締め切った窓。
閉ざされたカーテン。
ジジジと虫の羽音みたいな音を奏でる蛍光灯は明らかに寿命が間近に迫っていて、明かりの役割を本来の半分程度しか果たせていない。
そのため、その部屋は陰気な薄暗さを湛えていた。
こんなところで暮らしていれば誰でも気が滅入ると断言出来てしまうほど、陰鬱な空気に満ちた正方形の空間だった。
曲がりなりにも年頃の女の子の部屋だというのに、可愛らしい雑貨や流行りのアイドルのポスターなんかはどこにもない。
不動産屋から借り受けたばかりのアパートの一室でももうちょっと洒落っ気がある。
部屋の主は少女だ。
歳は中学二年生、背丈は百四十を少し回っているくらい。
片目が隠れるほど長い前髪に頼りない薄着、体中には痛々しい青痣が所々見られる辺りから、彼女が日頃どんな扱いを受けているのか察することが出来るだろう。
少女は、被虐待児だった。
逃げ場のない家庭という名の地獄に閉じ込められた、哀れな壊れかけの人形。
壁に背中を預けて足を伸ばし、力なく座り込んでぼんやりと虚空を見つめている。
そこには生気はまだ辛うじて感じられたが、精気は全く感じられない。
少女の傍らには鳥籠が落ちている。
入り口は開け放たれ、中から萎びた鳥餌が溢れている。
そして少女の手の中で、籠の中の鳥は死んでいた。
片翼が千切れ、首があらぬ方向を向いて、死骸になっていた。
死んでからもう結構経っているのか、毛並みもバサバサに荒れてしまっている。
何が楽しくて、この子は生きているんだろう。
空虚な瞳と痛め付けられきった有様を見たなら、どんな熱心な人権活動家でもそう思ってしまうに違いない。
救いのない、壊れるところまで壊れきってしまった少女。
彼女を言い表すとすれば、そんな言葉が適切に思える。
そんな時、部屋の外から荒々しい足音が響き始める。
その瞬間、びくりと少女の肩が跳ねた。
今まで無機的だった顔色は青くなり、身体は小刻みに震え出す。
やめて、来ないで、そんな彼女の懇願も虚しく、部屋の扉は乱暴に蹴り開けられた。
入ってきたのは、いかにも善悪の区別が付いていなさそうな少年。少女にとっては従弟だ。
その顔は不機嫌に歪み、明らかな怒気を湛えている。
鋭く尖った眼差しは、力なく座り込んでいる少女に容赦なく向けられていた。
親の敵でも見るような目つきで、少年は口角泡を飛ばして叫ぶ。
「このクソブス女! お前、また俺のおやつ食っただろ!!」
それは、少女には覚えのない話だった。
きっと彼の兄か母が食べたのだろうと、少女は必死に訴える。
だが、サンドバッグの言い分を聞き入れてくれるほど、この家の人間は優しくない。
「言い訳すんじゃねえ! 死ね! さっさと死ね!!」
そもそも、彼の分のお菓子を食べたのが少女なのかどうかなど、端からどうでもいいのだ。
仮に母や兄が犯人だったとしても、きっと少年はこの部屋に訪れ、怒鳴り散らしていた筈である。
先程少女のことをサンドバッグと評したが、それは実に的を射ている。
少年にとって、この弱々しい少女は――自分の鬱憤を好きなだけぶつけることの出来る、『弱い者』なのだ。
ガンガンと、素足でもって蹴飛ばされる。
頭を抱え、鳥の死骸を腹の下に隠して守りながら、必死に暴力の波が過ぎ去るのを待つ。
年下の子供が癇癪のままに振るう暴力とはいえ、少女の矮躯にとっては大きな打撃だ。
相手もそのことは分かっている筈なのに、そこには一切の容赦というものがない。
こんな女どうなってもいいと心の底からそう思っているから、手心を加える理由がないのだ。
極論死ななきゃいい。見えるところに傷を付けなきゃ、煩く言われることもない。
鬼畜の理屈だが、それはこの家では平然と横行している不文律だった。
少年が暴力に飽きるまで、五分ほどかかった。
いつもより二分は短かったなと、少女は切れた唇を噛みながら思う。
そして彼の足音が遠ざかったのを確認してから、ぐったりと床に身体を投げ出した。
◇
ハンプティ・ダンプティが塀に座った
ハンプティ・ダンプティが落っこちた
王様の馬と家来の全部がかかっても
ハンプティを元に戻せなかった
◇
「おい、またあいつを怒らせたのか」
それから何分かして、また扉が開いた。
先の少年に比べれば大人しそうに、悪く言えば陰険そうに見える青年だった。少女にとっては従兄だ。
その顔には直情的な怒りの色こそ見られないが、少女はこの男のことをよく知っている。
こいつもさっきの彼と殆ど同種、それどころかもっと質の悪い下種であることを知っている。
「俺、前に言ったよな? 煩いと勉強に集中できないってよぉ」
首を横から蹴り飛ばされた。
ごろごろと床を転がるが、その背中を今度は踏み潰される。
見上げた先には、青年のニヤニヤとした笑顔があった。
楽しんでいる。怒りのままに暴力を振るうのではなく、こいつは暴力を振るうこと自体を楽しんでいる。
「なんとか言えよ、おい。お前の汚え部屋にまでわざわざ説教しに来てやったんだぞ?」
体格が大きくなれば、当然拳や蹴りの威力も上がる。
少女は今、息をすることすら辛い状態であった。
至るところから加えられる衝撃のせいで呼吸がうまく出来ない。
身体は酸素を急いで取り入れようとするあまり、過呼吸になりかけてヒューヒュー乾いた音を出している。
そしてもちろん、そんなサンドバッグの事情など斟酌されるわけがない。
そこもさっきの彼と同じだ。
全部把握した上で、知ったことじゃないと痛め付けてくる。
抵抗が無駄なことはとっくの昔に学習した。抵抗すれば、した分だけもっと大きい痛みになって返ってくるだけだ。
「謝れって言ってんだよ。口もないのか?」
「……、ご、ぇん、なさ……」
「煩い、喋るな」
今度は腹を爪先で蹴り上げられる。
胃の奥から嘔吐物が込み上げてきて、げえげえとそれを吐き出した。
堪えなきゃ、と自分を制御する余裕はとてもなかった。
胃液とほんのわずかな内容物を吐き出して小さく痙攣する哀れな姿を、軽蔑したような眼差しで見下す青年。
「部屋を汚すなよ、また母さんに怒られるぞ。
告げ口はしないでおいてやるが、自分でちゃんと片付けておけよ」
自分がそうさせた癖に、よくもぬけぬけと。
そんなことが言えるくらいの人権があったなら、どれほど幸せだったろうか。
少女はそれに従うことしか出来ない。
黙って、理不尽に甘んじることしか出来ない。
青年が去り、暴力がやんだのを確認し、部屋の隅のちり紙を取って吐き出したものを拭き取る。
少し休んでからにしようとも思ったが、万一彼の言うところの『母さん』にバレたら面倒だ。
面倒事を避けるためには、自分の身体に無理をさせなければならないことも、少女は知っていた。
東雲あづまという少女を取り囲む日常は――生き地獄に等しかった。
◇
トゥイードルダムとトゥイードルディー
決闘をすることになった
トゥイードルダムが言うことには、トゥイードルディーが彼の素敵な新品のがらがらを壊した
ちょうどそのとき、巨大な鴉が飛んできた
その大きさときたら まるでタールの樽のようだった
二人の英雄はおそれをなして
決闘のことはまったく忘れてしまった
◇
味噌汁の中に虫が浮いていた。
具材が絡んで何の虫かはよく分からないが、大きさからしてゴキブリだろう。
もちろん、死骸を食べるなんてことは流石のあづまにも出来ない。
ただ、これでも食事があるだけマシなのもまた事実だった。
何せこんな有様の献立だが、一週間ぶりに米がある。
食べられる時に食べなければ、この家では生きられない。少なくとも、あづまは。
ちなみに誰がこんな陰湿な真似をしたのかは分かりきっている。
この家の母親だ。あづまにとっては叔母に当たる、枯れた印象を受ける女。
彼女は面と向かっての暴力こそ少ないが、暴言や躾にかこつけた体罰、こうした陰険な嫌がらせをよくしてくる。
ちらりと視線を向けると目が合って、思わず慌てて食事を摂ることに意識を戻す。
「そういえば、最近学校に行っていないそうじゃないか」
そんなあづまに、今度は叔父に当たる男から声がかかった。
その声色は従兄弟二人や叔母に比べて、あまりにも優しく穏やかだ。
食卓では誰もあづまにちょっかいを出して来ないことも相俟って、ともすれば味方と錯覚してしまいそうになる。
それでもあづまは、この男がどんな人物かを文字通り身をもって知っていた。
「ダメだろう、子供は学校へ行かないと。
仕方ないから、今晩"また"叔父さんが勉強を教えてやろう。
後で部屋に行くから、ちゃんと待っているように」
言っていることは至極まっとうだ、そのことはあづまも理解している。
しかしその両目に宿る光は、子供を思いやる慈愛に満ちたそれではない。
あづまの親権者として面倒を見てやるという、使命感に満ちたそれでもない。
もっとどろついた、一家の中でも一番質の悪い感情だけがそこにある。
「手取り足取り教えてあげるからなあ――あづまたん……♪」
情欲に歪んだ顔を見て、あづまは顔を伏せた。
この家は腐っている。終わっている。改めてそう思う。
――どいつもこいつも死ねばいい。
心の中で燃える黒い炎は、疑いようもなく彼女の本心だった。
◇
夕火あぶりの刻、粘滑なるトーヴ
遥場にありて回儀い錐穿つ。
総て弱ぼらしきはボロゴーヴ、
かくて郷遠ラースのうずめき叫ばん。
『我が息子よ、ジャバウォックに用心あれ!
喰らいつくあぎと、引き掴む鈎爪!
ジャブジャブ鳥にも心配るべし、そして努、燻り狂えるバンダースナッチの傍に寄るべからず!』
◇
「さあ、あづま……始めようか」
部屋に入るなり、鼻息を荒げて叔父が言う。
寝間着越しにも分かる下半身の怒張は、つまりそういうことだ。
この男は、東雲あづまという姪を性欲の発散先として見ている。
この家に渦巻く暴力は、何も心身を痛め付けるのみではない。
尊厳を弄び、辱める。これもまた、あづまを取り囲む地獄の一風景だった。
「い、いやっ、嫌です! やめて、ください!!」
あづまも、ただされるがままになっているわけではない。
女として、それ以前に一人の人間として当然その歪んだ情愛を拒む。
だが哀しきかな、その小さな身体では目の前の暴漢をどうすることも出来やしない。
両手を押さえ付けられ、股間のそれを服越しに押し付けられる。不快極まる感触に鳥肌が立つ。
「駄目じゃないか、あづま。いい加減慣れなくちゃ。いつもやってるだろぉ」
生臭い息は吐き気すら催す。
ヤニ臭い唾液の味も、口に突っ込まれた一物の味も、あづまの記憶に焼き付いて離れない。
殺したい。いや、殺す。絶対に、こいつらだけは殺す。
憎悪の炎を内に秘めながら、少女は今まさに犯されんとしていた。
もっとも――少女の純潔など、とっくの昔に散華しているのだったが。
「さあ、行くぞあづまたん! たっぷり、たっぷり楽しませてやるからなぁぁっ」
ぎゅっと、あづまは目を瞑る。
だが、いつまで経っても、叔父が自分の下着を引き剥がすことはなかった。
抱き締められることも、唇を重ねられることも、上を剥がれて胸を弄ばれることもない。
恐る恐るあづまが目を開ければ、そこでは憎き叔父が、白目を剥いて倒れ伏していた。
その傍らに、この少なくとも見かけだけは普通の家庭に見える東雲家には似合わない、奇矯な装いの男が佇んでいる。
顔立ちは東洋人のそれだが、筋骨逞しい肉体はあづまより二回り以上も大きく、日本人離れしたものがある。
そして端正といっていいだろうその顔面には、苦々しげな表情が浮いていた。
それを見ただけでも、彼が少なくとも下種の類ではない――まともな価値観の持ち主であることが分かるだろう。
「すまんな、マスター。これ以上は見逃せなかった」
マスターと、美丈夫はあづまのことをそう呼んだ。
一方のあづまも、彼の登場に何ら驚いた様子はない。
自分を窮地から救い出してくれたことに感謝するでもなく、その表情は淡白だった。
先程まで悲愴な抵抗を見せていた少女と同一人物とは、とても思えないくらいに。
「いい。私もこれは嫌だったから」
昏倒した叔父を冷めた瞳で見下ろしながら、あづまは乱れた衣服を整える。
今日は吐き気のするキスも、怖気の立つ愛撫も受けていない。
それに、偽物とはいえ忌まわしい男がのされる瞬間も見られた。
――これだけのことで。これくらいのことで、東雲あづまは今日はなかなかいい日だったと感じてしまう。
その姿を見る美丈夫の目は、どこまでも苦々しげだった。
哀れみではない。自分ではどうにも出来ないことに対する歯痒さがそこには滲んでいる。
彼はかつて、あづまのような無辜の人民が理不尽な暴力や悲運に晒されないために戦った。
数多くの窮地、数多くの死線があった。結果救えなかったものは山のようにあるし、むしろ救えなかった数の方が多いとすら思っている。
「マスター。前にも言ったが、この世界に生きる民間人は全て単なる舞台装置だ」
「ぶたいそーち?」
「……分かりやすく言えば偽物だ。こいつらは普通の人間と変わらないように見えるが、実際のところ生きてはいない。
たとえ死んだとしても、聖杯が用意した人形がたかだか四つ壊れただけと思えばいい」
「何が言いたいの」
「俺に命じろ、マスター。この家の人間を殺せと。それだけで、お前は苦痛から解放される」
「やだ」
しかし東雲あづまを取り囲む理不尽は、彼になら簡単に壊せてしまう程度の代物だ。
あづまが望みさえすれば、彼女を虐げてきた四人を殺し終えるまで一分とかかるまい。
サーヴァント――バーサーカーには、あづまを助けることが出来る。救うことが出来る。
にも関わらず彼は、自分の主が好き勝手痛め付けられ、虐げられる一部始終を指を咥えて見ていなければならなかった。
あづま自身が、望んだのだ。
自分を虐待する叔父一家を排除しないことを、この胡乱げな娘が確かに望んだ。
令呪を使ったわけでこそないが、その時の彼女にはそうしかねないほどの気迫があった。
「……憎くないのか、お前は」
「んなわけないじゃん」
歪んだ関係とはいえ、一緒に暮らしている仮初の家族を殺すことは出来ない。
あづまがそんな善性に満ちた台詞を吐いてくれたなら、まだいくらか幸いだった。
あづまは善側の人間ではない。かと言って、悪側の人間でもない。
彼女はひたすらに――
「殺すよ。全員殺す。
そのためにまずセカイオニを殺す。
セカイオニを殺すために、セーハイを手に入れる」
ひたすらに、歪だった。
ただ壊れているというわけでもない。
そんな単純な言葉では片付けられないくらい、東雲あづまの内面は複雑に怪奇している。
「それなら、こいつらの命に執着する理由はどこにある。
それほど深く憎む相手だ。……俺にはむしろ、お前が殺意を堪える理由が思い付かない」
「人形だから」
「何?」
あづまは言った。
剥き出しになった叔父の白目を、楽しそうに指でつんつん突きながら。
歳相応の微笑みを浮かべて、歪んだ思想を己のサーヴァントに語って聞かせる。
「人形壊しても意味ないでしょ。
こいつらが死ぬ分には構わないけど、そうしたら私、もっかい同じことしなきゃなんない」
「………」
「本物を殺った時にこれ前に見たなあとか思ったら嫌だもん」
あづまが偽りの叔父一家を殺さない理由はたったひとつ。飽きたくないからだ。
偽物ごときを殺したことで、本物が死んだ時の喜びが減ってしまうのが嫌だ。
彼女は大真面目にそう思って、被虐の立場に甘んじている。
殺意を燃やし、歯を軋らせ、身体を痛め付けながら、それすらも『いつか』のための楽しみとして。
「だから、バーサーカーは殺しちゃダメ。『それ』、元いたとこに戻しといてね」
げし、と未だ意識を取り戻す気配もない叔父を蹴飛ばして、あづまはころんとその場に寝転んだ。
布団で寝ることが許されるほど、世界は彼女に甘くない。
そしてあづまがこうなってしまうと、もう声は届かないことをバーサーカーは知っていた。
黙って昏倒した叔父を担ぎ、部屋の出口へ向けて歩き出す。あづまはそれを、背中で見送った。
(文鳥ちゃんほどじゃないけど、バーサーカーには助かるなあ)
自分だけでは、聖杯戦争には勝てない。
あづまはそれを知っているから、バーサーカーを受け入れた。
これでも、召喚当初に比べればあづまとバーサーカーの距離は縮まっている。
最初の頃は癇癪を起こしたみたいにバーサーカーを拒み、自分だけでサーヴァントを殺そうとしていたくらいなのだ。
今回のように度々あづまをバーサーカーが助け、それでようやく、あづまの中でのバーサーカー像がいい方に傾いてくれた。
盲信はしない、依存もしない。だが信用はしている。味方だとは、ちゃんと認識されている。
東雲あづまという少女の性格を思えば、それだけでも快挙といっていい。
その点、バーサーカーはサーヴァントとして最善を尽くしていた。
(絶対勝とうね、文鳥ちゃん。それにバーサーカー。
あと三人、あと三人だよ。早く帰って、またあの世界に行きたいなっ)
死骸となった文鳥――もといセキセイインコは、何も語らない。
これはただの鳥だ。彼女の周りの人間と同じ、生きている風に見えるだけのがらんどう。
この月面に、東雲あづまを導いてくれる本物の『文鳥ちゃん』はいない。
そう、誰も。誰も、東雲あづまを救えない。
「俺では不足か」
叔父を階段の真下辺りに転がして、バーサーカーは一人呟く。
自分では、彼女の心を浄化してやることは出来ない。
そのことはこれまで共に過ごした日々の中で、痛いほど理解していた。
力不足だ。人間由来の英霊ではないバーサーカーには、あづまの心に響く言葉は紡げない。
「……ままならんものだ。ナイトレイドとしての活動を終えたかと思えば、今度はこんな事態とはな」
バーサーカーは、生まれながらの兵器だ。
かつてある世界、ある国に、始皇帝と呼ばれる偉大な存在があった。
始皇帝は自国の万年の安泰を願い、あらゆる素材を尽くして、四十八個の超兵器を作り出した。
後に『帝具』と呼ばれるその兵器の中には、人間や獣のように自律して行動し、戦う……『生物帝具』と呼ばれる種類があった。
バーサーカーは、それである。
生物帝具が一つにして、悪しき秩序の破壊を望んだ殺し屋集団の一人。
その真名を――電光石火・
スサノオという。
最期の一瞬まで仲間のために死力を尽くしたとして伝えられる、ナイトレイドの益荒男。
「ならば後は、お前の世界に託すまで。
この混沌でお前の命が尽き果てることのないよう、全霊で戦うとする」
帝具は主を選ぶ。
適合しない主が使えば、強大な力は一転、主を滅ぼす毒になる。
だがそれも、サーヴァントとなった今は関係ない。
サーヴァントは、道具は主を選ばない。
そうあることを望まれたなら、是非もなし。
尽くせる限りの全力をもって、東雲あづまという少女を聖杯へと導こう。
「お前に顔向けできるかは定かではないがな……ナジェンダ」
生前の最期の主の名を、らしくもない苦笑と共に呟いて、バーサーカーは霊体となり姿を消した。
◇
床の死体
鼻から顎に蛆虫が這っている
女は聞いた
私も死んだらこうなるの?
ああ! 牧師は言った
お前も死ねば腐るのさ!
◇
【クラス】
バーサーカー
【真名】
スサノオ@アカメが斬る!
【ステータス】
筋力A 耐久A 敏捷C 魔力D 幸運B 宝具A
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
狂化:E
通常時は狂化の恩恵を受けない。
その代わり、正常な思考力を保つ。
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
気配遮断:D
サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。
ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。
アサシンのクラスで現界していないため、ランクが一段階ダウンしている。
【保有スキル】
生物帝具:A
とある偉大な皇帝が国の不動の安寧のために作り出した四十八の超兵器、その一つ。
彼は生物型の帝具で、自律行動や意志疎通を行うことが可能という特徴を持つ。
多少の傷ならばすぐに復元してしまうほどの再生能力、Aランクの『頑健』に相当する耐久力と対毒性を保有するが、その体内に存在する帝具の『核』を破壊されてしまった場合に限り再生が不可能となり、消滅が確定する。
怪力:A
一時的に筋力を増幅させる。
魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性だが、帝具である彼は例外的にこのスキルを所持している。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は『怪力』のランクによる。
観察眼:C
几帳面な性格に由来する、物事の変化や綻びを見落とさない目ざとさ。
変装やそれに準ずる能力を持つ相手に対してはかなり有効に機能する。
死出の戦:A
帝具使い同士が戦えば、そのあまりの性能に必ずどちらかが死ぬ……そんな言い伝えがスキルに昇華されたもの。
彼が戦闘を行う場合、戦場の全ての人物は幸運判定の達成値にマイナス補正を受ける。
このスキルの効果はその場の人数が少なければ少ないほど大きくなるが、悲運を被るのは当の彼も例外ではない。
【宝具】
『禍魂顕現』
ランク:A 種別:対人(自身) レンジ:- 最大補足:-
バーサーカーの『奥の手』、言ってしまえば切り札となる宝具。
その場で自身に超高ランクの狂化スキルを付与し、全てのパラメータを大幅に強化する。バーサーカーは狂化しても理性を失わず、正常な思考力を持ったまま戦うことが出来るため、狂化といっても特にデメリットは存在しない。
宝具発動中は相手の飛び道具や遠距離攻撃を反射する『八咫鏡』、非常に高い破壊力を誇る『天叢雲剣』、筋力・耐久・敏捷を更に向上させる『八尺瓊勾玉』などの特殊能力を使用することが出来るようになる。これらは宝具『禍魂顕現』の一部として扱われるので、実質彼の第二、第三、第四宝具と考えていい。
また『禍魂顕現』中に核を破壊された場合、その場でもう一度宝具を解放することで擬似的な戦闘続行スキルを獲得、サーヴァントとしての行動を継続することが可能。
この通り極めて強力な宝具だが、真名解放時に燃料としてマスターの生命力を用いることから、マスターへの負担が非常に大きいという致命的な欠点を持つ。即座に死に至らしめるほどのものでこそないが、バーサーカーが『禍魂顕現』を三度行った場合、マスターは甚大な負担によって死亡してしまう。
【weapon】
【人物背景】
帝具としての正式名称は電光石火スサノオ。
要人警護を目的として製造された帝具であるため、戦闘以外にも家事や建物の建築など様々な分野で才覚を発揮出来る。
生前には殺し屋集団『ナイトレイド』のボス・ナジェンダに反応して再起動し、反帝国勢力である彼らの仲間として行動する。
その戦闘力と各種サポートスキルで大きくナイトレイドに貢献したが、最期は氷の帝具を持つ女将軍に敗れ、仲間を逃がすために奮戦した末破壊された。
【サーヴァントとしての願い】
願いはない。帝具として、マスターを守る
【マスター】
東雲あづま@世界鬼
【マスターとしての願い】
世界鬼を滅ぼす更なる力を得るため、聖杯を手に入れる
【weapon】
メインは手斧
【能力・技能】
鏡の国のアリス症候群という奇病に羅患しており、鏡面上に幻覚が見え、それの声を聞いたり会話したり出来る。
あづまの場合は怪物、他人の悪意のシンボル化、幻聴。
また本聖杯戦争のあづまは、『ワンダーランド』での戦いで使用していた生命エネルギーを物質に変換する能力も弱体化しているが引き継いでいる。とはいえ反陽子爆弾のような大規模な創造は出来ず、精々斧やらトマホークを作り出せる程度。Chaos.Cellに神秘とみなされているのか、サーヴァントに傷を付けることも可能。
そして、彼女が患う『鏡の国のアリス症候群』の正体は―――…………
【人物背景】
鏡の国のアリス。中学二年生。内外面ともに幼く陰気で不登校な、幼児体型の少女。
両親が居らず、引き取られた先の叔父夫婦の家で、家族全員から陰湿な虐待を受けていた。
が、ひょんなことから左右反転の世界『ワンダーランド』に迷い込み、『世界鬼』と呼ばれる怪物を滅ぼさねばならない状況に立たされる。最初は消極的だったあづまだが、『アリスが世界鬼を殺すと、現実世界でそのアリスと日常的に接している人間が死ぬ』事実を知ってからは態度が一変。
憎き叔父夫婦を合法的に殺害し、復讐するために喜々として世界鬼を殺戮し始める。
【方針】
マスター全員殺す。
帰れなきゃ死ぬなら、マスター達は世界鬼と変わらない。
とっとと聖杯ぶんどって帰る。
最終更新:2017年04月04日 21:31