惑星一つの運命をかけて戦ったのだという緊張感。
そして今、あの出会いの地に居るのだという懐かしさ。
相容れないはずの二つの感情が互いに混ざり合った不思議な感覚に
二人は身を委ねていた。
それにしても酷く荒されたものだ。
あの遺跡は、こんな廃墟だっただろうか。
あの緑の山々は、いつの間に岩山になったというのだろうか。
あの草原だって、こんな荒野では無かった筈だ。
フォックスは、汚染されたゾネスを目の当りにしたペッピーの心境も
きっとこうだったんだろうな、と密かに想い、苦笑いを浮かべた。
振り向けばそこに在るのは廃墟ばかりである。
分かってはいても、それを確かめるように振り向いてしまう。
もう何度振り向いただろう。その度に目に映るのは、やはり廃墟だった。
それでも、もう一度振り返ると、今度は
吸い込まれるような緑色の瞳が視界に飛び込んできた。
魅力的で、ミステリアスで、堪らなく愛しくて…
そんな瞳が、心持ち心配そうにこちらを見つめている。
普段なら直視すら出来ない物を、不意に見つめてしまっている事に気づき、
フォックスは慌てて目をそらした。
しかし、いつもは挑発的なその目がその時、少し恥らうように
一緒に視線をそらした様に見えたのは気のせいだったのだろうか。
フォックスはこれからグレートフォックスへ帰艦するため、
通信を始めようとした。
その時、後ろから柔らかな青い毛並が絡み付いてきた。
「クリスタル!?どうした…?」
「フォックス・・・あのね・・・」
背中に当る柔らかな感触のその奥から、早まる鼓動が感じられる。
「・・・・・・・やっぱり…何でもない…」
「クリスタル・・・・・」
そう言うと細い腕がより一層強く締め付けてきた。
「でも…もう少しだけ…このままでいさせて…
このまま…もう少し…もう少しだけ・・・・・・・・・」
”もう少し”が何時までも続いてくれたら…
二人の想いは同じだった。
「・・・・・・・・・」
一瞬の静寂の後、フォックスは絡みついた腕を優しく解き、
正面から向き合った。
「フォックス・・・・・?」
「・・・・・」
フォックスは何も言わず、そっと、クリスタルを抱き寄せた。
「・・・・・フォックス!?・・・・・」
クリスタルが驚いたのも無理は無い。
フォックスにとって、この行動には最大限の勇気が必要であった。
”何も言わなかった”のだって、”何も言えなかった”と言う方が
正しいのかもしれない。
クリスタルへの抑えきれない感情が生んだ、
フォックス自身すら思いもよらない行動であった。
しかし不思議な感覚である。
クリスタルとはこれまで幾つもの戦場を潜り抜けて来た。
今、この腕の中に居るのはあのクリスタルなのだろうか。
この胸に心も体も預けた、愛しく、か弱くすら思える存在は
ただ普通の女の子ではないのだろうか。
そう感じた時、フォックスは少し不安になった。
この事を忘れて、この先クリスタルに無理を強いてしまったりはしないだろうか。
それが怖いのだ。
クリスタルならどんなに無理をしようと
「私なら、フォックスが居れば大丈夫よ(はぁと」
なんて言いながら、平気な顔をして誤魔化すに決まっているのだから。
今までだって、そんなことはあったに違いない。
きっとその度にうまく誤魔化されて来たのだろう。
それを思うと、もっとしっかりと守ってやらなくてはいけないのだと
痛感させられた。今までクリスタルの強さに甘えていた事も…
そんな事を考えていると、この腕の中の存在から
手を離してはいけない様な気がした。
とても大きくて、か細い存在…
とても強くて、か弱い存在…
全てをひっくるめ、平たく言ったならば、この上なく大切な存在…
それをもっと近くに抱き寄せたくて、
もっと近くに…もっと近くに…もっと近くに…
「フォックス…苦しい…」
「・・・ごめん・・・・・・」
言葉とは裏腹に、さらに強く抱き締める。
もう、この感情を抑えられなくなっているのかもしれない。
クリスタルにもそれは伝わったのだろう、その細い腕で
精一杯抱き返してきた。
”何でもない”といって誤魔化した想いを、もう一度ぶつける様に…
そして今、”互いに、もっと近くへ”と何かが通じ合ったような気がした。
そう、—互いに—もっと近く…もっと近く…もっと近く…と。
「ねぇ…フォックス…もっと、私の…私に近い所に…来て…」
「もっと…近い所?」
「そう…もっと…」
「でも…」
…
「ねぇ、フォックス…こっち向いてみて…」
「クリスタル…何…っ!?」
唇に柔らかい感触。
目の前に、軽く目を瞑り、穏やかな微笑を湛えたクリスタルの顔。
穏やかな、本当に穏やかな…今まで見たことも無い様な顔だった。
「・・・・・・・・・・・」
「フフッ…今度はフォックスの番よ…」
そう言うクリスタルの目は、いつもの挑発的な視線を放っていた。
それにしても大胆な事をしてくれた。
本調子に戻った、とも言えなくは無いのかもしれない。
さて、”今度はフォックスの番”などと言われて一体何をすればいいのだろう。
”もっと近く”なのだから、きっとこれ以上の事だろう。
どうやら、もう一度勇気が必要な様だ…
「…クリスタル…いいのか?…」
「フフッ…いいって?何の事?」
どうやら聞かなくてもいい事を聞いてしまったようだ。
語っているのだから。
—口では”何の事?”と—
—目では”どうぞお好きな様に”と…—
「経験…無いんだけどな…」
「だからどうしたって言うの?
私、フォックスとならどうなっても平気よ…」
「でも…」
「でも?フフッ。きっと大丈夫よ…
だって、フォックスなんだから…」
なんと根拠の無い自信だろう。
しかし、クリスタルにとって”フォックスだから”は
何よりも強い根拠なのかもしれない。
ここまで信頼されてはもう逃げ場は無い。
フォックスはクリスタルの身に纏った物を脱がせ、
非常用のマットを広げた。
「フォックス…もう、大丈夫だから…来て…」
「あ、あぁ…」
フォックスが器用に前戯を…なんて事は土台無理な話である。
クリスタルだって、最初からそんな事は望んでなどいなかった。
それよりも、通じ合う心の昂ぶりが、
十分にフォックスを受け入れられる状態にさせていた。
「じゃあ…いくよ…」
「・・・・・・・・・うん・・・」
フォックスはそれだけ言うと、クリスタルの中へと、
自身を進ませた。
「・・・・・ッ!・・・・いっ・・・・・・痛っ・・・・」
フォックスは動きを止めた。
クリスタルが申し訳無さそうにこちらを見ている。
「御免なさい…私も、”経験”なくて…」
「じゃあ、お互い様だな…落ち着くまで、このままで居ようか?」
「…うん…ありがとう、フォックス…」
軽く目を瞑り、また穏やかな微笑を湛えた様にも見えたその目は
薄らと涙を浮べていた。
「大丈夫か?クリスタル…ごめn
「ううん…違うの…そうじゃなくて…その…」
「・・・・・」
「…嬉しいの…だって…やっとフォックスと…」
そこまで言うとクリスタルは恥ずかしそうに顔を背けてしまった。
全く、ここまで大胆に誘っておいて、いざとなると
”フォックスに負けず劣らず”とでもいったところだろうか。
「フォックス…もう、大丈夫…」
「…そうか?…でも…」
「…大丈夫…大丈夫だから…ね…」
ここまで大丈夫だと言われては、ああそうかとしか言えない。
フォックスはゆっくりと、優しく、今にも壊れそうな物でも扱うかのように
クリスタルの奥へ、さらに奥へと進んでいった。
「・・・んっ・・・んっ・・んっ・・・あぁっ・・・」
「クリスタル…全部、入ったよ…」
「本当?…本当に、私…フォックスと…本当に…」
そう言うクリスタルの目にはまた涙が浮かんでいた。
「フォックス…いいよ…」
「あ、あぁ…」
フォックスは止まっていた動きを再開した。
ゆっくり・・・ゆっくり・・・いたわる様に・・・
「…あっ…あぁっ…大丈夫…気持ち良いよ…」
そうは言うものの、顔は引き攣っている。まだ慣れてはいないのだろう。
クリスタルらしく無い、バレバレの気遣いとも、
クリスタルらしい、心からの気遣いともいえる。
それが堪らなく可愛らしく思えた。
「クリスタル・・・・・・」
「…んっ…なぁに?フォックス…ぅんっ…」
何か言いたかった…伝えたかった…今、この気持ちを…
ただ、分からなかった。何と言えば良いのかが…
見つからなかった。それを伝えられる言葉が…
そして、それも全て、クリスタルには悟られているのかもしれない。
そう思った時、それはどんな言葉で飾っても、無意味なのだと感じられた。
「…いいのよ…んっ…我慢…しないで…っ…好きな様に…して…」
やはり、クリスタルには全てお見通しなのだろうと思う。
無理してこんな事を…今だって懸命に堪えているに違いないのに。
その健気さを想った時、思いは際限無く加速していった。
それに比例するように、動きも早まっていく。
クリスタルを大切に想う気持ち、壊したくない、傷付けたくないという想い…
それに反し、体は、必死に堪えるクリスタルを容赦なく、
壊してしまいそうなほどに突き立てる。
「ごめん…クリスタル…だけど…ごめん…」
「いいのよ…んっ…これで…これでいいの…あっ…ああぁっ…んっ」
口では謝っていても、体はもうどうにも止められなかった。
言うことを聞かないのだ。正直な体ともいえる。
申し訳無さと快感との葛藤の中、ふとエメラルドグリーンの瞳が
こちらを見ていることに気づく。
「あんっ…フォックス…ねぇ…気持ち良い?…」
「あぁ…本当に…ありがとう…クリスタル…」
「そう…よかった…」
クリスタルの瞳から、また一筋の涙が零れた。
そして何故か再び恥ずかしそうに顔を背けてしまった
「ハァ…ハァ…あっ…あぁっ…んっ…あぁんっ…あっ…ああぁっ…
フォックス…あんまり…見ないで…恥ずかしい…」
「どうして?そんなこと」
「だって…私…もう…あっ…だめ…」
「クリスタル…俺も…もう…」
「あんっ…フォックス…一緒に…んっ…一緒に…来て…」
「あぁ、いくよ…クリスタル…」
意識がだんだん薄くなっていく。遠くなっていく。
——もっと近くに——
その願いは、遠のく意識、押し寄せる快感の中、
互いに、何処から何処までがフォックスで、何処までがクリスタルなのか…
溶け合い、混ざり合い、一つになるような…そんな感覚へと変わって行った。
「…あっ…あっんっ…あああぁっ…い…いよ…来…て…」
「クリスタル…クリスタルッ…うっ…」
絶頂の果て、解き放たれた精はクリスタルの胸に飛び散った。
「・・・ハァ・・・ハァ」
「ハァ・・・ハァ・・・」
そのまま二人は崩れ落ちるように、抱き合ったまま、また軽く唇を重ねた。
フォックスが涙を拭いてやると、クリスタルはその口を開いた。
「フォックス…」
「どうした?クリスタル…」
「・・・・・いじわる・・・・・」
「…ごめん…どうしても、我慢できなくて…大丈夫だっ
「違うでしょ・・・・・いいのよ…中で…」
「あっ、あぁ…ごめん…」
「嫌?」
「あ、い、いや…そんなことは…その…ごめ
「じゃあ、今度は中で…ね…」
「あ、あぁ…ご
「ウフフッ…許してあげる…”今日は特別だから”…」
「そ そうか…」
「ウ・ソ…」
「えっ…」
「”フォックスだから”…よ…」
「・・・・・」
悪戯な微笑で好き放題言ってくれるものだ。
フォックスはたじろぎながらも、その”いつものクリスタル”に
安堵感を覚えるのであった。
「クリスタル…」
「フフッ…なぁに?…」
「いや…何でもない…」
「ウフフッ…ねぇ、なぁに?」
「いや…その…可愛いよ…クリスタル…」
「どうしたの?いつもはそんなこと言ってくれないのに」
「…今日は…特別…な、」
「そう…ありがとう…じゃあ、特別ついでにもう一回…いいよ…」
クリスタルは見逃さなかった。
しばらく話しているうちに、フォックスは、自身の勢いを取り戻していたのだ。
「今度は中で…ね…」
フォックスは再び、自身をクリスタルの入り口へと宛がった。
今度はずいぶんすんなりと入った。
どうやらお互い少しだけ慣れて来た様だ。
そのせいもあってか、さっきよりも素直に快感に身を任せられた。
クリスタルの中は優しくフォックスを包み込み、温かく、絡み付いてきた。
さっきもこんな感覚だっただろうか。
いくら思い出そうとしても、思い出せない。最高だったとしか憶えていない。
なんだかんだ言って、結局自分も一杯一杯だったのだな、と気付かされた。
二人は一気に絶頂に昇り詰め、
フォックスは迸る精をクリスタルの中に送り込んだ。
「あぁっ…感じる…熱い…フォックスのが…私の中に…入ってくる…」
「クリスタル…」
「フォックス…少しだけ…このままで…いて…」
「ああ、このままで…いよう」
それから二人は暫しの時を、永遠の様に長く感じながら過ごした。
しばらくその余韻に浸っていると、クリスタルが沈黙を破った。
「ねぇ、フォックス…」
「何だい?」
「ずっと…一緒に居てくれる?」
「あぁ…」
自信に満ちた…とは決して言い難い返事だった。
ずっと一緒に…それはあの父—ジェームズ—にも果たせなかった…
いつか父を超えられる日は来るのだろうか。
その時には、自信を持って答えられるだろうか。
”その日”は必ず来る。
少なくとも、クリスタルはそう信じていたのだろう。
その自信の無い返事に、励ますかの様な満足気な笑顔を返した。
END
最終更新:2008年03月24日 01:28