チェンジ・ザ・ワールド☆
act.21(市来)
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streetpoint
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就職難民 黙って俺についてこい!
「しっかしお相手も随分今回は本気だして来たなぁ。モデルの買収だけじゃ飽き足らず、か」
「こんな事ってやっぱり普通はない事なんですか?」
写真部へと向かうエレベーターの中、市来さんがそうごちるので私も思わず聞き返した。
「ま、新製品の情報が漏れるなんていうのは‘ある’話だが――ここまでするのは中々ないな。金もかかるし、ただ単に出し抜きたいとかそういう部分を超えてる。嫌がらせみたいなもんか。陰湿だねぇ、秀麗は」
「そう……ですよね……」
本当にどうしてこんな事までされなきゃいけないんだろう。皆必死に取り組んで、少しでも良い物をお客様に――って真剣に仕事してる。それは当然秀麗の社員さんだってそうだろう。だったら秀麗の社長さんだって秀麗の社員さんをもっと信頼すべきだわっ! ライバル会社にこんな卑怯な手を使うなんて……。うちの社長はああいうタイプだし、怖いけど……でも社員みんなの事を心から信頼してくれてるし……。
「眉間」
「え?」
「皺、すっごいぞ」
「えぇ!?」
市来さんに指摘され、慌てておでこを手で隠す。う、色々考えだしたらムカついてきちゃって……。知らない間にすんごい顔してたみたい。
「シーサーみたいだったな」
「し、しーさー……シーサーってでも可愛いですよねっ!」
我ながらわけのわからない受け答え。うわー、もう、どういう顔してたのよっ! 般若とか言われなかっただけマシかしら……。
「いくら俺でもシーサーを化粧品メーカーのポスターには仕上げられんからな」
「……分かってます」
本気なのか冗談なのか、時々市来さんの考えている事は分からない。でも、とにかく眉間に皺を寄せて小難しい事を考えるのは止めておけって事なんだろう。考えたって私には分からないし、それよりかは少しでも自分を魅力的に見せる方法にでも労力を使った方が、よっぽど生産的だ。
写真部に着くと市来さんは一枚のDVDを私に手渡した。
「前に撮影した現場の映像だ。モデルの動きや表情を見ておけ」
「はいっ」
「とは言ってもお前が評価されているのは、あくまで‘自然体のどこにでもいそうな’部分だからな。下手に意識する必要はない。当日現場で焦ったりしない為に、ま、下見みたいなもんだと思っておけばいい」
「分かりました」
「後は社長が講師を連れてくるから、姿勢やポーズについて学んでおけ」
「はいっ」
威勢よく返事をすると(返事だけでもせめて……ね)市来さんは満足そうに微笑んだ。
「じゃ、俺は次の仕事があるから出るが……今回の企画、ある意味面白くなってきたと思ってる。頑張れよ」
「は、はいっ!」
もう一度にっと笑うと、市来さんは機材を持って写真部を出ていった。
面白くなってきたと市来さんは言うけれど、私は面白さなんて微塵も無くて相も変わらず動揺しまくってるんだけど。でも、やるからには精一杯の成果を出したい! 姿勢や少しの表情、角度で人は随分と見違えるものだって社長は言ってた。講師の先生に色々教えてもらうぞー!
気合いを一つ入れて、私は凛と背筋を伸ばした。
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