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   きみはその右脚が左脚と違うほどにも私と異なるわけではないが、

   私たちを結び合わせるのは、怪物を産み出す――理性の睡りなのである。

                                  ――ジョルジュ・バタイユ、宗教の理論




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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 白い髪の、男であった。
日本人の骨格ではないと、誰もが思うだろう。
鼻が高く、顔立ちも立体的で、顎のエラもシッカリとしている。そしてただ、アジア人離れした顔をしているだけない。
顔立ちの方も、非常に整っていた。一目見て、彼を日本人であると認識出来る者は、同じ国の人物は勿論、海の向こうの西欧人ですら少ないであろう。
優れた顔立ちを持った人物の血を引いた、ハーフか、クォーターである。そうと言われても、納得しよう。

 顔付きだけでなく、身体つきの方も、完成されていた。 
アメフトの花形選手のような、岩の塊を思わせるような大きくて、重圧的で、厚みのある身体、と言う訳ではない。
余分な脂肪や贅肉を削ぎ落し、鍛える事が可能な部位を負荷と言う名の紙やすりをかけて苛め抜き、磨き上げて来た、完璧に近いレベルで無駄のない均整のとれた身体。
およそ男性が理想とするべき肉体のプロポーション、その完成形と言っても言い過ぎではなかった。顔立ちの観点から見ても、肉体の黄金比を見ても。芸術家であれば彫像のモデルに、この男を選ぶであろう。

 それにもかかわらず、その男の姿は、例えようもない違和感を見る者に与えて来るのである。
その白髪が原因であろう事は、論を俟たないだろう。十代の男女がブリーチによって髪を白くしたのとは、全く違うやり方で白くなってしまっている事を、
見る者が見ればすぐに看破する事だろう。ややブロンドの面影が残る白さではなく、齢を重ねた事で白くなって行ったような。
そう、男の髪は、染めた白なのではなく、老化からくる白なのである。それでいて、顔立ちも身体つきも、どう贔屓目に見ても二十代前半から後半までの、働き盛りの若さを保っている。その不均衡さが、余りにも無気味であった。

「見事な動きだった。戦いの最中もそちらに気を向けていたが、あらゆる動作が機敏で、無駄がなかった」

 白髪の男を呼び止める男の声が聞こえて来た。
落ち着き払った空気を感じさせる、その男の声音は、二十代後半ぐらいの年齢のもの。
冬木の町の夜の空を見上げ、空に瞬く光の点を眺めていた白髪の男が、自分を呼ばわる声の方に顔を向けた。
見事なブロンドの髪の男だった。此方の方もまた、白髪に勝るとも劣らぬ、優れた体格と長身の持ち主だ。無論、その顔つきでさえも整っている。
その上、上流階級(エリート)のみが発散する事を許された、インテリ風のオーラで溢れていた。ただ此方の方は、一目で西欧出身の白人男性だと見て取れる。
髪の色と顔・人種の違いを除けば、体格も身長も発散される空気も、何から何まで相似に近い。しかも、身に纏う衣服ですら、同じブラックスーツだった。

 ――唯一にして最大の違いを上げるとすれば、白髪の男の方は、正真正銘の生身の人間であり。
金髪の男の方は、厳密に言えば人間ではなく、この冬木の町の聖杯戦争において、サーヴァントと呼ばれる特別な存在であると言う事か。

「……浮かない顔をしている」

 金髪の方が口にした。星空を見上げて黄昏ていた己のマスターの些細な感情の機微。それを、サーヴァントであるこの男は見て取ったのである。

「奪ってしまった」

 向こうに転がっている石についての所感を述べるような、抑揚も感情もない声に聞こえるだろう。
だがその声には、自己に対する深い嫌悪のような物が隠顕している事を、金髪の男は見て取った。

「命を、かな?」

 白髪の男は答えない。だが無言なのが、金髪のセイバーに図星を突かれた良い証拠である。
マスターに相当する白髪の男――『有馬貴将』は、その右手に、刃渡り一m程にも達する、柄(グリップ)のない刃状の武器を手にしていた。
戦闘になるからと言って、己のセイバーが有馬に手渡した宝具の残骸である。残骸とは言うが、その性能は、有馬が今まで振ったどのクインケの遥か上を行く。
セイバーに手渡されたこの武器は、剣身の部分が単分子で構成された、この世で最も鋭い斬れ味を誇る剣であると言う。成程、強い筈だった。
クインケを全て失った状態で、冬木の街に飛ばされた有馬にとって、セイバーの産んだ残骸とは言え、この武器は有り難い代物であった。

「だが、人から何かを奪おうとする者は、往々にして奪われる側に回るものだ。君の正当防衛(セルフディフェンス)は私が確認している。気に病む事はない」

「そんな事を言っているのではない」

 有馬は、己が呼んだ――と言うらしい――セイバーに向かって反論した。
有馬の握る、ケルト神話にその名が語られる神剣・フラガラッハと同じ名を冠した剣の刀身には、その部分だけ刷毛で一振りしたかのように、血で濡れていた。
そして、彼の足元には、首から上を消失した死体が俯せに転がっており、死体から数m離れた地点に、驚愕の表情を浮かべたままの、胴体から分離した頭が転がっている。
刎ねられた頭が、件の死体の物である事について、論議の必要性はない。勿論、これを行った当の人物が、有馬貴将であると言う事も。

「どうあれ……奪ったと言う事実が、俺は、気に喰わないだけだ」

 死体の胴体と、自身が刎ねた頭を交互に見やりながら、有馬は口にした。そして、それをセイバーは眺める。

「私が与えたフラガラッハを用いて、魔術師……と呼ばれる者の相手をしていた君の姿は、実に堂に入っていた。だからこそ、私は驚いているよ。敵のマスターを相手に一歩も引かず、傷一つ負わず。まるで死神のように無慈悲に敵を排除した君が、命についての哲学を持っていたとはね」

 CCGも何も存在しないが故に、特等捜査官と言う地位ではなく、警察官僚の一人と言うロールに割り振られていた有馬が、冬木の郊外の自宅へと帰宅する。
そんな折に両名は、自分達に襲撃を仕掛けてきた、聖杯戦争の参加主従に出くわした。
セイバーは、敵ライダーを迎え撃ち、有馬は、セイバーが渡したフラガラッハでマスターを迎え撃つ。
有馬が戦わねばならない相手は、魔術師と言う、常人の及びもつかぬ技を駆使する人物であり、有馬はそのような技を持たない。
そのハンディキャップが問題にならない程、彼は魔術師を圧倒していた。無論、宝具の残骸が強かったと言う事もあろう。
それを差し引いて、素手で戦っても、なお圧倒出来たのではないかと思わせる程に、有馬の身体能力は卓越したそれを誇っていたのである。それこそ、三騎士の筆頭、最優のクラスと言われるセイバーから見ても、見事な物と思わせる程に。

「死神、か」

 セイバーが何気なく口にしたその言葉に、有馬は思う所があった。

「そんな事を昔、言われた事がある」

 CCGの死神。最初にそれを言い出したのは、誰だったか。
扱いの難しいクインケを難なく操り、時にはクインケを持たずして喰種を圧倒し、殺して見せるその様子から名付けられたのだろうかと、有馬は思う。
言い得て妙だと思った。その名は、彼の事を端的によく表していた。何故なら死神は、死を与える事しか出来ない存在。
当初は余り深く考えられず、直感的につけられた名前が、そのまま定着してしまったのだろう。皮肉な事に、その即興で名付けられた名前は、何処までも、有馬貴将と言う男を表すのに相応しいものであったのだが。

「言われるがままに、命を奪い続ける自分が嫌だった。戦う事以外に、取り立てたものもない自分が憎かった」

 その性質上喰種との戦闘が不可避の為、身体能力、つまりは身体が資本となる捜査官にあって、有馬貴将は出色の存在だった。
CCGの創設の歴史以降類を見ない程の高い身体能力で、苦も無く喰種を処理をし続けるその様は、階級の上・下を問わぬ、多くの捜査官から憧れと畏敬の対象にされた事だろう。
そして同時に、そのトントン拍子の出世ぶりに、嫉妬を抱いた者もいた事だろう。梟の名を冠する、超高レートの喰種を相手に一歩も引かぬ戦いを演じてみせたどころか、
腕の一本を奪って退けさせた功績から二階級特進を果たした逸話は、CCGにおいて知らぬ者はいない程の有名な事実であった。
CCGにも、権力闘争のような物はある。そしてそう言う物がある組織では往々にして、異例の出世を果たす若者は嫌われる傾向にある。
有馬も、一部の捜査官からは嫌われただろう。しかし、どちらにしても言える事は一つ。彼は組織の中にあって間違いなく、最も大きな憧れの対象であったと言う事。
捜査官の中には、喰種に己の家族や身内を殺された者も多く、当然、喰種を強く憎んでいる者も珍しくない。そんな彼らにとって、有馬貴将と言う男は組織の中の大いなる希望、輝ける一つの太陽であった事は想像に難くない。

 そんな、周囲から向けられる羨望や期待とは裏腹に、有馬の心は暗く淀んでいた。
上から言われるがままに、喰種を殺し、未来と赫子を奪い、Vの策略によって殺される多くの人間についても、見殺しにして来た。
奪い、殺すだけの半生だったと有馬は思う。死神と恐れられ、CCGの中でも一際の憧憬を抱かれていた男が常に抱いていた感情は、己への嫌悪だった。
喰種の対策を主な仕事とするCCGの中で、最も優れた捜査官である有馬貴将と言う男はその実、戦い、殺し、奪う事だけに極限にまで特化した男なのだった。

「そんな自分に腹が立ったから、未来に何かを残せないかと色々足掻いたが……そこで、初めて知った。何かを殺し、奪う事に比べて、何かを活かし、残す事の、何と難しい事なのか、をな」

 有馬貴将は、よく燃える紙のような男である。彼の人生は余りにも短く終わる事が確約されている。
外見は二十代後半から三十代前半の男性のそれであるのに、彼は既に、六十を超え、七十に届かん老齢の人間にしか発症しない病に侵されている。
見た目は正に、脂の乗った働き盛りにしか見えないと言うのに、医学的に彼の身体は、完全に老人のそれであった。
有馬貴将の人生はよく燃え、よく輝いていたと言えるだろう。そしてそれ故に、早く燃え尽き、死に至る。彼には、太く短い人生が生れ落ちた瞬間に運命づけられていた。
だからこそ、有馬は躍起になった。この世を覆う理不尽と言う名の鳥籠を砕いて見せる強い人物を、青い空に向かって羽ばたき飛んで行く蝶のように綺麗ななにかを、残して見せると言う事に。

 そして遂に、有馬貴将は、その短い人生の中で『何か』を残せた。
金木研――嘗て佐々木琲世と言う名前で共に生活していた有馬の友人は、老衰で死ぬ運命に在った有馬を打ち倒し、
二羽の梟が温めていた高御座へと到達し、ビレイグへと至った。常人の半分もないだろう短い時間しか生きる事が許されないの人生の中で、見事、有馬貴将は死神から人間に戻れたのだ。

「俺は、『何か』を残した。それでもう、十分だった。……だが」

 そして、有馬は冬木にいた。此処にいる理由のタネを明かせば、何て事はない。
金木が破壊したクインケであるフクロウに、この冬木へと至る為の鉄片が、部分的に用いられていたと言うだけの事。
たったそれだけの理由で、元居た世界での満足と充足を、有馬は踏み躙られた。怒りを覚えていないと言えば、嘘になる。
この上まだ、自分に何かを奪って見せろと言うのだろうか。CCGもなく、喰種もない。こんな世界でですら、有馬貴将は、戦い続ける運命に在ると言うのだろうか。

「……俺はもう、都合の良い武器になりたくない。奪い、殺すだけの人間にはなりたくない」

「生前の経験から言えば、人は、武器にはなり得ないぞ。マスター」

 黙って話を聞いていたセイバーが、口を開いた。

「生前、我が父に当たる男が持論のように口にしていた事を、今でも私は忘れない」

「それは何だ」

「マスター、エノク書、と言う旧約聖書の系譜に連なる書物の中に登場する、エグリゴリと言う天使の集団を知っているかね?」

「……いや」

「そうか。彼らは、神が独占していた禁断の知識をヒトに与えた責任を追及され、地上に堕天せざるを得なくなった天使達だ」

 セイバーは、今まで有馬が握っていたフラガラッハの剣身を摘まみ、引っ張る。
有馬はそれを、返して欲しいと言うジェスチャーだと考えたか。今まで握っていたそれから、手を離した。

「彼らは人に多くを伝えた。魔術、化粧、天文学、薬学、修辞学……何れもが、人類の進歩にかかずらう重要な技だ。その中でも特に、人類の進歩を促した知識は、何だと思う」

「……解らんな」

「彼らの教えた知識、その中で最も人類を進歩させ、そして最も人類を殺した技術。それは、『武器の作り方』さ。エグリゴリの首魁である堕天使、アザゼルはこれを人類に教えてしまったのさ」

 武器、か。有馬は考える。捜査官の振う武器であるクインケは、喰種が操る赫子と言う器官が元となって成立する。
クインケのそんな特徴の故に、殺される喰種の数も、決して少なくはなかっただろう。武器で人を殺すだけでなく、武器を得る為に武器で人を殺す。
そしてそれは喰種についても同様で、己の器官である赫子で、捜査官のみならず市井の一般人を殺して捕食する。アザゼルとやらが、神に天上から追放される筈だった。人に武器を伝えたその天使は、余りにも地上に血と罪を振り撒き過ぎていた。

「だがな……私は知っている。武器は所詮武器なのだと。人が武器を操り、時に操られる事はあれど、人が武器になるなど、あり得ないのだと」

 それを、セイバーは経験から知っていた。
何処へでも行けるが故に迷い、何者にもなれるが故に見失う。ヒトとは、そんな生命である。
一つの使い方しか出来ぬ、一つの存在意義しかない武器単体では、そんな多様性はありえない。
武器を握った人間は、時に驕った風に気取り、時に狂ったような行為に出、時にその重みに臆する。それもまた、人の多様性である
だが、セイバーが見て来た者達は、必ずしも、そんな愚者ばかりでなかった。
己の人生を容易く栄華の頂点にまで上り詰めさせ、他者の人生を容易く奪え、地球ですらをもひっくり返す力を分け与えられた少年少女が、
その力に時に振り回されつつも、その力で人を救い、そしてついにその力と訣別した事を、この男は知っている。
剣である事を捨てられる剣はない。銃である事を捨てられる銃もない。だが、剣や銃を、人を殺傷せしめるアイテムとしてでなく、何かを守り、未来を切り開くアイテムとして活用出来るのは、人間だけなのだ。人間だけが、何かを殺せる道具を、何かを守る為の道具として活用させられるのである。

「君は己を武器と言った。そして、その在り方について悩んでもいる。君の葛藤は、既に破綻しているのさ」

 「そう――何故ならば」

「自分が死神(ぶき)である事を悩む死神など、存在しないのだから。君は何処にでもいる、人並の悩みを抱えた、人より年を取りやすい、ただの一人の人間だ」

 其処でセイバーは言葉を結んだ。
ややあって有馬は、己の右手を顔の前まで持って行った。辛うじて視力が残っている左目が、彼の手の像を結んだ。数え切れぬ程の生を奪い、死を与えた手である。

「俺も……出来損ないを脱却出来るだろうか」

「得てして落ちこぼれの方が逞しくなる事もある。私のようにな」

 拳を作りながら、有馬は口を開いた。

「……初めての感覚だ。俺にも、欲が出て来た」

「ほう」

「やはり俺は、己を武器だと思っている。だが意思を持った武器だ。サーヴァントと言う武器を従える武器だ」

 地面に放っていたアタッシュケースの方に近付く有馬。その中身を空け、あるものを取り出した。
手袋である。それを手に嵌めた後、葬ったマスターの死体の方へと近付いて行く。

「ならば俺は自分自身の意思で、サーヴァントと言う名の武器を破壊し、彼らを従え悪を成すマスターを倒し、生きたいと願う人間を生かす武器になろう。それが、老い先短い人間の出来る、最良だと信じているからだ」

「……成程。それがマスター、君の選択か」

 今まで握っていた、単分子の剣を放り投げた。
その瞬間、フラガラッハの名を冠するそれは灰色から、土塊のような色に変貌して行き、風化。風に吹かれて散り散りに霧散してしまう。

「それが君の選択ならば私も、君に従う意思ある武器となろう。聖なる杯に仇を成す、金属の暴力となってやる」

 有馬は顔をセイバーに向けた。左目が映す彼の姿は、誰がどう見ても、映画や小説の中で描かれる、白人風のエリートのステロタイプである。
だが何度見ても、彼の纏うその雰囲気は、卓越した戦士のそれにしか見えない。そのアンバランスさが、酷く奇妙で、捻じれた印象を見る者に与える。

「良い目になった。それが本来の有馬貴将か。自分のなすべき事をみつけ、微塵の迷いも振り払った『戦士』の目。緑(グリーン)の名を与えた、我が弟を思い出す」

「緑……か、確かお前は……」

「父から黒(ブラック)の名前を与えられている。尤も、もうその名前は何の意味も成さないのだがね」

 サミュエルと言う男から、憂いと艱難辛苦、希望を象徴する青の名を与えられた兄は、黒の名前を渇望していた事もあったが、セイバーはそうではない。
黒と言う名前ですら通過点でなく、そして最終的には、同じ遺伝情報、同じ身長、同じ顔に同じ声をした、エドワウと言う名をした兄弟と昔決めあった名前に戻って来た。

「我が真名を呼ばれる事があるとすれば、せめて『セロ』と呼ばれたいものだな」

 父である白(ホワイト)から与えられた名前である『キース・ブラック』、その呪縛からセイバーは既に解き放たれている。
父、キース・ホワイトが築いた、人の命を積み上げて作り上げたバベルはとうの昔に、彼がドン・キホーテとタカをくくっていた仁愛の騎士に破壊された。
ブラックの名前は既に意味を亡くした。ならばせめて、マスターである有馬から呼ばれる時も、敵からその名も叫ばれる時も、キース・ブラックと言う型番ではなく、セロとして呼ばれたいものだと、ブラックは思っているのであった。

「死体を、埋める……いや、埋葬するのだろう? 手伝おう」

「助かる」

 マスターの死体を放置したままでは、問題も残る。そしてせめて、人間として葬ってやりたいと、有馬は思ったのである。
冬木の田園地帯に近い場所で、なおかつ、魔術師が戦闘前に人払いの術を張り巡らせていた事が幸いし、この辺りには人一人存在しない。
今ならば怪しまれる危険性もない。有馬は、自分が刎ね飛ばしたマスターの頭の下へと近付いて行き、驚愕の表情を浮かべたままの頭を手に取った。

「やろう、セイバー」

「ああ」

 夜も遅い、日を跨いだ深夜の一時の出来事であった。


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   これは、嘗て組織と個人に振り回される武器(ARMS)に過ぎなかった男達が、己の腕(ARMS)で何かを残そうと決意した物語








【クラス】

セイバー

【真名】

キース・ブラック(セロ)@ARMS

【ステータス】

筋力C 耐久A 敏捷A+ 魔力D 幸運D 宝具A+

【属性】

秩序・悪

【クラススキル】

対魔力:C(A+)
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
宝具を展開した場合には、括弧の中のランクに修正。A+以下の魔術を全てキャンセルする。

騎乗:E
セイバーには乗り物を乗り回したという騎乗の逸話は存在しない為、最低ランクである。

【保有スキル】

カリスマ(偽):A
大軍団を指揮する天性の才能。セイバー自身のカリスマ性は決して偽物ではなく、寧ろ魅力的とも言えるのだが、生前の彼の魅力の殆どは、
軍産複合体の秘密結社であるエグリゴリのトップと言う地位と、アドバンストARMSを埋め込まれた怪物と言うあり方を拠所としていた。
必ずしも完璧なカリスマではなく、生前は自らが生み出した、『緑』の名を冠した自らの懐刀に造反されている。

再生:A+(A++)
ARMSコアが破壊されない限り、いかなる傷を受けようとナノマシンによって修復される。
その再生速度は凄まじく、左胸に大きく穴を開けられても次の瞬間には塞がっているほどである。
ただしこの世で唯一、ARMSのナノマシンを停止させるウイルスプログラム『ARMS殺し』によって刻まれた傷だけは治癒することができない。
が、セイバーに埋め込まれたアドバンストARMSである『神の卵』は、自らが展開可能な特殊な力場を発動させる事で、そのARMS殺しすらも無効化する。

進化:A
一度攻撃を受けると、セイバーに埋め込まれたARMSコア『神の卵』が自動的に耐性を作り出す。
また『神の卵』は戦闘用ARMSであり、戦えば戦うほど、痛みを受ければ受けるほど、より強大に進化していく。
この進化には際限など存在せず、適正者の意思で封じ込まねば無限に進化しようとする。

計略:B
物事を思い通りに運ぶための才能。状況操作能力。戦闘のイニシアティブ判定において常に有利な修正を得る。

【宝具】

『神の卵(パンプティ・ダンプティ)』
ランク:A+ 種別:対人(自身)/対人/対軍宝具 レンジ:-/2~3/30 最大補足:-/2/50
セイバーの体内に埋め込まれているアドバンストARMSコア。――これは、種別するのが非常に難しい宝具である。
ARMSとは、炭素生命体とケイ素生物のハイブリッドであり、ナノマシンの集合体である。
殆どの人間には適応せず、短時間で全身を侵食されてしまうが、極稀に適応する遺伝子の持ち主が存在する。
適正者は、ARMSによって人間の域を超えた身体能力と特殊能力を得ることが出来る。
また、身体の一部をケイ素で覆ってARMS化させることができ、その際にはARMS化した部位の耐久力や身体能力は格段に上昇する。
適応力が高くなれば、全身のARMS化が可能となる。 ただし一度適正者となったものは、コアを砕かれてしまうと身体を保つことができなくなり、
鉱物のように砕け散ってしまう。 ――この点において、自身に作用する『対人宝具』と言えるだろう。

四種の『オリジナルARMS』のランクはEXであるが、『神の卵』はARMSを制御するべく人工的に作られた『アドバンストARMS』であるのでランクは落ちる。
オリジナルより希少価値こそやや劣るものの、『神の卵』は嘗て生み出されたアドバンストARMSの中では最強の力を持ち、実際の能力はオリジナルと全く大差がない。
『神の卵』の能力は、ARMS達の元となったアザゼルの、金属生命体としての始原的な特性に最も特化したそれ。
その細胞はあらゆるエネルギーを吸収し、進化の糧にする為破壊は出来ず、手で触れた『ARMS』の力を自分の物とする。
真名解放と同時に、『最終形態』と呼ばれる形態に変化し、こうなると全身が靄のような黒いエネルギーの力場によって覆われ、
輪郭が判然としないぼんやりした人型のシルエットとなる。この力場を展開している限り通常兵器や勿論の事、A+ランク以下の魔術及び筋力A以下の攻撃を無効化する。
無論最終形態時の魔力消費量は決して馬鹿に出来ず、維持するのにも相当量の魔力が必要になる。――この点においても、自身に作用する『対人宝具』と言えるだろう。

セイバーは、生前『神の卵』が取り込んだ力を自らの能力として完璧な精度で扱う事が出来る。
このクラスで操る事が出来る能力は、この世で最も鋭利な切れ味を誇る単分子ブレードに腕を変化させる『神剣フラガラッハ』。
『チェシャ猫』のアドバンストARMSが行使する事の出来た、空間断裂及び空間振動の引き起こし、及び空間の断裂を応用して行う瞬間移動と、
自らを中心とした360度全域、射程100フィートに、超高密度空間断裂を驟雨の如く引き起こさせる全方位無死角攻撃、『魔剣アンサラー』。
『グリフォン』のアドバンストARMSが使った、ブレードを高出力の振動子にし、凄まじい超振動と超音波を発生させ、相手を粉砕、斬り裂いたるする技。
そして、『魔獣』のオリジナルARMSから奪い取った、超高ランクの不死殺しスキルと事象破壊スキルを保有する『ジャバウォックの爪』。
以上4つの能力を行使可能。――この点において、相手に対して斬りかかれる対人宝具、無数の相手を空間断裂で切断、超音波と超振動で粉砕出来る対軍宝具と言えるだろう。

ランサークラスであれば『帽子屋』と、生前に『白』のキースがセイバーの身体を乗っ取った時に『神の卵』で取り込んだ『騎士』の能力を。
アーチャークラスであれば『三月兎』と『眠り鼠』の能力を、『神の卵』で行使する事が出来る。なおジャバウォックの爪は、これらのクラスで呼び出されても使用可能。

【weapon】

【人物背景】

エグリゴリと言う軍産複合体を統率する最高幹部、その筆頭であり、キースシリーズの長兄だった男。
ある少女の絶望がプログラムされており、その少女の意思に従い、多くの人物に不幸を振り撒いて来た。
幻想(プログラム)に翻弄され続け、そして遂に、嘗て自らの手で右腕を斬り落とし、父を殺された少年によって引導を渡された黒いキース。

【サーヴァントとしての願い】

別世界の人類の可能性を見極める。今は有馬貴将を通じて、それを行う。



【マスター】

有馬貴将@東京喰種トーキョーグールシリーズ

【マスターとしての願い】

此度の聖杯戦争に呼び出されたサーヴァントを全て抹殺し、最後に顕現するであろう聖杯をも砕く

【weapon】

元の世界では様々なクインケを振っていたが、この世界にはそれらを持ちこめていない。
なので、戦闘の際はキース・ブラックが神剣フラガラッハを、己の腕を斬って分離させる事で有馬に与え、それを振って活動する。

【能力・技能】

半人間:
喰種を片親に持つ交雑種であるが。だが、人間の食物を全く受け付けず、人間を食べる事で栄養を摂取する喰種と違い、人が食べられる物を食す事が可能。
人間に近い性質を有している一方、雑種強勢の影響により常人を遥かに凌駕する身体能力を持っている。
だがその反動か、通常の人間よりも肉体の老化速度が著しく速く、非常に短命。その証拠に今の有馬の髪の色は全て真っ白の上、本来年齢的には発症する確率が低い緑内障を患っており、この影響で右眼は完全に失明している。

【人物背景】

喰種対策局(CCG)に所属していた特等捜査官にして、CCGの死神とすら謳われた程別次元の戦闘能力を有していた人間。
その正体は前述の通り、喰種と人間の間に生まれた半人間。その優れ過ぎた能力の故に、常に組織から誰かを殺し、奪い続ける事を強いられてきた。
が、その人生の最後で、ある人物との約束の果てに生まれた一人の王を世界に残す事に成功。満足のまま、この世を去った、32歳の老人。

東京喰種トーキョーグール:reの8巻終了後の時間軸から参戦。

【方針】

日常を過ごし、敵が現れたら対応する。

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最終更新:2017年03月16日 16:26