112 :courageous cat's theme ◆NN1orQGDus :2008/10/05(日) 17:46:29 ID:KQ/bF66s
人気のない放課後の学校はとても不思議です。
例えば美術室。向かい合わせになっていたカエサル像とブルータス像がそっぽを向いています。
あんなに一緒だったのに、二人の見る夕日は違う色です。
これでは二人を向かい合わせにして見つめ合うようにした私の立つ瀬がありません。
勿論浮かぶ瀬もなければ沈む瀬もありません。
兎に角。
衝撃を受けました。英語で言うとショックでなくてインパルスです。
「何してるんですか、沖方さん」
途方に暮れて自分の世界に籠ってしまった私に一条の光が差しました。
勿論、表現的に過多です。
その人は博多君でした。
「はい、カエサルさんとブルータスさんの二人が……」
かくかくしかじか。私は懇切丁寧に説明します。
恩讐を越えた二人の友情。目指す地平の違いにより道を別った二人。
巡る情勢に流されていつしか二人は憎み合い、その果てに相手を殺して永遠のモノにしようとしたブルータスは、手に握り締めたダガーでカエサルを――。
「……微妙に違うような気が……」
「あたり前です。私の脳内設定ですから」
博多君はずっこけています。
駄目ですね。空間認識能力が低いです。
「そもそもですよ、なんでカエサルとブルータスでそんな妄想が出来るんですか!」
「私は腐女子ですから。簡単な事です」
「沖方さんなら鉛筆と消しゴムのカップリングでも妄想ができるんでしょうね!」
「当然です。それは10年前に私が通った道ですね」
博多君はげんなりとしています。
大甘です。腐女子を見くびったら駄目なのです。
何故ならば。
BLは嗜好ではなくて信仰です。世界的な宗教なのです。
世間に出回っている物差しでは測りきれないのです。
「世界中の人が沖方さんみたいだったら戦争なんて起きないでしょうね」
そんな事はありません。
腐女子は世界でもっとも勇猛で残忍な民族です。
○○×□□を逆にするだけで簡単に戦争は起こります。
宗教戦争並みに激しい戦争です。
私はすっとんきょうな博多君の言葉に溜め息をバーゲンセールとして売り出してしまいます。
そんな私を見て博多君は目を丸くしています。
「博多君、貴方は私を傷付けました。そのお詫びに私に何かご馳走して下さい」
「意味が判りませんよ!」
判りませんか、判らないでしょうね。
だって博多君は本当に仕方がない人ですから。
――幕。
116 : ◆NN1orQGDus :2008/10/05(日) 18:06:24 ID:KQ/bF66s
キャラクター設定
沖方鼎【おきかたかなえ】
通称かなピン。スレンダーで腐女子な人。博多利敬君が気になる。
博多利敬【はかたりけい】
通称不明。せいたかのっぽで理系のオタク。初対面の時に沖方さんを冲方【うぶかた】さんと呼んでしまい怒られた。
それ以来沖方さんが気になる。
最終更新:2008年10月06日 22:25