明日はどっちだ
見晴らしのよい草原で1つの球体が飛び跳ねている。
もともとその球体……RB-79《ボール》は、重力下での運用を視野に入れて造られた機体ではない。
故にブースター最大噴射で宙を飛び、エンジンが悲鳴をあげだしたら出力を下げ地面へと不時着する。
それの繰り返しで移動をしているのだ。
着地時の衝撃は並大抵ではなく、生身の人間ならばとっくに負傷もしくは気絶をしているだろう。……あくまでも生身ならばの話だが。
「ちぃっ!なんて乗り心地の悪いマシンだ」
コクピットにて操縦者である機械生命体クロノス族のバグ・ニューマンが呻く。
彼は宇宙最強の拳法と噂される天空宙心拳を習得しており、攻撃の技だけならば師であるキライ・ストールをも上回る使い手である。
が、師の考えが理解できなかったために免許皆伝の前に師の元を去る。
その後、クロノス星の小さな町に対して略奪行為をくり返すという生活をしていた時に、今回のプログラムの参加者に選ばれたのだった。
バグにとって生きるために殺しをすることは別に問題なかった。ただ、それを強要されるのは面白くないのだが。
今回、素手での殺し合いならば、彼は他の参加者の多くをたやすく葬ることが出来たであろう。
だが、主催者は各参加者に機体を配布した。これにより彼の優位性は僅かなものになってしまった。
主催者に名を呼ばれ格納庫に連れられた彼は大小様々な機体を目にする。
自由に選べるのかのかと思いきや、あらかじめ決められていたらしく、彼はボールのコクピットへと押し込まれた。
反抗しようにもその素振りを見せた瞬間に首輪が作動するだろう。素直に機体の操作を会得することに専念する事にした。
こうして四苦八苦しながら覚えたのが今の移動法である。
激しく機体が揺れ、徐々に神経が苛立ちを覚えるバグ。その感情は操作ミスを誘発した。
上昇行為が長すぎてエンジンがオーバーヒートしてしまったのだ。それでは落下速度をやわらげる噴出が出来ない。
「おわぁー!」
高速度で落下したボールは大きな衝撃と共に地面にめり込んでしまう。
幸いコクピットハッチは地面より上部に出ていたため、バグは外に出ることが出来た。
彼は怒りをあらわにし、
「このポンコツがぁ!天空宙心拳・電磁毒手刀!!」
と、己の手を自機へと突き刺した。
みるみるうちに丸みを帯びた愛くるしい機体が融け始め、やがて原形を止めなくなる。
「さぁ、これからどうするか。流石に自分の数倍のマシンに正面から挑みたくは無い。
他の奴の機体を奪えればいいんだがな。……ひとまず身を隠して様子見だな」
言うなりバグは、森のほうへと駆けていった。
【バグ・ニューマン 搭乗機体: ボール(機動戦士ガンダム)
パイロット状態:良好
機体状態:消失
現在位置:A-6
第1行動方針:森に向かう。
第2行動方針:身を潜めて様子見。あわよくば他者の機体をのっとる(その際、相手を殺すことに躊躇はしない)
最終行動方針: 生き残る】
最終更新:2008年05月29日 03:15