「何、故――」

 豆を炒る音を何倍か暴力的にしたような、気味が悪いほど軽い破裂音が三秒間ほど連続した。
 大理石の床に俯せに倒れ伏し、ヒューヒューと荒い息を漏らしながら悶える男を、一人の老人が見下ろしている。
 その傍らには赤いフードを纏った、中東系のそれを彷彿とさせる浅黒い肌を衣の隙間から覗かせる、冷たい雰囲気を漂わした男が立っていた。
 彼の右腕に握られている武器はキャレコM950――英霊が使う武器としては、相対的に貧弱すぎるとの評価を下さざるを得ないであろうそれ。
 しかしサーヴァントの武装として具現しているかの近代兵器は、今やサーヴァントですら容易に傷付けることの出来る神秘性を内包している。
 言うまでもなく、そんな代物で人間が撃たれたらどうなるかは明白だ。
 そもそもわざわざ神秘など宿さずとも、人の一人二人は数秒で鏖殺できる代物なのだから。

「……何故、……です。貴方は、私と、共に……聖杯戦争を打ち砕くと、言ってくれたでは――ありませんかッ」
「ああ、言ったとも」
「ならば……ならば、何故ッ! 何故、その貴方が私を撃つのです……!! あの日聖杯に否を唱えた貴方の瞳は、嘘を吐いているそれではなかったのに……ッ」

 弾丸の雨を浴びたことにより胸に幾つもの鉛弾が残留し、生き地獄も同然の苦痛であろうに、男は尚も対話を求める。
 男は――正義感の強い、立派な青年だった。
 時に理不尽とも言える戦いを強要する聖杯戦争を否定し、それを打ち砕こうと輝く瞳で老人に持ち掛けた。
 老人はそれに笑顔で肯き、彼らは共に聖杯戦争へ反旗を翻す……確かにその筈だった。にも関わらず、現実はこうだ。
 正義は裏切られ、英雄譚は始まることもなく銃声の前に朽ち果てる。
 ものの数分と保たずに、哀れな若人は天に召されるだろう。
 彼のサーヴァントは騙して令呪を使わせ、遠方に追いやっている。
 令呪の刻まれた腕は切り落とされて地面を転がっており、彼を助ける術はもう何処にもない。

「答えて下さい――天願さん……ッ!!」

 老人、天願和夫は血涙を流す勢いで吼えるかつての同盟者に、柔和な笑みを浮かべたまま応える。
 天国と地獄か、はたまた富裕層と貧困層の格差問題を題材にした風刺画のように、両者は対照的であった。

「君は実に素晴らしい若者だった。いつだとて希望を捨てず、その両目には若き正義の炎が如何なる時でも燃えていた。
 わしはそんな君と一時でも共に歩めたことを、心の底から誇りに思っておるよ。今でも、だ」
「なら……どうして……!!」
「単純な話だ。君の希望はな、あまりに眩しすぎた」

 天願の青年を評する言葉に、一切の偽りはない。
 まるで教え子を賞賛する教師が如き温かみが、確かに彼の言葉にはあった。
 ――天願和夫は『絶望』を知る人間だ。
 人の意志や営みなど容易く飲み込んで消し去ってしまう、絶望の恐ろしさを誰よりもよく知っている。
 そんな天願からしても青年は、間違いなく『希望』と呼ぶに相応しいものを秘めた熱い男だった。
 自己の利益を度外視し、多数の為に行動できる人間。一歩間違えれば狂人と呼ばれても致し方ない希望的行動を躊躇なく実行する。
 彼ならば本当に聖杯戦争をどうにかしていたかもしれないと、冗談ではなく本気でそう思わせる程に。
 彼は素晴らしい、希望だった。だがだからこそ、天願は彼を切らねばならないと思った。

「わしはな、世界を救いたいのだよ」

 聖杯戦争に巻き込まれた非業の者達を、ではない。
 自分が生まれ育った故郷の世界を救うことを、彼は望んでいる。
 無論、これを青年に対して話したのはこれが初めてだ。
 これまでずっと天願は、聖杯戦争は間違っている、皆で解決に向けて動くべきだと、そう語ってきた。

「君の希望を利用し、聖杯戦争をコントロールしようと考えたのだったが……失敗だった。
 君はあまりにも眩しい希望の持ち主で、あまりに優秀過ぎた。君をこのまま生かし続ければ、本当に聖杯戦争をどうにかしてしまいかねなかった」
「俺を……利用、したと……!?」
「うむ、そうなるな。君という囮役を立てながら邪魔者を退け、勝利に向けて着々と駒を進めていく……そういう考えだったぞ、当初は。だが結果はご覧の通りだ。――君には済まないことをした、恨んでくれて構わんぞ」

 恨んでくれて構わない。天願は、そう言った。
 ――恨んで、どうなるというのだ。
 自分は此処で死ぬ。もうじき、恨むも何もなくなってしまう。
 何も成せないまま、この冬木市を去る。
 そして自分が死んだことなど誰も知らずに、聖杯戦争は続いていくのだろう。
 この天願という老人は、かつて自分に見せたような笑顔で、また誰かに近付いていくのだろう。

「そん、な……」

 これでは、あんまりだ。 
 顔色を失血で蒼白にさせ、ゴポゴポと血泡を噴きながら、縋るように天願を見つめる瞳。
 その目に、天願和夫は覚えがあった。
 何度も見てきた――何度も戦ってきた人間の目だ。
 痛ましそうに目を伏せ、天願は死に行く命に黙祷を捧げる。

「理解したようだな。君が今抱いている感情、込み上げてくる遣る瀬無さ――それが、わしがこの世から消し去ろうと思ったものだ」

 天願は彼の死を、心の底から痛ましいと思っている。
 より正しくは、死に貧して希望を失い、暗く淀んだ瞳で血を吐く様を。
 彼が今感じているだろう、人類が普遍に持つとある感情を、心から嘆かわしく感じていた。

「それが『絶望』だ。感情に溺れて死ぬのは苦しかろう、早く逝き、楽になるといい」

 天願の袖口から飛び出した暗器の矢が青年の眉間を撃ち抜き、哀れな希望を絶命させる。
 人を殺すということに新鮮な罪悪感を覚えられる程、天願の人生は安穏としたものではなかった。
 常に彼の傍には『死』があり、『絶望』があった。
 それを排除する為に戦い、人を殺したことなど幾度もある。
 それに――今更この程度のことで感情を揺るがせているようでは、世界を救う大義など成せはすまい。

 その様子を黙して見つめていた暗殺者のサーヴァントは、天願の行動を非難するでもなく、静かに口を開く。

「……甘い考えは捨てるのが身の為だと、アンタは何度言わせるつもりだ」
「君がそう言い続けるというのであれば、何度言ってくれても構わんよ。
 わしは世界を救う。あの絶望に満ちた世界を希望で満たす為ならば、わしはいかなる非道にでも手を染めるぞ」

 アサシンは、天願和夫が世界を救うと言い出すに至った経緯を知っている。
 召喚してすぐに天願はアサシンへ自分の願いを話し、それと同時に、ある昔話を聞かせたのだ。

 ――それは、ひとつの世界が滅んだ話。

 希望の学園と、そう呼ばれる教育機関があった。
 そこにはありとあらゆる才能の持ち主が結集しており、そこを卒業した生徒は必ず成功を収めると、常にメディアは学園とその生徒を持て囃し続けた。
 そんな学園にある時、一人の女が足を踏み入れた。
 女は人間だったが、その頭の中に、人間では考えられないほど膨大な、とある感情を秘めていた。

 それこそが――『絶望』。
 女は絶望を愛し、世界に絶望を広める為に行動した。
 女は天才だった。女の打つ手はその全てが的確に世界を狂わせ、遂には人間社会を壊滅させた。
 やがて女は希望を抱く者達に敗れて死んだが、それでも世界を覆う絶望の暗雲が晴れることはなかった。
 世界に未来を齎すために、絶望の汚染を逃れた者達は徒党を組み、日夜絶望の残党と戦った。
 戦いに終わりは見えず、犠牲と不和だけがどこまでも積み重なっていく。
 そんなある時だ。『未来』を目指す者達を統率する男が、一欠片の『鉄片』を手に入れた。

 男は再現された地方都市冬木へと迷い込み、その最果てにある一つの宝を手にし、己の願望を叶える事を誓った。
 ……言うまでもなく、これは天願和夫の経験してきた過去だ。
 一人の悪意で世界が滅び、その大元が消えても尚、世界が救われることはなかった。
 望み通りの未来はいつまで経っても訪れない。――このまま緩やかに世界は自死すると、天願は危惧したのだ。

「それにだ、アサシン。甘い考え等と侮られるのは、少しばかり心外だぞ」

 天願の願いは、言うまでもなく――自身の住まう世界から絶望を根絶することだ。
 その為に彼は聖杯を手に入れると豪語し、アサシンを召喚して聖杯戦争に挑む姿勢を固めた。
 だがその一方で彼は、聖杯が手に入らなかった場合、はたまた聖杯が風評通りの願望器ではなかった場合に備えて、元の世界にある保険を残してもいるのだ。

「仮に聖杯が手に入らずとも、わしには自力で世界を救う策がある。流石に聖杯の力に比べれば不格好なものではあるが、な。
 ――アサシンよ、わしは本気だ。君がこれまで何を見てきたかは知らないが、わしは己の大義を必ず遂げるとも。
 絶望なき世界という理想を求め、いかなる苦境をも踏破してみせるとも。……無駄に長生きしているのだから、汚れ役の一つくらいは買わねばなるまいて」

 断言し、最後は自虐を口にしてからからと笑うマスターに、アサシンはやはり表情を変えない。
 最後には溜息を一つ溢して踵を返し、その身体を実体から霊体へと変化させた。

『マスターはアンタだ。やりたいのなら好きにすればいい。……だが、忘れるな。僕は確かにアンタのサーヴァントだが、凡百の英霊と同じではない事を』
「無論、承知しておるよ。君の眼鏡に適わなければ、聖杯は君の手によって破壊される。そうじゃな?」
『……そうなったらアンタは、自力で世界を救うのか』
「そう言っただろう。最早後戻りする気など、端から毛頭ない。老い先短い命、全てをこの大義の為に使うつもりよ」

 普通のマスターがこの会話を聞いたなら、何を可笑しなことを言っているのだ、このサーヴァントは――と、そんな疑念に眉を顰めたに違いない。
 アサシンは聖杯を巡る戦いに呼ばれておきながら、最悪の場合、聖杯を自ら破壊すると豪語しているのだ。
 マスターである天願もそれを諫めるどころか、それで構わないと合意しているのだから殊更異様な光景だった。
 そう――彼らは普通ではなかった。
 聖杯戦争という、命も含めたありとあらゆる要素を賭けて挑む大勝負。
 冬木の地の中でも一際浮いた、奇特なスタンスを双方共に貫いている、そんな主従であった。


 ――第一に。そもそもこのアサシンは、聖杯戦争に呼ばれるような存在ではない。
 彼は人類側の抑止力。人類の『人類は存続すべきだ』という集合無意識が生み出した防衛装置。
 名もない人々が生み出した、顔のない正義の代行者たる男。
 安息と救いを得ることなく人理の守護者に堕ちた彼は、本来人類史そのものを根底から破壊せんとする脅威――俗に言うところの『グランドオーダー案件』以外ではまず現界することのないサーヴァントだ。
 何故なら英霊の座にも、それどころか人類史の中にすら、彼という存在は刻まれていないのだから。
 冬木市に願い抱きし者達を呼び寄せた、無骨な『鉄片』。
 ありとあらゆる世界の存在が入り交じったことにより、彼を世に遣わす人類史(オーナー)の方が、此度の事態を緊急時であると誤認した。
 アサシンが現界しているのは、そうした偶然の産物だ。
 言ってしまえばバグのような存在であり、猛烈に低い確率の偶然が彼を呼び寄せた。
 尤も――アサシンを召喚したのは聖杯を砕く正義の使者ではなく、世界の救済を祈る嗄れた老君であったが。

(聖杯戦争、か)

 本来己が呼ばれる筈のない、純然たる聖杯戦争。
 其処に走狗として招かれたアサシンは、自らを呼び出した男のサーヴァントとして行動している。
 この地に待つ聖杯が己の砕くべき代物であったなら、その時は使命を全うする。
 仮に、万が一聖杯が正しいものであったなら、サーヴァントらしく、マスターに奇跡を譲渡する。
 そういう契約で、抑止力が遣わす守護者は冬木を駆ける猟犬を演じていた。

(……だが、愚問だ。
 聖杯なんて絶対に碌なものじゃない――十中八九僕は、この地の最奥で待つ願望器に銃口を向けることになるだろうな)

 アサシンは聖杯に対して、何一つ希望的観測をしていない。
 首尾よく聖杯に辿り着けたとして、自分が其処で何を成すかは現時点でも見えていると、そう高を括っている。
 彼は――かつて『■■■■』と呼ばれた男は、かつて正義の味方を目指した虐殺者は、そのことを知っている。

 ――その一方で。天願和夫というマスターが何を考えているのかを、アサシンは正確に把握してはいなかった。
 仮に聖杯が手に入らなくとも、世界を救う手段は既に手中に収めている。
 そう断言する彼が『どのようにして』世界を救うつもりなのかをアサシンは聞かされていないし、聞こうともしなかった。
 天願の掲げる絶望の根絶は、世界を希望の光で照らす、という形で実行される訳ではない。
 彼の言う救済が実行された世界には、文字通り絶望という概念が存在できない希望一色の世界が待っている。
 親しい人物が死のうが、どんな大きな挫折をしようが、決して絶望できない――永遠に希望だけを抱かされながら歩まされ、それを可笑しいと感じることさえない……そんな世界。全人類が希望の光に洗脳された、強引に絶望という概念を取り払った世界。
 それが、天願和夫の掲げる理想であった。

(さあ……君には上手くやってもらうぞ、アサシンよ)

 天願は、どちらでもいいと思っている。
 聖杯を手に入れて、それで世界を救えるのならば確かに最善。
 だが聖杯をアサシンが破壊すると言い出したり、風評通りの願望器でなかった場合には、一切の未練なく立場を冬木からの脱出派に切り替える準備がある。どちらに転んだとしても、生きて帰ることさえ出来れば、彼の世界は希望の光に包まれるのだ。
 聖杯によっての洗脳か、『希望のビデオ』によっての洗脳かは違えど、結果は何も変わらない。

 穂群原学園理事長の座に君臨し、老獪なる策を巡らせるは未来を望む歪んだ希望の担い手。
 世界を救う為、二度と悲劇が繰り返されぬ為――老いたる希望は盲目の世界を目指す。


【出展】Fate/Grand Order
【CLASS】アサシン
【真名】エミヤ
【属性】混沌・悪
【ステータス】
 筋力D 耐久C 敏捷A+ 魔力C 幸運E 宝具B++


【クラス別スキル】
気配遮断:A+
サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。


【保有スキル】
魔術:B
魔術を習得している。
翻って、魔術を知るが故に魔術師を殺す術に長けている。
本スキルのランクは、本来であればキャスターとの戦闘時には各種判定のボーナスとして働く。

聖杯の寵愛:A+
何処かの時代の大聖杯に、彼は深く愛されている。
その愛は世界最高の呪いにも等しい。
本スキルの存在によって、彼の幸運ランクは跳ね上げられている。特定の条件なくしては突破できない敵サーヴァントの能力さえ突破可能。
ただしこの幸運は、他者の幸福を無慈悲に奪う。
彼自身は本スキルの存在に気付いていないし、時折聖杯から囁きかけられる「声」も耳にしてはいない。

スケープゴート:C
戦場を生き抜く狡猾なテクニックの集合。
他者の幸福を無慈悲に奪い取る聖杯の寵愛スキルと彼のやり方は、残酷なまでに噛み合っている。

【宝具】

『時のある間に薔薇を摘め(クロノス・ローズ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大補足:1人 
 時は流れ、今日には微笑む花も明日には枯れ果てる。
 自身の時間流を操作する能力。
 生前の彼が有していた能力『固有時制御』を基礎としている。
 時間流の加速によって高速攻撃や移動を行い、減速によってバイオリズムを停滞させて隠行を行うのが「固有時制御」の運用方法。
 宝具として昇華されたこの力により、彼は対人戦において無敵とも呼べる超連続攻撃を可能とする。
 『固有時制御』を用い、文字通り目にも止まらぬスピードで連続攻撃を加え、トドメはトンプソンコンテンダーで背後からヘッドショットを見舞う。
 また『Zero』の彼が苦しんでいた使用後の『世界からの修正』を受けている様子もない(『守護者』となったためか)。

『神秘轢断(ファンタズム・パニッシュメント)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:0~2 最大補足:1人
 自身の起源である『切断』『結合』の二重属性が込められたナイフ。
 魔術回路ないし魔術刻印、或いはそれに似たモノを体内に有する相手に対して致命的なダメージを与える。
 通常時攻撃に使われているナイフと同一。簡単に言ってしまえば生前彼が使用していた魔弾、起源弾のナイフ版。
 一撃一撃に起源弾と同様の効果が内包されているうえ、弾切れもないナイフによる攻撃が『固有時制御』による超速度で襲ってくるというる恐るべき宝具。それ故に初見で見破るには、相当な領域の研鑽が必要となるだろう。

【weapon】
 キャレコM950やトンプソン・コンテンダーといった近代兵器に始まり、ナイフによる白兵戦も得意とする。
 生前の彼を見るに、爆弾などを始めとした破壊工作もお手の物だろう。


【人物背景】

 人類の『人類は存続すべきだ』という集合無意識が生み出した防衛装置のような存在。人類側の抑止力とも。
 名もない人々が選出した、顔のない正義の代行者たる男。

 容姿は赤いフードを纏った、浅黒い肌に白髪の男性。
 性格にはまだ青年期の名残が多分に残っているが、何処の戦場に呼ばれようと常に人智を超えた理由と目的で血を流し、最短で世界滅亡の原因を解決する為には手段を選ばない。
 故に甘ったれた、人倫の枠に囚われた者とは相容れない。
 とはいえこの彼は是も非もないと観念し、選択の余地などないという諦観的な思考の元で動いており、人間性を失ったわけではない。


 ――彼は何かを切り捨てることでしか使命を果たせない、そういう星の元に生まれてしまった。
 それでも、自ら望んだ運命の果てに守護者となった。誰に強いられたわけでも、屈したわけでもなく。
 どこかで折れて砕けなかったばかりに、最後まで『正義の味方』を辞められなかったばかりに、死んだ後まで安息と救いを得ることなく、抑止力の一部へと成り果ててしまった。
 生前の名前は『衛宮切嗣』。生前は暗殺者として多数の人間を殺めた反英雄で、無論英霊などではなく、守護者と呼ばれる英霊もどきである。
 同名の守護者である錬鉄の英雄とは異なり、彼は英霊の座はおろか、正しい人類史にも存在しない。
 その為召喚される状況が極めて限定的で、人類史そのものを根底から破壊せんとする脅威――『グランドオーダー案件』と呼ばれる事態に際してのみ呼び出される。

 そういった理由から本来聖杯戦争には召喚されない存在だが、数多の世界線が交差することで人類史側にバグのような現象が生じ、殆ど事故のような形で今回の冬木の聖杯戦争へと招かれるに至った。

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯は碌でもないものであると確信している。それを見極め、場合によっては破壊する。
 ――が、現状は天願のサーヴァントの立場に甘んじている。
 理由は単純に、彼は人倫の枠に囚われず、エミヤの用いるあらゆる手段を肯定出来る人物であるため。つまりは相性がいい。
 確たる意志と現実的な手段で世界の救済を求めている天願和夫でなければ、確実に主従関係は決裂していただろう。

【基本戦術、方針、運用法】

 敏捷以外のステータスは低めだが、聖杯の寵愛スキルによって多少思い切った行動に出ても命を繋ぐことが出来る。
 更に宝具『時のある間に薔薇を摘め』によっての高速戦闘も可能であるため、状況と戦力差さえ見誤らなければ白兵戦を得意とするサーヴァントとも十分に戦えるスペックの持ち主。とはいえ筋力も耐久も高くはないため、極力はアサシンらしく、また彼らしく、奇襲や策謀で立ち回るのが無難だろう。
 天願は魔術師ではないが人間、それも老人にしては非常に高い戦闘技術を持つ他、齢を重ねているが故の知略と話術を兼ね備えている為、交渉面・戦術面においては隙が無い。弱点としてはやはりサーヴァントのスペック差が余りにも巨大な場合、決め手に欠けてしまうことなどが挙げられる。


【出展】
 ダンガンロンパ3-The END of 希望ヶ峰学園 未来編-

【マスター】
 天願 和夫

【参戦方法】
 絶望の残党から回収した『鉄片』により、参戦。


【人物背景】

 ありとあらゆる才能の持ち主を集め、育成する『希望の学園』こと希望ヶ峰学園の学園長を務めていた老人。
 一見すると気のいい好々爺だが、素体となる人物の自我を破壊して『全能の天才』を作り出す計画に加担、素体に選ばれた少年に助言をして唆す等、時に手段を選ばない冷徹な一面の持ち主でもある。
 件の計画――『カムクラプロジェクト』は無事に成功するが、学園に生徒として侵入を果たした『超高校級の絶望』江ノ島盾子により学園が崩壊、果てには彼の住む世界そのものが江ノ島に洗脳された、或いは絶望させられた者達によって滅亡と言って差し支えない程破壊され、以後は絶望へ対抗する為に結成された復興組織『未来機関』の会長を務める。

 かつては絶望の殲滅に賛成していたが、現在は行き過ぎた殲滅を嘆き、これ以上争いのない平和な世界を目指している。

 ――その正体は、後に未来機関のメンバーを孤島の基地に隔離し、殺し合いを行わせる事になる黒幕。
 彼の目的は、『超高校級のアニメーター』が製作した『希望のビデオ』を全世界に流し、世界から絶望を根絶すること。
 こう言えば聞こえはいいが、その実情は殆ど洗脳のようなものであり、映像を見た人間は親しい人物を失っても決して絶望することが出来ず、強制的に希望だけを抱いて生きさせられる。
 殺し合いを主催することで『超高校級のアニメーター』へ強いショックを与え、彼の手で『希望のビデオ』を世界に発信させるのが目的であった。

 今回は殺し合いを決行に移すよりも以前からの参戦。
 聖杯が手に入ればそれを用いて絶望を根絶し、手に入らずとも生きて帰り、殺し合いを決行して世界を救うつもりでいる。つまりアサシンが敗れた瞬間、立場を脱出派にシフトする考え。

【weapon】
  • 袖箭
 所謂暗器の一種。袖の中に仕込んでおり、バネ仕掛けで相手に矢を射ることが出来る。

【能力・技能】

  • 体術
 拳が封じられているとはいえ、"超高校級のボクサー"の鍛え抜かれた肉体を一撃で沈める程の実力者。
 一見すると腰の曲がった老人だが、いざという時はコートの袖に仕込んだ袖箭と卓越した体術を駆使して戦う古強者。その戦闘能力は超一流のレスラーや高度な戦闘機能を持つアンドロイドと互角に戦える人物と切った張った出来るレベルであり、並の強者では太刀打ち出来ない。

【マスターとしての願い】
 聖杯を入手し、それを以って"絶望"を根絶し、世界を救う。


【方針】
 アサシンを暗躍させつつ、利用できる組に対しては積極的に同盟や交渉を持ち掛ける。
 脱出派の参加者達ともコンタクトを取り、いざという場面に備えたい。


【把握手段】
アサシン(エミヤ):原作ゲーム。セリフ集が調べれば出てくるのと、彼が登場したイベントのプレイ動画もある為、把握は比較的容易。

天願和夫: 
ダンガンロンパシリーズ第三作の登場人物だが、彼を把握する上ではアニメ作品である「ダンガンロンパ3」のみで把握可能。
未来編(全12話)のみを見ればキャラクターを把握することは可能で、絶望編(全12話だが天願の出番はそう多くない)を見ればより深く把握することが可能だが、未来編のみでも書く上で支障はない。

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最終更新:2017年03月15日 15:42