鍋川
河原に転がってゆくわたくしの体の感情が溶け出していった
(わたくしの感情ではないことに留意するがいい)
水に注がれたやかんには手紙が流れついてくる
黒く美しい髪がばらばらにほどけていくように
言葉が直接に思慮を撫でていくのではない
(視線が触っていくガラス瓶が撫でていくのだ)
結論が重要なのではない
故郷の水系を順に下って地図に記している
そういうふうな激情が冷えて固まった輪郭を取り
稜線はつながりにたえるたよりを待っている
花束が鋳込められ、今は懐かしかったから
鍋が溢れているのは
それが使われなくなったからだ
わたくしたちの日記帳が堆積している河原で
鍋川(ver.0)
新喜来のにんじん畑に一千の羊がかわされるころ
今切川の渡しから見える水系というもの
河原に黄鉄のやかんがながれていく
こころが針のようなさざめきを覚える
住人たちの総計を数えて
ああ
その鍋に鋳込まれているものとは何ぞかし
それは手紙のようなものであったろう
瓶詰めの手紙の
どこへとも流れていくだろう神の
そしてどこからともつかぬ祖先の
北島は二つの市の中継点としてある
家がむらめくこと
色だけ見ぬくならその取っ手は南のゴムの
しかしそのこころはつやめく黒のプラスチックス
大根がおでん化していた
ぼらが口を開いていた江尻の
そんな所で鯛が釣れるわけないだろう鯛浜の
はあそのようなものが流れ着いている
鍋川
洪水の故郷
最終更新:2012年06月12日 20:16