唐国で恵果和尚より授かった三鈷杵が宝具となったもの。キャスターが法力を発動しやすくする為のツール。
また元々が、インドラ神が所有する武器であるヴァジュラをモデルとしたものである為、当然攻撃にも使用可能。
その場合には、悪属性のサーヴァント、または過去に殺人や姦淫、窃盗などを犯した者、魔性や不死の属性に対して特攻の光を放つ事が出来る。
この宝具の真の使い道は、投擲する事で、キャスターにとって最も正着となる場所、あるいは者へと空間を超越して辿り着き、相手に攻撃、或いは、その者の位置を知る事が出来る。
『遍照金剛・寂滅為楽(へんじょうこんごう・じゃくめついらく)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
キャスター自身が目標とし、そして己自身が成し遂げた即身成仏の究極体現。常時発動型の宝具。
キャスターの持つ法力スキルは、厳密に言えばこの宝具の力を一割程度発動させている時の余波のような物である。
この能力を最大限まで発動させると、仏の加護・法力・菩提樹の悟りスキルがEX相当に修正され、老化はおろか、現時点でのあらゆる状態を停滞させる。
あらゆる物理干渉をシャットアウトし、5つの魔法、神霊級の魔術や攻撃や宝具・害意すら寄せ付けず、何者の侵害も許さない究極の守り人となる。
勿論その代償として、魔力の消費は絶大であり、陣地外でこの効果を発動しようものならどう言った結果になるのかは、言うまでもない。
【weapon】
【解説】
弘法大師の名で知られる、平安時代初期の僧にして、真言宗の開祖である。幼名を佐伯眞魚。
中国より真言密教をもたらした、また密教と言う物を日本で最も理解していた万能の天才の一人。
豪族の息子として生まれ、若い頃から高度な教育を受け、18の時に上京して当時唯一の大学に特例で入学し、明経道を主に学ぶ。
だが、それだけでは飽き足らず、山林での修行に入るようになる。この時期の足跡は明らかにされておらず、この時期に名を空海と改め、また悟りを得たとされる。
当時31歳と言う若さ、しかも私度僧に過ぎなかった空海が、何故当時のエリート集団である遣唐使の留学生に選ばれたのかは今なお謎に包まれているが、
遣唐使は唐に渡るだけで既に命がけであり、空海達の時もその例に漏れず、大きく航路が逸れてしまうも、船は無事唐へと漂着。
般若三蔵や恵果和尚などの高僧に師事し、その実力を認められ、『遍照金剛』の名を与えられる。この名は空海の法号ともなった。
その後唐の国で曼荼羅や密教法具の製作、経典の書写が行われた。恵果和尚からは阿闍梨付嘱物を授けられた。
その後も土木技術や薬学をはじめ多分野を学び、経典などを収集、更に唐の言葉や、当時の唐で知られていたゾロアスター教の教義やペルシア語も学ぶ。
当初は20年の予定であった留学を、2年で全て修めてしまい、そのまま帰国。 帰国後、僧侶として多くの重要活動に励み、61の時に入定。
死後しばらくして、醍醐天皇から『弘法大師』の諡号が贈られた。余りにも整い過ぎた出世の人生も疑いの対象だが、その真に奇妙な点は彼の足跡である。
日本全国には空海ゆかりの伝説が5000以上もあるとされ、歴史上空海が移動したとされる範囲の外にすら彼の伝説が存在する。
この奇妙な伝説の分布は、日本人にとって名のある僧と言えば空海であると言う認識が根底にあり、彼に対する尊崇の念があったからだ、と考えられる。
しかし、これら日本に存在する空海伝説のその全てが本物。だが厳密に言えば、その伝説の半数以上が、『入定後』に成立したものである。
空海は生まれつき、目にした問題や事象の答え・最適解を視認出来る千里眼の異能を持って生まれてしまった人間だった。
彼自身は大層頭が良く、十代半ばの頃には当時の大学に易々と合格出来る学力を持っていたが、答えを解く前に目の前に答えが表示されてしまう。
そんな事がずっと続くものであるから、空海の人生は退屈を極め、この世に辟易とし始め、何を思ったか山籠もりを始め修行をし始める。
何をしても、自分には答えと言うものが待ち受け、その答えの通りに動けば全て上手く行く為、空海の心は虚しかった。
そんな折に、虚空蔵菩薩が彼の前に現れ、その力を以って衆人を救えと言う言葉を聞き、悟りを得る。
彼は、世界に存在する全ての人間の生活を豊かにし、満ち足りたものにする、と言う『達成不可能・千里眼で答えも表示されない』偉業を成し遂げようと決意。
その為には力を得ねばならぬと奮闘するが、国内では限界があるとし、空海は地上を救う術を日本だけでなく、海の向こうの唐にも求めた。
遣唐使になったのもこの為で、彼は千里眼の力を用いてあらゆる方面に根回しをした。ただの無名の僧が遣唐使の資格を得たのはこれが理由。
その後は史実の通り、卓越した才能と千里眼の異能で、密教だけでなく、唐の土木や薬学、修辞学に能書、文学、果てはゾロアスターの教義すら完全に理解する。
帰国した後はその力を用い、国家や民の暮らしを豊かにしようと奔走。その後は己の老いを悟り、入定。己の育てた弟子達に後を任せ、そのまま世から離れようとした。
だが、彼は余りにも偉大過ぎた。彼の働きは仏や神々にとっても目覚ましく、好ましいものだったようで、空海を己の手元に彼らは残したがった。
故に空海は、仏達の力によって神の領域に強制的に近付かされ、入定に入った奥の院の霊廟ごと現世でも幽世でもない世界の外側の方へ弾き出されてしまった。
これは堪らぬと空海は、何とか己の力を駆使し外側の世界から脱出、その度に日本の各地に伝説を築いていた。
そしてその度に、仏や神々に連れ戻され、また脱出し、また連れ戻され、を繰り返していたが、流石に何十回目には対策をされ尽くされ、脱出も著しく難しくなってしまう。
こうして空海は今も世界の外側から、人間の世界を眺め、己の教えや己が齎した奇跡の産物である湧水が使われている事を知りながら、退屈に過ごす羽目になるのだった。
鷹揚とした性格をした大人の男性だが、冗談を好み、煙に巻く話し方が好きで、己の話で困る素振りを見せる人間が大好きだと言う困った人物。
また仏僧ではあるが、出家後も肉も食べたし女も抱き、酒も飲んでいたと言う破戒僧。それでもなお仏や四天王、明王から愛されていた。
本来はスカサハやマーリン同様、今も生き続けている存在の為英霊にすらなれず、召喚する事は不可能。また、グランドキャスターの適性も満たしている。
千里眼の異能の影響か、冷めた所もあるが本質的には人間が好きで、己の学んだ技術を授ける事に惜しみがない博愛的な性格。
今の仏達の過保護な待遇にはほとほと呆れ返っており、これなら英霊の座とやらに登録された方がまだマシだったとすら思っている程。
そんな彼が、サーヴァントとして召喚されると言う事態に、空海自身が驚きながらも、サーヴァントになっても仏や神々の加護が生きている事を嘆きつつも。彼は、束の間の自由を楽しむ事にするのであった。
【特徴】
飾り気も何も無い、朱色の袈裟と、黒色の法衣を着こなす、剃髪の男。常に不敵な微笑みを浮かべている。
聖杯戦争に際しては、第16次遣唐使留学僧として長安に入った時の31歳の年齢で召喚されている。年齢こそ中年のそれだが、外から見れば、二十代前半~中盤としか思えぬ程若々しい。
【聖杯にかける願い】
ない。自由を楽しむと同時に、デュフォーの願いを聞いてやる
【マスター】
デュフォー@金色のガッシュ!!
【マスターとしての願い】
ない。聖杯戦争を止める
【weapon】
【能力・技能】
答えを出す者(アンサートーカー):
どんな状況や疑問、謎でも、瞬時に「答え」を出せる能力。
戦闘中ならば、どのようにしたら相手に攻撃を当てられるか、何処が脆い部分か、どのようにしたら相手の攻撃を避けられるかなどの『答え』が出せる。
但し、出せる『答え』には状況や実力にもよるが限界はあり、例えば本人を見ないで予想として答えを出す場合は完全には正解が出せず、
またあらゆる手段を用いても状況が打破できない場合は『答え』が出ない。
作中に登場した能力の中でも極めて強力な物で、戦闘は勿論、治療不可能とされている難病の治療や危機回避、未知かつ初見の言語でも、
一瞬でその単語の意味や文法の理解が可能な上読み書きも可能になり、初めて見る道具や機械でもマニュアルなしで完璧に使いこなせると言う、戦闘以外での応用力も高い。
本来この能力は極めて脳に強い負担がかかり、使い過ぎると廃人になる可能性すらあるのだが、デュフォーは幼少の頃の非人道的な生い立ちから来る訓練で、これを克服している。
【人物背景】
寡黙で冷静沈着、いかなる時も感情を見せない青年。極めて頭が良く、確実に相手を倒す天才的な戦闘センスを持ち、嘗てはこれを魔界の王を決める戦いで応用。
当時共に行動していたゼオン・ベルにとって最良のパートナーであり、あのプライドの高いゼオンですらこれを認めていた。
どんな状況や疑問、謎でも瞬時に最適な『答え』を出せる『答えを出す者(アンサー・トーカー)』の能力者であり、この能力が原因で幼少の頃、
母親の金欲しさによってその力を利用しようとする者達に売られた挙句、北極の研究施設で数年も渡って非人道的な研究対象とされていた。
最終的にその力を恐れた研究者達に研究所ごと爆破されて殺されそうになった所をゼオンに救われ、その後は彼と行動を共にし、
自分を苦しめた者達への憎しみから来る強大な心の力と『答えを出す者』の能力を使って、ゼオンの力を最大限に引き出していた。
冷徹な仮面の下に強大な憎しみを抱き、自分の生への執着心すら失っていたが、ゼオンとの別れや、アフリカのある村での出来事が原因で、ゼオンや、
彼らと戦った清麿やガッシュのペアからも愛を受けていた事を知る。以降は、昔の冷徹な性格はナリを収めた。
原作終了後の時間軸から参戦
【方針】
聖杯戦争を止める
最終更新:2017年05月31日 22:55