正反対の思考
岩山の向こうに見えた巨大な影を見つけるや否や、司馬宙はそちらへとベミドバンを走らせていた。
その後ろを地面スレスレで飛ぶのはRX-7ナウシカだ。
そのパイロット、ギレン・ザビは前を走る男に声をかける。
「突然慌ててどうした?」
「さっき見えたあのでかいヤツ、あれは幻魔要塞ヤマタノオロチだ。イキマの野郎に違いないぜ」
「…ふむ、なるほど」
ギレンは宙の言葉に首肯しつつ、思考を巡らせる。
(この男、さほど頭は回らないようだな。
それにしても、だ。あれを相手にするとなると戦力不足は否めんな)
あの奇妙な形をした機体は、戦艦クラスの大きさだった。どう考えても自分の機体はパワー不足だ。
宙の機体はパワーはありそうに見えるが、空中戦は得意そうには見えない。
それに、宙が言うにはあれは要塞らしい。普通に考えれば、たった二機での突破は不可能だろう。
そんなことを考えながら、ギレンは宙の後ろを飛ぶ。宙は、迷うことなく足を進めていく。
そびえ立つ岩山の群れが、眼前に迫ってきていた。
「少しここで待て」
ギレンが声をかけると、宙は足を止める。
「なんだよ」
いらただしげな声を耳にしながらも、ギレンは冷静に答える。
「私が偵察に行ってこよう」
「そんなもん必要ねぇ。正面からぶっ飛ばすだけだ」
宙の言葉に、ギレンは内心溜息をつく。本当に頭が回らない男だ、と。
「そのイキマとやらが数多くの仲間を連れているかもしれんぞ。
そうでなくても、ここは隠れるにはもってこいの地形だ。他に何が潜んでいるか分からん」
「イキマに手を貸す奴は俺の敵だ。そいつも相手になってやるだけだぜ」
今度は、本当にギレンは溜息をついた。あくまでも力押しという姿勢は、弟の姿を思い起こさせる。
「力押しでは戦いには勝てんよ。いいかね? 我々の勝利とは生き残ることだ。
無謀に突撃し、命を落とすなどとあってはならんのだよ」
返答はすぐにはやってこなかった。ギレンがシートに深く腰掛け、宙を切り捨てようかと考え始めたとき、声が返ってくる。
「…分かった。あんたの言うとおりだな。ここで待ってるから偵察は任せたぜ。危なかったらすぐに戻ってこいよ」
「ああ、そうしよう。ではな」
ギレンはそう言うと、岩山の影に隠れるようにして移動を開始する。
(司馬宙とあの向こうにいる人物。出来る限りどちらも手駒として使いたいが、な。
あの戦艦に乗っていたのがイキマとやらでないことに期待しよう)
そう考えながら、ギレンは慎重に進んで行く。岩山を越えて飛行することも可能だが、目立つ動きは避けたい。
時間は、かかりそうだった。
【ギレン・ザビ 搭乗機体:RX-7ナウシカ(フライトユニット装備)(トップをねらえ!)
現在位置:C-6の岩山に差し掛かったところ
第一行動方針:敵戦力の偵察
第二行動方針:可能な限り手駒を増やす
最終行動方針:まだ決めてない】
【司馬宙 搭乗機体:ベミドバン(第3次スーパーロボット大戦α)
現在位置:C-6の岩山直前
第一行動方針:ギレンが戻るまで待機
第二行動方針:ヤマタノオロチ(イキマと思っている)の破壊
最終行動方針:主催者打倒】
【初日 17:20】
最終更新:2008年05月30日 03:37