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利根13日目・No.3

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streetpoint

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私のやんごとなき王子様












「ずっと、君に言いたかった……だけど俺は君にこんな事を言えるような人間じゃないし、もし君の口から聞きたくない言葉を聞いてしまったら……もう立ち直れないかも知れないと思った。だからすごく迷ったんだ」

「……?」


 苦しそうに眉根を寄せる利根君に、私も何故か胸が苦しくなった。


「だけど、やっぱり今日言わなかったら一生後悔する気がして……だから、聞いてくれるかな?」


 私は無言で頷いた。

 それを確認して、利根君は一呼吸置いてこう言った。


「俺はね、小日向さん。君が好きなんだ―――」


 え――――?


 私は今、どんな顔をしているだろう。驚いてる? それとも、喜んでる?

 自分でも分からないけど、利根君のその言葉は衝撃的だった。どんどんと緊張で体が硬くなって行くのが分かる。


「で……でも……私なんか―――」


 嬉しいはずなのに、私の口から出て来た言葉はまるで違うものだった。


「君じゃないと駄目なんだ。嘘偽りの無い本当の俺を受け止めてくれる、君のその真っ直ぐな所が好きだから……」

「そんな。利根君のどこが駄目なの? 駄目なのは私、真っ直ぐなんかじゃない……利根君や、水原さんも傷付けて、すごく嫌な人間なのに」


 涙が止まらなくなった。嬉しいのに、利根君に好きだなんて言ってもらえるような真っ直ぐな所なんて、私にはこれっぽっちもないんだもの。

 私から見たら利根君は何でも出来て優しくて、本当に素敵な男の子。そんな利根君が駄目なら、私なんて駄目な所しかない。


「俺の家はとても厳しくてね。名家だとか言われてるけど、俺にはそんな事どうでもいいんだ……周囲の大人達は自分の事しか考えない連中ばかりで、俺の親に気に入られる為に平気で嘘やおべっかを言う。そんな環境の中にいても、なんとか自分を保てたのは玲がいてくれたからだと思う」


 風名君は利根君にとって本当に大切な人なんだな。

 私は利根君みたいな特殊な家の子ではないから、利根君が幼い頃から感じて来た汚い大人の世界は理解出来ないけど、それでも嘘を吐く事は自分も他人も傷付けるという事はよく分かる。

 私はポトリと落ちる涙もそのままに、ただじっと利根君の語る言葉を聞いていた。


「それに、小日向さんに出会って、こんなに真っ直ぐな人がいるんだって知ってすごく嬉しかった。俺のそばに寄って来る人は、誰でも華道の家元の息子である“利根華月”として接して来るのに、君は違った。玲を励ましたように、いつも言葉や笑顔で俺を励ましてくれた……気付いたら、こんなに好きになってた―――」


 また利根君の口から好きだと聞こえて、一瞬ピクリと体が反応する。

 確かに私は利根君の事を有名な家の息子だとか、そんな括りで見てなかったし接して来なかった。だって利根君は利根君なんだもの! だけど……


「私は駄目な人間だよ……利根君なんかとはつり合わない」


 涙が次々と零れ出した。


「……小日向さんは俺の事、嫌い?」


 ううん。そんなはずない! 

 両手で顔を覆い、首を左右に振った。

 今はもう、嬉しくて泣いている。

 こんな私を好きだと言ってくれる利根君が、私は大好きだ。


「でも……」

「でも、はいらないよ。もう泣かないで……そういう弱い所も好きだよ」


 利根君は私の肩にそっと手を置くと、優しく抱き寄せてくれた。


「うっ……利根君――――すき……好き」

「ありがとう、小日向さん。俺も好きだよ―――良かった、告白して……はは。こんなに嬉しいものなんだね。好きな子に好きだって言ってもらえる事って……知らなかった」


 私の頭のすぐ上で利根君の声が吐息と一緒に聞こえて来る。

 柔らかい利根君の香りと一緒にその温もりが伝わって、私はどんどん落ち着いていった。

 女の子より綺麗な利根君だけど、本当は男らしいって私は知ってる。

 私だけに見せてくれる、本当の利根君を、もっと知りたいから。

 利根華月という人間が、好きだから。 



 ありがとう、利根君。あなたと演劇祭が出来て良かった。

 あなたを好きになって、本当に良かった。












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