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嵐の前の…


“君は今、このマシンファーザーの解析に成功した。
 まずは祝辞を述べさせて貰う。おめでとう。

 これの解析装置に目をつけた着眼点。
 そして装置に仕掛けていたストッパーを取り除いた、その技術。
 どういった経緯でそこに至ったかは知らぬが……ここは、見事だと誉めておこう。
 その栄誉を称え、ささやかな褒美を用意した。
 解析装置を起動させてみたまえ。
 新たな機能が、多数追加されているはずだ。
 それらの機能は、これから君が行うであろう首輪の解析を、大きく促すことになるだろう。
 首の爆弾の恐怖から逃れられるのも、時間の問題かもしれんな?

 さて、これをどう生かすかは、君の判断に委ねさせてもらおう。
 このゲームのイレギュラーとして、さらなる殺し合いに精を出すもよし。
 首輪の解析データをもとに、他者を弄ぶもよし。
 あるいは……この私に抗うためのきっかけとして、使用するもいいだろう。
 このチャンスをどう使おうが、君の自由だ。
 ただ、一つだけ言っておく。
 首輪を外した所で、枷が一つ外れただけにすぎない。
 君達を管理する術は、他にいくらでも存在する。
 今の君達では、私に抗うには全てが及ばぬ。
 私に挑むつもりならば……それを心に踏まえておくがいい。
 折角手にしたチャンスだ。つまらぬ使い方でふいにしてくれるなよ。ククク……

 さて、最後にもう一つ、付け加えておこう。
 このゲームの参加者の中に一人、私の送り込んだスパイが存在する。
 それもまた、肝に銘じておくがいい。

 それでは、引き続き殺し合いを楽しんでくれたまえ。
 お前達のさらなる憎悪と絶望を期待している――”





静まり返った基地の一室から、コンソールを叩く音だけが鳴り響く。
解析室。
そこには首のない死体がひとつ転がり。
そして、彼――木原マサキが黙々と解析作業を続けていた。
その室内のディスプレイには、首輪の解析結果が映し出されている。
表示された解析率は既に85%に達しようとしていた。
速い。遷次郎と二人がかりで作業していた時以上のペースで、解析は進んでいる。
司馬遷次郎のボディ……小型版マシンファーザーの解析機能があるからこそだ。
ストッパーを外した後、機能が追加されバージョンアップした解析装置。
それは、それまで遷次郎と共に使用していた時とは比較にならないほど高性能だった。
滞りなく作業は進む。今のところ、異常は何も感じられない。
解析結果と遷次郎に仕込まれた首輪の残骸を照合させても、ピタリと一致する。
疑いようがないほど、気味が悪いほどに。
(ふん……全てはあのユーゼス・ゴッツォの手の上、ということか)
ストッパーを解除したと同時に流れた、ユーゼスのボイスメッセージ。
それは、彼らの行動が全て予測されていたことを示していた。
(全く持って、手の込んだ嫌がらせをしてくれる――)
マサキは忌々しげに顔を歪め……しかし、すぐに思い直し口元を吊り上げた。
(だが……)


マサキはユーゼスに対し、自分と通じる何かを感じ取っていた。
必要最低限の種を蒔き、それによって人の運命を狂わせ……そんな哀れなピエロ達を利用しつくす。
全てを見下し、嘲笑いながら、己の目的を遂行する。
自分と同じ類の人間だ――マサキは確信する。
(……詰めが甘いな、この男)
ボイスメッセージから、彼はユーゼスの言葉の節々から必要以上の自己主張の強さを感じ取った。
それは、裏で糸を引き全てを操る策士としては好ましい傾向ではない。
例えるなら、最後の詰めの段階でわざわざ表舞台に現れ、聞いてもいないマジックの種明かしをご丁寧に説明し勝ち誇るタイプだ。
己の感情を、あるいは人としての弱さを捨てきれず、隠しきれず。
そこを突かれて、惨めに敗北する……三流の策士にありがちな話である。
(この詰めの甘さが生み出す隙を見出せば……この男を制することは、さほど苦ではないかもしれん。
 とはいえ……その隙を突くためには、こちらも周到な準備が必要だな)
マサキは考える。
メッセージに込められた、必要以上の情報。バージョンアップした解析装置。
ユーゼスは参加者達をある一つの結末へと導こうとしてる……マサキにはそう思えた。
その結末とは何か。ユーゼスの真の目的は?このゲームを通じて、彼が行おうとしていることは?
そして、その目論見を崩すための、彼の裏をかくための手段はあるか。
(あの男のことを少しでも詳しく知る必要がある。
 奴のことを知る参加者を捜すか、あるいは――スパイとやらと接触するか)
思考を巡らせる。
この会場からの脱出、ユーゼスに対抗するための力の入手……
やるべきことは山積みだ。反逆への道はまだ遠い。
(手立てが整わぬまま、首輪を外すのは返って危険かもしれんな……)
マシンファーザーさえあれば、首輪の残りの解析にはさほど時間はかからないだろう。
しかしボイスメッセージが流れた時点で、自分達が首輪の解析を試みていることは、既にユーゼスにも伝わっている可能性は高い。
その状況で首輪を外すことは、主催者に対し明確に宣戦布告を行うも同然となる。
首輪以外の管理する術、というものも気にかかる。
それ以前に、この解析結果がフェイクである可能性も未だ否定されたわけではない。


不安要素はあまりにも多い。
だが、それでも冥王は笑っていた。
それは、この神を気取る仮面のピエロの持つ醜い人間性を、見抜いたが故か。

その時、解析室に通信音が鳴り響いた。マサキの思考と解析作業は中断される。
『マサキ、レーダーが反応をキャッチした。反応は二つだ』
新たな客の来訪を告げるヤザンの声。
今さら言うまでも無いが、この会場においては、レーダーなど気休め程度の効果しか得られない。
つまり、来客はもう既に基地のすぐ近くまで接近していることになる。
「来たか……」
客を出迎えるべく、椅子から立ち上がる。
さあ、来たのは誰だ。
ゲームに乗った殺戮者か。反主催を考える身の程知らずか。
あるいは――チーフ、トウマ、クォヴレー。自分の本性を知る者達か。
「ククク……」
不敵に笑う。これから行われる来客との駆け引きに心を躍らせ。

(いいだろう……今は貴様の上で存分に踊ってくれる。
 だが……最後に笑うのは、この俺だ――)



ひとつの嵐が過ぎ去った。
あらゆる負の情念が吹き荒れた、嵐が。
疑心、憎しみ、狂気……それらは、残っていた希望の光と純粋な想いを踏み躙り。
そして悪意のみを最後に残し、基地には静寂が戻った。
だが、今また静寂は破られ……新たな嵐が吹き荒れようとしている。
その嵐のあとには、果たして何が残るのか。
それは、今はまだ誰にもわからない。



【木原マサキ 搭乗機体:レイズナー/強化型(蒼き流星レイズナー)
 パイロット状態:絶好調
 機体状態:左腕断裂 背面装甲にダメージ
 現在位置:G-6基地(解析室)
 第一行動方針:基地に迫る参加者への対応
 第二行動方針:首輪の解析、及び解析結果の確認
 第三行動方針:ユーゼスを欺きつつ、対抗手段を練る
 最終行動方針:ユーゼスを殺す
 備考:マシンファーザーのボディ、首輪4つ保有(フォッカーの首輪を回収しました)
    首輪85%解析済み(フェイクの可能性あり) 解析結果に不信感。
    スパイの存在を認識。それがラミアであることには気付いていない】

【ヤザン・ゲーブル 搭乗機体:アルテリオン(第二次スーパーロボット大戦α)
 パイロット状態:全身打撲、右足骨折(鉄パイプを当て木代わりに応急処置済み)
 機体状況:良好(補給は終えている)
 現在位置:G-6基地
 第一行動方針:マサキの護衛。マサキに歯向かう者の排除
 最終行動方針:首輪解析に成功すれば主催者打倒。失敗すればゲームに乗り、優勝】

【三日目 0:00】





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第230話「銀河旋風速度制限 時系列順 第232話「その身に背負うものは

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第228話「守りたい“仲間” ヤザン・ケーブル 第233話「ツキヨニサラバ


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最終更新:2008年06月02日 17:13