チェンジ・ザ・ワールド☆
三島9日目・No.2
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私のやんごとなき王子様
日もすっかり沈んだ夜の海はとても静かだった。
夜空には星が瞬いている。
南の空に浮かぶ赤い星がひときわ輝いて見える。
なんだか三島君みたいだな――。
周りとは少し違うけれど、静かに主張して輝いている。
「アンタレスが好きなのか?」
三島君が私の視線に気付いて声をかける。
そっか、あれがアンタレスか。
「うん、好き」
「そうか」
波の音と私達の声だけが聞こえる空間。
星を好きと言うのはこんなにも簡単なのに、人を好きと言うのは何故こんなにも難しいのだろう。
でもそれを水原さんは成し遂げたんだな……。
水原さんに昨日告白されたばかりだと言うのに、どうして三島君は私を誘ってくれたんだろう? 私なんて彼女より優れている所なんか、何も無いのに……。
――ダメだな。静かな空間にいると、次から次へと疑問ばかりが湧いてしまう。
「小日向君、実行委員に入ってくれて有難う」
静けさを破るかの様に三島君が声を発した。
「ううん、私の方こそ誘ってくれて有難う」
「いや」
…………。
再び沈黙が支配する。
言いたい事はたくさんあるのに、言葉が喉を通過してくれない。
本当はもっと――
「俺は以前からずっと、小日向君と同じ仕事をしてみたいと思っていたんだ」
「私と?」
今度もやっぱり三島君が苦しげな世界を破ってくれた。
三島君と一緒にこうしていられるのは凄く嬉しいのに、静か過ぎる海辺は私を切なくもさせた。そんな空気を察して喋りかけてくれる三島君は、やっぱり優しいと思う。
「小日向君は成績も優秀だし、それに……」
「それに?」
「いや……。……俺が生徒会長に立候補した時、積極的に事務の仕事を手伝ってくれただろう?」
確かに、三島君が生徒会長に立候補した時の選挙委員会に私は所属していた。というのも人手不足で困っていた真壁先生にどうしてもと頼まれたからなのだ。
「それも君は真壁先生から頼まれて、仕方なく参加したようなものだ。なのに、君は一番頑張ってくれていた」
「だって、私なんかに頼んでくれたんだもん。自分に出来る事は全力で頑張らなきゃ、バチが当たるよ」
少しだけおどけてそう言うと、三島君はクスっと笑ってくれた。
「でも俺は……その時の小日向君を本当に感心したんだ。自分の自由な時間を潰されるのに、役員に立候補したわけでも無い君が、すごく頑張ってくれていて……だから」
そこで一度言葉を切ると、三島君は私の顔を正面から見据えた。眼鏡の奥の切れ長の目がスッと私を見つめる。鼓動が急激に高鳴っていく。どうしよう、顔が赤面するのがバレたりしないかな?
「だから、今回こうして一緒に仕事が出来て嬉しい。それに小日向君を誘って本当に正解だった。君のおかげでとても助かっている。有難う」
そう言うと三島君は、私の右手をそっと握った。それは感謝の意を示す握手だっただけなんだろうけど、私はすごくときめいた。
「う……ううん、こっちこそ! 三島君の役に立てたなら嬉しいよ!」
気持ちを隠すように大げさに喜んだ。
三島君はそんな私を見て、にっこりと微笑んでいる。
そんな二人の間をビュゥと一陣の風が吹き去った。
「風が出てきたな。そろそろ戻ろうか」
「うん」
宿舎への帰り道の間も、私は三島君の手を離さなかった。
水原さんはどんな気持ちで告白したんだろう? 私は告白も出来ないまま、こうして三島君の優しさに甘えている。
――卑怯だな。
それでも私は三島君の事を諦める事が、出来そうにない。
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