「人は、何時の日か神の手より巣立たねばならない」
彼は、彼女に召喚されたその日、彼女の装いと、呼び出された場所に設置されたものを見て口にした。
教会の中だった。修道士や教会に従事している人間の掃除が行き届いているのか、壁にも天井には塵一つとして存在しない。
信徒が座る為の席にも、それは勿論の事、清浄としていて、厳かで、神の家を名乗るに相応しい其処に現れるなり、男はそう言った。
彼は、教父が説教を行う為の教壇の上に不遜にも降り立ちながら、自分の事を見上げて来る女性に対してそう言い放ったのだった。
「あ……貴方、は……」
修道服を着用した、金髪の女性が男を仰ぎ見ながらそう言った。
瞳が、驚きに見開かれている。普段は眠たそうに閉じられた瞳には、この上ない驚きが渦巻いているのが良く解る。
普段ならば、机の上に立つなどと言う狼藉は彼女は許しはしない。況してや教壇の上など、言語道断。一時間は余裕で説教が出来る。
……それなのに、如何して。今目の前でそのタブーを犯している男には、強く出れないのか。
――男の背中から生えている、六対十二枚の、純白の光の翼が原因であった。
天窓も、壁の窓も、教会の中に明けき月光を取り入れる、夜の十一時の冬木の教会。その中にあって、男は明らかに輝いていた。
白色の光を放ち続ける翼が原因なのだろうか? それとも、男の白皙の美貌が原因なのだろうか?
男は、その貌自体がほのかに光り輝いていると錯覚するような美男子だった。美しい顔つき、その背から生える十二枚の翼。彼は、天使だった。
とてもステロタイプな天使だったが、それ故に、彼女――『
クラリス』に訴えかける力は絶大だ。余りにも視覚から通じる衝撃が、強すぎた。
「貴方様は……天使、なのですか……?」
恐る恐る、クラリスは口にした。ニコリ、と男……いや。
アーチャーのクラスで現界した美青年が、静かに微笑みを湛えた。父性の権化の如き、柔かい笑みだった。
「天使である事を、私は既に捨てました」
その言葉に、クラリスは言葉を呑み、教会の床の上にへたり込んだ。そして同時に、男が降りた。
「貴方方の言葉では、『堕天使』……と言う事になるのでしょうか? 己の手で神の寵愛をかなぐり捨てた、不良のようなものと、お思い下さい」
堕天使。敬虔な信者であるクラリスは勿論、そう言った存在がいる事を知っていた。
ある者は神に唾を吐き、ある者は地上で姦淫に耽り、またある者は、己こそが神に取って代われる全能の存在であると言う高慢さから。
天にまします偉大なる父の懲罰を受け、神の寵愛と加護を失い、地の奥底へと叩き落された者。それが、堕天使だ。
よく見ると、目の前の男には確かに、聖性と言う物をクラリスは感じなかった。威風だ。このサーヴァントが生来有する恐るべき覇風が、クラリスを圧倒しているのだ。
ただでさえ聖杯戦争等と言う訳の解らない催しの為に、聞いた事もない冬木と言う街に呼び出されて頭の中が混乱しているのに、自分のパートナーが堕天使と来れば。
普通は酷い嫌悪と絶望を抱く筈なのだが、不思議とクラリスは、目の前の存在に強い嫌悪を抱いていなかった。これが、悪魔の有する力なのかと、思っていてもなお。心の奥底から湧いてくる親近感は、何なのだろうか。
「天より堕ちて数千年、私が堕天使と地上の民に蔑まれ、女の色香に惑わされて神を裏切った愚か者だと思われているのは存じております」
「それについて、貴方は……」
「否定はしません。事実です。ですが、悪魔になった覚えはありません。確かに私は神の寵愛もありませんが、人に悪を成す事は恥ずべき事だと思っております」
「それでは何故、神の手から我々が離れなければならないのだと……?」
信徒に対して信仰を放棄しろと言うのは正しく、悪魔が人に対して行う誘惑である。
クラリスに対してそんな誘惑を投げ掛けると言う事はつまるところ、目の前のアーチャーは、悪性を心の裡に燻らせる悪魔そのものではないのか。
「人が、神の手を必要としない程に、もう強くなってしまったからですよ」
目の前の男は、滔々と語り始めた。
犬や猫、兎に虎、樹木に石や、月や星ですらも、この男の言葉には耳を傾ける事だろう。それ程までに、見事な語り口だった。
「嘗て人は、弱かった。大自然のちょっとした癇癪、野の獣、流行り病、そして、満たされぬ感情から来る同族の殺害。人は弱く、死にやすい生き物でした」
「……」
「私はそんな彼らが哀れに思い、彼らの生活を豊かにし、そして彼らを強くする術を惜しみなく教えました。男は我々の手によって強く精悍になった。女は我々の手で、伴侶を得子供を産む喜びを知らない事がなくなった」
「だが」
「神は人に、自然に翻弄されるがままの弱い姿である事を望み続けた。故に人は、地上の全ての不徳と罪を洗い流した、あの大洪水に一度は呑まれて消え失せた」
「ノアの方舟、ですか……?」
「ノア……彼は私の知る中で最も敬虔な信者でありましたが、私は彼を恨んではおりません。彼もまた、生きたかった一人の人間であるのならば」
ふぅ、と一息吐き、アーチャーのサーヴァントは天窓から差し込む月の光を見上げた。
「神は、全知全能の存在であり、それを疑ってはならない。我々もその事はよく知っております。そして、地に堕ちて解りました。その言葉が嘘である事を」
「それは――」
「違う、と仰られますか?」
いつの間にか、アーチャーがクラリスの前にいた。
修道服に付けられていたブローチにそっと手を当て、微笑みを浮かべて彼は口を開く。
「本当の全知全能であれば、神が何をしなくても、勝手に人は神を崇めたでしょう。ですがそれでも多くの人は神を崇めようとしなかったので、信仰と言う名の独裁で、人を縛ろうとした。全知でもなければ全能でもない、何よりの証左です。クラリス、嘗て敬虔だった神の信徒よ」
「私は、まだ信仰を捨てておりません……!!」
「ほう」
「私は、誰も殺したくありませんし、私の仲間がいらっしゃる教会を立て直す為に――」
「それは、貴女の強さだクラリス。其処に、神の力も奇跡も存在しない。貴女一人の強さだ」
アーチャーの瞳が、強い感情で煌めいたような、そんな気がした。その瞳の輝きと、強い語調に、クラリスは言葉を呑んだ。
「貴女の志は、素晴らしい。人の為に己の聖性を発揮するその姿勢。堕天使となった我が身ですら、惜しみない称賛を与えましょう。ですが、其処には神の力も奇跡もない。貴女だ、クラリス。貴女一人の力だけが其処にあるのです」
白い手袋に包まれたその手が、クラリスの頬に触れた。驚く程柔かい感触の手袋だ。鞣した鹿の皮のような印象を、クラリスは抱く。
「貴女はきっと、それまでの過程を順調に歩む事が出来たのでしょう。ですが、振り返って考えて見なさい。其処に、神の力の後押しがあったでしょうか? 其処に、神の声による導きがあったでしょうか? ……なかった筈です。貴女の後押しになったのは、人の力でしょう。貴方を導いてくれたのもまた、大切な人の声と姿だったでしょう」
クラリスは思い描く。彼女は、己の教会を立て直そうと奮闘する修道女であると同時に、ある大切な人の期待に応えるアイドルとしての姿があった。
彼は、クラリスには人を笑顔にしてくれる強い力があると確信したらしく、戸惑いながらも彼女はその期待に応えられるよう頑張った。
アイドルとしての訓練や仕事は辛く、泣きたくなりそうな時もあったが、一緒の事務所で出来た、違う価値観の仲間と、何よりも自分に可能性を見出してくれた、
今のプロデューサーがいたからこそ、クラリスは頑張って来れた。思い起こせば確かに、彼女が教会を持ち直せたのも、アイドルとして、修道女として成長出来たのも。
人の力があったからだ。其処には、神の導きも声もなく、神の与えた恩賜(ギフト)もない。人の力だけが、其処には何時だって存在した。
「解りますね、クラリス。貴女は強いのです。他人ばかりか己をもまやかす化粧の力を使うまでも、心を奮い立たせる魔術を用いるまでもなく、貴女は既に強いのだ。況や、神の力など貴女には必要がない。人に弱きを強いたまま、不完全な全能性を見せ付ける神の力など。人は、神の手から離れる時が来たのですよ」
「ですが、それでは悪魔が――」
「悪魔もまた、人の欲望を叶える為に生み出された、人の人による人の為の存在。彼らもまた、不要になる時が来た」
其処で、今まで床にへたり込んでいたクラリスを、アーチャーは横抱きの状態で抱き抱えた。
「きゃっ……!?」と言う声を彼女は上げる。傍目から見れば、タキシードを着用した非の打ち所のない紳士が、修道服に身を包んだ高貴な女性を伴侶にし、
結婚の花道を歩んでいるようにしか見えぬ事だろう。「羽のように軽いな、クラリス」と口にしながら、アーチャーは教会の入り口まで歩いて行き、扉を開け、外に出る。
外は既に真っ暗闇、皮膚が切れるような冷たい風を浴びながら、アーチャーが、飛んだ。飛翔を始めた。
「――!!」
余りの行為に、驚いて声も出せぬクラリス。
天使である、飛ぶ事など造作もない。ただの天使であれば安心感もあっただろうが、生憎アーチャーは堕天使であると言う。
このまま地獄か、それともゲヘナにでも攫われるのではないかと震えていたが、結論を言えばそんな事にはならなかった。
冬木教会から三百m以上上空まで飛翔したアーチャーの、「みたまえ」、と言う言葉に気付き、恐る恐る、アーチャーの見ている方向に目線を向ける。
冬木の街の夜景が、其処には在った。
十一時であると言うのに冬木の街はまだ眠ってはいないらしく、新都の夜景が、砕いた宝石の破片を撒いたかのように綺麗だった。
こう言った高所から、クラリスは街の夜景を見た事がなかった。圧巻だった。大自然の力が見せつける、雄大なスペクタクルとはまた違う趣が、其処には感じられる。
「あれは全て、人の手による物。嘗て齧った禁断の果実を齧ったアダムとイヴの子孫が作り上げた世界。あそこには、神の力なんて最早ない。彼らは神や天使の力など借りず、己が手で世界を切り拓き、己の住みやすい世界に変えた。私は、それを喜ばしい事だと思う。既に彼らは、神と言う名の保護者から手を離れ、強く、逞しく生きる術を、自然に学んでいたのだ」
「だが――」
「世界にはまだ、神の存在を信じる者がいる。悪魔の力を頼りにする者がいる。私はとても悲しい。神と悪魔の力を借りずとも人が強くなった事を、まだ信じられない人間がこの世には大勢いる。だから、私は彼らを救って差し上げたいのです。己が都合で人を管理し、時に見捨てる神や悪魔から、人は決別する時が来たのです」
「貴方は……この世界から信仰を消したいのですか……!?」
「その通りです」
愕然とするクラリス。この世界には未だに、神や仏に従う者が大勢おり、彼らの救いを求める者が沢山いると言うのに。
アーチャーは、人が最早神や悪魔から自立した事を理由に、信仰と言う名の道標と、それを寄る辺にする者達を、切り捨てようと言うのである。
「なりません……!! 信仰が必要な方々が、この世界には大勢いらっしゃります!! 彼らの希望を奪う事は、許されないでしょう……!!」
「信仰は、弱者の方便ですか?」
「……えっ」、とクラリスは、言葉を呑んだ。アーチャーの言葉が、理解出来なかったからだ。
「弱いから、心に傷を負ったから、神を信仰する。それについて、神が如何なる心持ちであるのか、クラリス。貴女はご存知なのでしょうか?」
黙り込むクラリス。神の声も聞いた事のない彼女には、天にいる偉大なる父が、どう言う心算で宇宙を運行させているのか。想像だに出来ない。
「クラリス。信仰は、敗者と弱者の為の方便ではないのです。人類は初めから、神を信じる程度では救われないのです。人を救えるのは、初めから人間だけ。心を癒す術に信仰を見出した者達に真に必要なのは、彼らを癒すだけの力を持った、人間と社会なのではないのですか?」
言葉が、出てこない。
何かを言い返したいのに、言葉になって出て来るのは、あ、とか、う、とか言う纏まりのない単音だけ。
白痴のようになった彼女に、微笑みを浮かべて、アーチャーは口を開く。
「愛した人間を殺す事は私とて本意ではありません。貴女が元の世界に帰還出来るよう、全力を尽くしましょう。そして、貴女が成長出来るよう、私は全力を尽くして導いて差し上げましょう」
「それが――」
「クラリス、貴女が呼び出したサーヴァント、『
アザゼル』の使命であるならば」
強い夜の風が、ヒュウと彼らを包み込んだ。
人の繁栄の象徴である、冬木と言う都会の夜景を満足げに眺めるアザゼルを、クラリスは、怯えたような表情で見つめているのであった。
【元ネタ】旧約聖書、各種関連書籍
【CLASS】アーチャー
【真名】アザゼル
【性別】男性
【属性】混沌・善(元々の属性は秩序・善)
【身長・体重】183cm、73kg
【ステータス】筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:A+ 幸運:D 宝具:EX
【クラス別スキル】
対魔力:C(A+)
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
生前は神の加護もあり、恐るべき対魔力の高さを誇っていたが、現在はこれを失っている。現在の対魔力の値は、神の加護の分を差し引いたアザゼル自身が有する値である。
単独行動:A
マスター不在でも行動できる。ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要
【固有スキル】
神性:-
嘗ては非常に強壮な座天使(ソロネ、或いはスローンズ)であり、非常に高い神性スキルを誇っていたが、神の使命を放棄したばかりか、
神が授けるのを禁忌としていた知恵を人に授け、堕天した為消失している。
カリスマ:A+
大軍団を指揮・統率する才能。ここまでくると人望ではなく魔力、呪いの類である。
燦然と輝く十二枚の白光の翼を背負っており、これは強大な天使であった事の証である。天使にとっての翼や後光とは、即ち視覚化された絶大な指揮権の象徴である。
嘗てアーチャーが堕天した際、多くの名のある天使達が彼に付き従った。
道具作成:EX
本来はキャスタークラスのクラススキルであるが、アーチャーもこのスキルを特例で所持するに至っている。
アーチャーの場合は、武器と防具のみしか作れないが、この二つに限って言えば『宝具』ですら、己の天使の翼から舞い散る羽から創造する事が出来る。
嘗て人間に、武器の作り方を教えた大天使として有する、投影魔術の最高位に相当するスキルである。
神域の叡智:A+
神の尊厳と正義を司る座天使、その中でも有数の強さを誇っていたアーチャーの深遠なる知識。
魔境の叡智と実質上殆ど同じスキルであり、英雄が独自に所有するものを除いた大抵のスキルを、B~Aランクの習熟度で発揮可能。
アーチャーが真に教えるに足ると認めた者に、アーチャーはこのスキルを用いてスキルの伝授を行う事が可能。
【宝具】
『天より俯瞰せし人の業(アンリミテッド・アイズ・エグリゴリ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~ 最大補足:1~
地上に生きる人間の監視の為に結成された、グリゴリと言う、天使達で構成された監視者集団の長としての権能が宝具となったもの。
その本質は即ち遠隔視である。この宝具を発動し、アーチャーがこの人物を監視すると臨んだ時、アーチャーは常にその人物が何をしているのかを監視する事が可能。
発動するにはその人物を一度でもその視界に収めねばならないと言う制約があるが、これをクリアすると、例え相手が異世界に逃れようが、
宇宙の果てまで逃げ去ろうが、アーチャーは常にその人物の姿や声を捕捉し続ける事が出来る。この宝具に捉えられたが最後、どんな幻術もダミーも無効になり、
常にその人物のみを追い続ける為、逃走は絶対に不可能で、アーチャー自身がこの宝具を解除する他ない。
そして何よりも、この宝具によって監視出来る人数には制限がない。生前は、監視したい人物を一度見るまでもなく、任意の人物を自由に監視出来たが、サーヴァント化した事により性能が劣化している。
『人よ、強く逞しく生きよ(アンリミテッド・リビング・ワークス)』
ランク:EX 種別:??? レンジ:- 最大補足:-
アーチャーが嘗て人間に教えたとされる、生きる為の知恵。その中でも特に有名な、武器の作り方と、化粧の仕方、と言う二つの知恵が宝具となったもの。
アーチャーが教えた化粧とは女性を綺麗にし、また時には醜くし、女性の未婚を防ぎ女性に自信を付けさせる為のもの。
であると同時に、化粧を用いた魔術をも伝えており、アーチャーは己にボディペイントの要領で化粧を行う事で、ステータスをワンランクアップさせたり、
耐毒や頑健、極一時的にだが魔性や神性、竜種特性を付加させたりも出来るだけでなく、『大地に化粧』を行う事で、大規模かつ凄まじい精緻さの方陣を作成可能。
だがこの宝具の真価はもう一つ、武器や防具の作成にある。アーチャーは己の背負った十二枚の翼の光を用いる事で、武具・防具を投影する事が可能。
剣や槍、弓矢に己、鎌や大砲、銃器等の武器や、鎧や盾、兜等を自在に作成するばかりか、『人類に初めて武器を齎した者』と言う逸話から、
宝具すらも完全に再現する事が出来る。例え一度見た事のある宝具でなくとも、神域の叡智スキルにより、A+ランク以下の宝具であれば、召喚された時点で再現可能。
この宝具で再現が困難な武器があるとすれば、星が鍛え上げた神造兵装位のものだが、あくまでも『困難』なだけであり、それですらもアーチャーに見せすぎた場合、
再現される可能性がゼロではない。また、作り上げた宝具は、常時効果が発動している物でなくとも、真名解放が可能である。但し、その本来の担い手の技術までは再現出来ない。
【Weapon】
十二枚の翼:
アーチャーが背負っている六対十二枚の光の翼。これから舞い散った羽で、武器や防具を作成する。
またこの翼自体にも、高熱を纏わせて、レーザーを照射させたり、超高温を宿した羽を設置させて相手を追い詰めると言う芸当も可能。
【解説】
アザゼルとは旧約聖書に語られる堕天使、或いは砂漠に住まう悪魔である。
その名は『神の如き強者』を意味する所からも解る通り、嘗ては非常に強壮な力を誇る座天使(ソロネ。天使の九階級の序列三位)であったとされ、
その強さを見込まれ、地上に生きている人間達を監視する、グリゴリと呼ばれる天使達の統率者に抜擢された。
しかし、天上より人々を監視する内に、美しい娘達に心惹かれていき、地上へ降りてその娘達を娶ってしまった。つまりは駆け落ちである。
これは堕天使全体から見ても珍しい事で、多くの堕天使が神に反乱を引き起こしたが故の『懲罰』であるのに対し、グリゴリの一派は自らの意思で堕天したのである。
更にアザゼルは人々に武器の作り方や化粧の技術などを教え、これにより人々の生活が大きく乱れる事になってしまう。
この際に他にも同じく地上に降り立った天使の中には、シェムハザやサタナエル等がおり、いずれもアザゼルと共に堕天使へ身を落とすこととなった。
無論の事、神はアザゼルの行為に激怒しただけでなく、彼らから技術を教えられた事によって乱れてしまった風俗の人間達にも大激怒。
アザゼルはラファエルによって荒野の穴に投げ込まれ、一筋の光も射さない暗闇の中に永遠に幽閉される事となった。
そしてこの後、ノアの方舟に表されるような、世界全体を呑み込むような大洪水が起こる。つまりアザゼル達は、一度人類の多くを全滅させた原因ともなった、とんでもない堕天使達なのである。
しかし、彼らは人間が思う以上にずっと禁欲的な生き物である。実際にはアザゼル達は人間の女の色香に惑わされたと言う理由で天から降りたのではない。
彼らが天使だった頃の地上は神代そのものであり、其処を跋扈する獣達は非常に恐ろしく、人の男は彼らと戦っても成す術もなく殺されるか弱い生き物だった。
また女性にしても、美しくなく、自分に自信がない故に生涯男と結ばれず、寂しく一生を終える者も大勢いた。
これを非常に哀れに思ったエグリゴリの一派は、彼らに逞しく生きる術を与えた。これこそが、神が禁断の知識として人に教えるのを禁じていた、
武器や化粧を筆頭とした様々な技術である。つまり彼らは、女の色香に負けたのではなく、弱い生き物であった人間に同情し、良かれと思ってその知識を教えたのだった。
当然の事ながら、人に教えてしまったのは他ならぬ、神と彼らに連なる天使達が独占していた叡智である為、これを人に教えてしまった以上、
自分達が如何なる運命を辿るかと言う事をエグリゴリは理解していた。故に彼らは、天界には戻らず、地上で生活を送る事になる。
その過程で、人の女に惚れて子供をもうけた者もいたが、アザゼルはそんな事はせず、人間達に天使式総合格闘技や剣術だったりを教え、彼らを鍛えていた。
この後下るであろう神の審判に人間が生き残れるように彼らを鍛えようと必死に努力していたのである。その努力が実を結んだのかは、最早言うまでもない。
アザゼルの努力も虚しく、彼らは大洪水に呑まれ、一人残らず死に絶えるのだった。アザゼルが主として教えていたのは武器と化粧だが、エグリゴリはこの他にも、
魔術や効率の良い農法、占星術や天文学、気象学に器・装飾品の作成技術、筆記や医学、堕胎の方法等を教えていたと言う。
彼らは事実上、今日の人類が生きる上で欠かす事など出来ない技術の殆どを人に教えていた事になる。この事から、エグリゴリは現代科学の祖ともなったと見る動きも、現在では確認出来る。
人間については父性愛のような物を持って接しており、ルシファーに次ぐ大悪魔や地獄の王と言う苛烈な二つ名を幾つも持つ者とは到底思えない。
嘗て自分が堕天を覚悟して禁断の知識を教えた人間をアザゼルは深く愛しているが、その一方で人間には、神の支配を脱する程強くなって欲しいとも願っており、
その為生前人間に教えていた天使式マーシャルアーツや剣術の訓練はアホみたいに過酷で、アザゼル自身は他のグリゴリの天使に比べて結構嫌われていた。
大洪水の際も、自分の教育が至らなかったせいで多くの人類を死なせてしまったとも思っており、その事を非常に悔いている。
しかし現在の世界の様子を見て、今の世界は人間を頂点とする世界に遂に変貌し、人は神や天使、悪魔など必要としない程強くなったのだとアザゼルは確信。
それでもまだ、世界には三大宗教を筆頭とした神や仏を崇める習慣がある事を、アザゼルは強く嘆いている。自分達の事など忘れてしまえばより強くなれると信じていた。
聖杯にかける願いは、過去現在未来全ての時間軸に存在する、神や悪魔と言った伝説上の存在全てを人類が忘れてしまう事。
これを成就させてしまうとアザゼルも真実消滅してしまうが、それでもなお、人類にはより強くなって欲しいと彼は心の底から願っているのだった。
【特徴】
黒色のフロックコートとスラックスを着用した、灰色の髪の美青年。
常にその貌には微笑みを湛えており、更にその背中には白い光で構成された翼を十二枚背負っている。
【聖杯にかける願い】
人類の記憶からこれまでの神仏や伝説上の存在を完全に消却させ、神や悪魔から脱却した世界を目指す。
【マスター】
クラリス@アイドルマスター シンデレラガールズ
【聖杯にかける願い】
ない。誰も殺さず、元の世界に戻りたい
【weapon】
【能力・技能】
キリスト教関係の知識に明るく、またアイドルとして、歌唱力とダンスに秀でる
【人物背景】
修道服を身に纏う、シスター系のアイドル。修道女がアイドルをしてよいのかは良く解らない。
争いは好まないが、教会のため努力を続ける性格。歌うのは好きで、聖歌は得意だが、アイドルソングに関してはなかなか慣れない。
最終更新:2017年06月16日 21:10