2018黒門祭乾坤一擲 Side-A

日鳥啓介の紀行文 |Uべ

  • 人間ではないものに魅入られるのは確かにバッドエンドかもしれませんね。夏らしくホラー(怪奇譚?)で京都が舞台なのは個人的におっいいなと思いました。伏見稲荷が出てきたときはちょっとテンション上がりました。描写もよかったです。ただ残念ながら11ページと12ページ逆になってます……。
    気になったところが二点あるのですが、一つ目は「先生」が相席を望んだ理由です。客の姿がまばらなのにどうして相席を頼んだんだろう、と思いました。主人公をテーブル席ではなくカウンター席に座らせた方が、「お隣、よろしいかしら」と言われても違和感がないのではないでしょうか。
    二つ目は「先生」はなぜ主人公の影が食われたと気づいたのでしょうか。影を食べられたことで主人公から影が消えていたなら、「先生」が主人公に目をやって驚くなど、「主人公の異変に気づいた」と分かる描写があると個人的に嬉しいです。
    いろいろと書いてしまいましたが、主人公の夜の伏見稲荷に対する印象(特に「蛇の体内のようだった」という描写)は不気味さが強調されていてとてもよかったです。次の作品を楽しみにしています。
  • 各々の設定にこだわりを感じます。お互い自由になれないジレンマや、影から伸びる手など面白く思いました。しかしそれらがもったいぶって後出しされているのが気になりました。一番始めに影の中の吸血鬼と話す部分など、影と会話していることをすぐに出してもらえると読みやすく感じます。
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玩具 |Mimi

  • 新掟の性格の悪さがにじみ出ていて途中で何度も「こいつ…」と思ってました。反省する気のない悪者という感じがして個人的に好きです。ただ、もう少し心理描写と背景描写が欲しいな、と思いました。
    特に新掟は主人公の実に大きな影響を与えていますので、もっと彼女の情報は多くても大丈夫です。新掟が他人を「玩具」として見ている理由があると彼女の異質性が浮き彫りになるのではないでしょうか。他にも「人はおもちゃじゃない」と言われた後に「もうあなたはいらない」と返すまでが早すぎて唐突すぎる印象を受けます。「もうあなたはいらない」のセリフの前に、彼女の表情(無表情なのか笑ってるのか)が描写されているとより良いものになると思います。
    それと細かなところになってしまうのですが、毒薬を手に入れるのは小学生には難しいんじゃないかな、と思いました。彼女がその毒薬をどう手に入れたのか、もしくは誰でも手に入るような毒薬だったのか、そちらの方が気になりました。
    ここまで様々なことを書きましたが、新掟の異質性、そしてそんな彼女に復讐しようとする実の決意はとてもよかったです。これからもいろんな作品を書いてください。
  • たくさん登場人物がいるのはネックになりがちですが、人間関係を題材にすることで人物像がライトなのも気になりませんでした。セリフが連続するのはテンポがよくなりますが、セリフ間の動作・表情が省略されるほか誰がどのセリフを喋っているのかわかりにくくなりせっかくのテンポの良さが失われてしまいます。
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断罪人ハキムの判決 |幾慧

  • ハキムと第三者の視点の違いがありすぎてうおお…となりました。こういう自分が狂ってると思っていない狂人とか大好きです。個人的な趣味全開ですが。
    ただ一つ気になるのはハキムが狂った原因です。見落としていたら申し訳ないのですが、私は王が死んだからかな、と思いました。王が死んで「私がこの国を守らなければ」という責任感がどこかでおかしくなり、狂人になる…だったらいいなぁと趣味丸だしなことを考えていました。もしそうだとしたら、王の死の時期とハキムが狂いだした時期(作中であれば裁判記録の日付で)を一致させるなどすると、ハキムの生真面目さも強調され、より彼の狂気も浮き彫りになるんじゃないかと思います。
    視点を変えれば違ったものが見えるのは叙述トリックの醍醐味。ハキムからの視点ではこうだったけど、他の人から見るとこう見えるんだろうなと読み返して改めて思い知る彼の狂気が感じられました。とても面白かったです。
  • 世界観はファンタジーだけれど、深読みすると現代社会の闇を感じます。「自分が正しいと盲信している人は、第三者に刺される」という風に。ファンタジーの皮をかぶった現代諷刺、個人的に好き(観点違うかもしれないけれどめっちゃ誉めてる)
  • 作者評)批評ありがとうございます。今回の作品の中で、現在軸の状況に至るまでの話が主人公一人しかわからない状態だったので、確かにはっきりと狂った原因は描いていませんでした。この場をお借りして解説させていただきます。
    まず、王が死んだ事とハキムが直接死刑を始めた事は関係がありません。2年前に最高裁判官となった時に、自身の最期まで王と国を支えるとあります。この時ハキムにとって、王の生死は関係なく、君臨しているだけでいいという状況でした。そのため、亡骸を縛り付けてまで、自身の最期まで王に仕えていたということになります。
  • 作者評続き)一方の「死刑執行」に関しては、「2年にわたる」ものであったので、王から任命された時から始まっていた計算になります。「努力が認められた」ことにより永遠の忠誠を誓うほど、ハキムは地位についたことを誇らしく思っていました。しかし、どの世界でも犯罪は無くならず、同一人物が犯罪を繰り返すこともあります。そこでハキムは現世から罪を犯す人間を排除し、犯罪のない世界にするという思考を持つようになりました。徐々に死刑に置き換わっていったのも、使節を“裁いた“のも、この思考に基づくものでした。これについては、本人にとって常識として扱っていたので、本人視点の語りでは表さず、第三者も「狂人の言い分」としてまとめました。付録として、これらの様子が分かる日記の一部などをつけても良かったかもしれません。
    視点の違いによるギャップは、今回最も力を入れた部分です。ハキムの独りよがりな正義も表現できていたようで良かったです。長文失礼いたしました。
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最後から二番目の王子 |なめろう

  • どことなく洋画風といいますか、アメリカンジョークと言いますか、こういうコミカルさが大好きです。台詞の言い回しも面白く、読んでてふふっと笑ってしまいました。
    もう口頭で述べてしまったのでくどく感じるかもしれませんが、老婆が姫の傍にいる経緯と老婆と王子の会話の流れが噛み合っていない気がします。老婆が「お前は誰だ」と問い、王子が老婆のことを問い返し、経緯を話したところで「お前は起こしに来たのか」と確認するのはどうでしょう。
    王子の軽薄クズっぷりや元百合狼の「お前もか!」という感じが面白かったです。呆れてしまいますがどこか憎めない感じが出ていていいなぁと思います。
  • 酒が入ってないとできない話ってありますよね(しみじみ)
    王道のおかしい部分をばっさり斬り捨てて破綻した物語をまとめあげる手腕が素晴らしい。
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最終更新:2018年07月05日 00:10