類型標識

 アスガル語の動(名)詞には行為動(名)詞・状態動(名)詞の区別があり、そのうち行為動(名)詞には単位動(名)詞・累積(名)動詞の区別がある。これら3種類の動詞類型を明示したい場合、類型標識を動(名)詞に後置させる。

  ~ na  単位動(名)詞
  ~ ne  累積動(名)詞
  ~ nu  状態動(名)詞


 例1) Ja qev ve [[mut]].
   → 私 完了相+半過去時制+能動態 [[助動詞]]自動詞標識 死
   ⇒ 私は死に終えた。

 アスガル語の“mut”は単に“死”を意味する単語なので、このままでは「息絶えた」のか「生き返った」のかは判別不可能である。常識的に考えれば前者の意味である気がするが、文脈等によっては後者も充分にありえそうだ。
 そこで両者を区別する為に、単位・累積・状態の3類型を“na, ne, nu”で明示する形で

 例2) Ja qev ve mut na.
   → 私 完了相+半過去時制+能動態 助動詞自動詞標識 死 単位類型標識
   → 私は死亡するという動作を完了した。
   ⇒ 私は今、完全に息絶えた。

 例3) Ja qev ve mut nu.
   → 私 完了相+半過去時制+能動態 助動詞自動詞標識 死 状態類型標識
   → 私は死亡しているという状態を完了した。
   ⇒ 私は今まで死んでいたが、生き返った。

 とまあ、こういった具合に表現するわけである。

 ちなみに類型標識と、数(単複)を示すための数標識はある意味全く同じ品詞である。解説の便宜上、動(名)詞に掛かる場合と名詞に掛かる場合とで呼び方を分けているに過ぎない。




 ~~ 以下、どうでもいいおまけ ~~

 細かい事を言えば、単位動詞は2種類に分かれる。1つは『~スル系動詞終止相 = ~テイル系動詞終止相』となるような動詞 (“殴る”など)であり、もう1つは『~スル系動詞終止相 = ~テイル系動詞開始相』となるような動詞 (“死ぬ”など)である。これらの単位動詞を「~スル系」動詞とすると、その「~テイル系」動詞は前者が累積動詞、後者が状態動詞となる。言い方を変えると前者は後に明確な形では影響を残さない一時的な動作・状態を表す動詞であり、後者はパラメーターを変化させる動詞と言う事が出来るだろう。

 単位動詞として用いる際には通常これらの違いを意識する必要は無い。というのは、どちらにせよ単位動詞は『ある状態に移行する』事を示している事には違いが無いわけであり、前者と後者の違いはその状態が一時的・瞬間的なものであるのかそれとも長期的・永続的なものであるのかという点に過ぎず、大抵の場合それは大した問題ではないからである。

 だが、まれにこの違いが感覚的な違いをもたらす単位動詞もある。例えば“þe lüp”(光る)などだ。「~テイル系」動詞が累積動詞になるような光り方とは「またたいている、点滅している」という状態であり、状態動詞になるような光り方とは「点滅せずに安定して光り続けている」という状態だ。

 そこで、これらの違いを明確にしたい場合の為に、“þe lüp ne na”であれば累積動詞“þe lüp ne”の元となる単位動詞という事で前者を、“þe lüp nu na”であれば状態動詞“þe lüp nu”の元となる単位動詞という事で後者を表わす事とする。


  • まとめ
  “þe lüp” = 光る、光っている
  “þe lüp ne” = 光っている (またたいている、点滅している)
  “þe lüp nu” = 光っている (点滅せずに安定して光っている)
  “þe lüp na” = 光る
  “þe lüp ne na” = 光る (チカっと光る)
  “þe lüp nu na” = 光る (点灯する)



最終更新:2009年11月29日 03:46