糸の切れた人形





──深い、闇。



“ソレ”から逃げるようにゆっくりと瞼を開く。

先程まで見詰めていたモニターは白い閃光で焼かれ、今は何も映ってはいない。

ぼんやりとモニターを見、ラミアはもう一度瞳を閉じた。

再び広がる闇の中に求める姿は無く、しかし、焼けついたモニターも彼女が求める姿を映しはしない。


(ユーゼス様……私は……)


ジュデッカを駆り現れたユーゼスの支持を受け、ヘルモーズに戻ったラーゼフォンは格納庫の床に無造作に座り込んだ。

頭部の翼もダラリと垂れ下がり、その姿は糸の切れた操り人形の様。


「貴方の人形……」


ラミアは目を閉じたまま小さく呟き、モニターをゆっくりと触る。

──モニターが閃光に焼かれる一拍前、確かに見た。


エスカフローネとR-1が放つ光にジュデッカが塗り潰され、消滅したのを。


──あの光はきっと…全てを呑み込み、塗り潰し、消し去る“正義”


(“正義”なぞ無い。……いや、人形である私には判らないだけかもしれんな)


──しかし、その光にジュデッカ、ユーゼスは呑み込まれ、消滅したのだ。

──操り糸が切れた人形はどうすれば良い?

──修羅王が言った、『意思』



ふと、ラミアは思った。

操り糸が切れた人形ははたして、人形なのか。と。


「いや、糸が切れたとしても人形は人形……私は…」


浮かんだ言葉を掻き消すためにラミアは敢えて否定の言葉を口に出した。

しかし、一度浮かんだその言葉はなかなか消えず、ラミアは頭を抱えてコクピット内、奏者の台座に体を丸めて踞った。

そして、時同じくし、ユーゼスは生きておりアースクレイドルへと向かった事を彼女は知らない……
若き修羅王、フォルカが光の巨人の力を、このゲームで散った戦士の意思を受け継いだ事も……。


「私は人形…糸の切れた人形。」

俯き、ゆっくりと呟く。

開いた瞳の奥には───


「糸の切れた人形はあくまでも人形……だが、“自由”だと私は思う。」




【ラミア・ラヴレス 搭乗機体:ラーゼフォン (ラーゼフォン)
 パイロット状態:精神安定
 機体状態:装甲に僅かなダメージ EN1/3ほど消費
 現在位置 ヘルモーズ内(格納庫)
 第一行動方針:ユーゼスの代わりにゲームを進める
 最終行動方針:ゲームの完遂
 ※備考:ユーゼス、フォルカの生存を知りません】

【三日目 8:35】





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最終更新:2025年02月27日 00:34